退職者の給与支払報告書が必要なケースや作成上の注意点を紹介
企業や個人事業主は、従業員に給与を支払った場合、前年1年間の給与額等を集計して給与支払報告書を作成し、関係市町村に提出しなければなりません。
また、この書類は在籍する従業員だけでなく、給与支払金額が30万円を超える場合には退職した従業員に関しても作成が求められます。市区町村によっては、30万円以下であっても提出するのが望ましいとしているところもあるので、適切な課税でクリーンなイメージを保つためにも提出するのが理想です。
本記事では、退職者の給与支払報告書が必要となるケースや書き方、作成時の注意点などについて解説します。
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目次 [非表示]
1. 退職者の給与支払報告書が必要なケース
給与支払報告書は、関係市区町村が住民税の額を決定するために必要となる書類です。地方税法第317条6項では、前年中に支払った給与に対し、従業員すべての給与支払報告書を作成して関係市町村に提出することを義務付けています。
従業員が退職した場合でも、その従業員に対して前年に支払った給与が30万円を超えている場合は、関係市町村に給与支払報告書の提出が必要です。
1-1. 給与支払報告書を提出する場合の期限
なお、企業は給与支払報告書を作成して、1月1日時点で従業員の居住地がある関係市区町村(退職者は退職日時点)に提出します。
給与支払報告書に記載する支払金額は、前年1月1日から12月31日までに支払が確定した給与等の総額です。年末調整を終えたあとに、給与支払報告書を準備して、その年の1月31日までに関係市町村に提出しなければなりません。
2. 退職者の給与支払報告書が提出不要なケース
退職した従業員に対する給与等の支払金額が30万円以下の場合、給与支払報告書の提出を省略することができます。
ただし、多くの市区町村では、給与等の支払金額が30万円以下の場合でもできる限り給与支払報告書を提出するよう求めています。中には、給与等の支払金額に関わらず提出が必要と定めている市区町村もあります。
各市区町村からすると個人住民税を適切に課税したい意図があり、そのためには給与等の支払に関する情報が欠かせません。退職者の給与等の支払金額が30万円を下回る場合でも、一律で給与支払報告書を作成して提出するルール作りをするのが確実でしょう。
なお、在籍する従業員に関しては、年間の給与支払い額が30万円を下回る場合でも給与支払報告書の提出が必要となります。少々紛らわしいため、混同しないよう気をつけましょう。
3. 退職者の給与支払報告書個人別明細書の書き方
在籍している従業員と退職者とでは、給与支払報告書個人別明細書の書き方が多少異なります。退職した従業員のものであると判断できるよう、正しい形式で給与支払報告書を記載しましょう。
3-1. 住所欄
給与支払報告書の住所欄には、その従業員の退職時の住所を記載しましょう。この住所は、1月1日現在のものである必要があり、正確であることが求められます。特に、退職後に転居した場合などは、適切な情報を確認し記載することが重要です。
また、正しい住所を記載することで、地方税の計算や関連書類の送付に影響を与えます。したがって、提出する前に住所情報を再確認しておくと良いでしょう。
3-2. 支払金額
支払金額の欄には、退職した従業員に対して前年中に支払の確定した給与等の総額を記入します。この支払金額は、1月1日から12月31日までの期間に行われた給与の支払いに基づいて計算されます。正確な金額を記入することで、退職者の税務上の手続きがスムーズに進む助けになります。
また、万が一、過去の給与支払いに誤りがあった場合には、適切な修正が必要となるため、金額の確認を行うことが重要です。従業員の給与が年末調整を経て確定するため、報告時には調整がされていることを確認して記載するようにしましょう。
3-3. 給与所得控除後の金額
給与所得控除後の金額の欄には、「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」によって求めた「給与所得控除後の給与等の金額」を記載します。支払金額を表に当てはめ、該当する給与所得控除後の金額を探しましょう。
なお、年末調整をしないときにはこの欄は空白のままにしておきます。
参照:年末調整のしかた|国税庁
3-4. 所得控除額の合計額
年末調整をおこなう場合には、この欄に控除の合計額を記入します。社会保険料控除や小規模企業共済等掛金控除、配偶者控除や扶養控除、基礎控除など各種控除の合計額を算出して記入しましょう。
年末調整をしないときには、給与所得控除後の金額の欄と同じようにこの欄も空白のままにします。
3-5. 源泉徴収税額
この欄には、年末調整後に届く源泉徴収票をもとに、源泉所得税及び復興特別所得税の合計額を記載します。
年末調整をしないときには、その年中に支払の確定した給与や賞与から天引きした所得税等の合計金額を記載します。
3-6. その他控除額
その他控除は、企業と従業員が労使協定で合意した控除項目が当てはまります。
その他控除の例として、以下の費用が挙げられます。
- 寮や社宅費
- 組合費
3-7. 中途就職・退職者欄
退職した従業員の給与支払報告書は、この部分への記載が必要となります。そのため、忘れないように退職の年月日を明記しておきましょう。
4. 退職者の給与支払報告書総括表の書き方
給与支払報告書には個人別明細書と総括表の2つの種類があります。
総括表は従業員ごとに作成した個人別明細書を取りまとめるための書類です。総括表には、在籍する従業員と退職する従業員の情報をまとめて記載することが可能です。
総括表には、報告人員の内訳を記入する欄が用意されています。一般従業員の人数を特別徴収の欄に記入し、退職者の欄には退職した従業員の人数を入れておきましょう。報告人員の欄には、在籍する従業員数や退職者数、その他の従業員の人数の合計を記入します。
5. 退職者の給与支払報告書を作成するときの注意点
退職した従業員に関しても、在籍する従業員と同じように書類を作成して提出しましょう。
なんらかの理由で提出ができなかったときには、罰則の対象とされてしまうこともあります。
ここからは、退職者の給与支払報告書の作成や提出における注意点を解説します。
5-1. 書類提出を怠らないよう気をつける
原則として、30万円を超える給料を支払っていた退職者の給与支払報告書を提出しなかったときには、罰則の対象とされてしまうので気をつけましょう。
給与支払報告書の提出は地方税法によって義務化されており、提出しなかったときには「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられます。そのため、必ず提出期日までに書類を作成して提出しましょう。
参照:地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)|e-Gov法令検索
5-2. 退職者と連絡がつかないケースの対処法
退職は必ずしも円満に済むとは限りません。突然従業員が退職したまま引っ越して連絡が取れなくなったり、問題を起こした従業員を懲戒処分したりといったケースが中にはあります。
退職者の住所が不明で連絡が取れないからといって、給与の未払い分があれば企業はこれを支払わなければなりません。
給与支払のタイミングや給与支払報告書作成などの実務については、各種機関に相談して慎重に取り扱うようにしましょう。
5-3. 退職者の給与支払報告書の送付方法
給与支払報告書の個人別明細書と総括表を作成したら、必ず期日までに関係市区町村に提出をします。
書面での提出を希望の場合には、窓口に持参するか、郵送で手続きをしましょう。提出方法が分からないときには市区町村に問い合わせをしたり、ホームページを確認したりするとよいでしょう。
電子データを作成し、システム上で給与支払報告書を送付するという方法もあります。給与支払報告書はeLTAXというシステムを利用して市区町村に送付できます。手軽に書類作成や送付を済ませたいのであれば、システムを導入するのもいいかもしれません。
6. 退職時の扱いは就業規則に定めておこう
退職した従業員であっても、一定額以上の給与を支払っていた場合には、給与支払報告書を作成して市区町村に提出することが義務付けられています。
しかし、給与支払報告書の作成方法自体は在籍する従業員のものとそれほど変わりはなく、退職年月日を記入し、退職した旨が把握できるようにしておけば問題ありません。
ただし、退職者と連絡が取れない場合、書類作成に支障が生じてしまうこともあります。書類が作成できなかったり、提出できなかったりすると罰則対象になるかもしれないので、退職時の扱いについて就業規則に定めておき、柔軟に対処出来るようにしておくとよいでしょう。
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