給与支払報告書の書き方のポイントや訂正方法、提出先を詳しく解説
更新日: 2024.12.26
公開日: 2022.8.24
OHSUGI
給与支払報告書は、給与支払者が給与受給者に対して支払った金額を明らかにする書類です。作成した給与支払報告書は市区町村に提出する必要があります。
本記事では、給与支払報告書の書き方を具体的に解説していきます。
目次
年末調整は、従業員の家族構成やライフステージ、副業の有無、控除対象となる保険類への加入状況など、人によって複雑な分岐や異なる計算方法のルールがあるため、とても複雑な業務です。
給与計算を担当する方にとって、計算結果を統合する一年の集大成とも言える業務ですが、
「結婚・離婚・定年・退職・死亡など、様々なケース別の年末調整に対応する際の注意点が知りたい」
「障害者や勤労学生、共働き、遺族年金がある場合など家族構成に関する控除のポイントを押さえておきたい」
「記載ミスや、申告内容・扶養の変更、税務署からやり直し通知を受けた際などの対応方法が知りたい」
このようなイレギュラーケースの対応について不安を抱えている担当者の方に向けて、当サイトでは「Q&A形式でわかる年末調整と源泉徴収」という資料を無料配布しています。
資料では、一問一答形式でケース別の具体的な年末調整の対応方法を解説していますので、すぐに使える年末調整のガイドブックが欲しいという方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 給与支払報告書とは
まずは給与支払報告書がどのような書類なのか、入手方法や提出先、正しく処理できなかった場合の罰則などと一緒に確認していきましょう。
1-1. 支払った給与の総額を計算した書類のこと
給与支払報告書は、前年の1月1日から12月31日までの間に、企業が従業員に対してどれだけの給与を払ったのかを記載した書類です。
書類は個人別明細書と総括表の2枚から構成されています。個人別明細書にはそれぞれの従業員の住所氏名や給与等の総額、社会保険料の額などが記載されます。総括表はそれぞれの個人別明細書をまとめた書類です。個人別明細書を何人分作成したか、退職者がいるのかなどの情報を記入します。
1-2. 給与支払報告書の入手方法と提出先
給与支払報告書は市区町村の担当部署や税務署で入手可能です。また、市区町村のホームページからダウンロードすることもできます。過去に給与支払報告書を提出したことがあれば、市区町村から送付されてくることもあります。
企業は従業員の給与額を計算して書類を作成し、対象期間の翌年1月1日の時点で従業員が居住している市区町村へ1月31日までに給与支払報告書を提出しなくてはいけません。
なお、給与支払報告書は前々年における給与所得の源泉徴収票の提出枚数が1,000枚以上の場合、eLTAXやクラウド、光ディスク等での提出が義務付けられていました。しかし、令和3年1月以降より枚数が100枚以上に引き下げられています。
参照:提出義務基準が引き下げられました!|LTA 地方税共同機構
1-3. 給与支払報告書を提出しないと罰則がある
給与支払報告書は、賃金を支払っている会社や個人事業主に提出が義務付けられているものです。そのため、定められた期日までに提出しないと罰則の対象となり得ます。
給与支払報告書を提出しない場合の罰則に関しては地方税法で定められており「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられることになります。
年末調整の時期は多忙を極めることから、何かとミスや漏れが起こりがちです。給与支払報告書の提出漏れが起こらないように十分注意しましょう。
2. 給与支払報告書を書く必要がある対象者
給与支払報告書の作成が必要な対象者は、前年の1月1日から12月31日までに給与を支払ったすべての従業員です。
正社員だけでなく、パートやアルバイトであっても雇用形態に関係なく作成しなくてはいけません。役職や給与の支給額も関係ないため、すぐに辞めてしまった人や、試用期間中の従業員だとしても、給与が発生していたら作成する必要があります。
更に、在職中の従業員だけでなく前年に会社を辞めた退職者や、一度だけ給与を受け取った短期雇用者の分も作成が必要となります。
給与を受け取っていない従業員というものはほとんど発生しないため、昨年度中に一度でも自社に雇用された人は全員分が必要であると考えておいた方が間違いありません。
3. 給与支払報告書と源泉徴収票との違い
給与支払報告書と源泉徴収票は記載内容がほぼ同じであるため、よく同じ書類と混同されがちです。しかし、両者には提出の目的と提出先に大きな違いがあります。
給与支払報告書は、翌年の住民税額を計算するために作成する目的があり、提出先は市区町村となっています。一方で、源泉徴収票は、所得税の徴収額や従業員に支給した給与額を知らせる目的があり、提出先は税務署となっています。
給与支払報告書を提出しないと住民税の計算ができなくなり、源泉徴収票がないと従業員が給与額を確認できなくなるわけです。そのため、内容がほぼ同じでもそれぞれ作成しなければならないわけです。
このように、2つの書類にはそれぞれ異なる目的があるため、正しく作成して提出漏れがないように注意しましょう。
4. 給与支払報告書個人別明細書の各項目の書き方
給与支払報告書の個人別明細書の体裁は源泉徴収票とよく似ています。給与支払報告書を作成する前に源泉徴収票を作成し、この情報をもとにして項目を埋めていけばスムーズに作れます。
給与支払報告書の個人別明細書には以下のような項目があるため、それぞれ正しい情報を記載していきましょう。
参照:給与所得の源泉徴収票等の 法定調書の作成と提出の手引|国税庁
給与支払いを受ける者 |
従業員の受給者番号、住所、マイナンバー、役職名、氏名を各欄に記入します。 受給者番号とは、事業所が各従業員に任意で付している番号です。無ければ書く必要はありません。住所に関しては、従業員が1月1日時点で居住している住所を記入します。 |
支払金額 | 期間中に支払の確定した給与等の総額を記入します。対象期間は1月1日から12月31日までの1年間です。 |
給与所得控除後の金額 | 給与所得控除をおこなったのちの金額を記載します。正確な金額は源泉徴収票でチェックできます。なお、所得金額調整控除の適用がある場合は、所得金額調整控除を引いた金額を記載します。年末調整をおこなわないときには空欄にしておきましょう。 |
所得控除の額の合計額 | 社会保険料控除や配偶者控除、生命保険料控除、地震保険料控除、扶養控除など各控除額の合計額を記入します。こちらも年末調整をしない場合には空欄にしておきましょう。 |
源泉徴収額 | 年末調整のあとに確定した源泉所得税額と復興特別所得税額の合計を記入します。退職者のように年末調整をしないケースに関しては、会社に在籍していた期間の源泉徴収額を記載しましょう。 |
控除対象配偶者や扶養家族、障害者 |
控除対象配偶者の欄に関しては、配偶者控除の対象者がいる場合に丸印を入れて隣の欄に控除額を記入します。配偶者が70歳以上である場合は、老人欄に丸印を入れましょう。 控除対象扶養親族(配偶者をのぞく)の欄には、扶養控除が適用された親族の人数を記入します。同じように、隣の欄へ障害者控除の対象者の人数を記載します。 |
社会保険料の金額、控除額 | 社会保険料控除や生命保険料控除、地震保険料控除、住宅借入金特別控除について、それぞれ控除額を記載します。 |
摘要欄 |
摘要欄には、以下の項目に該当する場合にそれぞれ記載します。
この他にも、摘要欄への記載が必要となる内容があります。詳しくは国税庁が発行しているマニュアルをご参考下さい。 |
控除対象配偶者、控除対象扶養親族 | 控除対象となっている配偶者や扶養親族の氏名、マイナンバーを記入します。非居住者である場合は、区分欄に〇印の記入が必要です。16歳未満の扶養親族がいる場合は、隣の別欄に記入しましょう。 |
配偶者の所得合計 | 配偶者控除や配偶者特別控除を受けている場合は、配偶者の所得額の合計を記入する必要があります。 |
国民年金保険料等、旧長期損害保険料の金額 | 社会保険料控除の適用を受けた国民年金保険料等の金額、平成18年までに締結した地震保険料の控除額があるときに記入します。 |
未成年から勤労学生までの各欄と中途就・退職 |
未成年から勤労学生までの各欄については、受給者に該当する事項がある場合は〇印を入れます。 また、中途就・退職の欄には、年の途中で就職または退職した場合に〇印を入れ、その年月日を記入します。4月入社の新入社員に関しては、所得税や住民税の計算期間上は中途就職扱いとなるため注意しましょう。 |
支払者 | 従業員に対して給与を支払う企業の名称や住所、支払者のマイナンバーや法人番号を記載します。 |
5. 給与支払報告書総括表の各項目の書き方
続いて、給与支払報告書の総括表の項目を確認していきましょう。
給与支払報告書の総括表には、従業員ごとに作成した個人別明細書のまとめのような意味合いがあります。統一のフォーマットがなく市区町村によって多少内容が異なりますが、主に企業の情報や従業員数について記入していくことになります。
給与の支払期間 | 給与支払報告書総括表の支払期間は、前年の1月から12月となります。 |
給与支払者の法人番号 | 企業や事業所の場合は法人番号、個人事業主の場合はマイナンバーをそれぞれ記載します。 |
給与支払者の氏名又は名称 | 事業所の住所や名称、代表者名を記入します。 |
所得税の源泉徴収をしている事務所又は事業の名称 | 本社以外の営業所で給与事務をおこなっている場合、または特別徴収の決定通知等の送付先を本社以外に希望する場合は、この欄に記入します。「給与支払者の氏名又は名称」と同じであれば同上と記入しましょう。その下の欄には住所を入れます。 |
連絡者の氏名、所属課、係名及び電話番号、関与税理士等の氏名及び電話番号 | 市区町村からの問い合わせに対応する担当者の氏名や所属課などを記載します。また、会計事務所や税理士事務所に給与支払報告書の作成を委託している場合も記載が必要です。 |
事業種目 | 企業や事業所の業務内容を記載します。(例:製造業、小売業、建設業など) |
提出先市区町村数 | 給与支払報告書は従業員の居住市区町村に提出します。この欄には、提出先の市区町村の数を記載します。 |
受給者総人員 | この欄には、対象年の翌年1月1日時点での在職者数が入ります。 |
報告人員 | 給与支払報告書の提出人数を、特別徴収者(在職者)と普通徴収者(退職者)、普通徴収者(退職者以外)にそれぞれ分けて記載します。 |
所轄税務署 | 企業が所得税の源泉徴収をしている場合、管轄の税務署名の記載が必要です。 |
給与の支払い方法及びその期日 | 企業が従業員に対してどのように給与支払いをしているのか、月額や日額、時給といった区分で記載します。また、給与の支払日についても明らかにします。(例:月給、毎月20日など) |
納入書の送付 | 窓口で納入する場合には、「必要」に丸印をします。インターネットバンキングで納入する場合で、納入書が要らなければ「不要」に丸印を入れます。 |
6. 給与支払報告書はマイナンバー制度や電子申請に対応が必要
マイナンバー法や税制改正などにより、給与支払報告書への記載内容や提出方法の義務などが変化しはじめています。今までと同じ方法では適切な処理ができないことや、企業の義務を果たせていないことになる恐れがあります。
マイナンバーの記載が必要になった
2017年度の給与支払報告書からは、従業員本人分と従業員が扶養する家族分のマイナンバーの記載が必須になっています。
給与支払報告書のそれに伴って変化しているため、すべての欄を埋めていれば問題なく処理ができています。
しかし、従業員からのマイナンバーの提出がなく対応ができていない場合は問題になる恐れがあります。初めて給与支払報告書を作成する従業員がいる場合は、前もってマイナンバーの提出を求めておきましょう。
電子申告の義務範囲が広がっている
税制改正により電子化が進められており、2021年からは「前々年に提出した源泉徴収票が100枚以上」の企業は電子申告が義務付けられています。
この電子申告の義務化は少しずつ広まっており、2027年からは「前々年の源泉徴収票が30枚以上」の企業にまで電子申告の義務化が広まります。多くの企業が対象になるため、今はまだ義務化の条件に該当していなくても、少しずつ準備を進めていく必要があります。
参考:法定調書のe-Tax等による提出義務化の概要について|国税庁 e-Tax
7. 給与支払報告書の書き方を間違えたときの訂正方法
給与支払報告書を作成する際に記入ミスが起きることもあるものです。
記入中に書き間違いをしたのであれば、斜線や二重線で訂正をしてその上に正しい文言を記載すれば問題ありません。訂正の際には斜線や二重線を引いた部分に社印を押しておきましょう。
給与支払報告書を書き間違えたときに、新たな書類を使って書き直す方もいます。一から書き直すのは手間がかかりますが、公的な書類であるため丁寧に仕上げるに越したことはありません。
給与支払報告書と源泉徴収票にはほぼ同じ情報を記入することになります。給与支払報告書の文字や数字にミスがあったときには、源泉徴収票にも同じミスがないかを確認しておきましょう。
市区町村に給与支払報告書を提出したあとに間違いに気づくケースもあります。役所から間違いを指摘されることもあるものです。こういった場合には煩雑な訂正の手続きが必要となります。
まずは間違いのあった個人別明細書を新たに作り直しましょう。続いて総括表も新たに作り直し、左上の訂正の欄に丸をつけた上で郵送します。
再送などの手間を省くためにも、給与支払報告書の提出前には間違いがないかを注意深く確認しておくことが重要です。
8. 給与支払報告書の書き方のポイントを押さえて正しく作成しよう
企業が給与支払報告書を提出しなければならないことは、地方税法によって定められています。正しい方法で給与支払報告書を作成し、期日までに提出することが重要です。
給与支払報告書には個人別明細書と総括表の2種類があります。個人別明細書の内容は源泉徴収票とほぼ同じなため、同時に作成しておけば手間が省けます。
給与支払報告書にミスがあった場合には訂正や再送が必要となるため、ミスが起きないよう注意深く作成することが必要です。なお、給与計算システムを導入すれば、年末調整の計算が自動化されるため、ミスを減らして業務負担を軽減させることができます。いつも給与支払報告書の作成まで手が回っていない場合は、給与計算システムの活用がおすすめです。
年末調整は、従業員の家族構成やライフステージ、副業の有無、控除対象となる保険類への加入状況など、人によって複雑な分岐や異なる計算方法のルールがあるため、とても複雑な業務です。
給与計算を担当する方にとって、計算結果を統合する一年の集大成とも言える業務ですが、
「結婚・離婚・定年・退職・死亡など、様々なケース別の年末調整に対応する際の注意点が知りたい」
「障害者や勤労学生、共働き、遺族年金がある場合など家族構成に関する控除のポイントを押さえておきたい」
「記載ミスや、申告内容・扶養の変更、税務署からやり直し通知を受けた際などの対応方法が知りたい」
このようなイレギュラーケースの対応について不安を抱えている担当者の方に向けて、当サイトでは「Q&A形式でわかる年末調整と源泉徴収」という資料を無料配布しています。
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