外注費とは?給与との違いや実際の仕訳例、給与認定された場合の対策について解説
更新日: 2024.5.8
公開日: 2022.7.20
jinjer Blog 編集部
外部の企業や個人事業主に業務の一部を委託する場合、支払った費用を「外注費」の勘定科目で計上できます。外注費として計上する場合、原則として源泉徴収の義務がなく、消費税の仕入税額控除を利用できます。また、社会保険料を負担する必要もありません。ただし、委託する業務の内容や雇用形態によっては、外注費ではなく「給与」と認定される可能性があります。この記事では、外注費の仕訳例や給与との違い、給与認定されないための対策を解説します。
目次
86個の勘定科目と仕訳例をまとめて解説
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1. 外注費にあたる費用とは?
外注費とは、外部の企業や個人事業主と業務委託契約などを締結し、業務の一部を委託したときに支払う費用のことです。「外注工賃」や「業務委託費」と呼ばれる場合があります。外注費にあたる費用として、例えば以下のような例が挙げられます。
- 業務委託やアウトソーシングを依頼したときの費用
- 人材派遣会社に支払う人材派遣費や人材派遣料
- 警備会社や清掃会社を利用したときの費用
- 事務作業やコールセンター業務を外部に委託したときの費用
- 取得価額が10万円未満のソフトウェア開発を依頼したときの費用
- 製造業や建設業などで、下請会社を利用するときの下請費や加工費
1-1. 外注費に該当しない費用
一方、外注費に該当しない費用として、「支払手数料」「販売手数料」「給与」の3つの勘定科目があります。
勘定項目 | 定義 |
外注費 | 外部のパートナーに仕事を依頼するときの費用 |
支払手数料 | 税理士や弁護士などの専門家に仕事を依頼するときの費用 |
販売手数料 | 税理士や弁護士などの専門家に仕事を依頼するときの費用 |
給与 | 自社の従業員として業務をさせる場合に支払う費用 |
支払手数料とは、税理士・弁護士・司法書士・コンサルタントなど、専門性の高い外部パートナーに仕事を依頼するときの費用です。例えば、顧問税理士と契約を締結する場合は、外注費ではなく支払手数料の勘定科目を使用することが一般的です。また、商品の販促やプロモーションのため、外部の販売代理店や仲介業者を利用する場合も、外注費ではなく販売手数料で費用計上します。外注費と給与との違いは次の項目で詳しく解説します。
2. 外注費と給与との違い
外注費はあくまでも会社外部の企業や個人事業主と契約し、業務を委託するときに計上できる勘定科目です。業務内容や雇用形態から総合的に勘案し、外部のパートナーではなく自社の従業員として業務をおこなっていると判断される場合、給与として会計処理をおこなう必要があります。外注費と給与の違いは以下の表の通りです。外注費は一部の場合を除いて、発注側に源泉徴収の義務がありません。また、仕入税額控除を利用できるため、消費税を節税できます。給与と違い、雇用契約を締結しないため、社会保険料の負担もありません。
– | 外注費 | 給与 |
所得区分 | 事業所得 | 給与所得 |
消費税の仕入税額控除 | 〇 | × |
源泉徴収 |
原則として不要 ※源泉徴収義務者が個人に対し、源泉徴収の対象となる業務を依頼する場合は必要 |
必要 |
契約 |
業務委託契約 請負契約 |
雇用契約 |
2-1. 外注費か給与か判断する基準
外注費と給与の区分は、受注側との契約の種類によって判断します。しかし、外注費と給与の区分がつかない場合は、以下の5つの基準で総合的に判断します。
– | 当てはまる場合 |
他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められる | 外注費 |
報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束を受ける | 給与 |
作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督を受ける | 給与 |
作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督を受けるか | 給与 |
材料又は用具等を報酬の支払者から供与されている | 給与 |
これらの基準を総合的に勘案し、雇用の実態があると判断された場合、外注費ではなく給与と認定される可能性があります。
3. 外注費の仕訳例
外注費の仕訳処理は、源泉徴収の有無によって変わってきます。原則として、外注費は源泉徴収の義務がありませんが、「源泉徴収義務者が個人に対し、源泉徴収の対象となる業務を依頼する場合」のみ源泉徴収が必要です。
源泉徴収が必要な場合とそうでない場合
– | 発注側 | ||
源泉徴収義務者である | 源泉徴収義務者でない | ||
受注側 | 企業 | 不要 | 不要 |
個人事業主 | 必要 | 不要 |
ここでは、源泉徴収が発生するケースとそうでないケースの仕訳例を紹介します。
3-1. 源泉徴収が発生しないケース
企業や法人に業務の一部を委託する場合、源泉徴収をおこなう必要はありません。例えば、警備会社に警備費用として現金100万円を支払った場合、以下の通り仕訳をおこないます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
外注費 | 1,000,000円 | 現金 | 1,000,000円 |
3-2. 源泉徴収が発生するケース
次に源泉徴収義務者の発注者が、個人事業主に源泉徴収の対象業務を委託する場合を考えます。会計上、源泉徴収税を「預り金」として計上する必要があります。源泉徴収税額は外注費が100万円を超えるかどうかで変わります。
支払金額 | 税額 |
100万円以下 | 支払金額×10.21% |
100万円超 | (支払金額ー100万円)×20.42%+102,100円 |
例えば、個人事業主にホームページ作成費用として現金20万円を支払った場合、源泉徴収税額は20,420円です。仕訳処理は以下の通りおこないます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
外注費 | 200,000円 | 現金 | 179,580円 |
預り金 | 20,420円 |
4. 外注費が給与認定されないための対策
もし外注費が給与と認定された場合、源泉所得税の追徴課税がおこなわれます。また、給与は仕入税額控除を利用できないため、控除された分の消費税も納付しなければなりません。外注費を給与とみなされないため、以下のような対策を実施しましょう。
- 業務委託契約書や請負契約書を取り交わし、雇用契約ではないことをはっきりさせる
- 業務委託契約や請負契約であることがわかる証憑を保存する
- 社内の組織図などに受注先の社名・個人名を乗せず、自社の従業員と区別する
- 外注費の支払日を従業員への給与支払日と区別する
5. 外注費における注意点
外注費を損益計算書に記載するときは表示区分に注意しましょう。外注費は「売上原価」または「販売費及び一般管理費(販管費)」の区分で損益計算書に表示します。外注費が自社の売上と直接関わる場合、「売上原価」の区分を使用します。例えば、商品製造の一部を外部の企業に委託するケースです。一方、外注費が売上と直接結びつかない場合は「販売費及び一般管理費(販管費)」の区分を使います。例えば、清掃会社の利用料金や警備会社の警備費用などが「販売費及び一般管理費(販管費)」に該当します。
5-1. インボイス制度導入後の外注費と取り扱い
2023年10月1日からインボイス制度がスタートしたことによって、外注費の取り扱いに変化が現れました。従来は外注費のうち消費税分は、仕入税額控除を受けられました。しかし、2023年10月1日からスタートしたインボイス制度によって、外注先が適格請求書(インボイス)を発行できる事業者でなければ仕入税額控除を受けられなくなっています。
6. 外注費と給与の違いを知り、給与認定されないための対策を
外注費とは、外部の企業や個人事業主に業務の一部を委託するときの費用です。例えば、コールセンター業務を委託するときの費用や、製造業や建設業における下請費・加工費などが外注費に当てはまります。もし外注費が給与と認定された場合、源泉所得税や消費税の追徴課税が発生する可能性があります。業務委託契約書や請負契約書の締結や、外注費の支払日を給与支払日と区別するなど、外注費を給与認定されないための対策を実施しましょう。
[注1] 国税庁:大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて(法令解釈通達)
[注1] 国税庁:原稿料や講演料等を支払ったとき
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