人事評価規程とは?義務・届出・作成手順・作成の注意点をわかりやすく解説
更新日: 2025.5.1
公開日: 2025.4.21
jinjer Blog 編集部
「人事評価規程の概要を知りたい」
「人事評価規程の作成や届出の義務について知りたい」
上記のようにお悩みの方も多いでしょう。
人事評価規程とは、人事評価制度のルールを定めたものです。条件にあてはまる企業は、作成や届出の義務が生じます。
本記事は、人事評価規程の概要や作成手順、作成の注意点や作成・届出が必要なケースについての解説です。
そのほかに、就業規則への記載が必要な場合についても解説しているため、ぜひ参考にしてください。
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 人事評価規程とは
人事評価規程とは、会社が定める社内規程の一つで、人事評価制度のルールを定めたものです。人事評価制度では、一定期間の各従業員の能力や成果などを一定基準で測り評価し、従業員の賃金や等級などの判断に評価結果を反映します。
企業は、人事評価規程により客観的な指標にもとづいた人事評価を実現できるでしょう。結果、人事評価の公平性や透明性が増し、従業員の労働意欲や満足度の向上が期待できます。
人事評価規程と類似した規程に人事考課規程がありますが、明確な違いはありません。
2. 人事評価制度導入により人事評価規程の作成義務が生じる
常に10人以上の従業員を使用する事業場をもつ企業が人事評価制度を導入した場合には、人事評価規程の作成義務が生じます。人事評価制度の定めは、就業規則に関する定めの一つである相対的必要記載事項に該当するためです。
一方、常に9人を超えない従業員が働く事業場をもつ企業や、人事評価に関する定めがない会社は人事評価規程の作成義務はありません。
相対的必要記載事項とは、会社が規則を設ける場合、就業規則に必ず記載しなければならない事項を指します。
就業規則本体に人事評価制度で定めた内容を一つひとつ記載しても問題ありませんが、人事評価規程を別に作成する企業が多いです。就業規則本体にすべての定めを記載した場合は、人事評価規程を別に作成する必要はありません。
人事評価制度の定めがある企業が就業規則に記載しなかったり人事評価規程を作成しなかったりした場合、労働基準法違反です。
参考:1 就業規則に記載する事項 2 就業規則の効力|厚生労働省
3. 人事評価規程は就業規則への記載が必要
人事評価規程の定めは、就業規則への記載が必要な相対的必要記載事項に該当します。就業規則本体に人事評価の定めをすべて記載していない場合は、別規則を人事評価規程で定めたことを就業規則へ記載しなければなりません。例えば、「人事評価については別に定める人事評価規程による」と、人事評価規程が別にあることを就業規則に明記します。
ただし、就業規則の作成義務は常に10人以上の従業員が働く事業場をもつ企業に限られます。上記の条件に該当しない企業は、就業規則自体を作成する必要がありません。
つまり、上記の条件に該当しない企業が人事評価のルールを定めた場合、人事評価規程の作成や就業規則への記載は不要です。
一方、人事評価の定めがあり上記の条件にあてはまる企業が人事評価の定めについて就業規則へ記載しなかった場合は、労働基準法違反です。
参考:1 就業規則に記載する事項 2 就業規則の効力|厚生労働省
4. 人事評価規程により就業規則に変更が生じた場合は届出が必要
人事評価規程の作成や変更により就業規則に変更が生じた場合は、法律により所轄労働基準監督署への届出が必要です。
就業規則を作成・変更する場合、届出前に事業場の過半数組合か従業員の過半数代表者への意見の聴取も義務づけられています。
なお、作成した就業規則と人事評価規程に加えて、上記の聴取の意見書と就業規則(変更)届の届出も必要です。就業規則とは別に人事評価規程を作成していない場合は、3点のみ届出ます。
参考:1 就業規則に記載する事項 2 就業規則の効力|厚生労働省
5. 人事評価規程の作成手順
人事評価規程の作成手順は、以下のとおりです。
- 現状把握
- 評価基準・項目の決定
- 項目の設定
- ルールの決定
各手順を詳しく解説します。
5-1. 現状把握
人事評価規程の作成手順1は、現状把握です。現状の自社の評価システムを把握し、問題点や課題を洗い出すことで、自社に適した人事評価規程の定めがわかるでしょう。
従業員から、現状の評価システムに関する意見を聞き取る方法も一つです。結果、あいまいな評価基準に対する不満が多い場合は、明確な評価基準や評価項目を設定し、人事評価規程の作成を進めましょう。
5-2. 評価基準・項目の決定
人事評価規程の作成手順2は、評価基準・項目の決定です。明確な評価基準や適切な評価項目を設定することで、人事評価制度の公平性や満足度が向上します。
一般的な評価項目の種類は、以下の3つです。
業績 | 業績目標達成度、課題目標達成度など、数値化できる結果で評価する |
能力 | 知識評価、能力評価など、業務遂行に関わるスキル・知識・資格などで評価する |
情意 | 積極性、チームワーク、法令遵守など、仕事への意欲や姿勢などを評価する |
評価基準として、5段階評価や等級制度などを利用する企業も多く見受けられます。
5段階評価 | 業務遂行能力・成果・姿勢などを5段階に区分した基準で評価する |
等級制度 | 能力・職務・役割などをレベル別に区分した等級により評価する |
評価基準・項目は、文章化・数値化した際に明確でわかりやすいかどうかも大事なポイントです。
5-3. 規程の項目の設定
人事評価規程の作成手順3は、人事評価規程の項目の設定です。一般的な項目を表にまとめました。
対象者 | 正社員、契約社員、アルバイト、パートタイマーなど |
評価者 | 自身、指導監督者など |
評価時期 | 毎年2回4月と10月、毎年1回4月の実施など |
評価対象期間 | 4月~9月・10月~3月の6ヵ月間、4月~3月の12ヵ月間など |
評価項目 | 規律性、成果、職務能力、貢献度など |
評価基準 | 評価区分、評価基準書など |
評価方法 | 自己評価後に指導監督者による最終決定評価を実施など |
評価結果の処遇への反映方法 | 評価結果を12月と7月の冬季・夏季賞与に反映、毎年1回の賃金改定時に反映など |
記載する事柄が多岐にわたる評価項目や評価基準について、別に評価基準書を作成するケースも多いです。
5-4. ルールの決定
人事評価規程の作成手順4は、ルールの決定です。手順2・3で決めた評価基準・項目や人事評価規程の項目に関して、それぞれのルールを決定しましょう。
例えば、営業職は業績項目の売上目標達成度、事務職は能力項目の正確性など、職種別に適した評価項目の種類を選び評価するなどです。
さらに、人事評価規程の各項目についてもルールを決めましょう。例えば、評価時期は毎年1回4月に実施し、評価対象期間は4月から3月の12ヵ月間とするなどです。
6. 人事評価規程の作成の注意点
人事評価規程の作成の注意点は、以下の3つです。
- 明確な評価基準
- 公平で客観的な評価
- 就業規則の不利益変更
各注意点の詳細を解説します。
6-1. 明確な評価基準
人事評価規程作成の注意点の一つは、明確な評価基準です。評価基準が明確でないと、評価者の主観により評価される可能性があります。また、従業員が不満を感じて労働意欲が低下したり離職の原因になったりするでしょう。
作成前に従業員へアンケートを実施し、現状の人事評価に対する不満や不安点について調査し、結果を分析して評価基準を決める方法も一つです。
6-2. 公平で客観的な評価
公平で客観的な評価を目指すことも、人事評価規程の作成の注意点です。公平で客観的な評価にもとづく人事評価規程であれば、従業員のモチベーションアップによる生産性の向上が見込まれるでしょう。
労働契約上では人事評価における裁量権は企業にありますが、企業が優位的な立場を利用して不利な評価をしてはなりません。
6-3. 就業規則の不利益変更
人事評価規程の作成の注意点には、就業規則に関する定めの一つである不利益変更もあります。不利益変更とは、企業が一方的に現状よりも待遇悪化の可能性がある労働条件の導入により、就業規則を作成したり変更したりできないことです。
ただし、以下のような合理的な理由がある場合は適用されないケースもあります。
- 労働組合や大部分の従業員の合意がある場合
- 不利益の程度が少ない場合
- 変更の必要性がある場合
- 代償措置や経過措置などがある場合
人事評価規程の作成の全手順において、不利益変更に該当しないかどうか熟慮しましょう。就業規則作成の専門家である社会保険労務士に、人事評価規程の作成を依頼する方法も一つです。
7. 人事評価規程について理解を深めよう
人事評価規程とは、人事評価に関する定めです。人事評価の定めは就業規則へ記載が必要な相対的必要記載事項に該当するため、就業規則へ記載して労働基準監督署へ届出をする義務が生じます。
また、人事評価規程の内容を変更した場合も届出が必要です。
ただし、常に10人以上の従業員が働く事業場をもつ企業以外は、就業規則の作成義務がありません。つまり、就業規則の作成義務がない企業においては、人事評価のルールを定めた場合でも人事評価規程の作成や届出は不要です。
人事評価規程について理解を深めつつ、自社の人事評価規程を作成する際には、ぜひ本記事の作成の手順・注意点なども参考にしてください。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
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