法人カードで仕訳できる勘定科目の種類やポイント
更新日: 2024.5.8
公開日: 2022.1.13
jinjer Blog 編集部
キャッシュレス決済が急速に拡大している今、法人や個人事業主でも「法人カード」を利用するケースが増えてきています。
そこで気になるのが、法人カードを使ったあと、どのように経費として処理すれば良いのか、という点です。
そこで今回は「法人カードを今年初めて導入したものの、仕訳をどうすればわからない」「確定申告が不安」といった方のために、法人カードを使用した際の会計処理の基本や、法人カードで仕訳できる勘定科目の種類、仕訳の際のポイントなどを詳しく解説します。
目次
1. 法人カードによる会計処理の基本
法人カードで仕訳できる勘定科目の種類について知る前に、まずは法人カードによる会計処理をおこなう場合の仕訳の基本について覚えておきましょう。
1-1. 法人カードの会計処理には複式簿記を用いる
まず、お金の出入りを記録することを「簿記」と言いますが、簿記の処理には2種類あります。ひとつは、ひとつの取引に対してひとつの科目(お金の名目)を帳簿に記録する「単式簿記」です。
単式簿記は「◯月△日 支出 電気代 30,000円」といったような単純な記載方法で、イメージとしては家計簿に記載するような形です。
一方、「複式簿記」は、その名のとおり、ひとつの取引に対して「借方」と「貸方」の2つの勘定科目に分けて記載をする方法です。
先ほどの単式簿記の例を複式簿記で記載すると、「◯月△日 借方:電気代 金額30,000円 貸方:現金 金額30,000円」といった形になります。
そして、法人カードの会計処理をおこなう場合は、この二種類の処理のうち「複式簿記」を用います。なお、複式簿記では、「発生主義」いう会計原則のもと、取引がどのように発生したのかを明確にしなければなりません。
1-2. 勘定科目とは取引の内容を端的に表したもの
次に、勘定科目についてです。勘定科目とは会社や個人事業主などが取引をした際に発生したお金の「何に使用したのか」「どのような内容の入金なのか」といった内容を端的に表した見出しのようなものです。
例えば、会社用のスマートフォンの利用料であれば「通信費」、商品が売れて入金があれば「売上」というように表します。
2. 法人カードで仕訳できる勘定科目の種類
では、ここからは法人カードで仕訳できる勘定科目の種類について説明していきます。
勘定科目には、非常に多くの種類があり、それは現金の場合も法人カードを使用した際も同じです。ただ、一点覚えておいていただきたいのは「法人カードを使えば全て経費として処理できるわけではない」ということです。
法人カードで仕訳できる勘定科目の一例としては、次のようなものが挙げられます。
- 消耗品費:事業用の文具や家具、電子機器など10万円未満もの
- 通信費:業務上必要なスマートフォンの利用料や、インターネット料金、固定電話代のほか、切手代など
- 荷造運賃:商品を発送する際の宅配便の送料や、梱包資材にかかった費用など
- 新聞図書費:業務上必要な本や雑誌の購入費用や、新聞の購読費用など
- 会議費:会議のために外部の会議室やレンタルルーム、お茶代、備品など
- 旅費交通費:業務の際に利用した鉄道やバス、飛行機、タクシーの運賃や有料道路の料金、車のガソリン代、駐車場代など
- 接待交際費:取引先と飲食をした際の代金や、手土産やお中元、お歳暮といった贈答品、慶弔見舞金など
- 光熱費:事業をおこなう際の、事務所などで使用する電気・ガス・水道などの使用料金
- 地代家賃:事業用の事務所や駐車場、倉庫などの賃料や共益費、管理費など(20万円未満の礼金や更新料については経費として処理が可能)
- 修繕費:事業に使用する物品や店舗などの修理、修繕の費用(事務所移転の現状回復費用も含まれる)
- 研修費:業務上必要な技術や知識などを習得するための研修費用
- 雑費:他のいずれかの科目にも含まれず、一時的かつ少額な費用
3. 法人カードで仕訳をする際のポイント
先にご紹介したとおり、法人カードで仕訳できる勘定科目には様々なものがありますが、これらを複式簿記により記載する場合には、購入時はまず「未払金」として処理をし、カードの引き落としがおこなわれた際には「普通預金」として処理をします。
例えば6月11日に消耗品を購入し、翌月の7月27日に引き落としがあった場合は、帳簿には次のように記載します。
- 6月11日 借方:消耗品費 5,500円 貸方:未払金 金額5,500円
- 7月27日 借方:未払金 5,500円 貸方:普通預金 金額5,500円
つまり、クレジットカードの場合は一度の取引だけで成立するわけではなく、購入時と引き落とし時の二度取引が発生するので、このような記載の方法となります。
ただし、法人用のクレジットカードを使用した場合は、「未払金」を使用せずに仕訳を簡略化しても良いこととされています。その際は、クレジットカードを使用した購入時ではなく、引き落としのあった日付で次のように処理します。
- 7月27日 借方:消耗品費 5,500円 貸方:普通預金 金額5,500円
しかし、確定申告は対象となる年の1月1日から12月31日までの取引について処理をおこないます。そのため、法人用のクレジットカードの使用と、引き落としが年をまたいでしまうようであれば、先にお伝えした「未払金」を使用した方法で処理をおこなう必要があります。
3-1. 法人カードの年会費は経費として処理できる
法人カードを利用するにあたり、法人カード自体の年会費についてどう処理すべきか気になる方もいらっしゃるかと思いますが、年会費についても経費として処理することが可能です。
というのも、法人カード自体もまた「事業をする上で必要なもの」のひとつとして捉えることができるためです。
なお、法人カードの年会費の勘定科目は「支払手数料」「会費・諸会費」「雑費」のいずれかで処理することが可能です。
3-2. 法人カードの仕訳(白色申告の場合)
ここからは個人事業主や代表取締役の方に向けての内容です。法人カードを使用する時は確定申告の書類によって法人カードの仕訳が少し異なります。白色申告の場合と青色申告の場合に分けて解説していきます。
白色申告では、取引が発生した日の仕訳となります。そのため取引がおこなわれた日の記録を帳簿に記入する必要があります。白色申告は、単式簿記でよいため個人のクレジットカードを使用しても、法人カードを使用しても手間に大きな差はありません。
3-3. 法人カードの仕訳(青色申告の場合)
青色申告で65万円の控除をおこなう場合は、複式簿記で記帳する必要があります。
もし個人用クレジットカードをもっていて、私用と仕事用で併用してクレジットカードを利用していた場合は、仕事の費用に対してカードを使用した日の勘定科目に「事業主借」と記載していくことになります。
そのため、カードで実際に支払いをおこなった日時ではなく、お金が引き落とされた日に「未払金」として支払ったことになります。
このように青色申告では、私用のクレジットカードを使用すると帳簿を作成する時に仕訳が少し面倒になります。
4. 法人カードのポイント使用時の会計処理について
法人カードにおけるポイントに関する会計処理は、ポイントを貯めたときではなく使ったときに処理されます。そのためポイントが貯まっても特段何も処理する必要はありません。
実際のポイント使用時の会計処理について、仕訳の例としては下記の2つの方法があります。ここでは2,000円分をクレジットカード、1,000円分をポイントで支払い、3,000円の消耗品を購入したものを例に解説していきます。
①ポイントを値引きとして考えた場合
借方 | 貸方 | ||
消耗品費 | 2,000 | 未払金 | 2,000 |
②ポイントを雑収入として考える
借方 | 貸方 | ||
消耗品費 | 3,000 | 未払金 | 2,000 |
– | – | 雑収入 | 1,000 |
5. 法人カードで経費を支払うメリットとデメリット
ここでは法人カードで経費を支払うメリットとデメリットを分けて解説していきます。
◇法人カードで経費を支払うメリット3つ
- 経費精算業務を効率化できる
- ヒューマンエラーの防止につながる
- キャッシュフローに余裕ができる
◇法人カードで経費を支払うデメリット2つ
- 年会費などの金銭的コストがかかる
- 分割払いやリボ払いなどに対応していないカードがある
以下、具体的にこれらのメリットとデメリットを紹介していきます。
メリット1. 経費精算の効率化
法人カードを利用して経費の支払をすると、事業用口座からまとめて経費精算が可能となり、そうすることで経費精算の負担が軽減され、経理業務を大きく効率化できます。口座を会計ソフトと連動することで、会計処理の効率化にもつながります。
関連記事:法人カードで経費精算を行うメリット・デメリットや手順とは
メリット2. ヒューマンエラーの防止
経費精算をする際に「計上漏れ」が起こるケースが多々あります。
経費申請を忘れていたり、領収書を無くして経費計上ができないなど、さまざまな要因がありますが、そのほとんどはヒューマンエラーによるものです。
法人カードで経費を支払うことで、利用した経費の金額が支払った後に自動でカードの支払い明細書に記載されるので、計上漏れを防ぐことができます。
メリット3. キャッシュフローに余裕ができる
法人カードを利用することで企業のキャッシュ・フローを安定させることができます。
法人カードを使って支払いをすると、実際に利用額が引き落とされるのは翌月以降となるので、取引から支払いまでに約1ヵ月ほどの猶予をもつことができます。
デメリット1. 年会費などの金銭的コストがかかる
法人カードでは年会費のコストがかかるカードがほとんどです。年会費が無料の法人カードでも、初年度のみ無料対応となっているなど、年会費を永年無料で利用できるカードはほとんどありません。
基本的に年会費は経費計上することができますが、自社の経済状況を鑑みて、少しでも年会費の負担が軽い法人カードを検討するのもよいでしょう。
デメリット2. 分割払いやリボ払いなどに対応していないカード
法人カードの支払いにおいて、リボ払いや分割払いはできないものが多いです。そのため支払う金額の大きいものを決済する際は注意が必要です。事前にカード会社に確認しておくことがポイントです。
6. 法人カードと併せて経費精算システムの導入もおすすめ!
法人カードで仕訳できる勘定科目は、現金の場合と同じように多くの種類があります。しかし、法人カードを使用したからといって全ての支払いが経費として処理できるわけではありません。
また、処理の方法については法人カードを使用したからといって難しくなるわけではありませんが、現金のように実際に支払いをした日のみで処理できるのではなく、法人カードを使用した日と実際の引き落とし日が異なるため、その点は注意が必要です。
これらの作業をひとつひとつおこない、確認していくことは時間と手間を要しますし、ミスも発生しやすいものです。そのため、法人カードを使用する場合には、併せて自動で仕訳などの処理をおこなう経費精算システムの導入もおすすめです。
関連記事:法人カードと会計ソフトを連携するメリットや使い方について
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