時間外労働の上限規制はいつから?上限時間と罰則・労働時間管理のポイントを解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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時間外労働の上限規制はいつから?上限時間と罰則・労働時間管理のポイントを解説

標識

2019年4月の労働基準法の改正により「時間外労働の上限規制」が規定されました。以前は限度基準告示があったものの、強制力・罰則がなく、特別条項付き36協定を締結すれば実質的に上限なく残業させることができました。

しかし、今回の法改正により、明確に時間外労働の上限と罰則を設けることで、労働者の健康や権利を確保する内容となりました。

この記事では、「時間外労働の上限規制」について注意点とともに解説します。適切な労働環境を整えるためにも、正しい残業との向き合い方を押さえておきましょう。

▼時間外労働についてまずはおさえたい方はこちらの記事をご覧ください。

関連記事:時間外労働の定義とは?知っておきたい4つのルール

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1. 時間外労働の上限規制とは?

本の山

時間外労働の上限規制とは、労働基準法の改正によって明確に定められた残業時間の上限のことです。上限規制を知らないまま従業員を働かせてしまうと、労働基準法違反となり、6ヵ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。そのため、上限規制について知っておくことは企業にとって重要です。

1-1. 2019年4月・2020年4月の法改正

時間外労働の上限規制は「働き方改革関連法」の一環として2019年に導入されました。大企業では2019年4月1日から、中小企業では猶予措置を経て2020年4月1日から適用が開始されています。

法改正により残業時間の上限には罰則付きの規制が設けられ、従業員を長時間労働させることへの法的な歯止めがかかったのです。

1-2. 2024年4月から建設業・運送業・医師の上限規制も開始

一部の業種では、働き方改革関連法による上限規制の適用が5年間猶予されていました。建設業、自動車運送業務、医師など、長時間労働の背景に業務の特性や取引慣行の課題があった業種です。

しかし、これらの業種も2024年4月1日から時間外労働の上限規制が適用開始となり、残業時間の制限がかかるようになりました。

適用開始にあたっては業種ごとに特例措置や上限時間が設けられているため、詳しく解説します。

1-2-1. 建設業

建設業では2024年4月以降、原則として他の業種と同様の残業時間上限規制が適用されます。ただし、「災害時の復旧・復興事業」に従事する場合は特例があり、時間外・休日労働の合計に関する「月100時間未満、2~6ヵ月平均80時間以内」といった一部の規制が適用されません。

1-2-2. 運送業(ドライバー)

トラックやバスなどの自動車運転業務についても、2024年4月から上限規制が開始されました。運送業では従来からドライバーの長時間労働が問題視されており、いわゆる「2024年問題」として人手不足や物流への影響も懸念されています。

上限規制の適用により、自動車運転者(ドライバー)は特別条項付き36協定を結んだ場合でも、年間の時間外労働は960時間までという新たな制限が設けられました。これは一般の労働者よりも年間上限が大きく設定されています。また、「月45時間超の残業が年6回まで」、「月100時間未満、2~6ヵ月平均80時間以内」などの月単位・複数月平均の規制はドライバーには適用されません。

ただし、運送業界には「改善基準告示」と呼ばれる別の労働時間規制(拘束時間や休息期間の基準)もあり、ドライバーは上限規制と合わせてそれらの基準も遵守する必要があります。

1-2-3. 医師

医師(勤務医)についても、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されました。医師の働き方改革においては地域医療への影響等を考慮し、段階的な措置が講じられています。

医師の場合、特別条項付き36協定を結ぶことで年間の時間外・休日労働の上限が最大1,860時間まで認められる特例水準が設けられました。一般の労働者に比べて大幅に多い上限ですが、これは地域の医療提供体制を確保するためや、研修を集中的におこなうためなど、やむを得ない場合の特例です。

医師については「月45時間超の残業が年6回まで」「月100時間未満、2~6ヵ月平均80時間以内」といった一般的な特別条項の上限規制は適用されません。その代わり、救急医療や医師研修など長時間労働をおこなう医師に対しては健康確保措置が義務付けられており、勤務間インターバルの確保や面接指導など追加の対策を講じる必要があります。

参考:医師の働き方改革の制度について|厚生労働省

2. 時間外労働の原則と上限時間

1つのブロックのみ赤く違反を意味している

時間外労働の上限規制を正しく理解するには、まず労働時間に関する基本ルールを押さえておくことが重要です。労働基準法では法定労働時間を「1日8時間・週40時間以内」と定めており、それを超えて労働させることが時間外労働(残業)に当たります。

ここでは、時間外労働の定義や上限時間、36協定との関係、罰則について順番に解説していきます。

2-1. 法定労働時間と時間外労働

法定労働時間とは、労働基準法で定められた労働時間の上限のことで、原則として1日8時間・週40時間と規定されています。この範囲内で労働している限り、それは法定内の労働時間です。一方、時間外労働とは法定労働時間を超えて労働させることであり、1日8時間・週40時間の枠を超えた労働時間がこれに当たります。

時間外労働には割増賃金の支払い義務があります。法定労働時間を超える残業には通常25%以上の割増率で残業代を支払わなければなりません。

さらに月60時間を超える時間外労働に対しては、割増率が50%以上に引き上げられることが定められています。この割増率引き上げも働き方改革関連法による改正点の一つで、長時間残業の抑制を目的としたものです。

関連記事:働き方改革で残業時間の上限規制や割増率はどう変わった?わかりやすく解説!

関連記事:残業による割増率の考え方と残業代の計算方法をわかりやすく解説

2-2. 時間外労働をさせる際は36協定が必要

36協定(サブロク協定)とは、「時間外・休日労働に関する協定届」の通称です。これは、労使間で協定を締結し労働基準監督署に届け出ることで、時間外労働や休日労働を可能にするものです。

労働基準法では前述のとおり原則週40時間・1日8時間を超えて働かせることが禁止されていますが、36協定を締結・届出することで法定労働時間を超える労働をおこなわせることが認められます。そのため、従業員に時間外労働をさせる場合、たとえ上限規制の範囲内であっても36協定の締結が必須です。

36協定には対象となる業務の種類や残業の上限時間(1日、1ヵ月、1年あたり)などを具体的に定めておく必要があります。協定で定めた範囲内であれば残業や休日労働を命じることができますが、範囲を超えて残業させた場合は違法となります。

関連記事:36協定における残業時間の上限を基本からわかりやすく解説!

2-3. 原則の上限は月45時間・年360時間

時間外労働の上限規制の原則は「月45時間・年360時間」です。これは、特別な事情がない通常の場合に課すことのできる残業時間の限度を示しています。1ヵ月あたりの時間外労働は45時間まで、1年間(12ヵ月累計)では360時間までに収めなければなりません。

2-4. 特別条項の上限は年720時間・複数平均80時間・月100時間

業務の繁忙がどうしても避けられない場合には、36協定に「特別条項」を付記して時間外労働の上限を引き上げることも可能です。ただし、この場合でもいくつかの上限ラインが法律で設定されています。 

特別条項付き36協定を適用する場合でも、時間外労働は年間で720時間以内に収めなければなりません。つまり、特別な事情があっても1年間の残業の合計が720時間を超えることは絶対にできないということです。

また、複数月(2~6ヵ月)平均で80時間以内という規制もあります。これは直近2ヵ月から6ヵ月間の平均残業時間を計算して、常に80時間以内におさめなければならないというものです(この平均には休日労働時間も含めて算定します)。

さらに、単月では100時間未満という上限も定められています。1ヵ月の時間外労働+休日労働の合計が100時間を超えてはならないという厳しい制限です。

加えて、月45時間の原則上限を超えて残業できるのは年6回までというルールもあります。特別条項によって月45時間超の残業が認められるのは年間6ヵ月が限度であり、7ヵ月以上45時間超の残業をさせることは違法となります。

2-5. 時間外労働の上限規制に関する罰則

残業時間の上限規制に違反した場合、罰則が科される可能性があります。具体的には、労働基準法違反として「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられるおそれがあります。悪質な長時間労働のケースでは、書類送検の措置がとられることもあります。

なお、上限規制の罰則は企業だけでなく、実際に残業を命じた責任者個人にも及ぶ可能性があります。現場の管理職なども含めて違反のリスクがあるため、組織全体で遵守体制を整えることが重要です。

3. 時間外労働の上限規制で求められる対応

ビジネスマン

上限規制は使用者が必ず守らなければいけないもので、違反してしまうと最悪の場合、罰則が課されてしまうおそれがあります。それでは、上限規制を遵守するためには、どのようなことに気をつければ良いのでしょうか。

この章では、上限規制を超過しないためのポイントを紹介します。

3-1. 現状を把握する

残業を上限規制内に収めるためには、労働時間を正しく管理することが肝心です。

どこでどれだけ残業が発生しているのか正しく把握した上で、法令に照らして問題がないか確認します。協定に定めた範囲内で残業させているか、残業代の支払い漏れはないか、といった基本事項を点検しましょう。

特に2023年4月以降は、中小企業にも月60時間超の残業に50%の割増賃金率が適用されています。残業代計算方法が最新の法令に対応できているかも確認が必要です。

現状を把握して労働時間を管理するためには、勤怠管理システムを導入することがおすすめです。労働時間を正しく管理できて集計も簡単におこなえるため、労働時間の上限規制対策には最適でしょう。

3-2. 就業規則や社内ルールの見直し

残業を上限内に収めるためには、就業規則や社内ルールの改善も不可欠です。まず就業規則を確認し、上限規制に対応できるよう整備しましょう。

例えば、「残業は事前申請・許可制とする」「原則として所定終業時刻以降○時間以上の残業を禁止する」といったルールを明文化することも効果的です。就業規則に残業上限や申請ルールを定めておけば、従業員にも企業の方針が伝わりやすくなります。

3-3.残業抑制・業務改善の取り組みをおこなう

残業の発生には、「何らかの外部要因で従業員が仕事に集中できない」「業務が偏りすぎている」「業務フローが非効率」など、さまざまな要因が挙げられます。各従業員や部門ごとの残業時間を分析したり、従業員アンケートやインタビューで要因を特定したりして、改善策を検討しましょう。

可能であれば、業務内容ごとに所要時間を計測し、「どの業務に時間がかかっているか」「無駄な手順はないか」を洗い出します。

人員配置の見直しや業務の分担改善も残業削減に有効な場合があります。特定の従業員に業務が集中して残業が偏っているなら、チーム全体でフォローし合う体制を築くべきでしょう。必要に応じて増員や外部委託なども視野に入れ、業務量と人員のバランスを整えることをおすすめします。

3-4.従業員への周知

残業に関するルールや方針を整備したら、従業員への周知徹底を図ることも重要です。せっかく社内ルールを改定しても、現場の従業員がその内容を理解していなければ効果はありません。就業規則を変更した場合は、法令順守のためにも、必ず全従業員に周知・説明をおこないましょう。

 

4. 時間外労働の上限規制から除外する従業員は?

建設業者が建物を建てている

原則として、時間外労働の上限規制は全ての労働者に適用されます。ただし、労働基準法上、時間外労働の上限規制の適用除外が認められている特定の従業員区分があります。

4-1. 新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務

厚生労働省は、上限規制の適用除外に当たる「新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務」について、次のように定義しています。

専門的、科学的な知識、技術を有する者が従事する新技術、新商品等の研究開発の業務をいい、既存の商品やサービスにとどまるものや、 商品を専ら製造する業務などはここに含まれません。

引用:時間外労働の上限規制が適用除外とされている「新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務」(労基法36⑪)の具体的な範囲を教えてください。|確かめよう労働条件

新たな技術や商品などの開発についての業務は時間外労働の上限規制には当てはまりません。しかし、週40時間かつ月100時間勤務した場合は、医師の面接指導が必要です。使用者は面接指導をおこなった医師の意見を踏まえ、就業場所の変更や職務内容の変更、有給休暇の付与などの措置を講じる必要があります。

4-2.高度プロフェッショナル制で働く従業員

高度プロフェッショナル制度とは、1年間当たりの見込み賃金額が少なくとも1,075万円以上、かつ、高度な専門知識・技能を持つ一部の職種の労働者について、本人の同意の下で労働時間に関する規制の適用を除外できる制度です。

高度プロフェッショナル制度の適用を受けた労働者は、労働基準法の労働時間・休憩・休日の規定が適用除外となり、時間外・休日・深夜労働に対する割増賃金の支払い義務もなくなります。

ただし高度プロフェッショナル制度は、健康管理措置として年間104日以上の休日確保など、一般の従業員とは異なる勤怠に関する義務が設けられています。

参考:高度プロフェッショナル制度について|厚生労働省

4-3.管理監督者

労働基準法第41条では、いわゆる「管理監督者」(一般的に言う管理職のうち、労務管理上の裁量が特に大きい者)は労働時間・休憩・休日に関する規定の適用除外と定められています。要するに、管理監督者とみなされる従業員には残業時間の上限規制が適用されないということです。

例えば、管理監督者が1ヵ月に100時間残業しても、それ自体は労働基準法違反とはなりません。

ただし、管理監督者だからといって好き放題に働かせて良いわけではない点に注意が必要です。深夜労働に対する割増賃金は、管理監督者に対しても支払義務があり、長時間労働した場合の医師による面接指導などの健康管理措置も適用対象です。

5.時間外労働の上限規制に関するよくある質問

さまざまな業種

最後に、時間外労働の上限規制についてよく寄せられる質問とその回答をQ&A形式でまとめます。制度を正しく理解するために押さえておきたいポイントを確認しましょう。

5-1.上限時間数に休日労働は含まれますか?

原則の上限(月45時間・年360時間)には法定休日の労働時間は含みません。一方で、特別条項の延長時に適用される「月100時間未満」「2~6ヵ月平均80時間以内」の規制には休日労働時間を含めて計算します。

図

引用:建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制 (旧時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務)|厚生労働省

5-2.時間外労働の上限規制は中小企業にも適用されますか?

中小企業にも適用されます。時間外労働の上限規制は当初、大企業に対して2019年4月から適用されましたが、中小企業には1年の猶予期間が与えられました。その猶予が終了した2020年4月以降は、中小企業も上限規制を守らなければなりません。

5-3.時間外労働の上限規制に経過措置はありますか?

上述の建設業、運送業、医師の適用猶予など、いくつかの経過措置(猶予措置)がありましたが、現在では主要な経過措置期間はすべて終了しています。現在は、全業種で時間外労働の上限規制が完全適用されている状況です。

6. 時間外労働の上限規制を正しく理解しよう

みんなで働く様子

時間外労働とは、法律で定められている1日8時間、週に40時間の法定労働時間を超過して労働することです。残業をすること自体は違法ではありませんが、36協定を締結したり上限規制を遵守したりしなくてはいけないため、使用者は十分に注意しながら従業員を労働させるようにしましょう。

労働時間を適切に管理して残業を減らす工夫をすることも必要です。 具体的には、自社の残業実態を把握し、就業規則や業務プロセスを見直し、従業員に周知徹底することです。場合によっては勤怠管理システムの導入などITの力を借りて労働時間管理を高度化することも有効です。

最新の法令知識をアップデートしつつ、時間外労働の上限規制を正しく理解し、法令を遵守した上でより良い労働環境を整えていきましょう。

 

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