労働基準法に退職金の規定はある?支払いの義務や金額の決め方を解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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労働基準法に退職金の規定はある?支払いの義務や金額の決め方を解説

退職金を確認する様子

労働基準法には退職金に関する取り決めがありません。そのため、退職金制度そのものがない企業も多いですが、退職金の支払いがないことは法的には問題ありません。

しかし、場合によっては退職金の支払い義務が生じるケースもあるため、退職金制度の社内ルールを十分に把握しておく必要があります。

本記事では労働基準法による退職金の規定や、支給額、金額の決め方などに関して詳しく解説していきます。

▼そもそも労働基準法とは?という方はこちらの記事をまずはご覧ください。
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1. 労働基準法に退職金の規定はある?

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労働基準法では労働者を守るためにさまざまな法律が定められています。労働時間や賃金、退職についてなどのルールもありますが、退職金については明確な記載がありません。退職金がある企業とない企業の違いや、退職金制度を定める理由などを知って、自社の退職金制度の取り扱いを見直してみましょう。

1-1. 労働基準法には退職金の取り決めがない

労働基準法には退職金の取り決めがなく、退職金制度の設置や支払義務も企業にはありません。

退職金を設定するかも企業が自由に定めて良いことになっており、最低賃金法によって定められる賃金とは異なり、額も企業が支払える範囲の額を設定できます。

しかし、退職金の有無は従業員の将来を考えると非常に重要なポイントであり、新卒や転職希望者が企業選ぶ際の判断基準のひとつになります。優秀な人材を確保するために、退職金制度をしっかりと設定する企業も多いです。

1-2. 退職金がある企業とそうでない企業の違い

退職金制度がある企業とない企業の違いは、企業ごとに定められる「就業規則」がポイントになります。

労働基準法89条には就業規則の「作成及び届出の有無」があり、「退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算および支払の方法ならびに退職手当の支払い時期に関する事項」を作成する必要があると明記されています。

つまり退職金制度がある場合は、その内容を就業規則に記載しなければならないというのが大きな違いです。

また、退職金制度として企業年金制度や退職金共済制度を利用する場合は、会社負担の掛け金が損金として扱うことができ、節税効果がある点も退職金制度有無による違いです。

関連記事:労働基準法第89条で定められた就業規則の作成と届出の義務

1-3. 企業が退職金を設定している理由

企業が退職金を設定する理由には、以下が挙げられます。

  • 労働者のモチベーション向上
  • 良質な人材の確保
  • 労働者の長期雇用

企業としては長く働ける優秀な人材を求めているため、退職金を設定して長期間努力し続けてくれる人材が欲しいと願って設定する企業が多いようです。

令和5年度に厚生労働省がおこなった「退職給付制度(一時金・年金)」の調査によると、約80.5%の企業が退職金を設定していました。

また退職金制度の有無は企業の規模によって異なります。次のとおり、企業規模が大きいほど退職金制度を設定している率が増えるというデータも出ています。

  • 社員1000人以上:90.1%
  • 300~999人:88.8%
  • 100~299人:84.7%
  • 30~99人:70.1%

また産業別に退職金制度の有無みると、産業間でも以下のような差があるのが特徴です。

  • 複合サービス業:97.9%
  • 電気・ガス・水道・熱供給業:96.4%
  • 建設業:82.9%

退職金の有無を悩んでいる方は、直近の退職金支給率や、産業別、企業規模別のデータを確認してみてください。

参照:令和5年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省

1-4. 退職金を出す勤続年数の最低のラインは?

退職金制度を自社で設定する場合、就業規則に退職金の規定を明記する必要があります。

勤続年数の最低ラインについても事前に決めなくてはいけません。

厚生労働省が発表している平成30年就労条件総合調査の資料によると、退職金の受給に必要な勤続年数を3年以上としている企業が最も多く、会社都合の場合で42.2%、自己都合の場合で56.2%となっています。

勤続年数の最低ラインは会社側で自由に決めることができますが、一般的には、勤続年数3年以上を退職金の受給資格として設けている企業が多いようです。

参照:退職手当の受給に必要な所要年数 |厚生労働省

1-5. 退職金の請求権の時効は5年間

退職金が適正に支払われなかった、または適正に支払われなかったと認識している従業員からは、退職後に退職金の請求をされる可能性があります。

しかし、退職金の請求権には時効が設定されています。

第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
引用:e-Gov「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」

労働基準法第115条において、賃金(退職金)の請求権の時効は「5年間」と規定されています。

もし退職した元従業員から退職金の請求を受けた場合は、退職日を確認して支払いの必要性を精査しましょう。

2. 退職金の支払い義務が生じるケース

支給額を計算している様子

労働基準法には退職金に関する条文はないため、基本的には退職金の支払い義務は生じません。

ただし、下記の2つのケースは、退職金の支払い義務が生じるため注意しましょう。

2-1. 就業規則に明記されているケース

「1-2.退職金がある企業とそうでない企業の違い」でも解説しましたが、就業規則に明記されている場合は、支払い義務が生じます。雇用契約書や労働契約書に退職金に関する取り決めがきちんと書かれている場合も同様になります。

これは就業規則・雇用契約書・労働契約書などに退職金制度が記載されている場合、退職金は賃金として扱われるからです。労働基準法で「賃金全額払いの原則」が定められており、これによって企業は労働者に対し、賃金の全額を支払わなければならないとされていいます。つまり、賃金とみなされる退職金も支払わなければならないわけです。

退職金を就業規則等に規定されている場合は、そちらに退職金の支給条件や計算方法などが明記されています。その内容に従って適正に支払いをおこないましょう。

参考:就業規則に定められた退職金は賃金|厚生労働省

2-2. 慣例的に退職金が支給されてきたケース

上記のケース以外で、就業規則に明記されていなくとも、毎年退職者のほぼ全員に退職金が支払われているという慣例があった場合、「今年は業績が良くないから支給しない」としても、退職金の支払い義務が生じる可能性があります。

また、求人票やリクルート用のパンフレットなどに退職金の支給について明記していた場合も、従業員側から退職金の請求を受ける可能性があるため、注意しなくてはいけません。

3. 退職金制度の種類

色鉛筆

従業員に退職金を支給するための手段である退職金制度は、大きく分けて4種類あります。それぞれで支給方法やメリットが異なるため、退職金の導入に携わる担当の方は、特徴を把握した上で自社に合う方法を検討するようにしましょう。

  1. 退職一時金制度:従業員の退職時に一括で退職金を支給する制度
  2. 確定給付企業年金制度:従業員の退職後、一定期間にわたって退職金(年金)を支給する制度
  3. 中小企業退職金共済:従業員が退職後、積みたてた退職金が共済機構から支払われる制度
  4. 企業型確定拠出年金制度(企業型DC):企業が積み立てた掛金を従業員が年金資金として運用する制度

退職金の支給方法の違いは、税金にも大きく影響します。従業員から質問があった場合や、退職金制度を始める場合はそれぞれの違いを十分に理解しておきましょう。

退職金制度は、従業員が安心して働ける環境づくりにおいて重宝されます。詳しく知りたい方は関連記事よりご確認ください。

関連記事:退職金制度の基本や計算方法・金額相場を詳しく紹介

4. 労働基準法による退職金を計算する際のポイント

何かを考えている様子

労働基準法には退職金に関する取り決めがありませんでした。退職金の金額も企業が自由に決めることができますが、退職金制度がある場合は明記しなければならない項目があります。定めるべき内容や退職金の平均額を知っておきましょう。

4-1. 就業規則に退職金の計算方法を定める

就業規則に退職金を定める場合は、労働基準法89条により次の3点を明記しなければいけません。

  • 退職金を支払う社員の範囲
  • 退職金の額を決める決定・計算方法
  • 退職金の支払い時期

なかでも社員の範囲や、支払額が争点となることが多いため、詳細を明記するように心がけましょう。

また、明記するだけでなく従業員への説明も十分におこない、労使間で退職金に関する認識を一致させておくことが大切です。

4-2. 退職金の平均額とは?

退職金の額は企業の規模や学歴によって異なります。ここでは大企業の平均値を令和3年に厚生労働省がおこなった「賃金事情総合調査」の結果から、中小企業を令和4年におこなわれた東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情」の結果からお伝えします。

大企業の場合

  • 大学卒:2,230万4,000円(22歳で入社)
  • 高校卒:2,017万6,000円(18歳で入社)

※どちらも定年退職まで働いた場合

中小企業の場合

  • 大学卒:1,149万5,000円
  • 高校卒:974万円

※どちらも卒業後すぐに入社し、定年退職した場合

このほかにも産業によって平均額は異なりますが、退職金を定めている企業は定年まで勤めると1,000万円前後給付されることが多いようです。

当然勤続年数が多いほど退職金も多いため、すぐに退社したり、自己都合で退社したなどの場合は、給付額が少なくなっているようです。

参考:令和3年賃金事情等総合調査(確報)|厚生労働省

参考:中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)|東京都産業労働局

5. 労働基準法における退職金の既定を理解して正しく対応しよう

ルールのイラスト

労働基準法には退職金に関する取り決めがありません。そのため支給は企業側が自由に決めて良いことになっており、退職金を支給しない企業も少なくありません。

ただし就業規則に退職金の支給を明記した場合は、労働基準法が適用されて支払義務が発生します。就業規則に記載する場合は、対象の社員、退職金の計算方法、支払時期の3点がポイントです。

退職金は少額でも社員のモチベーション向上や長期雇用につながる可能性があるため、余裕がある企業は検討してみてはどうでしょうか。

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jinjer Blog 編集部

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