年末調整で源泉徴収票を提出しない従業員の対応方法とは?書類が必要な理由を解説
更新日: 2025.12.1 公開日: 2021.2.1 jinjer Blog 編集部

転職してきた従業員の年末調整をおこなう際に、その年に働いていた前職の源泉徴収票が必要です。しかし、源泉徴収票を提出しない従業員への対応に困っている年末調整担当の方もいるのではないでしょうか。
今回は、前職の源泉徴収票を提出しない従業員への対応方法や提出期限、提出できない場合の対応を解説します。源泉徴収票が揃わず手続きが滞る事態を避けられるよう、対応方法を把握しておきましょう。
年末調整の概要は関連記事をご覧ください。
目次
令和7年度の税制改正によって、令和7年12月の年末調整から変更が生じます。
- 「令和7年分の年末調整で提出する書類は?」
- 「アルバイトやパート、退職者に年末調整は必要?」
- 「年収の壁の引き上げで年末調整はどう変わった?」
このような疑問をお持ちの方に向けて、令和7年分の年末調整に必要な書類から対象者、計算の流れまで、年末調整に関する基本的な業務を図解でわかりやすくまとめた資料を無料で配布しております。
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1. 前職の源泉徴収票を提出しない従業員の対応方法


転職者が前職の源泉徴収票を提出しない場合、年末調整の手続きに影響があります。源泉徴収票が提出されない場合の年末調整の取り扱いを確認しましょう。
1-1. 源泉徴収票がないと年末調整ができない
前職の源泉徴収票がないと、企業は年末調整の手続きができません。
年末調整では自社で支給した給与に限らず、その年の従業員の給与所得や源泉徴収税額を合計して所得税額を算出する必要があります。自社以外で同年内に給与を支給されている場合、源泉徴収票で支給・控除の状況を把握する必要があるため、源泉徴収票が提出されないと年末調整をおこなえません。
1-2. 従業員自身で確定申告をしてもらう必要がある
源泉徴収票が未提出で年末調整をおこなえない場合、従業員は自身で確定申告をしなければなりません。
確定申告とは、年間の所得や所得税を自身で計算し、税務署へ申告・納付する手続きです。前職での給与や源泉徴収税額も計算に含めるため、確定申告をおこなう場合でも、前職の源泉徴収票は必要です。
ただし、企業には従業員の年末調整をおこなう義務があります。従業員自身が確定申告をする意向でも、対象となる要件に該当するのであれば年末調整をおこなうのが原則です。源泉徴収票を提出しない転職者には、源泉徴収書類が必要な理由を十分に説明し、提出を促しましょう。
1-3. 年末調整で前職の源泉徴収票が必要な理由
前職の源泉徴収票が必要な理由は、その年の全ての所得や源泉徴収税額を確認するためです。
年末調整はその年の最後の給与や賞与の支給に合わせておこなうため、年の途中で退職した従業員は、退職した企業で年末調整を受けられません。
そのため、退職した従業員が同年内に転職した場合、転職先で年末調整をおこないます。年末調整では、年間の全ての所得額や源泉徴収額に基づいて所得税額を算出するため、転職先で年末調整をおこなうには、前職の源泉徴収票で年間の収入や税額を正しく把握する必要があるのです。
一方で、退職後に同年内で再就職をしなかった場合や、年末に転職して年内に転職先から給与や賞与の支払いを受けていない場合は、その年の年末調整の対象となりません。年末調整の対象とならなければ転職先に前職の源泉徴収票を提出する必要はありません。代わりに、原則として、従業員自身で確定申告をおこないます。
年末調整全般の流れを知りたい方は関連記事をご覧ください。
関連記事:年末調整とは?【令和7年最新】確定申告との違いや必要書類、計算の流れをわかりやすく解説
2. 前職の源泉徴収票の提出が必要な従業員


前職の源泉徴収票が必要になる従業員は、その年に前職から給与所得の支払いを受けている方です。
2025年度の年末調整の場合、例えば転職者が2024年の12月に前職を退職したとしても、2025年の1月以降に前職から給与や賞与が支払われているのであれば、前職の源泉徴収票(2025年分)を提出してもらう必要があります。
退職が前年だからといって、源泉徴収票が不要とは限らない点に注意しましょう。
3. 前職の源泉徴収票の提出期限はいつにするべき?


前職の源泉徴収票は入社時にほかの必要書類と一緒に提出するよう、内定承諾後などに伝えておきましょう。遅くとも年末調整の手続き開始前までに、受け取る必要があります。
3-1. 入社時
前職の源泉徴収票は、入社時の必要書類として提出を求めると、依頼や受け取り忘れを防ぎやすくなります。
源泉徴収票は通常、12月の給与や賞与の額が確定し、年末調整も終了したタイミングで交付されます。しかし、中途退職者には、所得税法第226条で退職日から1ヵ月以内に源泉徴収票を交付しなければならないと定められています。
そのため転職者の場合、入社前後には前職の源泉徴収票が発行されている可能性が高いです。入社日までに間に合わない場合でも、源泉徴収票を受け取ったら早めに提出するよう伝えましょう。
そのほかの入社時に必要な書類や手続きは関連記事をご覧ください。
関連記事:入社手続きはいつまで?雇用保険や社会保険の期限と遅れた場合のリスクは
3-2. 年末調整開始前
入社のタイミングで前職の源泉徴収票が提出されなかった場合、遅くとも年末調整の手続きが始まる前までには受け取る必要があります。前職の源泉徴収票がないと、年間の所得額や源泉徴収税額が確認できず、年末調整の処理を進められないためです。
さらに、その年の年末調整の手続きが始まる時期になると、全従業員からさまざまな資料を回収する必要があり、転職者の対応にあまり時間を割けなくなります。
従業員が前職から源泉徴収票を受け取っていない場合、前職に発行を依頼してもらうことになり、自社への提出まで時間がかかることもあるでしょう。年末調整の手続きが遅れないよう、手続き開始前に源泉徴収票を受け取っておくとスムーズです。
関連記事:年末調整はいつまで?提出書類と社内期限・社員へ周知するコツを解説
4. 年末調整時に前職の源泉徴収票が準備できない場合の対応方法


前職の源泉徴収票は、年末調整の処理のために必ず提出してもらう必要があります。しかし、前職が源泉徴収票を発行してくれない、従業員自身が紛失したなど、源泉徴収票を準備できない場合もあるでしょう。
ここでは、従業員が前職の源泉徴収票を準備できない場合の対応方法を解説します。
4-1. 源泉徴収票不交付の届出書を提出してもらう
「源泉徴収票不交付の届出書」とは、源泉徴収票を交付されていない従業員が税務署へ提出する書類です。
退職者の源泉徴収票は退職から1ヵ月以内に発行する必要がありますが、前職が発行義務を果たさず、源泉徴収票が送られてこない場合もあります。
従業員自身が前職に依頼しても源泉徴収票が交付されない場合、所轄の税務署(住民票がある市町村)に相談し、源泉徴収票不交付の届出書を提出するよう促しましょう。
源泉徴収票不交付の届出書が提出されると、税務署が前職へ源泉徴収票を発行するよう指導するため、源泉徴収票が発行される可能性が高くなります。なお、源泉徴収票不交付の届出書は前職が倒産した場合など、前職と連絡がとれない場合も税務署に提出が必要です。
4-2. 前職の源泉徴収票を紛失した場合は再発行を依頼してもらう
前職から源泉徴収票を受け取ったものの、従業員が紛失した場合、前職へ再発行の依頼をしてもらいましょう。
源泉徴収票の再発行を依頼された企業には応じる義務があります。また、企業は作成した源泉徴収票を7年間保管する必要があるため(国税通則法)、基本的には再発行の対応が可能です。
4-3. どうしても前職の源泉徴収票を入手できない場合
前職が倒産していたり、税務署の指導後も源泉徴収票を発行してくれなかったり、どうしても前職の源泉徴収票が入手できない場合は、該当する従業員の年末調整をおこなえません。
このように年末調整できない場合は、従業員が自分で確定申告をおこなう必要があります。
年末調整ができず、従業員が確定申告もしなかった場合は、すでに納めた源泉所得税が年間の所得税より多くても、還付や控除を受けられません。逆に源泉徴収税額が年間の所得税より少ない場合は、延滞税や追徴課税を従業員に課される可能性があります。
源泉徴収票を提出できない原因が前職にある場合でも、取り扱いは変わりません。従業員から相談があった場合は、年末調整はおこなえないため確定申告するよう案内する、前職分の所得の取り扱いは税務署への相談を促すなど、状況に応じた適切な対応を案内しましょう。
5. 前職の源泉徴収票は早めに回収し年末調整をスムーズに進めよう


年末調整は年間の所得税額を正しく算出し、源泉徴収税額との精算をおこなうために必要な業務です。
転職者の場合、年間の所得額や源泉徴収税額を算出するには前職の源泉徴収票が欠かせません。源泉徴収票がない場合、企業は年末調整ができず、従業員が自分で確定申告をおこなう必要があります。
源泉徴収票を提出しない従業員には必要な理由を十分に説明し、年末調整に間に合うよう提出してもらいましょう。
関連記事:年末調整で退職者がやるべき手続きを分かりやすく解説



令和7年度の税制改正によって、令和7年12月の年末調整から変更が生じます。
- 「令和7年分の年末調整で提出する書類は?」
- 「アルバイトやパート、退職者に年末調整は必要?」
- 「年収の壁の引き上げで年末調整はどう変わった?」
このような疑問をお持ちの方に向けて、令和7年分の年末調整に必要な書類から対象者、計算の流れまで、年末調整に関する基本的な業務を図解でわかりやすくまとめた資料を無料で配布しております。
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