裁量労働制の残業時間の上限は?知っておくべき注意点を解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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裁量労働制の残業時間の上限は?知っておくべき注意点を解説

裁量労働制

さまざまな分野・業種で働き方が変化しつつありますが、今回のテーマである「裁量労働制」も多様な働き方の一つです。

裁量労働制は、企業が業務の時間配分などを個人の裁量に任せているため、定時が設けられている一般的な勤務スタイルとは異なります。そのため、残業時間の扱いや勤怠管理の方法などに戸惑う担当者も少なくありません。

今回は、こうした疑問点を解決するべく、裁量労働制における残業時間の扱いを中心に解説していきます。

関連記事:残業時間の定義とは?正しい知識で思わぬトラブルを回避!

「裁量労働制=残業代ゼロ」は間違い? 休日出勤の割増賃金、正しく計算できていますか?

「みなし労働時間」で運用する裁量労働制ですが、割増賃金の支払いが一切不要になるわけではありません。

特に、労働基準法で定められた法定休日の労働に対しては、企業は35%以上の割増賃金を支払う義務があります 。このルールを見落としてしまうと、意図せず未払い賃金のリスクを抱えることになりかねません。まずは、自社の勤怠管理が法的に問題ないか、基本的なルールから見直しませんか?

◆休日出勤の割増賃金で押さえておくべきポイント

  • 裁量労働制でも支払い義務のある「法定休日労働」の定義
  • 法定休日と所定休日で異なる割増賃金率の考え方
  • 振替休日や代休を取得した場合の賃金計算の注意点

裁量労働制のコンプライアンス体制を強化するために参考になりますので、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。

1. 裁量労働制とは?

はてなと虫眼鏡

1-1. 労働時間を個人の裁量に任せる制度

裁量労働制とは、勤務時間の制限がなく、労使間で規程した時間を労働したとみなす制度です。賃金の支払いにおいても、裁量労働制では考え方が異なります。

「労働基準法」において日本企業の労働時間は「1日8時間、週40時間」と定められています。

これを超過する労働は「時間外労働(残業)」と呼ばれ、企業が時間外労働を労働者に指示する場合は、労働基準第36条を基に作成された協定(36協定)を締結し、労働基準監督署長に届け出をしなければいけません。また、36協定を結んだとしても時間外労働には「月45時間、年間360時間まで」と限度が定められています。そのため、企業は以上の法律を遵守しつつ、各従業員の労働時間に見合った給与を支払う義務があります。

一方、裁量労働制では、労働時間を個人の裁量に任せるため、実際に働いた労働時間に基づいた賃金の計算をしません。「みなし労働時間」といわれる「何時間働いたと”みなした”時間」に基づいて賃金が発生します。

関連記事:裁量労働制とは?労働時間管理における3つのポイントを徹底解説

1-2. 裁量労働制とフレックス制の違い

裁量労働制は、あくまでも業務遂行に関する裁量を従業員に与える制度であり、実働時間に関係なくあらかじめ定められた「みなし労働時間」に基づいて給与が支払われます。このため、従業員は柔軟に働き方を選べる一方、労働時間の管理や残業代の計算において注意が必要です。特定の条件下では残業代が発生することもあり、これらを十分に理解することが重要です。

一方で、フレックス制は従業員に一定の自由度を与えつつ、必ず業務をする必要があるコアタイムを設定することで、チームの連携を維持します。近年はコアタイムを設定しないスーパーフレックスタイム制を採用する企業も出てきましたが、この場合でも実際の労働時間に対して報酬を支払います。そのため、裁量労働制とは全く異なる制度であることを理解しておきましょう。

裁量労働制は成果に対する報酬を重視し、フレックス制は柔軟な働き方を促すことを重視した制度です。企業の方針や業務内容に合った制度を選択することが必要です。

2. 裁量労働制の残業時間の上限

働く男性と時計

裁量労働制では、みなし労働時間を労使間で定めたうえで、労働者が自由に働くことができます。自由度が高い働き方ですが、このような場合でも残業時間の上限は適用されます。

2-1. 裁量労働制でも残業時間の上限はある

労働基準法では、時間外労働の上限を「月45時間・年360時間」としています。これを超えた場合は罰則も設けられており、企業は上限を守った働き方をさせなければなりません。

裁量労働制でもこの上限は適用され、みなし労働時間が上限を超えると違法になる可能性があります。1日のみなし労働時間が8時間を超える場合は、時間外労働の上限に注意し、範囲内で設定するようにしましょう。

参考:裁量労働制の現行制度の概要及び経緯等について|厚生労働省

2-2. 裁量労働制でも36協定が必要な場合がある

裁量労働制はみなし労働時間を設定するため、残業が発生せず、36協定も不要のように思えます。しかし、以下のケースに当てはまる場合は36協定が必要です。

  • 1日のみなし労働時間が8時間を超える場合
  • 休日労働が発生する場合
  • 深夜労働が発生する場合

みなし労働時間でも、8時間を超える場合は法定労働時間を超えて働いたとみなされます。時間外労働をしたことになるため、36協定を締結しておく必要があります。

また、時間外労働に対しては割増賃金を支払う必要がある点も、裁量労働制でも変わりはありません。

休日出勤や深夜労働をした場合も同様に適用され、割増賃金が発生します。

3. 裁量労働制における残業代の取り扱い

チェックボックスの項目を確認する必要がある

裁量労働制で良くある誤解が「裁量労働制では残業代を支払わなくてよい」というものです。しかし、これは誤解で法定労働時間を超えて働いた場合は割増賃金を支払う必要があります。

3-1. 裁量労働制でも残業代が発生する

裁量労働制では「みなし労働時間」に基づいて賃金が発生します。みなし労働時間が法定労働時間である8時間を超えて設定されている場合は、8時間を超えた分について割増率である1.25を基礎賃金に乗じた金額に相当する賃金を給与に含めて支払わなければなりません。

つまり、裁量労働制では残業代が発生しないのではなく、「残業代」という名目で別途賃金は支払われないが、残業にあたる分の賃金はあらかじめ給与に含めて支払わなければならないということです。

ただし、22時~5時に労働する「深夜労働」と法定休日に労働する「休日出労働」に関しては裁量労働制であっても一般の労働者と同様に「基礎賃金×0.25」の深夜手当と「基礎賃金×1.35」の休日手当を算定し別途支払う必要があります。

3-2. 裁量労働制の残業代の計算例

裁量労働制の残業代を計算するには、まず1時間あたりの賃金を算出します。例えば、基礎賃金が30万円、月の平均所定労働時間が160時間の場合、1時間あたりの賃金は次のとおりです。

300,000(円)÷160(時間)=1,875円

もし裁量労働制におけるみなし労働時間が1日9時間であれば、8時間という法定労働時間を1時間オーバーしていることになります。そのため、1時間分の残業代の支払いが必要です。残業代は次のとおり計算します。

1,875(円) × 1(時間) × 1.25(割増賃金率)=2,344円

このように裁量労働制の残業代は1時間あたりの賃金に残業時間、割増賃金率を乗じて算出します。

当サイトでは、法改正前後での残業の考え方や上限規制の内容をまとめた資料を無料で配布しております。そもそもとなる残業の定義から不安な方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。

4. 裁量労働制の残業時間の上限に関する注意点

虫眼鏡と注意のマーク

裁量労働制は勤務時間や業務の時間配分を従業員の裁量に任せる働き方です。しかし、会社側はただ従業員の裁量に任せるのではなく、次のような注意点を意識しながら、裁量労働制を運用していきましょう。

  • 実際の労働時間とみなし労働時間に乖離が起きていないか
  • 労働時間を把握する
  • 裁量労働制が適用される職種かどうか

4-1. 実際の労働時間とみなし労働時間の乖離

裁量労働制を導入するためには、企業側・従業員側の双方に注意点があります。
みなし労働時間を何時間とするかについて話し合い、具体的な内容を定めて労働基準監督署に届け出を提出する必要があります。

ここで重要になるのが、「みなし労働時間と実労働時間に乖離がないか確認する」ことです。裁量労働制を導入している企業で見受けられる事象に、みなし労働と実務時間の乖離があります。

実際、みなし労働時間が8時間と定められているのに対して、実労働時間の平均が10時間となっています。みなし労働時間を8時間を超えて設定するためには、一般労働者と同様に36協定を締結する必要があります。

以上のことから、裁量労働制を導入する場合は、法律で定められた労働時間の限度を守りつつ、みなし労働時間と実労働時間の乖離が起きないように設定することが大切です。

関連記事:裁量労働制の従業員の打刻管理で注意すべき2つのこと

4-2. 労働時間を把握する

働き方改革関連法では裁量労働制を適用していても、従業員の労働時間の状況を客観的に把握するよう、企業に義務づけています。

従来は「みなし労働時間で働く労働者や管理監督者については残業代は関係ないから労働時間は把握しない」といったような状態も、曖昧な状況のまま黙認されてきました。

しかし、長時間労働による過労死や精神疾患のリスクは残業代の支払義務の有無に関わらず、管理監督者や裁量労働制の適用者の場合も直面します。裁量労働制であっても残業時間の上限は月45時間、年360時間が基本です。

そこで、労働時間の把握は、単に残業代の計算という面だけではなく、健康管理という側面も重要視し、労働時間を客観的に把握することが法的義務になりました。

4-3. 裁量労働制は適用職種が限られる

裁量労働制には、「専門型」と「企画型」の2種類が存在しますが、適用職種は限られています。

専門業務型裁量労働制 厚生労働省令・大臣告知で定められた19業務

システムエンジニア・プログラマー・研究開発者・デザイナー・建築士・税理士・編集者・記者など

企画業務型裁量労働制 特定の事業に対する企画・立案・調査・分析業務をおこなう事業であり、対象業務がある事業場にのみ導入可能です。

すべての労働者にこの制度を適用できるわけではないため、裁量労働制を設ける前には、自社の業務が規定に当てはまるかを確認しましょう。

参考:裁量労働制の概要|厚生労働省

5. 裁量労働制における残業時間の上限を理解して労働時間を管理しよう

PC作業する女性

働き方の多様化に伴い、フレックス制度、みなし残業、高度プロフェッショナル制度など、さまざまな制度が実践されてきています。裁量労働制もその一つであるものの、理解が十分に浸透していない部分が目立つ制度です。

労使間のトラブルを未然に防ぐために、時間外労働の上限規制や割増賃金の計算を十分に理解しておきましょう。

「裁量労働制=残業代ゼロ」は間違い? 休日出勤の割増賃金、正しく計算できていますか?

「みなし労働時間」で運用する裁量労働制ですが、割増賃金の支払いが一切不要になるわけではありません。

特に、労働基準法で定められた法定休日の労働に対しては、企業は35%以上の割増賃金を支払う義務があります 。このルールを見落としてしまうと、意図せず未払い賃金のリスクを抱えることになりかねません。まずは、自社の勤怠管理が法的に問題ないか、基本的なルールから見直しませんか?

◆休日出勤の割増賃金で押さえておくべきポイント

  • 裁量労働制でも支払い義務のある「法定休日労働」の定義
  • 法定休日と所定休日で異なる割増賃金率の考え方
  • 振替休日や代休を取得した場合の賃金計算の注意点

裁量労働制のコンプライアンス体制を強化するために参考になりますので、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。

jinjer Blog 編集部

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