真実性の原則とは?意味や重要性について詳しく解説
更新日: 2024.1.15
公開日: 2022.12.13
jinjer Blog 編集部
真実性の原則は企業に対して客観的事実に基づく真実の会計報告を要請する原則です。企業経営は様々な利害関係者との関わりで成り立っています。会計報告で用いられる財務諸表は利害関係者がそれぞれの立場で意思決定を行うための判断材料であり、その内容に虚偽があってはなりません。
企業会計に携わる際は、真実性の原則に対する理解を深めその重要性を認識することが大切です。
本記事では真実性の原則の意味やその重要性について詳しく解説していきます。
目次
86個の勘定科目と仕訳例をまとめて解説
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1. 真実性の原則とは?
真実性の原則とは「企業会計は企業の財務状態や経営成績について真実を報告するものでなければならない」とする原則です。この原則は、損益計算書や貸借対照表などの財務諸表において事実と異なる表示、いわゆる粉飾決算をしてはならないことを示しています。
企業が会計処理をするにあたりに「粉飾決算の禁止」は基本のルールであるはずです。しかし、実際には粉飾決算を行う企業が後を絶ちません。過去に「オリンパス」や「東芝」など誰もが知る大企業が粉飾決算を行い、上場廃止寸前まで追い込まれた事例を覚えている方もいるでしょう。
コンプライアンスに対する意識が洗練された現代社会において、粉飾決算は企業の存続すら危ぶまれるリスクを負います。企業の会計業務に携わる際は、真実性の原則に基づいて日々の業務の結果を正確に財務諸表に反映させましょう。
2. 真実性の原則は企業会計原則の最高規範
真実性の原則は企業会計原則で規定される一般原則のひとつであると同時に、企業会計原則における最高規範と解釈されています。
2-1. 企業会計原則は全ての企業が基準とすべき会計処理の規範
企業会計原則は全ての企業が基準とすべき会計処理の規範です。1949年に旧大蔵省の企業会計制度対策調査会(現金融庁・企業会計審議会)によって発表されました。企業会計原則は、企業の会計実務の慣習として発達してきたルールの中から公正妥当と判断されるルールを要約し、基準としたものです。
なお、企業会計原則はあくまで会計処理の基本的な考え方を示すものであり、法的強制力はありません。近年ではビジネスのグローバル化に伴い国際会計基準に重きを置く考え方もありますが、企業会計原則は現在でも企業会計や会計監査の根底にある原則として機能しています。
関連記事:企業会計原則とは?7つの一般原則をわかりやすく解説
2-2. 真実性の原則は一般原則のひとつ
真実性の原則は企業会計原則が規定する7つの一般原則のひとつです。企業会計原則は「一般原則」「損益計算書原則」「貸借対照表原則」の3項目で構成されており、その中でも企業会計全般に渡る指針を示した一般原則は特に重要と考えられています。
なお、企業会計原則における7つの一般原則は以下の通りです。
1. 真実性の原則
企業会計は、企業の財務状況や経営状況に関して真実を報告しなければならない。
2. 正規の簿記の原則
企業会計は、全ての取引について正確な帳簿を作成しなければならない。
3. 資本取引・損益取引区分の原則
資本取引と損益取引を明確に区別しなければならない。特に資本余剰金と利益余剰金を混同してはならない。
4. 明瞭性の原則
企業会計は、財務諸表によって必要な会計事実を明瞭に表示し、利害関係者の判断を鈍らせないようにしなければならない。
5. 継続性の原則
企業会計は、その処理の原則や手法を毎月継続し、みだりに変更してはならない。
6. 保守主義の原則
会社の財政に悪影響を及ぼす可能性がある場合は、これに備えて適当かつ健全な会計処理をしなければならない。
7. 単一性の原則
目的に応じて複数の形式の財務諸表を作成する場合は、信頼できる会計記録に基づいて作成しなければならず、意図的に表示をゆがめてはならない。
2-3. 真実性の原則は企業会計原則の最高規範
真実性の原則は、一般原則だけではなく損益計算書原則と貸借対照表原則も含めて企業会計原則における最高規範と解釈されています。
真実性の原則を文字通りに受け取ると、「企業は虚偽の会計申告をしてはならない」という企業会計において極めて当たり前とも言えるルールを述べているに過ぎません。企業会計の具体的な指針は他の一般原則によって示されています。
しかし、真実性の原則は、企業会計原則が定める他の一般原則や損益計算書原則、貸借対照表原則にも共通して適用される原則です。つまり、真実性の原則とは企業会計原則の他の原則全般の準拠を要請する原則と言い換えられます。
企業会計原則が定める原則に準拠して正しく作成された会計報告であれば、それは客観的事実に基づいて真実が表示されたものと判断できます。以上が企業会計原則において真実性の原則が最上位概念であるとされる理由です。
3. 真実性の原則が要請するのは「相対的真実」
企業会計における真実のとらえ方には「絶対的真実」と「相対的真実」という2つの考え方があります。このうち真実性の原則が要請するものは相対的真実です。
会計実務においては、同一の会計事象であってもそれを処理する方法によって異なる結果が表示されるケースがあります。例えば固定資産の減価償却の算出です。減価償却には定額法と定率法という異なる算定基準があり、その企業がどちらの基準を選択したかによって計上される金額が変わります。
上記のように企業会計では会計処理の方法や処理をする人間の主観によって得られる結果が異なることは珍しくありません。その場合、企業会計ではその算定方法が公正妥当なものであるならばどちらも真実として認めます。これが相対的事実の考え方です。
4. 真実性の原則が重要とされる理由
企業会計において真実性の原則が重要視されるのは、会計報告で公表される財務諸表が企業の利害関係者にとって意思決定の重要な判断基準となるためです。もしも財務諸表に虚偽の内容を表示していた場合、利害関係者は正しい意思決定を行うことができません。
損益計算書や貸借対照表などの財務諸表は、その企業の利害関係者が意思決定するための最も重要な判断材料です。
例えば、取引先の場合は財務諸表の内容を確認したうえで取引の可否を決めることがあります。また、金融機関であれば融資額の限度を決めるために財務諸表をチェックします。このように、利害関係者それぞれの立場から対象企業の財務諸表を確認し、自らの意思決定に反映させているのです。
もしも財務諸表に事実と異なる情報が記載されていた場合、利害関係者は意思決定を誤ってしまいます。それにより大きな損失が生じ、訟に発展することもあるでしょう。以上のことから、財務諸表は真実性の原則に基づき成功妥当な方法で作成することが絶対条件であつと言えます。
5. 真実性の原則に違反するとどうなる?
真実性の原則やそれが規定される企業会計原則はあくまで企業会計の方向性や考え方をしました基準です。法的な強制力もなく、仮に真実性の原則や企業会計原則の基準に反した会計処理を行ったとしてもその行為自体に罰則が科せられることはありません。
しかし、粉飾決算は往々にして自社の利益のために行われるものです。粉飾決算によって不当な利益を得た場合や、脱税を行った場合はそれに対して刑事責任が問われます。罪状によっては長期の禁固刑や多額の罰金の支払いが課されるでしょう。
また、コンプライアンスが重視される現代社会では、粉飾決算による企業のイメージダウンも避けられません。上場企業であれば、証券取引所の規定によって上場廃止処分が課される可能性もあります。
6. 真実性の原則に基づき正しい企業会計を実施しよう
真実性の原則とは、企業に対して客観的事実に基づいた真実の会計報告を要請する原則です。企業には利害関係者に対して正確な会計報告を行う義務があります。自社の利益のために粉飾決算を行う企業も見られますが、それが発覚した際に企業が負うダメージは計り知れません。企業会計は真実性の原則に従い、必ず事実を反映する方法で作成しましょう。
86個の勘定科目と仕訳例をまとめて解説
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などなど会計の理解を深める際に前提の基礎知識となる勘定科目や仕訳がよくわからない方もいらっしゃるでしょう。
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