決裁とは?類似用語「決済」との意味の違いやワークフロー手順
更新日: 2024.5.24
公開日: 2024.4.16
OHSUGI
「決裁とはどのような意味?」
「決裁と決済の違いは?」
「決裁の具体的な流れは?」
上記の疑問をお持ちではありませんか。
決裁とは申請・提案された内容について、上長が最終的な許可または判断を与えるプロセスを指します。
今回の記事では「決裁」とはどういう意味なのか解説したうえで、混同しがちな関連用語との違いをまとめました。決裁が必要な理由や具体的な流れ・問題点なども解説します。
決裁に関する疑問を解消し、理解を深めたい方は、ぜひご一読ください。
「承認までの流れが遅い」「今誰が稟議を持っているのかがわからない」「承認のためだけに出社しなければいけない」 などのお悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ワークフローをシステム化することで、以下のようなメリットがあります。 ①リアルタイムでの承認・進捗状況が把握できる ②リモートワークなどどこにいても稟議対応ができる ③稟議の紛失リスクがない
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1. 決裁とは
決裁とは申請・提案に対して許可または不許可を判断することです。部下や一社員から提出された案件について、上長など権限を持つものが最終的な承認や判断を与えます。
企業活動の中では以下のようなシーンで決裁が必要とされるでしょう。
- 予算の承認
- 他社と契約を新規に結ぶとき
- 新商品の購入
- 採用活動
ビジネスシーンにおいて物事を進めるには決裁が欠かせません。言い換えれば、案件の内容が明確に決まっていたとしても決裁を得られなければ、案件を進めることはできないのです。
なお、権限を有する人から申請内容について許可(決裁)を得た際に「決裁が下りる」との言葉を使用するケースもあります。
2. 決裁における決裁権と決裁権者の意味
決裁の決裁権と決裁権者について、下記の流れで解説します。
- 決裁権とは特定の人物が持つ権限
- 決裁権者とは決裁権が付与されている人物
2-1. 決裁権とは特定の人物が持つ権限
決裁権とは組織における特定の人物が持つ、最終的な判断や承認をする権限のことです。通常、社長や部長や役員などの特定の役職・職位を持つ人物が決裁権を握っています。
金額の多寡により決裁権が異なる企業も珍しくありません。例えば100万円までは部長職、1000万円までは役員、それ以上は社長など、金額の大きさによって決裁権を変更している企業も多いでしょう。
企業の規模や予算・稟議内容によっては部長・役員のほかに、課長などにも決裁権が付与される場合もあります。
2-2. 決裁権者とは決裁権が付与されている人物
「決裁権者」とは決裁権が付与されている人物を指します。決裁権者は経営戦略や商品開発、人事異動など組織における重要な意思決定をおこなう、企業の成功を左右する重要な人材です。
あらゆる組織内の活動については、決裁権者による決裁が欠かせません。
申請内容や事案の重要度により決裁権者は異なり、社長が決裁権者となるケースもあります。
社外の人にとっても決裁権者は重要になるでしょう。なぜなら決裁権は特定の人物のみが持っているためです。商談において決裁権者を見極められれば、スムーズに案件を進められます。
2-3. 権限委譲とは?
権限委譲とは、決裁権を持つ人物が自身の権限を他のメンバーに委譲することです。これにより、組織の効率化や特定プロジェクトにおける専門知識の活用が促進されます。決裁者が決裁権の一部を部下に分け与えることで、以下のようなメリットが期待できます。まず、チームメンバーの当事者意識が向上し、積極的な業務参加が促されます。次に、決裁期間が短縮され、迅速な意思決定が可能となります。さらに、決裁者の負担が軽減され、他の重要な業務に集中できるようになります。ただし、権限委譲を行った場合でも、最終的な決裁事項に対する責任は本来の決裁者が負うため、適切な管理とフォローが必要です。
3. 決裁と決済の違いは?混同しやすい他用語の解説
以下では決裁と混同しやすい用語との違いを解説します。
- 決済との違い
- 稟議との違い
- 承認との違い
- 起案との違い
3-1. 決済との違い
決済と決裁の違いは以下のとおりです。
決済 | 商品やサービスの提供に対して金銭を支払い、受け取る行為 |
決裁 | 組織において権限を持つ人物が最終的な判断をする行為 |
決済とは商品やサービスの提供に対してお金を支払い、受け取る行為を指します。決済にはさまざまな種類がありますが、現金払いはその代表例です。ほかにもクレジットカードなどのキャッシュレス決済、小切手・手形なども決済手段として多くの人に利用されています。
一方の決裁は、組織において上長など権限を持つ人が提案内容について最終的な承認の可否を与える手続きのことです。
決済は経済取引で使用されるのに対し、決裁は組織において権限を持つ人物が最終的な判断をするシーンで使用されます。
読み方は同じですが、意味は違うため、意味を取り違えないようにしましょう。
3-2. 稟議との違い
稟議と決裁の違いは以下のとおりです。
稟議 | 文書を作成して承認・決裁を得る作業。決裁プロセス全体を指す |
決裁 | 最終的な承認を得る行為。決裁プロセスの最終行為 |
稟議とは自分だけでは判断できない物事が発生した際に、文書を作成して承認・決裁を得る作業のことです。
一般的に稟議を回す事案は「一社員が判断できないが、上層部を集めてまで会議するほどでもない内容」である場合が多いでしょう。
仮に稟議書を作成しないとなると、事案が発生する度に管理職や経営陣を集結して承認を得る必要があり、効率的ではありません。稟議は不必要な会議の削減に有効なのです。
稟議は「起案→回覧→承認→決裁」のプロセス全体を指すのに対し、決裁は最終的な承認を得る行為そのものを指します。
順調に稟議が決裁権者までたどりついたとしても、決裁権者が承認を拒否すれば稟議は不承認となることも珍しくありません。
3-3. 承認との違い
承認と決裁の違いは以下のとおりです。
承認 | 問題となっている事案が妥当だと認めること。意思決定における途中の工程 |
決裁 | 問題となっている事案についての最終的な判断。意思決定における最終段階の活動 |
承認は問題となっている事案が妥当だと認めることです。
組織に属する人はそれぞれ決まった権限が付与されており、その範囲を超えて判断を下すことは認められていません。自分の権限で決められない物事について関係者の承認を得る必要があるのです。
承認の権限がある人を「承認者」とよびます。
決裁では最終的な判断の前に、複数の承認者が案件についての可否を判断するのが、一般的です。
つまり、決裁において承認は意思決定の途中の工程であり、決裁は承認プロセスを経た最終段階の活動といえるでしょう。
3-4. 起案との違い
起案と決裁の違いは以下のとおりです。
起案 | 承認や決裁を得るために、目的な理由をまとめた文書を作成する作業。決裁における最初のプロセス |
決裁 | 権限を有するものが最終的な判断を下す行為。決裁業務における最後のプロセス |
起案とは遂行したい事案に対して、承認・決裁を得るために、目的や理由をまとめた文書を作成する作業のことです。
自分の意思だけでは判断できない事案について、わかりやすく目的や理由を文書に記します。文書は「起案文書」とよばれ、組織の意思を決定する役割を担っているのです。
また文書として記録に残すことで「言った」「言わない」のトラブルを未然に防ぐ役割も果たしています。
起案は部下や責任のない者が物事を提案する、いわば「決裁の最初のプロセス」です。一方の決裁は、権限を有するものが最終的な判断を下す最後のプロセスといえるでしょう。
4. 会社で決裁を実施する一般的な流れ
決裁を実施する流れは以下のとおりです。
- 起案文書を作成する
- 起案文書を回覧し承認を得る
- 決裁を完了し保存する
- 決裁内容を実施する
4-1. 起案する申請書・稟議書を作成する
最初のステップは「起案文書の作成」となります。
起案文書とは実施したい事案について、その内容や理由などを文書形式でまとめたものです。案件が発生する度に関連部署や担当者が起案文書を作成します。
起案文書には以下の内容が含まれることが多いでしょう。
目的と内容 | なぜ提案をするのか、提案に至る背景を記載する。明確な目的がなければ、なぜその提案をする必要があるのかわからず、決裁が下りない。 |
必要経費とリターン額 | 必要となる予算や予測されるリターン額を記載する。申請を正当化する客観的な根拠があれば決裁が下りやすい |
調査、分析情報 | 市場調査や競合分析、顧客ニーズなど起案文書を裏付ける情報を記載する。 |
行動計画 | 目的を達成するための具体的な行動やスケジュールを明示する。それぞれのタスクに責任者や担当者、期限を設定。 |
リスクと課題 | 予想されるリスクや課題を盛り込む。
案件によって生じるリスクについて、決裁権者は注意深くチェックする必要がある。リスクをあらかじめ想定し、その対処法を記載する。 |
4-2. 起案文書を回覧・回付し承認を得る
起案文書を作成した後は、回覧・承認のプロセスです。
提案された内容について、起案者以外の関係者や部門によって検討されます。この段階では提案の必要性・内容・リターンの面から厳重に評価が実施されるでしょう。
なお、回覧の際には書類がどこかで停滞していないか、進捗状況をこまめに確認することが大切です。
また重要度により書類の優先順位をつけることも重要でしょう。緊急性の高い案件であれば、付箋を貼るなどの対策が必要です。
4-3. 決裁を完了し保存期間に応じて保管する
つづいてのステップは「決裁完了」と「保存」です。
承認者の承認を経た後、最終的な責任を下す「決裁権者」の承認がおりれば、決裁プロセスが終了します。決裁権者の署名押印または電子証明が付与されれば、決裁完了の印です。
決裁完了後は、決裁プロセスの各ステップで作成された文書や決裁内容は、正式な文書として、会社の保管スペースに適切に保存される必要があります。
決裁文書には保存期間が設定されているものもあり、この期間は法律に基づき異なります。永久保存が求められる文書には、株式名簿や官公庁への提出文書、重要な人事書類などがあります。一部の企業では、企画書や稟議書、重要な決裁文書も永久保存します。その他、損害保険や福利厚生に関する書類は10年、監査報告や従業員の身元保証書などは5年の保存期間が定められています。
これらの記録は参照や監査に役立つだけでなく、組織の透明性を保つためにも重要です。決裁文書は最終決裁権限者の決裁が下りると、文書として保存されます。
保存期間が法律で定められていない文書については、各企業が基準を設ける必要があります。この際、同じ種類の文書が異なる保存期間にならないよう、統一性を持たせることが大切です。
4-4. 決裁内容を実施する
最終ステップは、案件の実施です。決裁が下りたら、起案文書をベースに案件を実施していきます。
具体的な行動計画を立て、その計画に基づき関連部署や担当者がアクションを起こしてください。
5. 決裁はなぜ必要?理由を解説
決裁が必要な理由は以下の3つです。
- 意思決定の統一性を確保できる
- 不必要な会議を削減できる
- 不正の発見・防止につながる
5-1. 意思決定の統一性を確保できる
決裁が必要な理由の1つ目は、意思決定の統一性を確保できることです。決裁権者へ権限を集中させることにより、組織として一貫性をもった意思決定が可能となります。
仮に決裁しないとなると、個々の社員が勝手に業務を進めるため、会社としての意思を一つにまとめることはできません。
決裁は組織の方向性に大きな影響を与えます。組織の意思決定を一つにする重要なプロセスといえるでしょう。
5-2. 不必要な会議を削減できる
2つ目の決裁が必要な理由は、不必要な会議を削減できる点です。実行したい事案を文書で作成して回覧さえすれば、上長を集めた会議を開く時間をカットできます。
日々の業務ではたくさんの意思決定がおこなわれます。その度に決裁者や承認者を集めて会議を開催するのは、非効率です。
決裁をすることにより回覧すれば、無駄な会議を開く必要がなくなります。時間を有効に使うことができるだけでなく、効率的な意思決定ができ、生産性の向上に期待できるでしょう。
5-3. 不正の発見・防止につながる
3つ目の決裁が必要な理由は、文書により可視化することで不正の発見・防止につながる点です。
最終的な決裁が下りるまでに通常、何人かの承認者が決裁内容をチェックします。複数人によるチェックにより、未然に不正を防ぎやすくなるでしょう。
また、いつだれがどのような判断をしたのかについて記録を残しておくと、責任の所在も明らかにできます。
間違った部分を発見した際にも訂正場所を確認できるため、再発防止にも役立つでしょう。
6. 従来の書類による決裁はデメリットが多い?問題点とは
従来の紙による決裁の問題点は、以下のとおりです。
問題点 | 理由 |
決裁終了までに時間がかかる | ・承認者や決裁権者が不在であれば、回覧がストップする
・承認者の数が多いと、決裁に時間がかかる |
柔軟な働き方の導入が難しい | ・出社する必要があり、在宅では作成・申請ができない
・回覧の際にも現物文書を確認するために出社しなければならず、テレワークの導入が難しい |
費用がかさむ | ・用紙代やトナー代が発生する
・保管スペースが必要になる ・廃棄コストを考慮する必要がある |
情報漏洩のリスクが高まる | ・だれでも盗み見られる状態であるため、情報漏洩のリスクが高い
・置き忘れや紛失するリスクもある |
従来の紙による決裁では、決裁終了までに時間がかかります。回覧する際に承認者や決裁権者が不在であれば、回覧がストップするためです。
不在時に回覧できないことは、テレワークなどの柔軟な働き方の導入が難しいことにもつながります。
物理的な紙では、用紙代やトナー代、保管スペース代が生じるため費用がかさむことも問題です。不要になった決裁書の廃棄コストも考慮する必要があるでしょう。
紙はだれでも閲覧できる性質上、情報漏洩のリスクが高いです。印刷すれば持ち運びやすい性質もあり、置き忘れや紛失といったリスクも発生します。
7. システムで電子決裁を行うメリット
電子決裁を導入するメリットは、以下のとおりです。
メリット | 理由 |
業務の効率化を図れる | システム上で場所を選ばず一斉に閲覧・承認でき、時間を有効に使える |
決裁プロセスを短縮できる | ・承認者が社内に不在であっても、システム上で書類を確認可能
・書類の出戻りもシステム上で完結できる |
フレキシブルワークが実現できる | 出張中や外出先でも決裁作業を進められる |
長期的なコストが削減可能 | トナー代や保管スペース代、廃棄コストを削減可能 |
セキュリティが向上する | 書類にアクセス権限を設けることで、関係者以外は閲覧できなくなり、情報漏洩を防止できる |
電子決裁とは、紙による決裁業務を電子化するシステムです。起案文書を作成し、承認者が印鑑を押し、決裁権者が決裁印を押すという、一連の流れをシステム上で実施できます。
電子決裁を導入する大きなメリットは、業務の効率化を図れることです。電子決裁を活用すれば、システム上で場所を選ばず一斉に閲覧・承認でき、時間を有効に使えます。
決裁プロセスの短縮ができ、働き方に制限のない「フレキシブルワーク」を実現できるでしょう。
電子決裁を導入すれば紙の書類が不要になり、トナー代や保管スペース代、廃棄コストなど、長期的なコスト削減ができます。
システム上で書類にアクセス権限を設けることで、関係者以外は閲覧不可となるため、情報漏洩防止にも効果的です。
7-1. ワークフローシステムで電子決裁化に成功した例
ワークフローシステムを導入することで電子決裁が効率化します。
例えば、ある企業の例では毎月多くの経費申請が発生するため、コストや時間がかかるうえに経理担当者においては複数拠点の従業員の精算管理において、一元管理が難しいという課題がありました。この企業では問題解決のため、ワークフローシステムを導入した結果、経費申請がデジタル化されたことにより、起案から承認、決裁、保存まで一貫してシステム内で完結することで、経理担当者の管理工数が削減され、業務効率を向上させることに成功した例があります。
さらにこの企業では、ワークフローシステムの導入によって紙管理を廃止したため、ペーパーレス化に成功し、これまでかかっていた印刷や拠点間の郵送にかかるコストを削減できたといいます。加えて、承認プロセスが迅速かつ透明化されたことで、決裁のステータスがわかりやすくなり、決裁の滞留や漏れが防止されたことがミスや不正のない経費精算につながったといいます。このように、ワークフローシステムで電子決裁化をすることで、企業全体の生産性が大幅に向上しました。事例を参考に、システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
8. 電子決裁を導入して業務を効率化させよう
決裁は会社の最終的な意思決定を下す重要なプロセスです。正確な決裁プロセスを経ることで、企業としての意思を確固たるものにでき、社員は共通の目標に対して進んでいけます。
しかし、従来の書面による決裁では、決裁プロセスに時間がかかり、限りある時間を有効に使えません。テレワークなどの柔軟な働き方にも対応は難しくなるでしょう。
そこで多くの企業が「電子決裁」を取り入れ始めています。日々の業務では決裁が必要となるシーンは多く発生するでしょう。業務の効率化に向けて電子決裁の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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