職務評価とは?具体的な評価手法や評価項目を詳しく解説
公開日: 2023.5.25 OHSUGI
同一労働同一賃金の実現に役立つ人事評価方法が職務評価です。職務評価では、社員の職務が会社にとってどの程度重要か、専門性は必要かなど、人材そのものではなく「職務の大きさ」により評価します。
そのため、多様な働き方の実現と雇用形態による格差の是正に役立つ方法です。
本記事では、職務評価とはどのような制度か、評価手法や評価項目を解説します。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 職務評価とは?
職務評価とは、職務の大きさを比較し評価する方法です。具体的には仕事を会社にとっての重要性で分類したり、構成要素別にレベルを設定し分類したりして、職務の客観的な価値を定めます。
1-1. 職務評価の導入目的
職務評価は、多様な働き方の実現に向け、厚生労働省が導入を支持している方法です。とくに、職務評価は人材そのものではなく、職務を大きさや価値により評価するため、同一労働同一賃金の実現に役立つと考えられています。
改正されたパートタイム・有期雇用労働法では、同一企業内における正社員と非正規雇用労働者の間に不合理な待遇差を設けることを禁止しています。[注1]
また、事業主は従業員から待遇差の説明を求められた場合、説明に応じる義務を負います。
職務評価は責任や重要度など、職務そのものの大きさを比較するため、正社員と非正規雇用労働者に不合理な格差を設けていないか確認するうえで役立ちます。確認の結果格差があれば是正し、働き方の多様化を進めることが目的です。
[注1]「同一労働同一賃金ガイドライン」の概要1 (短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針)|厚生労働省
2. 職務評価の評価手法
職務評価は4つの方法が代表的です。簡単に導入できるものもあれば、職務の詳細な分類が必要なものもあり、それぞれメリット・デメリットがあります。導入を検討する際はよく確認し検討しましょう。
2-1. 序列法(単純比較法)
序列法、または単純比較法では「営業職」「事務職」など、職務を1対1で単純に比較し、企業が重視する順に評価し序列を決めています。職務を要素に分解するなど、細かな作業が不要なため、簡単に導入できる方法です。
反面、職務の違いの細かな把握はできないため、説明を求められたときも従業員を納得させることは難しいでしょう。また、下位に序列された職務の社員からは反発が上がる恐れもあります。
2-2. 分類法
社内で基準となる職務を選び、分析を行った上で「職務レベル」をA・B・Cなどの段階を分けて設定します。次に、「人事」や「法務」など、職務単位でレベルを確認し、それぞれ分類していきます。
たとえば、Aランクは人事、Bランクは法務などとなります。分類法では同じランクの職務を設定してもよいため、社員から不満が出にくい点が利点です。
しかし、ランクを付けるにあたり基準を設ける必要があり、さらに、やり方によっては同じランクに職務が集中してしまう恐れがあります。
2-3. 要素比較法
要素比較法では、職務を構成要素に分解し、さらに要素別にレベル(A・B・C)も設定する方法です。構成要素では職務にどのような条件が求められるかにより設定します。
たとえば、構成要素が経営への影響・専門性とする場合、営業職はA・B、経理職はB・Aなどとします。比較した結果、会社にとって重要度(ウェイト)の高い要素で高レベルの結果が多い(例:専門性A)ほど、職務が大きいと判断します。
上記の場合、経理職のほうが営業職よりも大きな職務となります。要素比較法ではより詳細な比較が可能であり、客観性も確保しやすくなります。
しかし、評価にウェイトを使うため複雑になりやすい方法です。
2-4. 要素別点数法
要素別点数法では、要素比較法と同様に職務を構成要素に分解しレベルを設定し比較します。要素比較法と異なる点は各要素をA・B・Cと評価するのではなく、5点・3点・1点のように点数で評価する点です。
また、職務の大きさはウェイトではなく、合計点により比較します。
たとえば、営業職の構成要素が5点・1点・3点の合計9点、人事職の構成要素が3点・3点・3点の合計9点の場合、どちらも同じ大きさの職務と判断します。なお実際の計算では評価項目ごとに「ウェイト」と「スケール」を掛けて点数を算出します。詳細は次章で解説します。
数値化するため客観性や公平性を確保しやすい方法です。しかし、職務一つひとつを分析する必要があるため、導入には手間もコストもかかってしまいます。
3. 職務評価の構成要素
要素別点数法では、以下の構成要素を元に職務評価の点数を決定します。なお、これらの項目は他の職務評価方法でも理解が必要なため確認しましょう。
- 評価項目
- ウェイト
- スケール
3-1. 評価項目
職務の構成要素を評価項目といい、企業にとっての必要性や、職務を行う上で社員に求められる要素を表したものです。評価項目の詳細は次章で詳しく解説します。
3-2. ウェイト
会社にとっての評価項目の重要度です。たとえば、同じ「専門性」でも、法律事務所かサービス業かなど、業種により重要度は異なります。
要素別点数法では、重要な評価項目ではウェイトの数値を大きく設定します。
3-3. スケール
評価項目を評価するときのレベルや尺度です。たとえば、5段階や10段階などに評価を分け、該当する程度が大きいほど、高い点数をつけます。
なお、あまりスケールを狭めてしまうと、職務の大きさの差別化がしづらいため注意しましょう。
4. 職務評価の評価項目
職務評価の評価項目は自社で設定してもよいものの、難しい場合は、厚生労働省の提示する以下の8つの項目を活用するとよいでしょう。[注2]
[注2]多様な働き方の実現応援サイト 職務分類・職務評価|厚生労働省
4-1. 人材代替性
新規採用や社内の配置転換により、代わりの人材を探せるか否かで評価します。簡単に探せる場合職務の大きさは小さく、難航する場合は大きいと評価します。
4-2. 革新性
新しいアイデアが必要な職務かどうかにより判断します。現在の方法をそのまま用いられる職務は小さく、これまでとは異なる手法が求められる職務は大きいと評価します。
4-3. 専門性
該当する職務に高い専門性が必要か否か、また、その職務の分野も専門性が必要か評価します。たとえば、税務や法務のような職務であれば、職務だけでなく分野の専門性も必要なため、職務は大きいと評価されます。
4-4. 裁量性
社員の決定がどの程度責任をともなうかで評価します。決定が社内全体に影響を及ぼす場合大きい職務となり、そもそも決定権のない職務であれば低いと判断します。
4-5. 対人関係の複雑さ
対人関係の複雑さは部門内と部門外に分けて評価します。どちらの場合も、交渉や折衝・調整作業が多ければ大きいと判断し、調整作業がほとんどなければ小さいと判断します。
4-6. 問題解決の困難度
マニュアルなど、既存の方法を使って問題を解決できる場合は小さいと判断します。
一方、既存の方法が存在せず、最初から新しい解決方法が必要な場合、職務は大きくなります。
4-7. 経営への影響度
経営への影響度の大小により評価します。なお、それぞれの職務が経営にどの程度影響するかは業種・業界によっても異なります。そのため、他の評価項目と比べ、会社により違いの現れやすい項目です。
5. 職務評価は多様な働き方の実現に役立つ
職務評価とは、会社にとっての重要度など職務の大きさにより、人材を評価する方法です。
職務評価の活用により、賃金を雇用形態や勤務年数などではなく、実際の職務の内容により評価できるため、同一労働同一賃金の実現にも役立ちます。
なお、職務評価の導入方法によっては確認事項が多くなり手間もかかります。厚生労働省では参考資料を多数用意しているため、活用するとよいでしょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
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