コンピテンシー評価の書き方は?項目や記入例を詳しく紹介
更新日: 2024.11.20
公開日: 2023.3.10
OHSUGI
コンピテンシー評価は、優れた業績を残したハイパフォーマーの行動特性(competency)を分析し、人事評価の物差しにする仕組みです。1970年代にコンピテンシーの概念が登場して以来、人事評価にコンピテンシーの考え方を取り入れる動きが広がっています。
本記事では、コンピテンシー評価シートに書く項目や注意点を記入例付きで紹介します。
人事評価は、従業員のモチベーションや生産性に直結するため、正しく制度化され運用されていることが欠かせません。労働人口の減少が問題視される昨今では、優秀な人材を採用し定着させること、従業員エンゲージメントを高めることが、企業の成長に繋がるためです。
しかしながら「工数がかかる割には、人事評価をうまく制度化できていない」「制度自体はあるけれど、評価結果を活かせていない」」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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1. コンピテンシー評価シートに書く項目
コンピテンシー評価シートは、コンピテンシー評価の項目や達成度、フィードバックなどを1枚のページにまとめたものです。コンピテンシー評価シートを作成すれば、スムーズに従業員の人事評価をおこなえます。
コンピテンシー評価シートに書く項目は、以下の3つの方法で決めていきます。
実在型モデル | 自社の業績優秀な従業員(ハイパフォーマー)にヒアリングをおこない、評価項目に落とし込む手法 |
理想型モデル | 自社が理想とする人物像から逆算し、評価項目をゼロから作り上げていく手法 |
ハイブリッド型モデル | 自社のハイパフォーマーの行動特性をベースにしながら、理想の人物像を評価項目に反映させる手法 |
コンピテンシー評価シートを作成するのが初めての人は、既存のコンピテンシーモデルを参考にしましょう。日本企業に適したコンピテンシーモデルには、経済産業省が作成した「社会人基礎力」のほか、霞が関ナレッジスクエアが作成した「KK2しごと力カテゴリ」があります。
ここでは「KK2しごと力カテゴリ」をベースにしながら、コンピテンシー評価シートに盛り込みたい項目を9つ紹介します。[注1]
[注1]「KK2コンピテンシー」とは|霞が関ナレッジスクエア
1-1. 自己認識力
自己認識力は「セルフ・コントロール」と「柔軟性」の2つの要素が組み合わさったコンピテンシー項目です。自己認識力に優れた人は、自分の感情の変化を客観的に見つめ、マイナスな感情が発生する原因を突き止められます。
チームが苦境に陥っても、マイナスな感情をプラスに転換し、セルフ・コントロールすることが可能です。また、他人の感情の機微を推察する能力にも長けているため、相手を思いやることもできます。
1-2. 感情マネジメント力
感情マネジメント力は自己認識力とよく似ていますが、自分の感情を客観的に理解したうえで、冷静にマネジメントをおこなう行動特性を指します。自己認識力に加えて「他者への働きかけ」と「関係構築」の2つの要素が組み合わさったコンピテンシー項目です。
感情マネジメント力に優れた人は、どのような状況でも建設的で冷静な判断を下し、チームに働きかけることができます。
1-3. 共感力
共感力は相手の視点に立ち、気持ちや考えを想像する力を指します。円滑な人間関係を築くうえで欠かせないコンピテンシー項目です。共感力は「対人関係力」や「関係構築力」「対人理解力」という言葉で表現されることもあります。
1-4. コミュニケーション力
コミュニケーション力は「発言力」と「傾聴力」の2つの要素を持ったコンピテンシー項目です。コミュニケーション力に優れた人は、自分が伝えたいことを整理し、話の構成をしっかり組み立てることができます。
また、相手の話に共感し、傾聴するのも得意です。コミュニケーション力は、営業部門のコンピテンシー評価によく使われています。
1-5. 状況把握力
状況把握力は偏見や先入観にとらわれず、周囲の状況を正確に把握するスキルを指します。
コンピテンシー項目としては、正確な情報を収集する「情報探求性」と、現状の課題を分析するための「課題発見力」「分析力」の3つの要素に分けられます。状況把握力は、管理職やチームリーダーに欠かせないコンピテンシー項目のひとつです。
1-6. 原因究明力
原因究明力は、問題やトラブルの内容を整理し、原因を正確に突き止める力を指します。トラブル解決の糸口を探り、すばやく対応策を考えるスキルも原因究明力の一部です。
また、トラブルに対処するだけでなく、再発防止に向けた仕組みづくりも重要です。そのため、原因究明力に「分析力」だけでなく、「対組織力」や「対人能力」などコミュニケーション力に関わる要素も含まれます。
1-7. 選択決定力
選択決定力は、チームのマネジメントに関わるコンピテンシー項目のひとつです。チームや個人にとって望ましい目標を思い描き、目標を達成するための適切な選択をおこなう力を指します。
選択決定力に優れた人は、リーダーシップを発揮したり、チームのイニシアティブをとったりするのが得意です。
1-8. リスク分析力
リスク分析力は想定されるリスクを洗い出し、対処法を具体的に考える力です。リスク分析力に優れた人がチームにいれば、計画の変更を余儀なくされるような障害に気づき、あらかじめ対策を立てることができます。
1-9. 実行力
実行力は目標達成に向けて、意欲的に行動する力を指します。実行力に優れた人は、目標達成に必要なステップを把握し、具体的な行動計画を立てることができます。やる気やモチベーション、積極性、興味・関心など、定量的に評価しづらい項目も含まれます。
2. コンピテンシー評価シートの書き方を記入例付きで紹介
コンピテンシー評価を初めて導入する人向けに、コンピテンシー評価シートの書き方を記入例付きで紹介します。ここで取り上げるのは、営業職とエンジニア職のコンピテンシー評価の見本です。
2-1. 営業職のコンピテンシー評価の記入例
営業職のコンピテンシー評価として「コミュニケーション力」の記入例を紹介します。
コンピテンシー項目 | コミュニケーション力 |
● 顧客の話に共感し、傾聴することができる(傾聴力) ● 伝えたいことを取捨選択し、話の構成を組み立てられる(発言力) ● 商品やサービスの魅力を的確にアピールできる(プレゼンテーション力) |
2-2. エンジニア職のコンピテンシー評価の記入例
エンジニア職のコンピテンシー評価として「原因究明力」の記入例を紹介します。
コンピテンシー項目 | 原因究明力 |
トラブルの内容を整理し、原因を絞り込める(分析力) トラブルの原因と想定されるもののエビデンスを取得できる(情報探求力) 再発防止に向けた仕組みづくりに取り組める(対組織力) |
3. コンピテンシー評価シートを書くときの注意点
コンピテンシー評価シートは作成して終わりではありません。会社を取り巻く状況に応じて内容の見直しが必要です。また、評価をおこなう際も、振り返りがしやすいように評価理由の説明も必要となってきます。
ここでは、コンピテンシー評価シートを書くときの2つの注意点を解説します。
3-1. コンピテンシー項目は定期的に見直す
一年ごとや四半期ごとなど、期間を決めてコンピテンシー項目を見直す機会を設けましょう。
時間が経つにつれて、企業を取り巻くビジネス環境は変化していきます。市場の変化や、企業の成長ステージの変化により、従業員に期待する人物像が変わるケースも少なくありません。設定したコンピテンシー項目は定期的に見直すことが大切です。
3-2. 評価点数と理由をセットで書く
1~5の数字やA~Eのアルファベットを使用し、コンピテンシー評価の重み付けをおこないましょう。評価点数だけ記載するのではなく、点数を付けた理由もセットで記載することが大切です。
コンピテンシーをどれだけ実現できたか振り返る機会を設けることで、スキルやパフォーマンスの成長につながります。
4. コンピテンシー評価シートに書くべき項目は9つ
本記事では、コンピテンシー評価シートに書くべき項目を9つ紹介しました。
- 自己認識力
- 感情マネジメント力
- 共感力
- コミュニケーション力
- 状況把握力
- 原因究明力
- 選択決定力
- リスク分析力
- 実行力
コンピテンシー評価シートを作成するときは、既存のコンピテンシーモデルを参考にしながら、自社の事業形態に合った評価項目を盛り込むことが大切です。
人事評価は、従業員のモチベーションや生産性に直結するため、正しく制度化され運用されていることが欠かせません。労働人口の減少が問題視される昨今では、優秀な人材を採用し定着させること、従業員エンゲージメントを高めることが、企業の成長に繋がるためです。
しかしながら「工数がかかる割には、人事評価をうまく制度化できていない」「制度自体はあるけれど、評価結果を活かせていない」」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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