労務管理・人事管理のペーパーレス化とは?メリット・デメリット解説や具体例紹介
更新日: 2024.9.4
公開日: 2023.6.8
OHSUGI
「人事労務管理」はその言葉にもあるように「人事管理」と「労務管理」の大きく2つに分けて考えることが出来ます。
企業が従業員の労働環境や労働条件を確認し管理することを労務管理と呼びます。
また、組織の目標や戦略と一致するような人材戦略の策定、適切な人材の確保、育成・開発など、組織と個人のパフォーマンスを向上させるための施策や管理を人事管理と呼びます。
企業に求められる一連の労務管理、人事管理はデータベースへの移行という形でペーパーレス化できます。
労務管理、人事管理のペーパーレス化には多くのメリットが考えられます。労務管理プロセスや人事管理プロセスの効率化を目指すためにも、ペーパーレス化を進めていきましょう。
本記事では、労務管理・人事管理のペーパーレス化を推し進めるときのポイントを解説していきます。
関連記事:労務とは?人事との違いや業務内容、労務に向いている人などを解説
デジタル化に拍車がかかり、「入社手続き・雇用契約の書類作成や管理を減らすために、どうしたらいいかわからない・・」とお困りの人事担当者様も多いでしょう。
そのような課題解決の一手として検討していきたいのが、入社手続き・雇用契約のペーパーレス化です。
システムで管理すると、雇用契約の書類を作成するときに、わざわざ履歴書を見ながら書類作成する必要がありません。書類作成に必要な項目は自動で入力されます。
また、紙の書類を郵送する必要がないので、従業員とのコミュニケーションが円滑に進み、管理者・従業員ともに”ラク”になります。
入社手続き・雇用契約のペーパーレス化を成功させるため、ぜひ「3分でわかる入社手続き・雇用契約のペーパーレス化」をこちらからダウンロードしてお役立てください。
目次
1. 労務管理・人事管理のペーパーレス化とは?
労務管理とは従業員の労働条件や労働環境の整備を管理する業務を指します。
具体的な業務内容は企業によって異なりますが、就業規則の作成や管理、労働契約の管理、労働条件の管理、勤怠管理、給与計算の管理などが挙げられます。
福利厚生や安全衛生、従業員の健康管理なども労務管理に含まれます。
人事管理業務も労務管理業務と同様に具体的な業務内容は企業によって異なります。
一般的には、人材戦略の策定、採用・選考、評価制度の策定・運用などの具体的な業務が挙げられます。
本章では労務管理行と人事管理業務のそれぞれでどのようなプロセスをペーパーレス化できるのか解説します。
1-1. 労務管理においてペーパーレス化できるプロセス
給与明細や年末調整のほか、入退社や社会保険などの各種労務手続きなどは、これまで紙の資料で行うのが一般的でした。また、設備管理に関する書類、契約関連書類、交通費などの経費精算書類などを紙媒体で作成している企業も多いです。
しかし、紙媒体による労務管理にはどうしても無駄が生じてしまいます。書類の記入や押印は煩雑ですし、記入ミスのリスクもあります。従業員数が多いほど、記入や集計にかかる手間やミスのリスクは増えていきます。
また、勤怠管理に使用した記録用紙やタイムカードなどは、法令や社内規定に従って一定期間保管することになります。紙の資料は保管スペースを圧迫する上に、紛失や情報漏洩のリスクも考えられます。
このようなリスクの面や作業効率の面などを考慮して、ペーパーレス化を推進する企業が増えています。また、時代に合わせて法改正もなされており、ペーパーレス化できるようになった文書も出てきました。
具体的には労務管理の各プロセスにおいて、以下のような業務のペーパーレス化を図れます。
従業員管理
- 2020年4月より特定の法人事業所(資本金1億円以上など)に対して、社会保険の一部手続きを電子申請(e-Gov)を用いて手続きすることが義務化されました。義務化となる手続きには対象があり、条件にあてはまる企業は必ず確認しましょう。
- 2019年4月より労働条件通知書も電子化が解禁になり、雇用契約書や労働条件通知書など雇用契約に関する書類の取り交わしがペーパーレス化可能となりました。
- 労働者名簿も電子化することが認められています。中には給与システムと連携できる労働者名簿サービスもあり、ペーパーレス化だけでなく業務効率化にも繋がります。
勤怠管理
- 紙のタイムカードや出勤簿の代わりに勤怠管理システムを導入しペーパーレス化を図ることも可能です。システムを用いることで各従業員の勤務時間をリアルタイムに把握することだけでなく、給与システムと連携させ時間外労働時間の割増賃金の計算を自動化させることも可能です。
給与関連
- 毎月の給与明細をPDFやWebサイト上などから電子データとして交付し、ペーパーレス化を図れます。従業員の希望があった場合は紙で出力しなければならないため、ペーパーレス化の実行前に確認をとりましょう。
- 複数枚の紙を用いて行う年末調整は、用紙の配布、記入ミスによる差し戻し対応など、担当者と入力者の双方に負担が掛かる作業でしたが、2020年10月より電子化が可能となりました。年末調整の一連の流れをWeb上で完結できるシステムや国税庁が提供している申請ソフトウェアなどを用いてペーパーレス化を行えます。
当サイトでは、労務業務において特に紙管理で工数がかかる入社手続きと雇用契約にしぼって、ペーパーレス化した時のメリットと実際にペーパーレス化を手段と順序についてわかりやすく解説しております。
社内の人事労務業務をペーパーレス化したいと考えている担当者にとっては大変参考になる内容となっておりますので、興味のある方はこちらから無料でダウンロードしてご覧ください。
1-2. 人事管理においてペーパーレス化できるプロセス
組織内の人材を戦略的かつ継続的に管理し、組織の成果や目標達成に貢献するためのプロセスやアプローチを取ることが人事管理においては求められます。
組織の競争力を高めるために、優れた人材を獲得・開発し、最大限に活用するには、担当者同士のスピーディーな情報共有も重要です。
ペーパーレス化を通して、人事管理にまつわる情報を電子データ化することで、人や場所に捉われず情報の検索や閲覧が迅速に行えるため、効率的な情報共有が可能となります。
人事管理の各プロセスにおいて、以下のような業務のペーパーレス化を図れます。
人材戦略の策定
- 社員の基本情報など人事情報をペーパーレスにすることで、オンライン上で人事情報をダッシュボードなどをもちいて、可視化することができます。既存の従業員データを分析し、人材管理や人材の持つ能力を把握し、不足している人材を洗い出せます
採用・選考業務
- 求人応募者の書類管理をPDF等でペーパーレス化し、電子データとして共有することができます
- 一次面接や二次面接など選考プロセスを記録し、面接官や人事担当者間で共有できます
- 人事評価シートをパソコンで作成し、配布・回収を電子データで行えます
- 従業員が自身の評価の入力をオンラインやWEB上で行う。また、どの従業員が入力済みかステータスの管理も行うことが可能になります
- 評価の結果や過去の結果の履歴をデジタル上で管理できます
- 集まったデータを集計、分析し、グラフや表などの形にアウトプットし、分析できます
2. 労務管理・人事管理をペーパーレス化するメリット
労務管理・人事管理のペーパーレス化には、業務を効率化しミスやトラブルを減らすという重要な目的があります。ここからは、労務管理・人事管理をペーパーレス化することによって得られるメリットについて考えていきましょう。
2-1. 業務効率や生産性が向上する
これまで紙で勤怠管理をしていた場合、デジタル移行すれば業務効率や生産性は飛躍的に向上します。システムには、従業員の労働時間や残業時間などの情報を入力できます。
これらのデータを取り込めば、勤務時間や給与計算などを自動で処理できます。紙媒体の情報管理とは異なり、必要な情報をすぐに検索することが可能です。
ペーパーレス化を実現すればタイムカードの打刻や集計、書類の保管といった手間がかからなくなり、効率よく労務管理、人事管理を行えます。
2-2. コスト削減につながる
紙の書類には購入費や印刷代といったコストがかかります。また、ファイリングして保管するための場所代や人件費も無視できません。
ペーパーレス化には、書類管理のランニングコストを下げられるという良さがあります。経費削減のためにも、労務管理、人事管理のペーパーレス化移行を積極的に進めましょう。
2-3. 多様な働き方に対応できる
働き方改革や感染症予防といった観点から、近年では多様な働き方へのニーズが高まっています。労務管理、人事管理のペーパーレス化は、テレワークや時短勤務を推進する上でも役立ちます。
紙の書類を多く用いている企業では、書類作成や記入、押印などの作業がたびたび発生します。そのため、バックオフィス業務のテレワーク移行は難しいと思われがちです。
しかし、資料や社内文書のペーパーレス化という形でデジタル移行を行うことは十分可能です。これらの業務のデジタル化が実現すれば、オフィス以外の場所からでもデータにアクセスできます。
物理的にオフィスにいなくても仕事を進められるという点は、ペーパーレス化の大きなメリットです。
2-4. 労務管理・人事管理で取り扱う情報をデジタルデータ化できる
従業員の勤務状況をデータ化できるのもペーパーレス化の魅力の一つです。専用システムを導入すれば、従業員の勤怠をはじめとした情報をトータルで管理できます。
データを活用し、余計なコストがかかっていないか、残業などの負担が一部の従業員に集中していないかなど、さまざまなポイントで分析が可能となります。
また、既存の従業員のスキル情報を集めて分布することで、現在不足しているスキルから必要な人材像を描き出すことも可能です。
蓄積されたデジタルデータを経営判断に活かすことで、よりよい労務管理・人材管理に役立てられます。
2-5. 企業イメージの向上につながる
労務管理・人事管理のペーパーレス化は企業のイメージアップにもつながります。近年では、企業は単に利益を追求するだけでなく社会的責任を果たすべきという考え方が一般的となっています。
ペーパーレス化やデジタル化には、社会における企業のあり方を示すという大きな意義もあります。環境問題やサステナビリティへの取り組みという観点からも、ぜひ労務管理のペーパーレス化を進めていきましょう。
3. 労務管理・人事管理をペーパーレス化するデメリット
労務管理・人事管理のペーパーレス化には多くのメリットが見込める一方、以下のようなデメリットも考えられます。
3-1. セキュリティ上のリスクがある
労務管理・人事管理のペーパーレス化にあたって心配なのは、情報漏洩などセキュリティ上のリスクです。情報漏洩が起きると企業には大きなダメージが及ぶため、労務・人事関係のデータは慎重に扱う必要があります。
しかし、近年の管理システムには高いセキュリティ対策が施されているのでそれほど心配する必要はないでしょう。自動バックアップや暗号化といったセキュリティ対策が備わっているシステムを選べば、安心して運用できます。
3-2. 導入に初期コストがかかる
労務管理・人事管理のペーパーレス化では、導入時の初期コストも大きな問題となります。ペーパーレス化の際には、新たにパソコンやタブレットを購入したり、有料の勤怠管理専用システムを導入したりといった準備が必要です。
従業員数が多い企業では、各事業所に機器やシステムを配置するため、初期費用がかなり高額になる可能性もあります。
コスト面が気になるのであれば、一気にすべての業務をペーパーレス化するのではなく、優先順位の高い業務から順次移行していくなどの方法で対処しましょう。
3-3. システムに慣れるまでに時間がかかる
紙媒体を使用する文化が根づいている企業にとって労務管理・人事管理のペーパーレス化は簡単なことではありません。コンピュータの台数が少ない、従業員がデジタルに慣れていないなどの理由で、ペーパーレス化がうまく進まない場合もあるでしょう。
また、デジタル移行直後には慣れない作業が発生し、業務の効率が一時的に低下する可能性もあります。
しかし、アナログ手法での労務管理を続けていると、ビジネスの変化や今後の法改正に対応できなくなるおそれがあります。ペーパーレス化の必要性を十分に理解した上で、段階的にペーパーレス化の取り組みをすすめていくのがおすすめです。
4. ペーパーレス化のためにシステムを選定する際のポイント
4-1. 自社の運用に合わせてカスタマイズできるか
ペーパーレス化のためにシステムを選定する際の重要なポイントの一つは、「自社の運用に合わせてカスタマイズできるか」ということです。企業の業務フローや特性はそれぞれ異なるため、導入するシステムが自社のニーズに適応しやすいかどうかを確認することが不可欠です。全ての業務を一度にデジタル化することは難しい場合も多いため、優先的にペーパーレス化したい業務から段階的に導入するアプローチが望まれます。
特に、給与計算業務においては、勤怠データや労働契約の内容に基づく情報をスムーズに連携できるシステムを選ぶことで、効率的に運用が可能となります。自社の運用に合わせたシステム選定が、ペーパーレス化の成功に繋がるのです。
4-2. 電子申請に対応しているか
ペーパーレス化を進めるためのシステム選定において、電子申請に対応しているかどうかは重要なポイントです。労務管理・人事管理の業務には、行政への手続きが多く含まれるため、今後ますます電子申請の必要性が高まると予想されます。
現時点で電子申請が必須でない場合でも、将来的にその機能が求められることを考慮し、最初から対応可能なシステムを選ぶことが重要です。これにより、ペーパーレス化を実現しつつ、行政手続きの効率化も図ることができるでしょう。選定する際には、システムがどの程度まで業務を網羅し、他のシステムとの連携がスムーズであるかも確認することが不可欠です。
4-3. 法改正へ対応しているか
法改正へ対応しているかは、ペーパーレス化のためにシステムを選定する際の重要なポイントです。
急速に変化する法令や規制に適応するため、最新の法改正に即した機能を持つシステムの導入が求められます。例えば、働き方改革関連法の施行に伴い、新たな勤怠管理や労務手続きが求められる中で、既存のシステムがこれに対応できない場合、業務が煩雑化し、結果的に手作業が増える可能性があります。
したがって、導入するシステムが法改正に適応しているかを確認し、自社の実情に合った運用ができるかどうかを慎重に見極めることが必要です。
5. 労務管理、人事管理業務の効率化を図るためにもペーパーレス化を進めていこう
企業の勤怠管理や福利厚生などの労務分野や、人材戦略の策定、採用・選考、評価制度の策定・運用などの人事分野は、ペーパーレスに移行することが可能です。労務管理、人事管理をデジタル移行すれば、管理にかかる労力を軽減し、業務効率化や生産性向上につなげることができます。
労務管理、人事管理のペーパーレス化には専用機器の配置やシステムの導入といった準備が必要です。自社に合った方法を見極め、スムーズにペーパーレスへの移行を進めていきましょう。
関連記事:勤怠管理をペーパーレス化するには?電子化のメリット・デメリットも解説
関連記事:労務管理の基礎知識!目的や仕事内容、勤怠管理・人事管理との違いを徹底解説
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