労務管理とは?仕事内容や押さえておきたいトピックを徹底解説
更新日: 2026.6.30 公開日: 2021.10.11 (大手外資企業HRCoE/社会保険労務士)

労務管理とは、従業員の働き方に関するルールを整備・運用・統制する業務です。勤怠、給与、社会保険、安全衛生、就業規則、ハラスメント対応などを法令に沿って管理し、会社のルールと現場運用のズレを防ぐ役割を担います。
労務管理が適切におこなわれていないと、未払い賃金、社会保険手続きの漏れ、労務トラブル、労働基準監督署からの是正指導などにつながるおそれがあります。
本記事では、労務管理の意味や目的、人事管理・勤怠管理との違い、主な仕事内容、担当者に必要なスキル、近年押さえておきたいトピックまで解説します。
基礎業務を効率化できる方法を解説!
はじめて労務管理を担当する方や、経験の浅い担当者の方であれば、「労務管理とは具体的になにから始めていいのかわからない・・」とお困りの方も多いでしょう。
さらに労務管理業務の中で生まれる課題として「組織拡大にともない、従業員情報を管理できておらず困っている」
「人事情報をアナログ管理しているため、工数がかかって大変…」
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目次
1. 労務管理とは?


労務管理とは、従業員の勤怠状況や福利厚生など、労働に関するさまざまな事項を適切に管理することです。管理の対象となる具体的な項目には、労働時間や賃金、業務内容など、労働契約に関わる内容が含まれます。
労務管理では労働に関する管理のほか、健康やハラスメントなどの対策もおこないます。つまり、労務管理は従業員が安心して働くための「職場づくり」の仕事でもあるのです。大小問わず、すべての会社に労務管理の業務が必要です。
1-1. 労務管理の目的
労務管理の目的は、大きく分けて「法令遵守」と「働きやすい職場環境の整備」です。労働基準法、労働安全衛生法、労働契約法、育児・介護休業法、社会保険関連法令などに沿って、会社が適切に従業員を雇用・管理できる状態を作ります。
もうひとつの目的は、従業員が安心して働ける環境を整えることです。労働時間や休暇、給与、健康管理、ハラスメント対応などが適切に運用されていれば、従業員の不安や不満を減らしやすくなります。結果として、離職防止や生産性向上、採用力の向上にもつながります。
関連記事:労務とは?人事との違いや仕事内容、労務に向いている人や資格について解説
1-2. 労務管理と勤怠管理、人事管理の違い
労務管理、人事管理、勤怠管理は、いずれも従業員に関する管理業務ですが、目的と範囲が異なります。
- 人事管理:人材を活用するための処遇を管理する
- 労務管理:法令に沿って働き方や職場環境を整備・運用・統制する
- 勤怠管理:労働時間や休日などの勤怠分野を管理する
勤怠管理は、労務管理の一部として位置付けられることが多い業務です。一方、人事管理と労務管理は重なる部分もありますが、人事管理は人材活用を目的とし、労務管理は法令に沿った働き方の統制が主な役割です。
実務では、人事管理・労務管理を同じ担当者が兼任する会社も少なくありません。その場合でも、業務の目的を分けて整理しておくと、優先順位を付けやすくなります。
▼人事管理についてより詳しく知りたい方はこちら
人事管理とは?目的や具体的な業務・労務管理との違いをわかりやすく解説
▼人事管理と労務管理の違いについてより詳しく知りたい方はこちら
「人事管理」と「労務管理」の違いとは?具体例でわかりやすく解説
2. 労務管理の主な役割


労務管理の業務範囲は広く、従業員の入社から退職までのさまざまな場面に関わります。ここでは、会社の人事労務担当者が担う代表的な業務を整理します。
2-1. 法定三帳簿の作成
労務管理では、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿の法定三帳簿を作成・保存します。これらの帳簿は、労働基準監督署の調査や社会保険調査、助成金申請などで確認されることがあります。作成しているだけでなく、必要なときに提示できる状態で保存しておくことが重要です。いずれも記載項目と保存期間が法令で決められているため注意しましょう。
関連記事:勤怠管理は何をチェックするべき?用意すべき法定三帳簿とは?
①労働者名簿
労働者名簿は、従業員一人ひとりの情報をまとめたものです。氏名や生年月日、住所、性別など、従業員の情報を詳しくまとめています。
労働者名簿の保存期間は、労働基準法により当面の間は3年とされており、(本来は5年)起算日は、退職、解雇または死亡の日として設定されています。
労働者名簿についてより詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
関連記事: 労働基準法第109条規定の労働者名簿の正しい取り扱い方や保存について
②賃金台帳
賃金台帳は、従業員一人ひとりの賃金の支払い状況をまとめたものです。氏名、性別、賃金の計算期間、労働時間数、基本給や手当などの種類と額、控除項目と額といった項目をまとめます。
賃金台帳の保存期間も当面の間は3年(本来は5年)で、起算日は原則として最後に記入した日ですが、記載された賃金の支払期日が最後の記入日より遅い場合は、その賃金支払期日が起算日になります。
賃金台帳についてより詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
関連記事: 賃金台帳とは?記載事項や作成方法、給与明細との違い・代用できるかを解説
③出勤簿
出勤簿は、従業員の出勤状況を記録したものです。具体的には、タイムカードなどの記録、使用者が自ら始業・終業時刻を記録した書類、労働日数、労働時間などがあげられます。
保存期間は5年(当面の間は3年)であり、起算日は原則として記録が完結した日ですが、記録に関係する賃金の支払期日が完結の日より遅い場合は、その賃金支払日が起算日になります。
出勤簿についてより詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
関連記事: 出勤簿とは?役割や必要項目、自作する際の注意点を解説
2-2. 入社・異動・退職に関する業務
入社時には、労働条件通知書や雇用契約書の作成、入社書類の回収、人事システムへの登録などをおこないます。労働条件通知書は、2024年4月から明示事項が追加されているため、現在の様式が最新ルールに対応しているか確認が必要です。
異動時には、勤務地、職務内容、賃金、労働時間などが変わる場合があります。労働条件や社内規程との整合を確認し、必要に応じて通知書や辞令、人事システムの登録を更新します。
退職時には、退職届の受理、貸与品の回収、人事システムへ退職済であることの更新などをおこないます。
入社・異動・退職はいずれも、労働条件や給与、個人情報に関わる重要な手続きです。後から「聞いていない」「説明と違う」といったトラブルが生じないよう、本人への案内・確認を丁寧におこないましょう。また、情報開示までの秘匿性も高いため、情報統制を徹底することも重要です。
労働条件の明示や雇用契約についてより詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
関連記事: 【2024年4月】労働条件明示のルール改正の内容は?企業の対応や注意点を解説
関連記事: 雇用契約とは?法的な位置付けと雇用契約書を作成すべき理由を解説
関連記事: パートタイマーの雇用契約書を発行する際に確認すべき4つのポイント
関連記事: 労働基準法における退職の定義と手続き方法を分かりやすく解説
2-3. 就業規則・労使協定の作成と届出
常時10人以上の従業員を使用する事業場では、就業規則の作成と届出が必要です。就業規則には、労働時間、休日、休暇、賃金、退職、服務規律、懲戒など、従業員が働くうえでの基本ルールを定めます。
就業規則を作成・変更するときは、従業員の過半数で組織する労働組合、または従業員の過半数を代表する者の意見を聴き、その意見を記載した書面(意見書)を添付して所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。
また、36協定、変形労働時間制、賃金控除協定など、労使協定が必要になる制度もあります。協定書、選出記録、届出控えを保存しておくことが大切です。
就業規則についてより詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
関連記事: 労働基準法第89条で定められた就業規則の作成と届出の義務
2-4. 社会保険や労働保険の手続き
労務管理では、健康保険、厚生年金保険などの社会保険と、労災保険、雇用保険などの労働保険に関する手続きをおこないます。
社会保険では、入社時の資格取得、退職時の資格喪失、扶養追加、産休・育休、傷病手当金、月額変更届、算定基礎届などが主な業務です。労働保険では、雇用保険の資格取得・喪失、離職票の発行、労災発生時の給付請求、労働保険の年度更新などをおこないます。
社会保険や労働保険の手続きは、従業員の医療給付、育児・介護休業給付、失業給付、労災給付、将来の年金にも関わります。期限や届出内容を誤ると、従業員の給付に影響したり、会社側で追加対応が必要になったりする可能性があります。
手続きごとの期限、必要書類、提出先を一覧化し、担当者だけに依存しない運用にすることが重要です。
社会保険の届出について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
関連記事: 社会保険資格取得届とは?提出が必要なケースや提出先、添付書類について解説
2-5. 勤怠管理
勤怠管理では、出退勤時刻、労働時間、休憩、残業、休日労働、深夜労働、有給休暇、欠勤、遅刻、早退などを管理します。勤怠データは、給与計算、36協定遵守の管理、長時間労働対策、年次有給休暇の取得義務管理などに使われます。
現場で起きやすいのは、打刻漏れ、事後申請、休憩未取得、サービス残業、管理職による承認漏れです。勤怠管理は、システムを導入するだけでなく、申請・承認・修正のルールを明確にすることが必要です。
勤怠管理について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
関連記事:勤怠管理とは?意味や目的・必要性など基礎知識から人事総務向けの注意点
2-6. 給与計算・年末調整
給与計算では、労働契約や就業規則に基づき、従業員ごとの基本給、手当、残業代、控除、社会保険料、雇用保険料、所得税、住民税などを正しく計算します。勤怠データや人事情報と連動するため、入力情報が誤っていると給与計算にも影響します。また、従業員数が増えたり、雇用形態が多様化したりすると、計算は複雑化し、業務量も増大しやすい点に注意が必要です。
年末調整では、扶養控除等申告書、保険料控除申告書、住宅ローン控除関係書類などを確認し、所得税の過不足を精算します。給与計算や年末調整は、従業員からの問い合わせも多い業務です。
計算根拠や修正履歴を説明できるよう、資料を整理しておきましょう。
関連記事:【図解】給与計算ガイド!例を用いて給与計算のやり方を徹底解説!
2-7. 従業員の安全衛生管理や職場環境改善
安全衛生管理では、健康診断、ストレスチェック、長時間労働者への面接指導、産業医面談、安全衛生委員会、職場環境改善などをおこないます。労働安全衛生法の改正により、小規模事業場におけるメンタルヘルス対策なども今後さらに重要になります。
安全衛生管理は、従業員の健康を守るだけでなく、休職や離職、労災リスクを防ぐためにも重要です。健康診断の受診状況や長時間労働者の抽出、面談記録を適切に管理しましょう。
2-8. 福利厚生の整備
福利厚生とは、給与や賞与とは別に従業員やその家族に提供する報酬です。福利厚生には、住宅手当、慶弔見舞金、休暇制度、社宅、健康支援、自己啓発支援、育児・介護支援などがあります。
法定外福利は、採用や定着にも影響します。対象者、申請方法、支給条件、税務・社会保険上の扱いを整理しておくことが大切です。
2-9. ハラスメント対策
労務管理では、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメントなどへの対策も重要です。相談窓口の設置、社内方針の周知、研修、相談対応、再発防止策などを整備します。
2026年10月1日からは、カスタマーハラスメント対策と求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策も事業主の義務になります。従業員だけでなく、求職者、学生、インターン、顧客対応を含めたルール整備が必要です。
関連記事:ハラスメントの定義は?予防するための対策や研修を解説
2-10. 休職・復職手続き
休職・復職手続きでは、休職開始時の診断書確認、休職の発令、休職期間の管理、社会保険料や住民税の取扱い、傷病手当金、復職判定、復職後の勤務配慮などをおこないます。休職者対応は、本人の健康情報を扱うため、プライバシー保護にも注意が必要です。
復職時には、主治医の意見だけでなく、産業医の意見や会社としての就労可否判断も重要です。復職可否や、場合によっては業務軽減や配置変更なども検討し、本人・上司・人事で認識をそろえましょう。
2-11. 労務トラブルへの対応
労務管理では、未払い賃金、ハラスメント、メンタル不調、問題行動、退職トラブルなどに対応する場面があります。紛争化したり、懲戒処分を検討する場合には、事実確認、証拠保全、本人へのヒアリング、就業規則との照合、処分の相当性判断が必要です。
労務トラブルでは、初動を誤ると解決が難しくなります。感情的に対応せず、時系列、関係者、証拠、会社が取った対応を整理しましょう。
社労士や弁護士につなげる場合でも、会社側で状況を正確に整理できているかが、その後の対応の質を左右します。裁判例や行政通達の考え方を踏まえて判断する場面もあるため、専門家へ相談する基準を決めておくことが大切です。
3. 労務管理の担当者に必要なスキルや資格


労務管理は、法律知識だけでも、事務処理能力だけでも十分ではありません。法令を理解し、社内ルールへ落とし込み、従業員や管理職と調整しながら、証跡を残して運用する力が求められます。
3-1. 労働法や社会保険に関する基礎知識
労務管理担当者には、労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、社会保険・雇用保険に関する基礎知識が必要です。すべてを暗記する必要はありませんが、どの論点でどの法令を確認すべきかを判断できることが重要です。
関連記事:労働基準法とは?法律の要点や雇用者側の実務上のルールをわかりやすく解説
3-2. 勤怠・給与・従業員情報を正確に扱うデータ管理力
労務管理では、勤怠、給与、社会保険、扶養、休職、異動、退職など、多くの個人情報を扱います。入力ミスや更新漏れは、給与誤りや手続き漏れにつながります。データの更新タイミング、権限管理、履歴管理を整える力が必要です。
また、労務担当者には、データから異変を察知する力も求められます。例えば、残業時間が急に増えている、遅刻や欠勤が増えているといった兆候から、長時間労働、メンタル不調、配置ミスマッチ、給与計算ミスなどの可能性を読み取れることがあります。
データを記録するだけでなく、何が起きているのかを早めに把握し、問題が大きくなる前に対応につなげる視点が必要です。
3-3. 法改正や社内ルール変更を反映する力
法改正があった場合、就業規則、社内規程、労働条件明示書、労使協定、勤怠システム、給与計算設定、従業員向け説明資料などを更新する必要があります。法改正情報を知るだけでなく、自社の運用にどう影響するかを判断し、必要な変更へ落とし込む力が求められます。
3-4. トラブルに適切に対応できるリスク管理能力
労務トラブルでは、早い段階で事実関係を整理し、関係者へのヒアリング、証拠保全、就業規則との照合をおこなう必要があります。感情的なやり取りだけで対応すると、説明責任を果たせず、紛争が長期化するおそれがあります。
担当者には、相手の主張を聞き取る力だけでなく、記録を残し、必要なタイミングで社労士や弁護士へ相談する判断力も求められます。
3-5. 労務管理に役立つ資格
労務管理に役立つ資格には、さまざまなものがあります。資格の取得を目指すことで、労務管理を担当するうえで役立つ知識が身につけられ、実務にも活かすことができます。ここからは、労務管理において持っておくとよい資格について詳しく紹介します。
■社会保険労務士
社会保険労務士は、労働・社会保険関係法令に関する国家資格です。行政機関への書類作成代行や、労働社会保険関係法令にもとづく帳簿・書類の作成など、専門性の高い業務に関わります。会社の労務リスク管理や制度設計にも役立ちます。
参考:社会保険労務士試験のご案内|全国社会保険労務士会連合会試験センター
■労務管理士
労務管理士は「労務管理」の業務遂行能力を認定する民間資格であり、会社の経営者や人事担当者にとって有用です。この資格は一般社団法人日本人材育成協会と一般社団法人日本経営管理協会が運営しています。
労務管理の基本知識だけでなく、具体的な業務内容やそのための専門的な知識も身につけられ、会社の労務管理体制の向上に役立つでしょう。
■衛生管理者
労務管理において持っておくとよい資格として、衛生管理者も挙げられます。常時50人以上の従業員を使用する事業場では衛生管理者を選任する必要があります。衛生管理者は従業員の健康維持・増進、職場環境の整備、労働環境の改善など、社内の衛生環境を管理する重要な役割を担います。衛生管理者の資格は、労働安全衛生法で選任が義務づけられた国家資格であり、会社の経営において欠かせない存在です。
参考:第一種・第二種衛生管理者の紹介|公益財団法人安全衛生技術試験協会
■産業カウンセラー
産業カウンセラーは、働く人のメンタルヘルスや職場の人間関係、キャリア形成などの相談支援に関する民間資格です。休職・復職対応、ハラスメント相談、メンタル不調者への初期対応などで、傾聴や面談の基礎を学ぶのに役立ちます。
■キャリアコンサルタント
キャリアコンサルタントは、職業選択やキャリア形成を支援する国家資格です。従業員の入社後のオンボーディング、育成、復職後の働き方、シニア人材の活用など、キャリア支援をおこなう際に役立ちます。
■そのほかの資格
そのほか、ビジネス・キャリア検定やマイナンバー実務検定、個人情報保護士なども労務管理に役立ちます。担当業務に応じて、必要な分野の知識を補うとよいでしょう。
4. 労務管理がうまくいかない会社の共通点


労務管理がうまくいかない会社の共通点として、このような点が挙げられます。
- 業務が標準化されず担当者任せになっている
- 法改正に伴うアップデートができていない
- 証跡を残しておらず後から説明できない
3つそれぞれの概要を解説します。
4-1. 業務が標準化されず担当者任せになっている
労務管理がうまくいかない会社では、業務手順が標準化されておらず、特定の担当者に処理が属人化しているケースが見られます。マニュアルがなく担当者独自の方法になっている、ノウハウが口頭でしか共有されていない、担当者が不在になると作業が止まってしまうといった状態です。
このような属人化が進むと、ミスの発見が遅れたり、担当者変更時に引き継ぎ漏れが発生したりするリスクが高まります。また、「何を・いつまでに・どの手順で進めるか」が担当者の頭の中にしかないため、業務改善も進みにくくなります。
チェックリストや業務マニュアル、労務カレンダーを整備し、だれが担当しても一定の品質で対応できる状態を作ることが重要です。
4-2. 法改正に伴うアップデートができていない
労務分野は、働き方改革の推進や社会情勢の変化を背景に、法改正が頻繁におこなわれる領域です。社会保険の適用拡大、育児・介護休業制度の見直しなど、毎年のように対応が必要な制度変更が発生しています。
労務管理がうまくいっていない会社では、最新ルールを把握できていない、過去の制度のまま運用を続けている、担当者個人の知識に依存しているといった状況が起きがちです。また、法改正の情報を知っていても、就業規則、社内書式、給与計算、勤怠システム、現場向けの案内に反映できていなければ、実務上は対応できているとはいえません。
法改正情報を定期的に確認し、自社に関係する変更点を洗い出したうえで、規程・書式・システム・現場運用をまとめて更新する体制を整えることが重要です。
4-3. 証跡を残しておらず後から説明できない
労務管理では、何を判断したかだけでなく、なぜその判断をしたかを説明できることが重要です。勤怠修正、残業承認、休職面談、ハラスメント相談、懲戒処分、従業員代表の選出などは、記録が残っていないと後から説明が難しくなります。
労基署調査やトラブル対応では、口頭説明だけでは足りません。申請書、承認履歴、面談記録、議事録、通知文などを残す運用を整えましょう。
5. 労務管理の担当者が押さえておきたい近年のトピック


近年は、働き方の多様化、ハラスメント対策、法改正対応など、労務管理の難易度が上がっています。ここでは、労務管理担当者が押さえておきたい主なトピックを整理します。
5-1. 多様な働き方への対応
少子化による労働力不足や人材獲得競争の激化を背景に、会社にはさまざまな人材が働き続けられる環境づくりが求められています。政府も、テレワークや副業・兼業、柔軟な労働時間制度などを通じて、多様で柔軟な働き方を後押しする方向性を示しています。
そのため、テレワーク、副業・兼業、時差出勤、フレックスタイム制、短時間勤務などへの対応は、単なる福利厚生ではなく、人材確保や定着にも関わる重要な労務管理テーマです。制度を導入するだけでなく、労働時間管理、情報セキュリティ、評価、コミュニケーション、健康確保をあわせて設計する必要があります。
5-2. 生産性を意識した業務改善
労務管理は、定型業務が多い一方で、正確性が強く求められる分野です。
会社の生産性を高めるためには、労務管理をはじめとした「バックオフィス」「間接部門」の業務効率化が不可欠です。昨今では電子化・ペーパーレス化が進み、従来のように紙で管理し、複数回の承認作業を要するような手間は大幅に削減されつつあります。
これからの労務管理に求められるのは、ただルーティーン業務をこなすのではなく、「どのように効率化・改善できるか」を常に考えながら行動する姿勢でしょう。AIやITツールを活用すれば、書類作成、問い合わせ対応、規程確認、データ集計などを効率化できる可能性があります。
ただし、労務管理では法的判断を扱うため、AIの回答をそのまま使うのは危険です。最終確認は人がおこない、就業規則や最新法令と照合する運用が必要です。
5-3. ハラスメントへの対策
労務管理における重要な課題のひとつが、ハラスメント対策の徹底です。職場では、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメントなど、さまざまなハラスメントが問題になります。世代や価値観の違い、働き方の多様化により、従業員が安心して相談できる環境を整える重要性も高まっています。
さらに、2026年10月1日からは、カスタマーハラスメント対策と求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策も事業主の義務になります。カスハラ対応では、顧客からの不当な要求や暴言から従業員を守るため、相談窓口、対応フロー、現場からのエスカレーション基準を整備することが重要です。
就活セクハラ対応では、採用面談、インターン、OB・OG訪問、オンライン面談など、採用活動全体のルールを見直す必要があります。
ハラスメント対策では、規程を作るだけでなく、従業員への周知や管理職研修、相談記録の管理、被害者・相談者への不利益取扱い防止まで含めて運用することが大切です。
参考:労働施策総合推進法の改正(パワハラ防止対策義務化)について|厚生労働省
参考:令和7年の労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)等の一部改正について|厚生労働省
5-4. 労働基準法の大改正
2025年1月に厚生労働省の労働基準関係法制研究会報告書が公表され、労働基準法改正に関する多くの論点が示されています。労働時間の情報開示、連続勤務の上限、勤務間インターバル、法定休日の特定、過半数代表者の選出手続きなど、会社実務への影響が大きい項目が含まれます。
労務管理では、同時期に複数の法改正や制度変更が重なることがあります。報道や行政資料を確認しつつ、自社に関係する論点を早めに整理しておきましょう。
関連記事:2026年の労働基準法の改正は見送り?施行時期や議論中のテーマを解説
昨今、働き方や労働環境に対する社会的な関心は高まっており、法改正も相次いでいます。労務管理は以前よりも複雑になっており、労働基準監督署の是正勧告を受けたり、従業員とのトラブルにつながりかねません。
法改正については、報道だけでなく厚生労働省などの一次情報も確認し、施行時期に合わせて自社の就業規則、社内書式、システム設定、現場運用を見直すことが重要です。社労士から法改正情報をいち早く共有してもらう、心配な点が多い会社では一度労務監査を依頼するなど、外部専門家を活用することも有効です。
6. 労務管理を効率化するならITツールの導入がおすすめ


労務管理の課題を解決し、業務を効率化するためには、労務管理システムの導入がおすすめです。ここでは、労務管理システムのメリットと選び方について詳しく紹介します。
6-1. 労務管理システムのメリット
労務管理システムを導入することで、入力や計算などの業務を自動化し、人的ミスを未然に防ぐとともに、業務の効率化が実現できます。また、情報の更新もリアルタイムでおこなえるため、スムーズな情報共有が可能となり、迅速な意思決定にもつながります。
さらに、システムによってはアップデート機能により、最新の法改正に自動で対応できるものもあります。これにより、労務担当者が都度手動で対応する必要がなくなり、業務負担を軽減できるだけでなく、コンプライアンス違反のリスクも抑えることができます。
ただし、労務管理システムにはさまざまな種類があり、導入・運用には一定のコストがかかる点にも注意が必要です。そのため、自社の業務内容や規模に合ったシステムを見極め、慎重に選定・導入を進めることが重要です。
6-2. 労務管理システムの選び方
労務管理システムを導入する場合、まずは自社の労務管理の課題を洗い出し、「何を改善したいのか」という目的を明確にすることが大切です。その目的に沿って、必要な機能が搭載されているシステムを選びましょう。
また、使いやすさも重要な選定基準です。労務管理担当者のITリテラシーも考慮しながら、誰でも直感的に操作できるシステムを選ぶことで、導入後の運用もスムーズになります。そのほかにも、サポートやセキュリティ、他システムとの連携性も重要な選定ポイントです。
複数のツールを比較・検討しながら、自社の業務フローや規模にあった最適な労務管理システムを導入しましょう。
関連記事:労務管理ソフトを導入するメリットや注意点・比較する際の選び方総まとめ
7. 労務管理体制を整え安心して働ける職場づくりにつなげよう


労務管理は、従業員の働き方に関するルールを整備・運用・統制する業務です。法定三帳簿、入退社手続き、就業規則、社会保険、勤怠、給与、安全衛生、ハラスメント対応、休職・復職、労務トラブル対応など、業務範囲は広く、会社経営の土台を支えています。
労務管理を適切におこなうには、法令知識だけでなく、データ管理力、法改正への対応力、現場との調整力、証跡を残すリスク管理能力が必要です。担当者任せにせず、業務を標準化し、必要に応じてITツールや専門家を活用することで、安定した運用につなげられます。
労務管理体制を整えることは、トラブルを防ぐだけでなく、従業員が安心して働ける職場づくりにもつながります。自社の現状を見直し、法令に沿った運用と働きやすい環境づくりを進めていきましょう。
関連記事:労務管理・人事管理のペーパーレス化とは?メリット・デメリット解説や具体例紹介
基礎業務を効率化できる方法を解説!
はじめて労務管理を担当する方や、経験の浅い担当者の方であれば、「労務管理とは具体的になにから初めていいかのかわからない・・」とお困りの方も多いでしょう。
さらに労務管理業務の中で生まれる課題として「組織拡大にともない、従業員情報を管理できておらず困っている」
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