ロクイチ報告とは?法的な義務・対象企業・提出先を解説
更新日: 2025.3.8
公開日: 2025.3.8
OHSUGI
「ロクイチ報告の概要や義務について知りたい」
「ロクイチ報告はいつまでに提出するのか知りたい」
上記のようにお悩みの方も多いでしょう。
ロクイチ報告とは、毎年、事業主が国へ書類の提出により実施する、自社の高年齢者や障害者の就業機会の確保や雇用状況に関する報告のことです。
また、条件に該当する事業主には、法律で定められた提出義務があります。
本記事の内容は、ロクイチ報告の概要や義務、対象企業や提出先、障害者雇用状況報告書と高年齢者雇用状況報告書の未提出に対する各罰則の解説です。
そのほかに、実施の注意点や電子申請の可否、いつまでに提出するのかについても解説しているため、ぜひ参考にしてください。
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1. ロクイチ報告とは
ロクイチ報告とは、高年齢者や障害者の就業機会の確保や雇用状況について、事業主が厚生労働省に対して毎年おこなう報告のことです。呼び名の由来にもなっている、6月1日時点の状況を報告します。
目的は、一般的に就業が困難とされる高年齢者や障害者に対する雇用の安定や促進を図り、企業の意識も向上させることです。
報告内容は、以下の状況把握のために使われます。
- 65歳まで・70歳までの雇用確保措置の実施
- 障害者の雇用
- 障害者の雇用率の達成
また、必要に応じて実施される公共職業安定所による助言や指導などの基本情報としての活用です。公共職業安定所は、ハローワークとも呼ばれています。
参考:令和6年高年齢者・障害者雇用状況報告の提出について|厚生労働省
2. ロクイチ報告の提出は法律による義務
ロクイチ報告の提出は、以下の法律による義務です。
- 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律
- 障害者の雇用の促進等に関する法律
対象となる企業は、毎年、厚生労働大臣に対して高年齢者雇用状況報告と障害者雇用状況報告をしなければなりません。
法律による義務があるため、未報告や虚偽の報告に対する罰則も定めてあります。
参考:令和6年高年齢者・障害者雇用状況報告の提出について|厚生労働省
参考:高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第52条|e-Gov法令検索
参考:障害者の雇用の促進等に関する法律第43条|e-Gov法令検索
3. 障害者雇用状況報告書・高年齢者雇用状況報告書の未提出に対する各罰則
障害者雇用状況報告書・高年齢者雇用状況報告書の未提出に対する各罰則は、以下のとおりです。
高年齢者雇用状況報告書の未提出に対する罰則 | 無し |
障害者雇用状況報告書の未提出に対する罰則 | 30万円以下の罰金の対象となる |
障害者雇用状況報告においては、障害者雇用促進法に基づき、報告しない場合だけでなく虚偽の報告をした場合にも罰則の対象となります。
高年齢者雇用状況報告後に必要に応じて実施されるのは、企業に対する公共職業安定所からの勧告や指導です。事業主が勧告や指導に従わない場合には、企業名が公表される可能性があることも覚えておきましょう。
参考:障害者の雇用の促進等に関する法律第86条|e-Gov法令検索
4. ロクイチ報告の対象企業
ロクイチ報告の対象企業は、以下のとおりです。
高年齢者雇用状況報告の対象企業 | 従業員20人以上規模の企業 |
障害者雇用状況報告の対象企業 | 企業全体の常用雇用労働者が40人以上の全企業 |
障害者雇用状況報告においては、常用雇用労働者数から除外率に応じた労働者数を控除した数が40人以上の企業が対象となります。また、雇用する障害者数が0人の場合も報告義務が生じることを覚えておきましょう。
除外率とは、一般的に障害者の就業が困難とされる仕事に従事する業種(除外率設定業種)の事業所に対する、常用労働者数の除外割合のことです。除外率設定業種においては、除外率により障害者の雇用義務が軽減されます。
参考:障害者雇用状況報告書の提出義務と提出方法等について|厚生労働省
参考:「令和6年高年齢者及び障害者の雇用状況報告」について|厚生労働省 東京労働局
5. ロクイチ報告の提出はいつまで?
ロクイチ報告における以下の書類の提出期限は、毎年7月15日までです。
- 高年齢者雇用状況報告書
- 障害者雇用状況報告書
毎年5月下旬から6月初旬ごろ、公共職業安定所から上記の書類が、対象企業に郵送で届きます。6月1日時点の雇用人数などを算出し、届いた書類に必要事項を記入して、7月15日までに提出しましょう。
6. ロクイチ報告の提出先
ロクイチ報告の提出先は、管轄の公共職業安定所か、一部地域では労働局です。提出期限の7月15日までに、持参もしくは郵送で提出しましょう。
支社や支店などがある場合は、支社や支店の分を本社でとりまとめて、本社を管轄する公共職業安定所に提出します。
各企業が提出・申請した報告内容は、公共職業安定所や労働局を経由して厚生労働大臣に報告される仕組みです。
参考:令和6年高年齢者・障害者雇用状況報告の提出について|厚生労働省
7. ロクイチ報告は電子申請も可能
ロクイチ報告は、電子申請も可能です。
電子申請では、GビズIDもしくはe-Govアカウントを用いた電子署名により、デジタル庁のe-Gov電子申請システムから申請します。申請前にGビズIDもしくはe-Govアカウントを用いた有料の電子署名の取得が必要です。
なお、電子申請で提出する書類や添付書類には指定の様式があります。ダウンロードして入力する添付書類については、毎年6月1日以降にe-Govホームページから該当の書類をダウンロードして入力しましょう。
参考:令和6年高年齢者・障害者雇用状況報告の提出について|厚生労働省
8. ロクイチ報告の実施の注意点
ロクイチ報告の実施の注意点は、以下の4つです。
- 正確な時点の情報を用いる
- 就業規則で高年齢雇用状況を確認する
- 雇用障害者数を適切に数える
- 書き方を厚生労働省の記入要領で確認する
8-1. 正確な時点の情報を用いる
ロクイチ報告を実施する際の注意点の一つは、正確な時点の情報を用いることです。正確な時点とは、6月1日になった瞬間(午前0時)を指します。
必要書類に記入する際には、上記の正確な時点の状態を把握した上で書き込みましょう。
電子申請にあたりe-Govホームページからダウンロードが必要な書類も、6月1日以降にダウンロードして入力しなければなりません。
8-2. 就業規則で高年齢雇用状況を確認する
高年齢者雇用状況報告書へ記入する際には、就業規則で高年齢雇用状況を確認することも、ロクイチ報告の実施の注意点です。
実状や慣行の記入ではなく、就業規則の内容を記述しなければなりません。例えば、慣行による定年制は存在するが就業規則に定年制の記載がない場合は、無しと記入します。
就業規則に以下のような制度の定めがある企業では、雇用状況について記述する際、過去1年間の定年到達者数も書き込まなければなりません。
- 定年制度
- 継続雇用制度
各制度の定めの上限年齢により記入欄が異なるため注意が必要です。
8-3. 雇用障害者数を適切に数える
雇用障害者数の数え方も、ロクイチ報告を実施する際の注意点の一つです。雇用障害者数の数え方では、障害区分と程度と所定労働時間数により、以下のようにカウント率が異なります。
週所定労働時間 | 30時間以上 | 20時間以上30時間未満 | 10時間以上20時間未満 |
身体障害者 | 1 | 0.5 | – |
重度の身体障害者 | 2 | 1 | 0.5 |
知的障害者 | 1 | 0.5 | – |
重度の知的障害者 | 2 | 1 | 0.5 |
精神障害者 | 1 | 0.5 | 0.5 |
また、常用雇用労働者の週所定労働時間別の名称は次のとおりです。
週所定労働時間 | 名称 |
20時間以上30時間未満 | 短時間労働者 |
10時間以上20時間未満 | 特定短時間労働者 |
なお、雇用障害者数にカウントする労働者は、障害者手帳の所持が必要となります。
8-4. 書き方を厚生労働省の記入要領で確認する
ロクイチ報告の実施の注意点として、書き方を厚生労働省の記入要領で確認することも挙げられます。
高年齢者雇用状況報告書は、制度や定年の年齢などの状況別で書き方が異なるためです。障害者雇用状況報告書においても、除外率設定業種を営む複数の事業所があるケースでは、書き方が異なります。
自社の状況に適した書き方や様式を選ぶためにも、厚生労働省の記入要領を熟読して参照しながら必要事項を書き入れましょう。
参考:障害者雇用状況報告書の提出義務と提出方法等について|厚生労働省
9. ロクイチ報告について理解を深めよう
ロクイチ報告とは、事業主が厚生労働省に対しておこなう、自社の高年齢者や障害者の就業機会の確保や雇用状況に関する報告のことです。法律で定められた義務があり、未報告や虚偽の内容に対する罰則もあります。
必要書類を揃えて必要事項を書き入れ、郵送や持参の場合は管轄の公共職業安定所に提出しましょう。なお、電子申請も可能ですが、専用の様式が用意されているため注意が必要です。
本記事の実施の注意点なども参考にしつつ、ロクイチ報告について理解を深めて、期限までに申請や提出を完了してください。
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