雇用契約を締結する際に押さえておくべき6つのチェックポイント
更新日: 2026.6.2 公開日: 2020.11.19 jinjer Blog 編集部

新しく社員を雇う場合、労働契約として労働者と使用者の間で合意の上、雇用契約書を締結するのが一般的です。この雇用契約書は労働基準法に則った内容でないと、労使間のトラブルになりやすく裁判に発展するケースもあります。
本記事では雇用契約書を締結する際に押さえておくべき6つのチェックポイントと、トラブルになりやすいポイントについて解説します。
目次
雇用契約の基本から、試用期間の運用、契約更新・変更、万が一のトラブル対応まで。人事労務担当者が押さえておくべきポイントを、これ一冊に凝縮しました。
法改正にも対応した最新の情報をQ&A形式でまとめているため、知識の再確認や実務のハンドブックとしてご活用いただけます。
◆押さえておくべきポイント
- 雇用契約の基本(労働条件通知書との違い、口頭契約のリスクなど)
- 試用期間の適切な設定(期間、給与、社会保険の扱い)
- 契約更新・変更時の適切な手続きと従業員への合意形成
- 法的トラブルに発展させないための具体的な解決策
いざという時に慌てないためにも、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 雇用契約の締結とは?


雇用契約は労働者を守る契約で、労働の対価に雇用主から金銭を受け取る約束を双方がするものです。給与内容や労働時間、就業場所、昇給や退職に関連する労働条件など、労働と賃金に関連する内容が中心の契約になります。
こうした雇用契約を締結する意義は、労働のルールを定めることで労働者と雇用主の双方を守ることにあります。雇用主の一方的な都合で労働者に不利益を与えることや、反対に労働者が雇用主に従わずに業務が停止することを防げます。
1-1. 雇用契約の締結の流れ
雇用契約を締結する手順は以下のとおりです。
- 必要な書類を準備する
- 労働条件を決める
- 契約内容の説明をおこなう
- 雇用契約を締結する
雇用契約の締結時に使用する書類が「雇用契約書」または「労働条件通知書」です。書式は自由ですが、抜け漏れを防ぐ観点から、必要事項を網羅したひな形を用意しておくのが安心です。なお、この2つの書類の役割については後の章で詳しく解説します。
書類が準備できたら、雇用形態に応じて労働条件を決めます。労働基準法やパートタイム・有期雇用労働法など法律を下回らないよう注意しましょう。
また、書類の提示とあわせて対面で説明をおこない、双方で認識の食い違いをなくしておくことが、トラブルを避ける上で重要です。契約内容に合意したら署名・捺印の上、双方で書面を取り交わして雇用契約を締結します。
1-2. 雇用契約の締結日はいつ?
雇用契約の締結日は、契約内容に合意して書類に署名・捺印をした日となります。そのため、書類には署名・捺印に加えて、契約締結日も記入することが重要です。なお、締結のタイミングは、内定日や入社日に書面を取り交しておこなうのが一般的となっています。
また、ごく稀に入社日を過ぎてから雇用契約書や労働条件通知書を渡すケースがあります。労働基準法では、労働者を採用するときに労働条件の明示を義務付けていることから、このようなケースは違法となる可能性があるため注意しましょう。
1-3. 雇用契約と労働契約の違い
雇用契約と似た言葉に、労働契約があります。両者の違いについても、ここで押さえておきましょう。
労働契約とは、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者が労働の対価として賃金を支払うことを、労働者と使用者が双方で合意する契約を指します。
一見すると、雇用契約も労働契約も同じ内容ではありますが、違いはそれぞれが基づく法律にあります。労働契約は労働契約法6条で規定されているのに対し、雇用契約は民法623条で規定されています。
規定されている法律の違いだけで意味はほぼ同じであることから、人事労務の分野では雇用契約も労働契約もほぼ同義として使われるのが一般的です。
2. 雇用契約を締結する際の6つのポイント


雇用契約書の作成は義務ではありませんが、労働基準法第15条および労働基準法施行規則第5条によって、賃金や労働時間などの絶対的に明示すべき労働条件については書面による交付が義務とされています(ただし、労働者が希望した場合は電子交付も可能)。
雇用契約を締結する際に留意したいチェックポイントを6つ見ていきましょう。
2-1. 労働契約の期間
まず非常に重要なポイントは、労働契約の期間です。
有期雇用か無期雇用かという点が重要ですが、期間に関連する規定がある場合は必ず知らせなければいけません。
とくに有期雇用の場合は、契約の開始日と終了日に加えて、労働契約を更新する場合の基準に関する事項も記載する必要があります。また、1回の契約期間は原則として3年が上限です(専門的な知識等を有する労働者、満60歳以上の労働者に関しては5年)。さらに、必要以上に期間を細切れにしないよう配慮しなくてはいけません。
どのような条件で更新や契約の終了が判断されるのか、その通知はどのようにされるのかなど、必要事項を網羅するようにしましょう。
参考:労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール|厚生労働省
関連記事:有期雇用契約の雇用期間は何年?上限期間や契約時・変更の注意点を解説
2-2. 就業の場所と業務内容
実際に労働者が働く場所と、どのような業務に従事するか、また今後変更される可能性のある範囲を記載します。
募集要項や面接時と業務内容が異なる場合は、トラブルに発展することがあります。実際に業務を始めたら想定よりも幅広い仕事があったり、一時的な転属があったりするケースも多々ありますが、そのような可能性がある場合は事前に説明し、理解を得ておくことが重要です。
2-3. 就業時間、時間外労働、休憩時間、休日、休暇
雇用契約には始業・終業時間だけでなく、時間外労働の有無や休憩時間、休日についても書いておかなければなりません。なお、労働時間が8時間以上の場合は1時間、6時間以上の場合は45分の休憩が法律上必要です。休日についても、週1日または4週で4日の休日を最低でも与えなくてはならないため、法律の内容を下回らないよう注意しましょう。
また、3交代などの交代制の業務の場合には、就業時転換に関する事項も明示が必須です。
とくに時間外労働や休日出勤、休憩時間の取り扱いは労使間で勘違いが発生しやすい部分です。明確でわかりやすい表記を心掛け、特殊な形態を採用している場合は十分に説明をおこないましょう。
2-4. 賃金
労働者にとって賃金は非常に重要なポイントです。労働基準法では賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く)に関して、次にあげる項目を労働条件として明示することを義務付けています。
- 賃金の決定、計算及び支払いの方法
- 賃金の締切り日
- 賃金の支払時期
- 昇給に関する事項
なお、退職手当や賞与、臨時に支払われる賃金などは「相対的明示事項」と呼ばれ、これらが会社に制度としてある場合に限り、明示が義務付けられています。
2-5. 退職
雇用契約を締結する際には、退職についても社員に知らせる必要があります。特に、解雇に至る事由や手続き(条件)なども、具体的な内容を記載して提示します。
2-6. 口頭による明示が可能なポイント
賃金や労働条件は書面による交付が労働基準法によって義務付けられていますが、それとは別に口頭による明示がおこなえる項目もあります。
書面にする必要はないものの、以下のようなお金にかかわる事柄は、労働者に対して明示しなければなりません。
- 昇給
- 退職手当
- 賞与
- 臨時に支払われる賃金
※なお、昇給と退職手当、賞与に関しては、パートやアルバイト、有期雇用者に対して口頭のみでの明示ができません。書面等による明示が必要です(パートタイム・有期雇用労働法6条)。
さらに、以下の項目についても口頭で明示しなければなりません。
- 安全・衛生に関する事柄
- 職業訓練
- 災害補償
- 疾病扶助
2-7. 2024年4月からの変更点
2024年4月から労働条件明示のルールが4つ追加されています。
- 就業場所・業務変更の範囲
- 更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容
- 無期転換申込機会
- 無期転換後の労働条件
このうち1はすべての労働契約締結時と、有期労働契約の更新時に明示しなければいけません。2は有期労働の締結時と更新時、3~4は無期転換申込権が発生する契約の更新時に明示が必要です。
記載すべき事項を押さえたところで、実際に労働条件通知書(兼雇用契約書)のサンプルがほしいという方向けに、当サイトでは社労士が監修した労働条件通知書のフォーマットを配布しています。
2024年4月に労働条件の明示ルールが変更された点も反映した最新のフォーマットで、雇用契約書として兼用することもできる雛形です。「これから作る雇用契約書の土台にしたい」「労働条件通知書を更新する際の参考にしたい」という方は、ぜひこちらからダウンロードの上、お役立てください。
3. 雇用契約を締結する際に雇用者が用意する書類


雇用契約を締結する際に、雇用者が用意する書類は以下2つです。
- 雇用契約書(任意)
- 労働条件通知書(必須)
それぞれについて詳しく解説します。
3-1. 雇用契約書
雇用契約書は、雇用主と労働者双方にとって重要な書類です。法的に交付は必須ではありませんが、万が一の訴訟時には有効な証拠となるため、作成しておくことがおすすめです。
なお、就業規則を下回る内容の雇用契約書は認められませんので、契約内容が原則に従っているかも必ず確認しましょう。
3-2. 労働条件通知書
労働条件通知書は、雇用契約締結において必ず交付しなければならない重要な書類です。この通知書には、労働契約の期間や就業場所、始業・終業時間など、絶対的に明示すべき事項が記載されます。
労働者が希望する場合は、電子データでの交付も可能です。最近では、書類の簡略化を図るために、労働条件通知書と雇用契約書を兼用した形式が増えてきています。
なお、労働条件通知書の交付義務違反には罰則が設けられており、違反した場合は30万円以下の罰金が科せられます。
4. 雇用契約の締結後にトラブルになりやすいこと5選


雇用契約を締結する場合には、締結後のトラブルをできるだけ避ける必要があります。雇用契約では以下5点がトラブルになりやすいため注意しましょう。
4-1. 時間外労働の時間
雇用契約で大きなトラブルになりやすいのが時間外労働です。求人や面接では残業がないとされていたのに、実際に働き始めると時間外労働があると労働者は不満を抱えます。
特に固定残業代を導入している企業は注意が必要です。
たとえば残業手当を含む30万円を月給にするという記載がある場合、30万円のうちのいくらが残業代に該当するのか労働者には理解できません。そのため、厚労省では固定残業代を採用する際、次の項目を明記するよう呼び掛けています。
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業の時間数と金額の計算方法
- 固定残業時間を超える時間外労働や 休日労働、深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨
労使トラブルの原因になるため、基本給と固定残業代と分けて、しっかり明示するよう心がけましょう。
参考:固定残業代 を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。|厚生労働省
4-2. 契約更新の有無
正社員ではなく、契約社員をはじめとした有期雇用社員との間で起こりがちなのが更新に関連する問題です。
雇用契約では契約期間を明示しなければなりませんが、契約更新の判断基準が不明瞭な雇用契約書を作成してしまう企業もあります。このようなケースでは契約を打ち切ることになった場合などに大きなトラブルになる可能性があります。
労働者も契約更新の基準が明確でなければ不安になることでしょう。そのため、契約更新の基準を明示しトラブルを未然に防ぎましょう。
また、有期雇用と無期雇用の社員の間で不合理な労働条件の違いが生じることは、労働契約法第20条やパートタイム・有期雇用労働法によって禁止されています。非正規社員と雇用契約を結んでいる場合、契約更新以外にも気をつけるべき内容があります。
4-3. 有給休暇の取得
毎週与えられる休日については雇用契約書に記載されているものの、有給休暇については明示されていないケースもあります。労働基準法により、労働者は雇用形態にかかわらず有給休暇を取得することができます。
具体的には雇い入れ日から6ヵ月以上継続勤務し、その6ヵ月間の全労働日の8割以上出勤していることが条件です。なお、有給休暇の付与日数は、所定労働日数や労働時間によって変わります。例えば所定労働日数が週5日であれば、有給休暇の付与日数は10日です。パート・アルバイトなど、所定労働日数が労働者によって異なる場合は、付与日数を誤らないよう注意しましょう。
当サイトでは、雇用契約書の作成方法や雇用契約の結び方、「無期雇用の社員でも毎年契約を結ぶ必要があるの?」などといったよくある疑問をまとめた資料を無料で配布しております。この1冊で雇用契約に関して網羅的に学べる「雇用契約マニュアル」のような資料であるため、雇用契約業務に不安な点があるご担当者様は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
関連記事:年次有給休暇の基本をわかりやすく解説!付与日数や取得時期も紹介
4-4. 口頭で雇用契約を締結する
雇用契約は口頭でも法律上は成立しますが、後々のトラブルを防ぐためには書面で締結することが必要です。口頭だけで契約を交わした場合、労働条件の内容について「言った・言わない」の水掛け論が生じやすく、双方の認識が食い違うことがあります。
とくに口頭契約でトラブルに発展しやすいのが、賃金や労働時間、退職に関する事項です。仮に社員側の認識に誤りがあったとしても、書面がなければ立証が難しいため、企業側が不利に立たされるリスクが高まります。さらに、労働条件通知書を交付していない場合は労働基準法違反となり、罰則が科される可能性もあります。
トラブルを防ぐために、必ず労働条件通知書や雇用契約書を書面(または電子データ)で交付し、双方が署名・捺印した控えを保管しておくことが重要です。
4-5. 辞退者の引き留めをおこなう
無期雇用の雇用契約の場合、法律上、いつでも解約の申し入れが認められています。この場合、申し込みから2週間が経過すれば雇用契約は終了となります(民法627条)。雇用契約締結後の内定辞退についても同様で、強引な引き留めは、法的リスクだけでなく、企業の評判を損なう恐れもあります。
引き留めをおこなう場合は、まず入社のネックとなっている要素を丁寧にヒアリングしたうえで、対応可能な範囲で誠実に向き合う程度にとどめ、最終的な判断は内定者に委ねることが大切です。
5. 雇用契約を締結して労使ともに安心して働ける環境を維持しよう


雇用契約では雇用主が労働者に文書や口頭で明示しなければならないチェックポイントがいくつもあります。複雑に思えますが、雇用契約は雇用主も労働者も安心して仕事をしていくうえで非常に重要なものです。
また、雇用契約の際に交付が必須の労働条件通知書は、電子化が可能です。新入社員が多い、社員の出入りが激しいなどで手続きに手間を感じている方は、システム化を進めることでスムーズに作成・交付をおこなうことができます。
ぜひ、労働者の立場を踏まえて雇用契約を検討し、労使ともにトラブルなく働けるような契約を締結しましょう。
関連記事:雇用契約書・労働条件通知書を電子化する方法や課題点とは?



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