無期雇用は同一労働同一賃金の対象外!リスクや高齢者の特例措置も解説
更新日: 2024.4.11
公開日: 2022.1.31
OHSUGI
契約期間を定めない無期雇用のフルタイム労働者には、同一労働同一賃金が適用されません。無期雇用の場合は同一労働同一賃金が適用されないのではなく、無期雇用かつフルタイムで働く場合のみ同一労働同一賃金の対象外となる点に注意が必要です。
今回は、無期雇用が同一労働同一賃金の対象外となることや、無期雇用におけるリスク、高齢者の特例措置について解説していきます。同一労働同一賃金の対象外になるので、正社員との待遇差があっても違法にはなりませんが、トラブルに発展する可能性があります。
同一労働同一賃金に対応するために労働者の無期雇用転換を検討している方はぜひご一読ください。
▼そもそも「同一労働同一賃金とは?」という方はこちら
同一労働同一賃金とは?適用された理由やメリット・デメリットについて
目次
同一労働同一賃金に罰則はありませんが、放置すると損害賠償のリスクが高くなります。
同一労働同一賃金とは、「正社員と非正規社員を平等に扱う概念」のように認識されていても、具体的にどのような対策が必要かわからない方も多いのではないでしょうか?
本資料では、どのような状態が「不平等」とみなされうるのかや、企業が対応すべきことを4つの手順に分けて解説しております。 自社でどのような対応が必要か確認したい方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 無期雇用フルタイム労働者は同一労働同一賃金の対象外になる
平成25年に労働契約法が改正され、契約更新を重ねて契約期間が通年5年を超えた場合には、無期転換ルールが適用されるようになりました。契約社員・パートタイマー準社員・メイト社員・アルバイト・パートナー社員など、名称によらず契約期間がある労働者が対象です。
同一労働同一賃金は同じ労働に対しては同じだけの賃金を支払う規則ですが、適用するのは短時間・有期雇用労働者・派遣社員のみなので、フルタイムで働く無期雇用労働者には適用されません。
契約が継続されて安定した働き方ができ、長期的なキャリア形成ができるメリットがある一方で、同一労働同一賃金の対象外となるため、トラブルに発展する可能性があります。
1-1. 無期転換ルールが適用されるのはいつから?
無期転換ルールの適用時期は契約期間によって異なります。
仮に契約期間が1年の場合は、5回目の契約期間を終えて6回目の契約を締結した後に無期転換申込権が発生します。従って、契約6年目に無期転換を申し込めば、その後は無期労働契約として扱われます。
一方、契約期間が3年の場合は1回目の契約期間が終了して、2回目の契約時に無期転換申込権が発生します。従って、2回目の契約中に無期雇用として申し込めば、7年目以降は無期雇用契約として取り扱われます。
使用者は、労働者の無期転換の申し込みを断ることはできません。
2. 無期雇用にすることのリスクとは
続いて、同一労働同一賃金における無期雇用のリスクをご紹介します。具体的なリスクには以下のようなものが挙げられます。
- 有期雇用の待遇が改善されないまま引き継がれてしまう
- 正社員と待遇差がある
- 同一労働同一賃金が適用されず待遇が見直されない
それぞれ詳しく確認していきましょう。
2-1. 待遇が改善されないまま引き継がれてしまう
有期雇用の契約を無期雇用にすることのリスクとして、待遇が改善されないまま引き継がれるという点が挙げられます。労働契約法における定めは次のとおりです。
当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。
通年の契約期間が5年を超え、無期雇用転換する場合は、転換前の労働契約が引き続き適用されます。労働契約法でも、上記のように記載されているため、不合理な待遇が改善されないまま無期雇用契約に持ち越されてしまう可能性があります。
詳しくは後述しますが、無期雇用労働者には同一労働同一賃金が適用されないため、待遇差を改善する難易度はさらに高くなります。
2-2. 正社員との間に格差が生じる
先ほども少し触れたとおり、同一労働同一賃金は無期雇用労働者には適用されません。従って、無期雇用労働者と正社員の間に待遇差があっても改善されない可能性が高くなります。
また、有期雇用の時期は待遇差が改善されていたものの、無期雇用転換後に待遇が悪くなってしまったというケースもあります。すぐに改善されるべき格差ですが、場合によっては有期雇用労働者の方が待遇がよく、長年働いた無期雇用労働者は待遇が悪いアンバランスな状況になる可能性もあります。
2-3. 同一労働同一賃金に従って見直しがされない
以上のように、無期雇用労働者と正社員の間に待遇差があっても、見直されない可能性があります。同一労働同一賃金では、業務内容と業務に対する責任の範囲、転勤や人事異動の可能性を含め、同じ労働に値するなら同じ待遇を用意しなければならないとする規則です。
ただし、無期雇用労働者には同一労働同一賃金が適用されないため、正社員と同じ業務内容、責任の範囲、転勤や人事異動の可能性があっても、同じ待遇を受けられない場合があります。
ただし、同一労働同一賃金は適用されないものの、不合理な待遇差は見直される必要があります。場合によっては裁判沙汰のトラブルに発展する可能性もあるので、格差がある場合は注意が必要です。
また、裁判沙汰になる前に格差が生じている場合においては、合理的な理由を説明する責任がありますので、従業員に納得してもらえるように説明しましょう。
当サイトでは、上述した説明責任に関する具体例や不合理だと判断された場合の対応について解説した資料を無料で配布しております。自社の対応について不安な点があるご担当者様は、こちらから「同一労働同一賃金 対応の手引き」をダウンロードしてご確認ください。
3. 高齢者を継続雇用する場合の特例措置
有期雇用が一定期間を超えた場合には、労働者の求めに応じて無期雇用への転換制度が適用されますが、高齢者には特例措置があります。高齢者に対する特例措置とは、定年後再雇用によって採用された有期雇用労働者に適用される特例措置を指します。
定年後再雇用とは、労働人口の不足を補うために導入された制度で、定年を迎えた方でも、希望すれば原則65歳まで同じ企業で働ける制度のことです。定年後再雇用の対象者は一度退職する形をとって、再度再雇用されます。
以上の定年後再雇用で雇用された有期雇用者は、都道府県労働局長の認定を受けていれば、無期転換申込権が発生しない場合があります。すでに無期転換申込権を行使していなければ、対象となります。
関連記事:定年後再雇用は同一労働同一賃金の対象になる?メリット・デメリットも解説
関連記事:同一労働同一賃金における60歳以上の定年後再雇用の扱いとは
3-1. 高齢者に対する無期転換の特例措置を受ける手順
実際に無期転換の特例措置を受けるには、申請書の提出が必要です。雇用管理措置の契約を作成し、作成後は管轄の都道府県労働局長に提出し、認定を受けます。
また、特例措置の適用には労働条件を明示することが必要です。労働条件を明示するのはトラブルを避けるためです。定年後再雇用の対象となる労働者の中には、無期雇用を望む場合があるため、後々のトラブルが発生しないように労働条件として「無期転換申込権が発生しない期間」ということを明示しておきます。
4. 同一労働同一賃金は無期雇用には適用されないが不合理な待遇差にはリスクを伴う
同一労働同一賃金は短時間・有期雇用労働者、つまりパートタイムやアルバイト、契約社員などに適用される規則です。短時間・有期雇用労働者が正社員と同じ業務内容、責任の範囲、転勤・人事異動の範囲で働いている場合は、正社員と同じ待遇を定めなければなりません。
しかし、通年5年の契約期間を終了した有期雇用労働者が申請できる無期雇用の場合には、同一労働同一賃金の規則が適用されません。
無期雇用には安定した職に就けるメリットがありますが、正社員と比較して待遇差がある、有期雇用労働者のほうが待遇が良いなどのデメリットもあります。また、使用者は無期雇用労働者に不合理な待遇差を定めると、損害賠償を請求される可能性があるため注意が必要です。
同一労働同一賃金に罰則はありませんが、放置すると損害賠償のリスクが高くなります。
同一労働同一賃金とは、「正社員と非正規社員を平等に扱う概念」のように認識されていても、具体的にどのような対策が必要かわからない方も多いのではないでしょうか?
本資料では、どのような状態が「不平等」とみなされうるのかや、企業が対応すべきことを4つの手順に分けて解説しております。 自社でどのような対応が必要か確認したい方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
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