労使協定方式や同一労働同一賃金における派遣会社の責任について - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

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労使協定方式や同一労働同一賃金における派遣会社の責任について

書類にサインする様子

同一労働同一賃金では同じ仕事に対しては同じだけの待遇を適用する規則のことを指します。働き方改革の推進に伴い、雇用形態にかかわらない公正な待遇を確保するため法律が改正されました。派遣労働者の待遇を定める労働者派遣法もその一つ。

具体的には、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇差を解消するために、非正規雇用労働者に対する不合理な待遇差を禁止する法令です。法改正後に判決が下された判例もいくつかあり、非正規雇用であることを理由に正社員との待遇に差を設けるのは不合理とする判決が出ています。

本記事では、労使協定方式や同一労働同一賃金における派遣会社の責任、賃金水準、賃金の決定方法について解説していきます。派遣社員の待遇差を解消するために、派遣会社には賃金の水準を定めるために待遇を派遣会社で定めるか、派遣先の待遇に併せるかを選択しなければなりません。ぜひ、ご一読ください。

▼そもそも「同一労働同一賃金とは?」という方はこちら
同一労働同一賃金とは?適用された理由やメリット・デメリットについて

関連記事:労使協定の基礎知識や届出が必要なケース・違反になるケースを解説

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1. 労使協定方式とは?

話し合う様子

派遣会社が指定できる待遇の決定方法は2種類あります。一つが労使協定方式です。派遣社員は契約自体は派遣会社と行いますが、実際の労働は派遣先の企業で行うため、待遇には2つのパターンが適用できます。

労使協定方式では、派遣会社が派遣労働者の待遇を決定します。ただし、派遣会社が自主的に決められるわけではなく、派遣労働者と労働条件を締結するには、労働者の過半数で組織された労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で労使協定を締結する必要があります。

また、労使協定方式で決定できるのは待遇のうち主に賃金部分で、福利厚生施設の利用や教育訓練の実施は、派遣先企業から提供される情報をもとに決定します。

労使協定方式の概要は以下のとおりです。

  • 派遣会社と派遣労働者の間で締結する
  • 労使協定は労働者の過半数を代表する労働組合または過半数を代表する者と締結する
  • 福利厚生施設や教育訓練については派遣先企業の待遇と同じにする必要がある
  • 福利厚生施設や教育訓練については派遣先企業から情報提供を受ける

労使協定方式は、労使協定が正しく締結されており、締結後に労働基準監督署に届出されていることがポイントとなります。

  • 過半数を代表していない者と締結している
  • 労働者の過半数を代表する者の選出方法がふさわしくない
  • 労働基準監督署に届出を行っていない、または認可されていない

などの場合には、労使協定方式は採用できません。

労使協定方式を採用する場合には、社内の目につきやすい場所に設置したり、書面で交付したり、派遣労働者への周知を徹底しましょう。

2. 派遣会社が選択できる派遣先均等・均衡方式との違い

異なる道

一方で派遣先企業の待遇に従って待遇を決定する方式を、派遣先均等・均衡方式といいます。同一労働同一賃金の規則に則って、派遣先企業の労働者と同じ職務をこなしている場合には、派遣社員であることを理由に待遇差を設けてはなりません。

また、均等待遇と均衡待遇が持つ意味を、それぞれ把握しておくとさらに理解が進みます。

  • 均等待遇:職務内容と職務内容・配置の変更範囲が同じ場合は差別的取り扱いを禁止する
  • 均衡待遇:職務内容と職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の相違を考慮した上で不合理な待遇差を禁止する

均等待遇では差別的な取り扱いを禁止し、均衡待遇では不合理な待遇差を禁止している点がポイントです。

また、派遣先均等・均衡方式では派遣先企業の待遇に沿って派遣労働者の待遇を決定するため、派遣先企業から待遇に関する情報を提供してもらう必要があります。

労使協定方式では、

  • 賃金は派遣元企業と派遣労働者の間で決定する
  • 派遣先企業からは福利厚生施設と教育訓練の情報を提供してもらう

の2点が特徴ですが、

派遣先均等・均衡方式では、

  • 待遇は派遣先企業の待遇に沿って定める
  • 派遣先企業からは待遇に関する情報を提供してもらう

という特徴があります。

どちらもメリット・デメリットがありますが、待遇を公開したくない企業と契約する場合は提供情報が少ない労使協定方式を、派遣労働者が賃金水準の高い企業に派遣された場合に相応の賃金を受け取りたい場合は派遣先均等・均衡方式を選ぶなど、ケースバイケースで選択しましょう。

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3. 労使協定方式での派遣労働者の賃金水準とは

賃金が異なる様子

労使協定方式では派遣会社が賃金を決定しますが、派遣会社は同種の業務に従事する一般労働者の賃金と同等以上であることが要件として定められています。

賃金水準は詳細な職種に加えて、能力や経験調整指数を乗じて算出します。基準となる値は0年目で、基準値から1年、2年、3年、5年、10年、20年と平均賃金を増やしていきます。

賃金水準の例は次のとおりです。
[職種][基準値(0年)][1年][2年][3年][5年][10年][20年]

  • 医師:4,433円|5,067円|5,492円|5,710円|5,962円|6,698円|8,361円
  • ソフトウェア作成者:1,303円|1,489円|1,614円|1,678円|1,753円|1,969円|2,457円
  • 受付・案内事務員:943円|1,078円|1,168円|1,215円|1,268円|1,425円|1,778円
  • 清掃員(ビル・建物を除く):1,131円|1,293円|1,401円|1,457円|1,521円|1,709円|2,133円

[参考]厚生労働省『【令和3年度適用】労使協定方式(労働者派遣法第30条の4)「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」について』

4. 派遣労働者の賃金の決定方法

決断までのロジック

最後に、派遣労働者の賃金の決方法として、計算の仕方をご紹介します。先ほどご紹介した賃金水準も参考にしながらご覧ください。

派遣労働者の賃金は、

  • 基本給・賞与・手当等
  • 通勤手当
  • 退職金

ごとに算出されます。

4-1. 派遣労働者の基本給・賞与・手当等の算出方法

基本給や手当などは、「職業別の基準値 × 能力・経験調整指数 × 地域指数」で計算します。

職業別の基準値は賃金構造基本統計調査の特別集計によって、賞与込みの時給に換算して発表されます。

続く能力・経験調整指数は、勤続年数別に応じて計算します。

● 0年:100.0
● 1年:114.3
● 2年:123.9
● 3年:128.8
● 5年:134.5
● 10年:151.1
● 20年:188.6

最後に地域ごとの物価を反映するために、地域指数を乗じて計算が完了します。

関連記事:同一労働同一賃金で各種手当はどうなる?最高裁判例や待遇差に関して

4-2. 派遣労働者の通勤手当・退職金の計算方法

また、派遣労働者の通勤手当は、実費や一般労働者の通勤手当と同等以上を確保します。退職金も一般労働者の情報をもとに設定されたものや一般労働者と同等以上の額を与えなければなりません。

ただし、中小企業退職金共済制度等に加入している場合は、基本給・賞与に対して6%と定められています。1円未満の端数は切り上げて計算します。

関連記事:同一労働同一賃金で交通費はどうなる?判例や課税について解説
関連記事:同一労働同一賃金の退職金の扱いとは?注意点や確認すべきポイント

5. 労使協定方式では同一労働同一賃金を遵守して派遣会社が賃金を定めなければならない

賃金決定の様子

派遣業務を行う派遣会社は、派遣労働者の待遇を労使協定方式または派遣先均等・均衡方式のいずれかによって定めなければなりません。このうち労使協定方式は、派遣会社が賃金水準に従って賃金を決定する方式です。ただし、福利厚生施設や教育訓練に関しては派遣先企業と同等に定める必要があるので、派遣先企業から一部待遇の情報を提供してもらいます。

労使協定方式を採用する場合は、労働者を代表する労働組合または代表者を正しく選出し、締結後は労働基準監督署への届出と派遣労働者への周知を徹底して行いましょう。

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