育児休業は延長できる?延長ができる条件や期間、申請方法を徹底解説
更新日: 2025.9.5 公開日: 2022.9.13 jinjer Blog 編集部

育児休業は原則として、子どもが1歳を迎える前日までの期間内であれば希望する時期に取得できます。しかし、やむを得ない理由がある場合は最長で2歳を迎える前日までの延長が可能なことをご存知でしょうか?
本記事では、育児休業の延長ができる条件や期間、延長申請の方法について解説します。2025年4月施行の法改正による延長手続き厳格化のポイントや、企業の対応方法についても触れるため、ぜひ参考にしてください。
目次
育児・介護休業に関する法改正が2025年4月と10月の2段階で施行されました。特に、育休取得率の公表義務拡大など、担当者が押さえておくべきポイントは多岐にわたります。
本資料では、最新の法改正にスムーズに対応するための実務ポイントを網羅的に解説します。
◆この資料でわかること
- 育児・介護休業法の基本と最新の法改正について
- 給付金・社会保険料の申請手続きと注意点
- 法律で義務付けられた従業員への個別周知・意向確認の進め方
- 子の看護休暇や時短勤務など、各種両立支援制度の概要
2025年10月施行の改正内容も詳しく解説しています。「このケース、どう対応すれば?」といった実務のお悩みをお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 育児休業は延長できる?


育児休業の取得期間は、原則として子どもが1歳を迎える前日までです。ただし、1歳を迎えたあとも一定の条件を満たす場合に限り育児休業を延長できます。育児休業の延長について、従業員に正しく説明するために、延長条件を確認しておきましょう。
1-1. 育児休業とは
育児休業とは、育児・介護休業法によって定められた子どもを養育するための休業制度です。育児休業は一般的に、子どもが1歳の誕生日を迎える前日までの希望する期間で取得できます。また、育児休業中は雇用保険から育児休業給付金が支給され、収入面の補填も受けられます。
育児休業の制度内容や取得条件などの基本については、別記事で詳しく解説しています。基礎知識をおさらいしたい方はあわせてご参照ください。
関連記事:育児休業制度とは?対象者や期間・給与、男性の取得についてわかりやすく解説
1-2. 育児休業の延長の実態
実際に、どの程度の従業員が育児休業を延長しているのでしょうか。
厚生労働省の調査によると、保育所に入れないことを理由に育児休業を1歳以降まで延長したケースは珍しくなく、育児休業取得後に職場復帰した女性従業員のうち約23%が、子が1歳時点で育休を延長しており、約10.9%が再延長しています。この数字から、育児休業の延長制度は多くの従業員が活用していることがわかるでしょう。
2. 育児休業が延長できる条件


育児・介護休業法や関連規定では、次のようなやむを得ない事情がある場合に育休延長が認められています。
- 保育所等の申込みをおこなっているが、利用先が見つからないとき
- 子どもを養育する予定だった配偶者が死亡やけが、病気などで養育が困難な状況になったとき
- 婚姻の解消などで子どもを養育する予定だった配偶者と別居になったとき
- 子どもを養育する予定だった配偶者(女性)が産前産後休業に入ったとき
上記のような理由がある場合は、子どもが1歳6ヵ月になるまで育児休業の延長が可能です。さらに、1歳6ヵ月時点で状況が変わっていない場合は、再度申請をして最長で2歳まで再延長できます。
注意点として、延長措置は努力しても難しかった人への例外的な対応のため、1歳の時点で「2歳まで延長を希望する」といった申請は認められていません。また、これらの育児休業の延長は育休終了後に復職見込みがあることも条件となっています。
2-1. 育児休業の延長が認められない理由とは
前述のとおり、育児休業の延長には法で定められた正当な理由が必要です。そのため延長の申請をしても認められないケースも存在します。
<延長が認められない代表例>
- 延長申請に必要な書類を提出できなかった場合
- 保育所の入園申込日や入園希望日(利用開始日)が、子どもの1歳の誕生日を過ぎてからになっている場合
- 自治体に問い合わせをした際に「年度途中の入所は難しい」「満員で次の募集まで入所困難」と説明を受けた結果、保育所への入園申込自体をおこなわなかった場合
- 延長が認められた後に自ら保育所の入所辞退や申込の取り下げをおこなうなど、育休延長後の復職意思がないと判断される場合
育児休業を延長したい理由が、これらの例に当てはまっていないか確認しましょう。
3. 育休延長時の社内対応と申請手続き


育児休業の延長を申し出られた場合、企業側としてどのように手続きを進めるべきか、押さえておくべき社内フローと申請手続きについて説明します。
3-1. 従業員から延長の申し出を受ける
まずは従業員本人から「育休を延長したい」という申し出を受け付けます。多くの企業では、申請用紙や社内フォームを用意し、社内規程で定めた期限までに回収する運用が一般的です。申請時には、延長理由を証明する書類の提出が必要となる旨をあらかじめ従業員に周知しましょう。
3-2. 育児休業給付金の延長申請をハローワークにおこなう
社内的な育休延長の手続きが完了したら、雇用保険の育児休業給付金の延長手続きを進めます。申請時に必要な添付書類は、次の3つです。
- 育児休業給付金支給申請書
- 賃金台帳、労働者名簿、出勤簿など賃金額や支払状況を証明する書類
- 育児休業延長に必要な確認書類
なお、「育児休業延長に必要な確認書類」は、延長理由によって異なります。
|
育児休業の延長が必要な理由 |
育児休業延長に必要な確認書類 |
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保育所等の申込みをおこなっているが、利用先が見つからない |
①育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書 ②市区町村に保育所等の利用申し込みをおこなったときの申込書の写し ③市区町村が発行する保育所等の利用ができない旨の通知(入所保留通知書、入所不承諾通知書など) |
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子どもを養育する予定だった配偶者が死亡して養育が困難な状況になった |
住民票の写し・母子健康手帳 |
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子どもを養育する予定だった配偶者がケガや病気などで養育が困難な状況になった |
医師の診断書 |
|
婚姻の解消などで子どもを養育する予定だった配偶者と別居になった |
住民票の写し・母子健康手帳 |
|
子どもを養育する予定だった配偶者(女性)が産前産後休業に入ったとき |
産前産後に係る母子健康手帳 |
不明点がある場合は、なるべく早い段階でハローワークに確認しておくことが必要です。
4. 2025年4月施行:育児休業延長の変更点と対応方法


育児休業の延長制度は、2025年4月に変更されています。特に、保育所に入れないことを理由に育休を延長するケースについて、延長申請手続きのルールが厳格化されました。
これは一部で問題視されていた「育休延長狙い」の不適切な利用への対策ともいわれています。ここでは、2025年4月におこなわれた制度の変更点と対応方法を解説します。
4-1. 2025年4月から育児休業の延長審査が厳格化
2025年4月以降、育児休業給付金の延長申請に関する審査基準が厳しくなりました。 従来は「保育所に1ヵ所でも申し込んでいれば入所不承諾通知書の提出で延長可能」という扱いが一般的でした。しかし、今後は「本当に職場復帰のために保育利用の申し込みをおこなったのか」まで確認されるようになります。
現在は提出された書類をもとに、申込が本当に職場復帰のためかどうか、今までより慎重に審査されます。
これに伴って、延長申請時に必要な書類に、新たに①②の書類が追加されました。
|
①育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書 ②保育所等の利用申込書の写し(全ページのコピー) ③市区町村が発行する入所不承諾(入所保留)通知書 |
関連記事:育児・介護休業法改正のポイントは?2025年施行予定の内容・企業の対応方法
4-2. 厳格化に対して企業のすべき対応とは
新たに2つの添付書類が追加されたことで、従来よりも提出書類が増え、ハローワークの内容審査も厳格化されました。具体的に企業としてどのような対応をすべきか、ポイントを整理します。
- 最新ルールの社内共有とマニュアル整備
まず、人事担当者自身が2025年4月改正の内容を正確に把握しましょう。その上で、社内マニュアルや従業員向けガイドを改訂し、新たに必要となる書類や留意点を反映します。延長申請時の必要書類のチェックリストを作成しておくと、提出漏れを防げるでしょう。 - 従業員への事前周知とサポート強化
育児休業取得中の従業員に対し、延長手続きが厳しくなっていることを知らせましょう。厚生労働省が公開しているリーフレットやQ&A資料を活用し、メール配信などで周知すると効果的です。 - 延長申請書類の管理と期限遵守
企業側で取り扱う書類が増えるため、紛失や不備がないよう管理を徹底します。万一、従業員から書類提出が遅れそうな場合は早めにフォローしましょう。
5. 育児休業とパパ・ママ育休プラスの併用も可能


前述のとおり、育児休業の延長には制約があります。ただし、「パパ・ママ育休プラス」を利用することで、通常より長く育休期間を取得することが可能です。
パパ・ママ育休プラスとは、父と母で共に育児休業を取る場合に休業期間を2ヵ月延長できる制度です。この制度を使うと、父母いずれか一方の育休期間にプラス2ヵ月加算されます。
具体的には次の条件をすべて満たすと適用されます。
- 育児休業を取得しようとする本人の配偶者が、子が1歳に達する日以前に育児休業を取得していること
- 本人の育児休業開始予定日が、子の1歳の誕生日以前であること
- 本人の育児休業開始予定日が、配偶者の育児休業の初日以降であること
パパ・ママ育休プラスでは、上記の要件を満たしていれば、やむを得ない理由がなくても1歳2ヵ月まで延長が可能です。そのため、養育者が育児の状況に合わせながら長期間育児に専念できます。
注意点として、母親と父親それぞれの育休が2ヵ月延長されるわけではありません。あくまでも、夫婦で取得のタイミングをずらせば「1歳2ヵ月まで延長できる」ことを理解しておきましょう。
なお、名前の似ている「産後パパ育休」とは別の制度です。産後パパ育休は、正式には「出生時育児休業」とよばれる制度で、2022年10月に新設されました。目的は父親の育児参加を促進することで、生後8週間以内に最大4週間まで取得できる特別な育児休業制度です。育児休業の延長に使うことができる制度ではないため、注意しましょう。
関連記事:「産後パパ育休」と「育休」は併用できる?知っておきたい制度のポイントと実務対応
6. 育児と仕事を両立できる環境を整えよう


近年では、育児と仕事の両立が日常となってきており、女性の社会進出が支援されるようになりました。そのため、母親だけでなく父親も子育てをサポートできるように、日本では年々育児を支援する制度が充実してきています。例えば、父と母で共に育児休業を取る場合に休業期間を2ヵ月延長できるパパ・ママ育休プラス制度がスタートしました。
企業が育児にまつわる制度への理解を深めておくことで、従業員はゆとりを持ちながら育児と仕事の両立を実現できます。雇用する側は女性、男性を問わず、従業員が育児に注力できるように制度について理解を深めておきましょう。



育児・介護休業に関する法改正が2025年4月と10月の2段階で施行されました。特に、育休取得率の公表義務拡大など、担当者が押さえておくべきポイントは多岐にわたります。
本資料では、最新の法改正にスムーズに対応するための実務ポイントを網羅的に解説します。
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