職業能力評価基準とは?導入手順やカスタマイズ方法を解説
更新日: 2024.4.3
公開日: 2023.3.10
OHSUGI
職業能力評価基準は、厚生労働省が2002年に公表した基準です。
20年以上も前に設定されていますが、時代に合わせた業種や業務が追加され、現在でも人事評価制度の「能力評価」を導入する際の基準として用いられています。
しかし、この基準は業種や業務ごとに決められているわけではないので、そのまま採用すると適切な評価が出来ない可能性があります。評価項目に取り入れるためには、自社に合わせてカスタマイスする必要も出てくるかもしれません。
本記事では、社員の評価や採用基準の見直しを検討している企業に向けて、職業能力評価基準についての解説、導入方法やカスタマイズの方法も紹介していきます。
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 職業能力評価基準とは?
職業能力評価基準は、業務を遂行するために必要な能力を、厚生労働省が整理して公表した基準です。
社内での労働者一人ひとりの職種別職務能力評価の基準だと受け止めるとわかりやすいでしょう。
職業能力評価基準の策定業種は、すべての業種で共通している経理や人事などの事務系9種類に加え、電気機械器具製造業・ホテル業・在宅介護業などの56業種が網羅されています。
基本構成は職種・職務・能力ユニット・能力細目の4つに分かれており、各区分で担当する仕事の内容や責任の重さによって、レベルが設定されています。
厚生労働省が公表している基本構成とレベルの区分は以下のとおりです。
【職業能力評価基準の基本構成】
職種 | 仕事の内容や性質が類似している職務を一つの括りにしたものです。 例:営業・開発・加工・印刷など |
職務 | 1人の労働者が担当する業務の範囲のことです。一人ひとりの労働者がおこなう仕事だと考えておきましょう。 例:企画・機械加工・溶接・校正など |
能力ユニット | 1つの仕事を効果的かつ効率的に遂行するために必要な能力をまとめたものです。 共通能力ユニットと選択能力ユニットの2つで構成されています。 |
能力細目 | 能力ユニットの項目を細分化したものです。 |
【職業能力評価基準のレベル区分】
レベル1 | 担当者として、上司の指示や助言を踏まえて、定例的な業務を確実に遂行できる能力を持っている人です。 |
レベル2 | グループやチームの中心となるメンバーとして、自主的な判断や提案による改善、業務の遂行ができる能力を持っている人です。 係長や主任などが該当します。 |
レベル3 | 中小規模組織の責任者や高度な専門職という立場から、管理運営や計画の作成、問題解決などを遂行し、企業利益を出す能力を持っている人です。 課長やマネージャーなどが該当します。 |
レベル4 | 大規模組織の責任者やレベル3よりも上位の専門職で、総合的な判断をおこない、企業利益を先導して出す能力を持っている人です。 部長や本部長などが該当します。 |
2. 職業能力評価基準を導入するメリット
職業能力評価基準を導入すると、人事面でさまざまなメリットが得られます。よい人材の確保や、確保した人材の育成と評価が主なメリットです。
2-1. 公正な人事評価がしやすくなる
労働者の評価は企業が独自の基準でおこなうため、その評価によって立場や給与、担当する業務などが大きく変わります。
そのため、評価に明確な基準がないと、何を目標にして働けばいいのかわからないので、業務に対する意欲を高めるのは難しくなります。
また、基準がないことで偏った評価が発生する恐れもあります。不公平な評価は、労働者は不信感や不安感を持ちやすく、モチベーションの低下を招きかねません。
職業能力評価基準を導入すれば、こうした曖昧さが解消されるので、公正な人事評価がしやすくなるでしょう。
2-2. 採用の基準が明確化できる
採用基準の明確化は、適切な人材確保に必要不可欠です。基準が明確になっていないと、経歴やスキルの高さ、専門性などで判断してしまうため、自社に本当に必要な人材を確保できないこともあるかもしれません。中途採用の場合、即戦力にならない人を採用してしまうと、再度求人募集をしなければならず、余計な手間が発生します。
しかし、職業能力評価基準を導入することで、会社に必要な能力や人材を明確にできます。
それを採用に活かせば、より優先して採用したい人物像や求めるスキルがわかってきます。
その結果、明確な採用基準の設定や採用戦略ができるようになり、無駄のない人材確保がしやすくなるでしょう。
2-3. 人材育成への活用ができる
職業能力評価基準では、労働者の能力をより詳細に分析できるようになります。
労働者ごとに異なるスキルや資格に合わせて教育をおこなえば、スキルアップもより効率的になり、労働者も自分に求められている部分を認識しやすくなるでしょう。
人材育成というのは、マニュアルがあってもその通りに育ってくれるとは限りません。労働者にはそれぞれに経験がスキルが異なるため、全員を同じように育成するのは時間がかかりますし、難しいのが実情です。
しかし、キャリアマップを活用することで育成の手順もわかりやすくなるため、人を育てるという観点からもメリットが大きいです。
3. 職業能力評価基準の導入の流れ
職業能力評価基準を導入する場合は、以下の流れでおこなうとスムーズです。導入時のポイントと合わせて解説します。
3-1. 導入する目的を明確にする
まずは職業能力評価基準を導入する目的を明確にしましょう。
採用や人材の育成に活用したい、社内での評価基準を見直したいなど、目的が決まれば次項のカスタマイズによって、より活用しやすい職業能力評価基準が作れます。
3-2. 自社向けにカスタマイズする
職業能力評価基準は厚生労働省が定めているものですが、企業ごとにカスタマイズすることが可能です。
不要な項目の削除や不足している項目の追加をおこなって、会社の規模や導入の目的に合わせましょう。
3-3. レベルを決める
レベルを決め、レベルアップの基準を明確にすることで、よりわかりやすく納得感のある評価が出せるようになります。
経験年次や成果によって、段階的なレベルアップができるように設定しましょう。
3-4. 現場の意見を聞く
可能であれば労働者側の意見も取り込みましょう。
内容の説明と使い勝手を中心にヒアリングをおこなえば、導入への反発も出にくいです。
4. 職業能力評価基準のカスタマイズ方法
職業能力評価基準は、職種や業務、役職などで変えるのが基本です。「変える」というと面倒に思うかもしれませんが、ポイントを押さえておけば、それほど難しいものではありません。
カスタマイズする際は、以下の流れで手を加えるとスムーズです。
4-1. 職務やユニットの調節
厚生労働省が発表している職業能力評価基準の初期状態は、さまざまな企業に対応したもので、あくまでも一般的な基準でしかありません。そのため、区分が細かすぎたり、項目が足りなかったりなど過不足が発生することもあります。
まずは、職務やユニットをチェックして、自社に不要なものは削除しましょう。また、記述されていない職務やユニットがある場合は追加をしたり、業務に合わせてユニットを組み替えるなどの作業をおこないます。
また、職業能力評価基準で使われている名称も変更可能です。
これまでの能力評価や、社内で使用されている馴染みやすい名称がある場合は、職業能力評価基準を気にせず変更しましょう。
4-2. レベル区分の調整
初期状態では、責任や役割の範囲、該当する業務の難易度などによりレベル区分が設定されています。
【事務系職種のレベル区分の例|厚生労働省】
レベル | レベル1 | レベル2 | レベル3 | レベル4 |
キャリアパス | スタッフ | シニアスタッフ | スペシャリスト
マネージャー |
シニアスペシャリスト・シニアマネージャー |
レベル区分の目安 | 担当者として、上司の指示・助言を踏まえて定例的業務を確実に遂行するために必要な能力水準 | グループやチームの中心メンバーとして、創意工夫を凝らして自主的な判断、改善、提案を行いながら業務を遂行するために必要な能力水準。 | 中小規模組織の責任 者もしくは高 度 専 門職・熟練者とて、上位方針を踏まえて管理運営、計画作成、業務遂行、問題解決等を行い、企業利益を創出する業務を遂行するために必要な能力水準。 |
大規模組織の責任者 もしくは最高度の専門職・熟練者として、広範かつ統合的な判断及び意思決定を行い、企業利益を先導・創造する業務を遂行するために必要な能力水準。 |
能力段階を表わすレベルは4つに分かれていますが、この部分も会社ごとに変更できる部分です。
職務の階級や制度などに合わせて、実際に労働者を評価する際に必要なレベルを網羅できるようにカスタマイズしましょう。
4-3. 意見の取り入れ
ある程度調整が完了したら、現場で評価をおこなう人の意見を取り入れます。
実際に使ってもらい、評価がスムーズにできるか、わかりにくい部分はないかなど、現場の意見を取り入れながら改善していきましょう。
評価基準や項目を改善する際には、評価者と労働者の解釈のズレにも注意しましょう。
職業能力評価基準は社内での人事評価を明確にするものなので、人によって受け止め方が異なる表記や表現になっている状態はよくありません。
意見を聞くだけでなく、内容や意味などの認識が異なっていないかを確認することも忘れないでください。解釈がズレているようであれば、誰でも同じ解釈ができるように表記や表現を変えましょう。
5. 職業能力評価基準は自社向けにアレンジして取り入れよう
職業能力評価基準は、労働者の能力やスキルを公正な基準で評価するシステムです。
このシステムから得られた情報は、担当業務の調整や人材育成、人材配置、採用などさまざまな人事で活用することができます。
また、労働者側もわかりやすい基準があることで、モチベーションを上げやすく、仕事への意欲にも好影響を与えることが考えられます。
ただし、厚生労働省による職業能力評価基準はどんな職業・業務にも当てはまる、というものではありません。また、「必ずこの基準で評価をしなくてはいけない」というものでもなく、各部署や業務に合わせてカスタマイズすることが可能です。
導入する際は、現場の意見を取り入れつつ自社に合った形に調節して、使いやすく効果が出やすい構成にしましょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
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