モチベーション3.0とは?注目される背景やメリットなどを要約してわかりやすく解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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モチベーション3.0とは?注目される背景やメリットなどを要約してわかりやすく解説

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健全な企業運営を維持し、持続的な成長を続けていくためには、従業員一人ひとりの働きが大きな力となります。そのためには、従業員がモチベーション高く業務を遂行できる環境づくりが欠かせません。ただ、従業員のモチベーションを高めようと思って、がむしゃらに思いつく施策を導入しても逆効果になる可能性もあります。

より効果的かつ、確実にモチベーションアップを図るのであれば、モチベーションに関する正しい知識や概念を理解しましょう。本記事では、新発想のモチベーションの概念である「モチベーション3.0」について、概要や注目される背景、活用するメリットなどを解説します。

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1. モチベーション3.0とは?要約して解説

アップデート

「モチベーション」は日常的に耳にする言葉です。しかし、「モチベーション3.0」という言葉を聞いたことはありますか。

モチベーション3.0とは、アメリカの作家ダニエル・ピンクの著書『モチベーション3.0』で提唱されたモチベーションの概念です。『モチベーション3.0』が発売されたのは、アメリカでは2009年、日本では2010年のため、比較的新しい概念といえます。

本書では、モチベーション3.0のことを新しい時代のモチベーションの基本ソフト(OS)として紹介しています。本書でいう基本ソフト(OS)とは、社会がどのように機能するか、人間がどのように振る舞うかに関する仮定と指令のことです。つまり、モチベーション3.0はこれからの社会と人の振る舞いの基本となる、とダニエル・ピンクは述べています。

さらに本書においては、金銭や罰則などによる「外発的動機づけ」を用いた従来のモチベーションの概念をモチベーション2.0と定義し、その限界を指摘しています。そして、その限界を乗り越えるための新しいOSこそがモチベーション3.0であり、内面から湧き出る意欲である「内発的動機づけ」を用いたモチベーションの概念です。

内発的動機づけは、「自分がやりたいからやる」というもので、自身の欲求から湧き出るモチベーションのため、より高い効果を発揮し、長く維持されやすい特徴があります。

2. モチベーション3.0が注目される理由

パソコンを操作する女性

外発的動機づけを活用したモチベーション2.0の考え方は、19世紀後半ごろから現代にいたるまでモチベーション管理の基本と考えられてきました。

しかし近年では、環境やビジネスの発展などによって、複雑な課題解決や新しいアイデアの創出といった創造的な仕事が求められ、モチベーション2.0がフィットしない側面が見られるようになりました。実際に外発的動機づけでは、創造性や自律性が損なわれることや長期間のモチベーション維持が難しく、報酬のために手段を選ばなくなるといった危険性が指摘されています。

特に、金銭的なインセンティブを活用した外発的動機づけは、創造性が求められる業務においては、かえって視野を狭め、パフォーマンスを低下させる場合もあるでしょう。これを「アンダーマイニング効果」と言います。従業員は、報酬を得るための最短距離を考え、リスクを取った挑戦や本質的な創造性を避けるおそれがあるのです。これでは現代に求められているイノベーションは生まれません。

こういった中で、注目を浴びたのが内発的動機づけに基づくモチベーション3.0でした。その人の内面から湧き出る意欲を原動力とする内発的動機づけは、従業員の主体性や創造性を引き出し、イノベーションにつながる可能性を秘めています。

2-1. モチベーション1.0との比較

モチベーション1.0は、生理的動機づけをモチベーションの原動力だと位置づけているモチベーションのOSです。生理的動機づけは、人間は生物的な存在のため、生存のために行動するとした本能的な動機づけとなっています。例えば、食欲を満たしたい、生き残るために、といった行動が生理的動機づけです。この状態の時の人類は、アカゲザルや大型類人猿、その他多くの動物と大差がない状態だと述べています。

2-2. モチベーション2.0との比較

モチベーション2.0は、外発的動機づけがモチベーションの原動力だと位置づけているモチベーションのOSです。例えば、報酬があるから頑張る、上司に怒られないように頑張るといった、アメとムチによって動かされる行動が外発的動機づけに該当します。著者のダニエル・ピンクは、単純作業が中心であった20世紀の経済社会では有効だったと述べています。

モチベーション1.0、モチベーション2.0、モチベーション3.0をまとめると次の表のようになります。

OSのバージョン 動機づけ
モチベーション1.0 生理的動機づけ 生き残るため、食欲を満たすためといった行動
モチベーション2.0 外発的動機づけ アメとムチのような報酬と罰則による行動
モチベーション3.0 内発的動機づけ 自身の欲求から湧き出るモチベーションによる行動

3. モチベーション3.0の3つの要素

モチベーションを構成する3つの要素

モチベーション3.0は、次の3つの要素で構成されています。

  1. 自律性:課題解決のために必要な行動を自身で主体的に決定し取り組めること
  2. 成長(熟達):自身の目標達成に向けて努力を重ねること
  3. 目的:社会やチームへの貢献、組織の成長など利他的なもののこと

3つの要素を詳しく解説します。

3-1. 自律性

自律性とは、「自分の行動は自分で決めたい」という欲求です。自律性は、誰にも頼らない独立性とは異なり、選択して行動できることを意味しています。つまり、他者と共同するか否かも含めて、自ら決定できるのです。

自律性が尊重されるとき、人は仕事に対して「自分ごと」として捉え、責任感とオーナーシップを発揮します。自律性は、個人のパフォーマンスや仕事に対する姿勢に強い影響を与える要素です。

3-2. 成長(熟達)

成長(熟達)とは、「もっと上手くなりたい」「成長したい」という欲求です。人は、自分にとって意味のある事柄について、その能力を伸ばし、熟達していく過程そのものに喜びを見出します。

成長に基づくモチベーションでポイントとなるのは、掲げた目標が成長によって達成できるようになるという強い意志を持つことです。

3-3. 目的

目的とは、「自分よりも大きな何かに貢献したい」という欲求です。単に利益を追求するだけでなく、自分の仕事が社会や誰かにとっての価値を明確にすることが、モチベーションを高めます。

目的が共有された組織では、従業員は日々の業務に深い意味を見出し、困難な状況でも粘り強く取り組むことができるようになるのです。

4. モチベーション3.0を取り入れるメリット

目標に向かって進む人々

内発的動機づけに基づくモチベーション3.0の考え方を企業に取り入れることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、3つのメリットを紹介します。

4-1. 従業員のエンゲージメントが向上する

モチベーション2.0のように、インセンティブや外部からの評価といった外発的動機づけには限界があります。報酬を得た時点でモチベーションが途切れ、結果としてエンゲージメントの低下や離職につながるおそれがあるのです。

モチベーション3.0に基づくと、従業員は内側から湧き出る想いを原動力として行動するようになります。自分がやりたいからやる、といった状態を作り出し、主体性が向上します。その結果、より前向きに、仕事に取り組むようになるでしょう。

また、自律性が尊重されるため、仕事を「自分ごと」として捉え自ら考えて行動できるようになります。この結果、企業や仕事へのエンゲージメントの向上が期待できます。

4-2. 長期的な目標達成を目指せる

アメとムチを活用した外発的動機づけであるモチベーション2.0は、「報酬を手に入れたら、やる気が失われる」「怒られたら、自信喪失してしまう」といったおそれがあることから、長期的なモチベーションの維持が難しいという課題があります。

一方で、内発的動機づけは、「自分がやりたいからやる」というもので、自身の欲求から湧き出るモチベーションです。よって、より高い効果を発揮し、長く維持されやすいことがメリットです。長期的にモチベーションが持続するため、長期的な目標達成であっても達成する可能性が高まるでしょう。

4-3. イノベーション創出に効果的

モチベーション2.0の外発的動機づけによるモチベーションコントロールでは、自身で物事を工夫し成し遂げる創造性の発達を阻害することが懸念点として挙げられています。そのため、イノベーション創出が求められ、創造性や主体性が必要とされる現在の市場環境では、効果的とはいえません。

そこで、効果的なのがモチベーション3.0です。自律性や成長を重視したモチベーション3.0を取り入れることで、知的好奇心や探求心を刺激し、従業員がリスクを恐れずに新しいアイデアを試すための組織文化の醸成が期待できます。

5. モチベーション3.0の活用において意識すべきポイント

ポイント

モチベーション3.0は、イノベーションが求められる現在の市場環境に必要な概念であり、取り入れることで得られるメリットが大きいこともおわかりいただけたでしょう。本章では、実際に活用するうえで、意識すべき点を解説します。

5-1. モチベーション1.0、2.0を満たしていることが前提

モチベーション3.0を活用する前提として、まずはモチベーション1.0、2.0が満たされている必要があります。「毎日の生活が苦しい」「給料が少ない」「頑張っても見返りがない」という状況でモチベーション3.0を取り入れても、内発的なモチベーションを呼び起こすことは難しいです。まずは、給与、労働環境、仕事上の役割などをしっかりと提供し、従業員が安心して働ける環境をつくりましょう。

5-2. 従業員自身に主体的に目標を決めてもらう

「何を目標にするのか」「達成したいことは何か」を従業員自身に主体的に決めてもらうことが、内発的動機を呼び起こすきっかけとなります。また、自身で目標を決めることで、「達成するためにはどんな工夫が必要か」というさらなる自律性や成長の発生を促すことが可能です。まさに、モチベーション3.0のキーワードである「自律性」や「成長」にかかわる部分といえるでしょう。

5-3. 仕事の裁量を与える

細かい管理や仕事の指示をされている状態では、従業員の自律性は育まれません。また、「やらされている」という感覚になり、モチベーションアップも難しいでしょう。裁量を与え、自身で判断できる状況を整えることで、自律性や創造性の発揮やモチベーションアップが期待できます。さらに、自身の裁量で上手く目標の達成ができた場合は成功体験が生まれ、より一層モチベーションを高めることにもつながります。

5-4. 組織の仕組みを変えることも視野に入れる

表面上だけ取り繕ってモチベーション3.0を活用しても、組織にマッチしていなければ真の効果を発揮できません。必要に応じて、裁量を与える仕組みや評価制度、労働環境、人員配置など組織全体を見直すことも大切です。従業員一人ひとりが持つ能力を存分に発揮できるような組織づくりをおこないましょう。

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6.モチベーション3.0の活用事例

活用事例

モチベーション3.0を実際に活用している企業は、具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか。本章では、モチベーション3.0を構成する自律性、成長、目的にフォーカスして実際の企業における活用事例を紹介します。

6-1. 自律性を高める企業事例1

自律性を高める企業事例として、Google社の「20%プロジェクト」があります。20%プロジェクトは、「勤務時間のうち一定時間を、自らが情熱を注げる別のプロジェクトに活用できる」という取り組みです。

この20%プロジェクトは、Gmailなどの革新的なサービスを生み出した、内発的動機づけの代表的な成功事例です。

実際の運用では、例えば別部署の従業員を20%プロジェクトで受け入れることで、部署間の連携を円滑にしたり、異なる視点の知見やノウハウを施策に活かしたりするケースがあります。このケースでは、20%プロジェクトで関わった部署への将来的な異動にもつながるなど、組織全体の柔軟性や人材活用の幅が広がる効果もありました。

このプロジェクトは、従業員の自律性を尊重し、自由を与えることで、彼らの内なる動機を刺激しました。

6-2. 自律性を高める企業事例2

もう1つ、自律性を高める取り組みをしている企業を紹介します。それが株式会社丸井グループです。丸井グループは、人的資本を企業価値の源泉ととらえ、イノベーション創出に向けて企業文化の変革に取り組んでいます。その施策の1つが、「手挙げ文化」の浸透です。

丸井グループでは、研修への参加をはじめ、部門間異動までも本人の意思なしにはおこなわれません。今では、毎月の経営会議への参加資格を誰もが持ち、多様な意見が交わされています。従業員一人ひとりの意思を前提とし、自らの意思による行動を促すことで、自律的かつ、主体的に行動できる人材育成につなげています。

参考:日本経済新聞2025年9月21日記事

6-3. 成長(熟達)を促進する企業事例

成長(熟達)を促進する企業事例が株式会社トヨタです。トヨタの現場では、まず徹底的に「標準作業」という、現時点で最も効率的で安全な作業手順である「型」を教えられます。これによって、成長の道筋を明確に示しているのです。

自由な挑戦を促すだけでなく、「まずはこれをマスターしよう」という明確な基準と、物事を深く探求するための思考ツールを提供することによって、従業員に着実な成長実感を与え、成長(熟達)へのモチベーションを高めています。

6-4. 目的を活用した企業事例

世界で広く使用されているWikipediaもモチベーション3.0を活用しています。非営利団体であるウィキメディア財団が運営するWikipediaはページの執筆や編集には報酬が発生しません。それにも関わらず、巨大な知識体系をつくりあげています。

ダニエル・ピンクは、これをモチベーション3.0で説明しています。モチベーション3.0の目的は、社会全体の成長など、利他的なものを指します。Wikipediaの執筆者や編集者は、報酬を受け取るという利己的なことを目的としているのではありません。人類の知識の総体を誰もが無料で利用できるようにするという社会全体の目的へ貢献するという、内発的動機を原動力としているのです。

7. モチベーション3.0を取り入れて、従業員のやる気を引き出そう

仕事に集中する女性

イノベーションが求められている現在の市場環境では、アメとムチによる外発的動機づけによって従業員を動かすモチベーション2.0が通用しなくなっています。「報酬や評価で人は動く」という旧来の考え方では、従業員の主体性や創造性を引き出すことに限界が見えてきているのです。

そこでダニエル・ピンクの提唱するモチベーション3.0を取り入れましょう。人の内から湧き出る内発的動機づけに基づく取り組みをおこなうことで、従業員が自ら挑戦し成長する文化が生まれます。

イノベーションを起こし、企業の持続的成長に貢献するためにも、モチベーション3.0を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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そのため、過去に効果があった施策が今も効果的とは限りません。
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