人事評価シートとは?上手に活用した人事評価制度の運用方法を解説
更新日: 2024.4.4
公開日: 2022.4.29
OHSUGI
人事評価シートとは、人事評価をするための評価項目・評価を記載するシートです。
社員のモチベーション維持に欠かせない人事評価の運営管理は、「人事評価シート」を活用するのが基本です。しかし、単に活用するといっても、どのように人事評価シートを運用管理に活かせばいいかわからない担当者の方もいるかもしれません。
ここでは、職種や役職ごとの人事評価シートや人事評価制度を上手に運用するためのシートの作成方法、人事評価シートで重視するべき項目について解説します。
関連記事:人事評価はなぜ必要?導入して考えられるメリットやデメリット
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 人事評価シートとは?
人事評価シートとは、従業員に対して人事評価を実施する際に必要な項目や内容をまとめたシートです。従業員の昇進や処遇改善、人材育成をおこなうためのベースになるもので、人事評価シートの項目に照らし合わせながら、従業員の成長や達成度を確認します。また、評価を判断する項目だけでなく、目標や結果に対する従業員自身の自己評価や上司からの評価も記入します。
人事評価シートをうまく活用できれば、人事評価を効率よくおこなえるのはもちろん、従業員のモチベーションアップにもつながるので、業績アップや生産性の向上効果が期待できます。
人事評価は従業員の給与や賞与にもかかわるため、公平公正に行われなければなりません。業務内容は階級や職種によって異なるため、人事評価シートの項目も業務内容や職責に応じて設定することが重要です。
2. 人事評価シートの目的
人事評価シートは、「公平な人事評価」「人事評価の質を上げる」「従業員の育成」の3つが主な目的になります。
人事評価に公平性がないと、従業員の「評価してもらいたい」という欲求を満たすことはできません。また、不公平に感じてしまうことで、やる気が低下する可能性もあります。また、評価基準や評価項目があいまいだと、人事評価自体があいまいになってしまい、人事評価の質が下がってしまいます。
従業員の育成のためには、会社側がどのような項目で評価をするのか、どれぐらいのスキルや能力を求めているのかを明確にしておく必要があります。
人事評価シートは、業務や職種に応じた評価基準や項目で作成しますし、評価項目が決まっていることで適切な人事評価をすることが可能です。従業員にとっても、目標が明確になり自発的な行動をうながせるので、人事評価制度を導入する場合は人事評価シートが必要不可欠ともいえるのです。
しかし、人事評価シートの作成は人事評価の工程の一要素にすぎません。人事評価をおこなう本来の目的は、従業員のモチベーション管理や組織の生産性の向上です。
人事評価制度の手順には、他にも評価者に正しく評価するためのシート活用法のレクチャーや従業員に対する正しいプロセスでのフィードバックなどがあります。
当サイトではそれらを詳しくまとめた「わかりやすい!人事評価の手引き」というガイドブックを配布しています。こちらから無料でダウンロードできますので、適切な人事評価制度の作成や改善にご活用ください。
3. 人事評価シートの評価基準について
人事評価の質を高め、公平性のある評価をするためには、明確かつ適切な評価基準を設けることが重要です。評価基準が曖昧では、評価される側は不公平感を感じてしまい、評価者によって評価にバラつきが生まれてしまいます。
また、業務内容は従業員ごとに異なるため、同一基準にしてしまうと、質の高い人事評価ができません。
人事評価は従業員のモチベーションを大きく左右し、それが会社全体の業績につながります。そのため、不公平感を感じるような評価基準では、逆にやる気を低下させてしまうリスクが生じます。
評価基準を決める際には、職種・役職ごとに「基準」となるのかを熟考しましょう。
ただし、人事評価シートの作成は人事評価の工程の一要素にすぎません。人事評価をおこなう本来の目的は、従業員のモチベーション管理や組織の生産性の向上なので、目的を見失わないように注意してください。
4. 職種・役職別 人事評価シートの書き方
従業員一人ひとりに公平な人事評価をおこなうためには、人事評価シートが欠かせません。人事評価シートの基準となる評価項目は基本的に同じですが、職種や役職によって異なる設定をする必要があります。本章では、いくつかの職種と管理職の人事評価シートの書き方を紹介します。
4-1. 営業職
営業職は、さまざまな職種のなかでも目標が数値化しやすく、客観的な評価がしやすい職種です。営業職の人事評価シートは以下のような評価項目や内容が考えられます。
①業績基準
- 業務目標達成度
目標基準を達成できたか、業務の効率化を図ってより良い成果が出せたか - プロセス管理能力
チーム内での連携をとり、チームとしての成績を達成できたか
- 顧客管理能力
新規顧客獲得率を達成できたか、顧客からの満足度は得られたか
②能力基準
- 製品に関する理解:自社製品の特徴や優位性を理解しているか、製品に関するアップデートを常に理解しているか
- リスク管理能力:クレームやトラブル発生時に上司に速やかに報告できたか
- 顧客に対する理解:顧客の事業内容や歴史、組織構成等を十分理解しているか、顧客のニーズを十分に把握しているか
- セールススキル:プレゼンテーション能力が十分にあるか、ヒアリング力・分析力が十分にあるか、コミュニケーション力が十分にあるか
③情意基準
- 規律性:就業規則を遵守できたか、上司の指示に従って行動できたか
- 協調性: チーム内や他部署とコミュニケーションをとって仕事を遂行できたか、同僚をサポートする姿勢を見せられたか
- 責任感: 自分の仕事を最後まで責任を持って遂行できたか、求められる役割を理解し、期待に応えられるよう取り組めたか
- 積極性: 問題点を解決し、業務の範囲を拡大する取り組みができたか
4-2. 事務職
事務職は、営業職のように目標が数値化しづらい職種です。以下の例文を参考に、日々の業務の成果や、業務の遂行能力などを盛り込んだ人事評価シートを作成しましょう。
①業績基準
- 業務目標達成度: 与えられた仕事を完了できたか
- 正確性: 正確にミスなく処理できているか
- 迅速性: 与えられた仕事を期日までに完了できたか
- 計画性: 効率よく計画的に仕事を処理したか
②能力基準
- 知識・スキル: 業務に必要な能力やスキルがあるか、業務で使用する機器を問題なく使用できるか
- 理解力: 業務の目的や手順を理解しているか、業務の進捗や問題点を迅速に把握できるか
- 対応力: 進捗状況を上司やチームにわかりやすく説明できるか、相手の主張に冷静に対応できるか
- 企画力: 効率よく業務ができるよう提案できたか
③情意基準
- 協調性: チームや他部署と連携して業務ができたか、同僚が忙しいときにきちんとサポートができたか
- 規律性: 就業規則を遵守したか、上司の指示に従って行動できたか
- 責任感: 自分の業務を責任を持ってやり遂げたか、自分の役割を理解し、期待に応えられるよう取り組んだか
- 積極性: 主体性を持って仕事に取り組んだか、問題を改善しようとする姿勢があったか
4-3. 技術職
技術職は長期的な視点での評価も重要となります。プロジェクトの工程に対して、どんなプロセスを踏んでいるのか、計画した工程通りに進んでいるのかなどを評価できる人事評価シートを作りましょう。またチーム内での連携が取れているかも、評価のポイントになります。
①業績基準
- 品質: 求められる品質を確保できたか、定期的に品質管理を行なっているか
- コスト: 予算通りにプロジェクトを終了できたか、コストをモニタリングして生産性を向上できたか
- スケジュール: 当初に計画したスケジュール通りにプロジェクトが進んでいるか、他部門やチームと連携してタイムマネジメントができたか
②能力基準
- 品質管理: 手順書通りの作業をしながら不具合を是正し、結果を確認できたか、自主検査項目を確認して業務を遂行し品質を維持できたか
- 工程管理: 工期の遅れがないか都度調整を図ったか、作業中の問題点を確認し、適切な改善を図っているか
- リスク管理能力: クレームやトラブルは速やかに上司に報告したか
③情意基準
- 規律性: 就業規則を遵守できたか、上司の指示に従って対応できたか
- 協調性: チームや他部門、顧客とコミュニケーションを取って業務を遂行できたか、同僚のサポートをする姿勢を見せられたか
- 責任感: 与えられた業務を責任を持って完遂できたか、求められる役割を理解し、期待に応えられるよう取り組めたか
- 積極性: 主体性を持って自分の役割に取り組めたか、問題点を解決し、業務の効率化を図ろうと努力したか
関連記事:人事評価シートの具体例「技術職」のチェックポイント
4-4. 管理職
部下の指揮を取り、集団をまとめる力が求められる管理職は、リーダーとしての役割が求められます。人事評価シートにも、マネジメント力やリーダーシップなどの評価項目を盛り込みましょう。
①業績基準
- 業務目標達成度: 管理職として率先して業務に取り組み、担当部署の業務目標を達成できたか
- 部下指導・育成: 部下の特性に合わせて指導をおこない、意欲を高める工夫をしたか
- マネジメント: 業務を適切に割り振って部門のマネジメントができたか
②能力基準
- リーダーシップ: 組織を掌握し、組織全体の力を最大限発揮できたか
- コミュニケーション: 部下・上司・他部門と円滑なコミュニケーションが取れたか
- 対応力: 状況や条件に応じて臨機応変な対応ができたか
- 能力・スキル: 担当部署の業務に必要な知識やスキルは備わっているか
③情意基準
- 経営認識: 会社の方針や理念を十分に理解しているか
- 協調性: 自己の都合にとらわれず、上司や部下と協力して業務を完遂できたか
- 責任感: 自分に求められる役割に責任を持ち、会社の利益向上のために取り組めたか
5. 人事評価シートを作成する際の注意点
人事評価シートで重視される項目は、職種によって異なります。日々の成果が数値化しやすい営業職であれば、業務基準が重視されることが多いです。長期的な視点での評価が求められる技術職は、能力基準が重視されることが多いでしょう。
業務の数値化が難しいバックオフィス部門は、数値化できる業務を見極め、それにプラスして能力基準や情意基準で総合的に評価する必要があります。
関連記事:人事評価の項目はサンプルやテンプレートを見て自社オリジナルにしよう
関連記事:人事評価制度で重要な3つの基準の評価項目について解説
5-1. 評価条件を明確にする
まず注意しなければならないのは、評価条件を明確にすることです。
評価条件があいまいだったりすると、評価対象となる従業員が目標や目的を理解できず、成果につながりにくくなってしまいます。また、評価をする方も、条件が明確でなければ適切な評価ができない可能性もあります。
例えば、目標の達成率や売上などを項目に入れるのであれば、「達成率○○%」や「○○円以上の売上」というように、数字や文言をわかりやすく記載しましょう。
5-2. 第三者目線で公平に評価する
評価は、段三者の目線でおこなうようにするのが鉄則です。
人間は、どうしても好感を持っていたり付き合いが長かったりする人に対してひいきをしてしまう傾向があります。反対に、偏見を持っている人や何となく気に入らない人に対しては、無意識に評価を下げてしまいます。
これは「評価エラー」というもので、イメージや先入観などで評価をしてしまうことです。このような評価は、当然ですが従業員が反感や不満を持ってしまうので、第三者目線で評価することが重要です。社員の評価では、付き合いの長さやひとつの高い業績などに惑わされず、第三者目線で客観的に評価しましょう。
5-3. 内容を複雑にしない
評価項目の内容が複雑だと、それを見ただけで従業員のモチベーションが下がってしまうかもしれないので注意してください。
人事評価は、評価を得るために従業員が頑張ってくれることで、業績アップや利益率増加などの効果が得られます。つまり、従業員のモチベーションが上がらなければ会社に還元されないのです。やってもらいたいこと、こうなって欲しいことなど希望はいろいろあるかもしれませんが、内容はわかりやすくシンプルにするのがベストです。
人事評価制度が浸透し従業員が慣れてきたら、内容をアップデートすることもできるので、まずはわかりやすい内容で作成しましょう。
6. 人事評価シートの評価項目は公平に決めよう
人事評価シートは人事評価制度を運用・管理するうえで非常に重要になります。ただし、全ての職種・役職で同じ評価基準を設けてしまうと、職種・役職ごとの成果がわかりづらく、求めている役割を果たしているかどうかも判断することができません。
また、成果を数値化できない業務の場合は、評価につながらず不公平感を招いてしまう可能性もあります。人事評価シートは、公平であってこそ効果を発揮するので、不平不満がでないように作成することも大切です。
人事評価シートを作成する際は、職種や役職、業務ごとにどのような成果と役割が求められているのかを考えて作成してみてください。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
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