リスキリングとリカレント教育の違いは?それぞれが注目される理由を紹介
更新日: 2024.10.18
公開日: 2024.5.30
OHSUGI
「リスキリング」や「リカレント教育」などの用語を耳にする機会も多くなりましたが、両者の違いがわからない方も多いのではないでしょうか。
企業として社員に教育の機会を提供するなら、リスキリングとリカレント教育の違いを理解しておかなければなりません。
この記事では、リスキリング・リカレント教育の違いや注目される理由、メリット・デメリットについて解説しています。助成金についても紹介しているので、興味がある経営者・人事担当者はぜひ参考にしてください。
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. リスキリングとリカレント教育の違い
リスキリングとリカレント教育の違いを簡単に表にまとめたものが以下です。
目的 | 学び方 | 学習期間 | |
リスキリング | 自社の事業戦略に対応できる社員を育成する | 研修会・オンライン講座・eラーニングなど | 数週間~数ヵ月 |
リカレント教育 | 個人がキャリアアップのために学習する | 講座・研修・オンライン授業・大学・専門学校 | 長期間 |
リスキリングは会社が主体となって実施するのに対し、リカレント教育は社員が自発的に実施する点に大きな違いがあると言えるでしょう。
1-1. そもそも「リスキリング」とは
リスキリング(Reskilling)とは、自社の事業戦略に合わせて社員に新しいスキル・知識を教育することです。経済産業省では、リスキリングを以下のとおり定義づけています。
新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること。
引用:リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―|経済産業省
リスキリングは、社員に新たな業務を任せるため、または業務の幅を広げるために企業側が主体となって教育の機会を創出するのが特徴です。
1-2. そもそも「リカレント教育」とは
リカレント教育は、個人が自発的に学び直しをおこなうことを意味します。
スウェーデンの文部大臣であったオロフ・パルメ氏(のちに首相)が、1969年のヨーロッパ文相会議で提唱し、翌年の経済協力開発機構(OECD)において広く世界に紹介されたことに端を発しています。
社員自らが就労と学習を繰り返すことによって、新たなスキルや知識を身につけて自分をアップデートし、自身のキャリア形成につなげるのが主な目的です
2. リスキリングとリカレント教育が注目される理由
リスキリングとリカレント教育が注目される理由を以下の流れで解説します。
- リスキリングが注目される理由
- リカレント教育が注目される理由
具体的な理由を知り、両者の重要性を理解しましょう。
2-1. リスキリングが注目される理由
リスキリングが注目される主な理由は、以下の2つです。
- DXの推進が必要といわれている
- 多様な働き方の実現が求められている
DX化により、徐々に単純作業や肉体労働はAIやロボットに任せられるようになります。社員は、AIやロボットの管理、社内システムの管理など従来とは異なる業務に携わることになるでしょう。
またリモートワークが発達したほか、業務委託化も進んでいます。多様な働き方に対応するには、デジタルツールの使用、オンラインコミュニケーションのスキルも必須です。
世界的に見ても、リスキリングへの関心は高まっています。世界経済フォーラムの年次総会、通称「ダボス会議」では、10億人に教育・スキル・仕事を提供する「リスキリング革命」の実現に向けての基盤を構築しました。
参照:リスキリングで、人を中心に据えた変革を|世界経済フォーラム
2-2. リカレント教育が注目される理由
リカレント教育が注目される理由は、以下の2つです。
- 日本人の平均寿命が伸びたこと
- 労働者不足に対応する必要があること
日本人の平均寿命が延びたため、現在は生涯現役を目標に活動する方が増えています。しかしデジタル化によって世の中の変化のスピードが速くなっており、以前に培った経験だけで業務に携わるのは難しいのが実情です。
必要なスキルを学び直し、仕事に活かしていく必要性があることから、リカレント教育は注目されています。
また国としては、少子高齢化による労働者不足に対応しなければなりません。2018年に実施された「人生100年時代構想会議」でも、リカレント教育の拡充が明記され、予算措置されたことで注目を集めました。
3. リスキリングとリカレント教育のメリット
リスキリングとリカレント教育のメリットを以下の流れで解説します。
- リスキリングのメリット
- リカレント教育のメリット
3-1. リスキリングのメリット
リスキリングのメリットは以下のとおりです。
企業のメリット | ・業務の効率化や生産性のアップが期待できる
・人材不足による悩みも解消できる ・採用ミスマッチのリスクを回避できる |
個人のメリット | ・活躍の場が広がる
・キャリアアップや収入のアップにつながる可能性がある ・転職に有利になる可能性がある |
リスキリングを実施することで、企業は業務の効率化や生産性のアップが期待できます。人材不足による悩みも解消できるでしょう。
また企業が求めている人材を新規採用するよりも、既存の社員を育成したほうが、採用ミスマッチのリスクを回避できる利点もあります。
社員個人としてのメリットは、リスキリングで新しい知識やスキルを身につけたことで活躍の場が広がることです。
3-2. リカレント教育のメリット
リカレント教育のメリットは以下になります。
企業のメリット | ・社員の一人ひとりの知識量やスキルが上がり、企業全体の生産性向上が期待できる
・社員を支援する企業のイメージが定着し、優秀な人材が集まりやすくなる |
個人のメリット | ・自身のキャリアアップ |
リカレント教育により社員の一人ひとりの知識量やスキルが上がれば、企業全体の生産性向上が期待できます。
またリカレント教育をおこなっていることで「社員を支援する企業」のイメージが定着します。「社員の教育支援を重要視している」企業イメージにより、優秀な人材が集まりやすくなるかもしれません。
社員にとってリカレント教育は、自身のキャリアアップにつながる貴重な機会です。学び直しができるチャンスとして活用したいと考える方は多いでしょう。
4. リスキリングとリカレント教育のデメリット
リスキリングとリカレント教育のデメリットを以下の流れで解説します。
- リスキリングのデメリット
- リカレント教育のデメリット
4-1. リスキリングのデメリット
リスキリングのデメリットは以下になります。
企業のデメリット | ・金銭的・時間的コストがかかる
・社員が学習するための時間を確保しなければならない ・社員のモチベーションが下がる場合もある |
個人のデメリット | ・学習内容が自分の学びたい内容とは限らない
・社員にとって負担となる可能性がある |
企業は、研修費用や書籍購入費、講座受講費のサポートなどにかかる費用を確保しなければなりません。また業務とは別に、社員が学習するための時間を確保する必要もあります。リスキリングは業務の一部に当たるため、就業時間内に実施しなければなりません。
多忙な企業にとっては、リスキリングのために時間を確保するのが難しい場合もあるでしょう。
社員にとっては、リスキリングが負担になる可能性もあります。学習内容が社員にとって興味のない分野だった場合、モチベーションが上がりにくいのも仕方のないことです。意欲がないにもかかわらず学習することを要求された社員は、業務意欲が下がるかもしれません。
4-2. リカレント教育のデメリット
リカレント教育のデメリットは以下になります。
企業のデメリット | ・学習できる環境を整えるのが難しい
・他の社員への配慮が必要になる |
個人のデメリット | ・周囲からの理解を得るのが難しい
・学んだことが業務に活かせるとは限らない |
学習環境の整備は、企業の大きな課題となる場合が多いです。もし社員がリカレント教育で大学に再入学するとしたら、長期間の休暇取得が必要となるでしょう。
働きながらリカレント教育を受けさせる場合でも、時短勤務・休暇の取得など、学習できる環境を整えなければなりません。リカレント教育を受けない周囲の社員から不満が出ないよう、配慮する必要もあります。
社員個人にとっても、周りからの理解が必要となる点が大きなポイントとなるでしょう。また修得したスキル・知識が評価されるとは限らない点も、デメリットの一つといえます。
5. リスキリングやリカレント教育を導入する3つのポイント
リスキリングやリカレント教育を導入するにあたっては、しっかりと下準備をしておくことが重要です。下準備をおろそかにしてしまうと、人材流出をまねく恐れもあるため注意しましょう。ここでは、リスキリングやリカレント教育を効率よく導入する際に、押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。
5-1. 学べる環境を整備する
リスキリングやリカレント教育を導入するにあたり、まず初めにやるべきことが学習環境の整備です。特に、業務と教育を同時並行でおこなう場合は、学習のための時間や費用が社員にとって大きな負担となり、学習意欲を低下させる恐れがあります。
そのため、リスキリングやリカレント教育にかかる費用を会社側で一部負担することや、勤務体制の見直しなど、社員の負担を軽減させる対策が必要です
最近では、好きな場所・好きな時間に学べる「e-ラーニング」を活用する企業も多くなってきています。こういった、ITツールも上手く活用しながら、学習環境を整備していきましょう。
5-2. 学びを活かせるようサポートする
せっかく時間やコストをかけて社員に学ばせても、実務にまったく活かせないようであればリスキリングやリカレント教育を実施する意味がありません。インプットした知識やスキルをアウトプットできる場も用意することが必要でしょう。
例えば、学んだことを実務で実践できる場を提供したり、グループワークを実施して学んだことを他の社員と共有させたりなど、予め社内でアウトプットできる場を作っておくと知識やスキルの定着にも繋がります。
5-3. 人材の流出を防ぐ仕組みを作る
リスキリングやリカレント教育を実施するにあたっては、予め人材流出のリスクについても備えておく必要があります。特に、社員が身に付けたスキルを活かして、転職してしまう恐れがある点に注意しなくてはいけません。
資格取得者には昇給や昇進などのインセンティブを設けたり、社内において新たなキャリアを提示したりなど、教育後のメリットを社員に提示しておくことがポイントです。コストや時間を割いて教育した優秀な人材が、他社に流れないようにするためにも、人材流出を防ぐ仕組みも構築しておきましょう。
6. リスキリングとリカレント教育で活用できる補助金・助成金・支援事業
リスキリングとリカレント教育で活用できる補助金・助成金・支援事業について、以下の流れで解説します。
- リスキリングで活用できる補助金
- リカレント教育で活用できる補助金
6-1. リスキリングで活用できる補助金
厚生労働省では、社員の人材育成やスキルアップのための助成金「人材開発支援助成金」を用意しています。
人材開発支援助成金の種類は以下になります。
コース名 | 内容 |
事業展開等リスキリング支援コース | 新規事業の立ち上げに伴い、必要となる知識・スキルの取得にかかかる賃金の一部を助成 |
人材育成支援コース | 職務に関連した知識・スキルの習得にかかる賃金の一部を助成 |
教育訓練休暇等付与コース | 教育訓練休暇制度を導入し、労働者が自発的に訓練を受けた場合、事業主に女性する |
人への投資促進コース | デジタル人材・高度人材の育成にかかる賃金の一部を助成 |
自社に合ったコースを利用しましょう。
6-2. リカレント教育で活用できる補助金
リカレント教育で活用できる補助金は「教育訓練給付金」です。教育訓練給付金の種類は以下になります。
コース名 | 内容 |
専門実践教育訓練 | 労働者の中長期的キャリア形成に関する教育訓練が対象 |
特定一般教育訓練 | 労働者の速やかな再就職・早期キャリア形成に関する教育訓練が対象 |
一般訓練給付金制度 | 専門実践教育・特定一般教育以外の雇用の安定・就職の促進に関する訓練が対象 |
リカレント教育で活用できる補助金は、個人が対象です。従業員がリカレント教育を希望している場合には、給付制度を案内しましょう。
7. リスキリングとリカレント教育の導入事例
最後に、リスキリングやリカレント教育を導入して、効率よく人材育成をおこなっている企業の事例をご紹介します。リスキリングやリカレント教育の導入を検討する際に、ぜひ参考にしてみてください。
7-1. 新事業立ち上げに伴い人材確保のために「リスキリング」を実施
3DCGデザイン事業を新たに立ち上げるにあたり、自社がもつリソースで必要な人材を確保するために、長期的なリスキリングが実施された事例です。本人のやる気が新しい領域へのチャレンジには必要不可欠との考えから、挙手制によるメンバー選出がおこなわれました。
選ばれたメンバーには、会社側が学習にかかる費用を負担する形で、3DCGデザインの専門学校に通学させた後、外部講師の下で実践によるレクチャーもおこなわれました。これらの取り組みによって、1年程度で一定水準の知識やスキルを身に付けることができたそうです。
参照:実践事例 変化する時代のキャリア開発の取組み|厚生労働省
7-2. 「リカレント教育」の活用で社員の自律的なキャリア開発を促進
大手食品メーカーでは、e-ラーニングによるビジネスDX人材育成コースを設定して、社員のITリテラシー向上に力を入れています。学習費用は会社側で負担するため、社員は無料で受講することが可能です。また、自発的なキャリア開発を目指していることから、希望者のみを対象としています。
初級・中級・上級と3段階でコース設定されており、データドリブンの基礎から高度なデータ分析技術まで幅広く学べる内容となっているのが特徴です。希望者を対象としているにも関わらず、導入して2年で全従業員の半数以上が受講されたそうです。
参照:イノベーション創出のためのリカレント教育 事例集 企業編|経済産業省
8. リスキリングとリカレント教育の違いをふまえて自社に取り入れよう
リスキリングとリカレント教育の違いは、企業が主体となっておこなうか、社員個人が主体となっておこなうかです。
双方とも、社員のスキルアップにつながる有益な取組みです。しかし「リスキリングは企業が求めるスキルを教育する」「リカレント教育は学習内容を個人が決定する」ので、意味は異なります。
教育の機会を提供する企業は、目的に合わせた教育を取り入れると良いでしょう。
リスキリングとリカレント教育の違いをふまえて、必要とする方法を自社に取り入れてください。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
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