労使協定の就業規則の義務や優先順位を解説
更新日: 2024.7.2
公開日: 2022.2.5
OHSUGI
労使協定は労働環境や労働するうえでの規則に関する、非常に重要な協定です。労使協定がないと、時間外労働や休日出勤が発生した際に、事業者側が処罰される可能性もでてきます。
こちらでは労使協定と就業規則の関連や優先順位、労使協定を結ぶ際の注意点を解説します。労使協定の位置づけを正しく理解し、事業者・従業員の双方が安心して働ける環境づくりをしましょう。
関連記事:労使協定の基礎知識や届出が必要なケース・違反になるケースを解説
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1. 労使協定と就業規則の関係
1-1. 労使協定と就業規則の違い
労使協定 | 就業規則 | |
作成者 | 使用者(会社)と従業員が合意して締結する | 使用者(会社) |
効果 | 免除・免罰効果がメイン | 規範的効果・民事的な権利義務 |
労使協定は、使用者と従業員が話し合い、合意した上で決定・作成されるものです。効果は、使用者の免罰がメインで、労働時間や休憩時間をはじめとした、労働に関する命令を下すものではありません。
例えば、労働基準法で定められた時間をオーバーする労働を従業員がした際に、その旨を記載した労使協定があれば、使用者側は法定義務の免除が可能になります。つまり、労働基準法を守らなくても、処罰されなくなるわけです。
しかし、法定時間外の残業命令権が発生するわけではないため、残業を命令することや、残業しない従業員を規則違反とすることはできません。
一方、就業規則は、労働に関する命令権を確保するものです。労働条件を記載し、それを従業員に提示することで、記載された規則に則った命令を下す権利が発生します。
例えば、時間外労働に関する項目があったとしましょう。従業員はその就業規則に従って労働しなくてはいけないため、使用者が早出や残業を命じた場合は、従わなくてはいけません。従わない場合は就業規則違反となり、減給や解雇などの対処が可能になります。
就業規則は労働基準法に則って作成する必要があります。しかし、多くの企業では法定時間外の業務が必要になり、そのときに使用者が処罰を受けないために結ぶのが、労使協定という位置づけです。
1-2. 就業規則を作成する義務
就業規則は、すべての会社に作成義務があるものではありません。
「常時10人以上の労働者が雇用されている会社」に作成義務が生じ、労働基準監督署への届け出が必要です。
しかしながら、10人以下の小規模な事業所や会社でも就業規則は作成した方がよいでしょう。
労働の基本ルールとなるものであるため、作成していない場合にはさまざまなトラブルが発生しやすくなり、その際の責任の所在も曖昧になってしまいます。
また、就業規則を明確にしておくことは、従業員の労働意欲の向上にもつながります。
就業規則には以下の通り、従業員側にとって重要な事項が多く記載されます。
- 労働時間
- 給与
- 休暇
- 退職
- 解雇条件
これらが確約されていると分かれば、会社と従業員の間に信頼関係が生まれるでしょう。
就業規則は使用者がルールを明示し、命令権を確保するものであると同時に、従業員も会社に遵守することを求め、労働の対価を確保するために重要なものなのです。
2. 労使協定と労働に関連する規則の優先順位
ここでは、労働に関連する規則の優先順位と、その中での労使協定の位置づけを考えていきましょう。
2-1. 労働に関連するルールの優先順位
まずは労働に関連するルールの優先順位を解説します。
労働基準法(法令各種含む)>労働協約>就業規則>労働契約
優先度が高いルールから外れるルールは、仮に作成したとしても無効になります。
労働基準法はすべてのルールに優先するため、どのルールにおいても守らなくてはいけません。
労働協約の中で労働基準法に違反する部分があれば、その部分は無効になります。
就労規則の中に労働協約に違反する部分があった場合も、それは無効です。
さて、肝心の労使協定ですが、じつはこれらの優先順位からは外れた場所に位置します。その理由は、労使協定は「規則として命令できるものではない」ためです。
関連記事:労使協定と労働協約の違い・位置付けと違反時の罰則とは
2-2. 労使協定の位置づけは”特別ルール”
上記では、優先順位の高いルールから外れた内容は、無効になるという説明をおこないました。
労働時間を例にして説明すると、労働基準法で定められている1日8時間のルールを超えて労働をさせると、違法になってしまうわけです。労働協約や就業規則で定めるのもこの範囲内に限定されます。
労使協定では、こうした労働基準法のルールを逸脱することが可能です。労使協定の種類は労働基準法で定められているため、その内容に則った範囲で作成しなくてはいけませんが、これにより法定外の労働も可能になります。
しかし、あくまでも「可能」になるだけです。「このように働いてもよい」とする「特別ルール」的な存在であり、命令権が発生するわけではありません。どこまで対応するかは従業員の意思に任せる点が、就業規則との大きな違いです。
3. 労使協定の締結に関する注意点
以下の4つの注意点に気を付けましょう。
3-1. 労働基準法を遵守する
労使協定は、労働基準法の定めを逸脱して、残業や休日出勤などを可能にするものです。しかし、無制限に決められるものではありません。労働基準法が定める「労使協定の種類」に従って作成する必要があります。
労使協定のなかで代表的なのが「36(サブロク)協定」です。時間外労働や休日労働に関連する項目で、多くの会社が作成・締結しています。
この36協定をはじめ、労使協定にはそれぞれ細かい決まりがあるので、作成する際は必ず定められた範囲内で制定しましょう。
3-2. 届け出をしないと意味がない
労使協定は、事業者と従業員との間で話し合い、合意し、締結します。しかし、それだけでは効果を発揮しません。36協定など一部の労使協定は労働基準監督署への届け出が必要です。
届け出をしていないと、書面が残っていても無効になり、労働基準法を逸脱した労働が発覚した場合は、事業者が処罰されます。
3-3. 労働組合または過半数代表者と締結する
労使協定は事業者と従業員との間で締結するものですが、従業員一人ひとりではなく、「社員の過半数で組織された労働組合」または「社員の過半数を代表する人物(過半数代表者)」と締結します。
また、過半数代表者は管理監督者でないこと、代表者は投票や挙手で選ばなくてはいけないなどの条件があります。
なお、選出時の過半数には管理監督者も含まれるので、注意しておきましょう。
3-4. 周知義務を履行しないと処罰される
労使協定を締結した場合には、すべての従業員に対して周知する義務があります。これは労働基準法施行規則第52条の2で、以下のように定められています。
- 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
- 書面を労働者に交付すること。
- 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
上記に違反した場合には、罰則も生じます。
4. 労使協定は就業規則にプラスして定めるもの
労働基準法で定められた労使協定の範囲内であれば、労使の利益を守った働き方が可能です。
労使協定を結ぶ際は、労働基準法を守ることと、周知義務にとくに注意しましょう。
関連記事:労使協定の種類・特徴や労働基準監督署に届出が不要なケースについて解説
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