源泉徴収票の発行の仕方とは?いつ発行するか、どこでもらえるか解説

源泉徴収票と聞くと、多くの人が「年末に発行されるもの」というイメージを持つのではないでしょうか。
源泉徴収票は1年間の給与や所得税が記載されている重要な書類です。
本記事では、源泉徴収票の発行手続きの手順や注意点について細かく解説していきます。
目次
「特定親族特別控除」が新設されるなど、例年以上に複雑になる令和7年の年末調整。
従業員からの問い合わせが増える年末に、最新の制度をどう案内すればいいか、不安に感じていませんか?
◆よくある質問
Q. 大学生などのアルバイト収入が増えても、親の控除額は減らない?
Q. 年末調整の対象者は?
Q. 退職者や二か所で働く従業員の年末調整は必要?
このようなよくある疑問から、記載ミスや、申告内容・扶養の変更、税務署からやり直し通知を受けた際などの対応方法まで年末調整のあらゆる疑問をまとめた「年末調整と源泉徴収Q&A」を無料配布しています。
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1. 源泉徴収票とは?


源泉徴収票とは、1年間に得た収入や納税した所得税の額などが記載された書類です。源泉徴収票の発行は所得税法によって義務付けられており、会社は雇用しているすべての従業員(年の途中で退職した人を含む)に対して発行しなくてはいけません。
1-1. 源泉徴収票と給与支払報告書の違い
源泉徴収票と給与支払報告書は、フォーマットや記載内容などが似ていますが異なる書類です。
源泉徴収票は所得税法第226条に基づき、主に従業員への交付(一部例外を除き税務署への提出も必要あり)を目的に発行されます。
一方、給与支払報告書の目的は、地方税法第317条の6に基づき、市区町村へ提出することです。なお、給与支払報告書は、住民税や国民健康保険料の計算の基礎となるものです。このように、源泉徴収票と給与支払報告書は、発行の根拠となる法律や提出先などに違いがあるので正しく理解しておきましょう。
1-2. 源泉徴収票の種類
源泉徴収票には、下記の3種類があります。
- 給与所得の源泉徴収票:給与や賞与(ボーナス)などを支払った場合に発行が必要
- 退職所得の源泉徴収票:退職金(退職手当)を支払った場合に発行が必要
- 公的年金等の源泉徴収票:公的年金等(老齢年金や退職年金など)を支払った場合に発行が必要
このように、源泉徴収票には複数の種類があり、給与を支払う場合のみ発行すればよいわけではありません。退職金制度を設けている場合、退職者に対して「退職所得の源泉徴収票」の発行も必要です。なお、この記事では、源泉徴収票の対象を「給与所得の源泉徴収票」のみに絞り、解説していきます。
関連記事:給与支払報告書とは?書き方や提出方法・期限をわかりやすく解説
2. 源泉徴収票はいつどこで発行する?


源泉徴収票は、その年の年末調整が完了した12月頃~1月頃に発行されます。ただし、年末調整の有無に関係なくすべての従業員に発行しなければなりません。なお、発行期限はその年の翌年1月31日です(所得税法第226条)。
また、それ以外のタイミングにも源泉徴収票の発行が必要になる場面があります。ここからは、源泉徴収票が必要になるケースについて詳しく紹介します。
2-1. 退職(転職)するとき
年の途中で退職した場合、転職先で年末調整を受けるには、前の勤務先の給与支払いに関する情報が必要となるので前職の源泉徴収票が必要です。なお、退職者に対して源泉徴収票を交付する場合、退職後1ヵ月までに発行しなければならないので注意しましょう。
関連記事:年末調整で前職の源泉徴収票の提出が必要な理由とは?未提出時の対処法も解説
2-2. 確定申告をおこなうとき
従業員の給与収入が2,000万円を超える場合、年末調整の対象外となるため、確定申告をおこなう必要があります。また、副業などによる給与所得以外の所得が年間20万円を超える場合や、2ヵ所以上から給与の支払いを受けており、主たる給与以外の給与収入が年間20万円を超える場合など、複数の収入を合算して所得税を計算する必要があるケースでも確定申告が必要です。
さらに、年の途中で退職し、その年内に再就職しなかった場合には年末調整がおこなわれないため、確定申告が必要になるケースもあります。従業員が確定申告をおこなうには、その年の給与収入や源泉徴収税額の情報が必要となり、勤務先から交付される源泉徴収票が不可欠です。
参考:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁
関連記事:年末調整の対象者とは?必要な書類や確定申告との関係も解説
2-3. 収入証明が必要なとき
源泉徴収票は、会社に在籍していることや年収の証明にもなる書類です。
そのため、住宅ローンなど融資を受けるときや、賃貸契約の審査に源泉徴収票が使用される場合があります。
他にも、子どもを保育園に入園させる際の就労証明や、保育料を決定する際に収入証明として源泉徴収票の提示が求められます。
2-4. 紛失したとき
源泉徴収票を紛失してしまい、従業員から申し出を受けることもあるかもしれません。この場合、従業員は転職先での年末調整や自身による確定申告ができなくなるので、速やかに応じることが大切です。
なお、本来交付すべき源泉徴収票を一度も交付されていない場合、従業員は税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出できます。この届出が受理されると、税務署から交付命令や行政指導がおこなわれる可能性があるので注意しましょう。
3. 源泉徴収票の発行に必要な所得税の計算の仕組み


正しく源泉徴収票を発行するには、年末調整が必要なケースもあり、所得税の計算の仕組みを理解しておくことが大切です。ここでは、源泉徴収票の発行に必要な所得税の計算方法について詳しく紹介します。
3-1. 総収入金額から給与所得控除を引いて給与所得を計算する
まずはその年(1月1日~12月31日)の給与収入の総額(総収入金額)を計算します。給与所得は、総収入金額から給与所得控除を差し引くことで求められます。なお、年末調整の際、総収入金額が660万円未満の場合、所得税法別表第5「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を用いて、給与所得を計算する点に注意しましょう。
3-2. 各所得控除を差し引き、課税所得金額を算出する
給与所得を計算したら、そこから各種所得控除を差し引き「課税所得金額」を求めます。所得控除とは、納税者の生活状況や個人的事情に配慮し、一定の金額を所得から差し引ける制度です。生活費や必要経費に相当する部分に税を課さないという目的もあります。
所得控除には、基礎控除をはじめ配偶者控除や社会保険料控除、生命保険料控除などさまざまな種類があります。それぞれ控除額や適用要件が定められており、年末調整において従業員から提出された書類を基に、一人ひとりの状況を考慮して計算をおこないます。
3-3. 所得税率を掛け合わせて所得税の計算をおこなう
課税所得金額が計算できたら、その金額に応じた所得税率を掛け合わせて所得税額を算出します。所得税の税率については、超過累進税率が採用されており、所得が高くなるにつれて税率も高くなる仕組みです。なお、所得税率は5%から45%までの7段階に区分されています。
参考:所得税のしくみ|国税庁
3-4. 復興特別所得税の計算をおこなう
所得税額が計算できたら、そこから住宅ローン控除などの税額控除を差し引くことで控除後の所得税額を求めます。また、この控除後の所得税額に2.1%を掛けて算出するのが「復興特別所得税」です。復興特別所得税とは、東日本大震災の復興のための財源確保を目的として2013年から2037年まで課税される税金であり、納税者すべてが対象です。
3-5. 2025年(令和7年)の重要な改正事項
令和7年度税制改正により、以下のような改正がおこなわれ、2025年分から所得税の計算の仕組みが大きく変わります。
- 基礎控除の引き上げ
- 給与所得控除の最低保障額の引き上げ
- 特定親族特別控除の創設
- 扶養親族等の所得要件の引き上げ
また、令和8年(2026年)1月から源泉徴収税額表も変更になり、従来の源泉徴収事務の見直しも必要になるので注意しましょう。なお、2025年度税制改正の影響もあり、年末調整の計算にも多くの変更点があります。当サイトでは年末調整の計算フローを図で表した資料を無料でお配りしています。年末調整業務に不安のある方は、こちらから「年末調整ガイドブック」をダウンロードしてご活用ください。
参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁
4. 源泉徴収票の発行の仕方と記載項目
源泉徴収票は、給与支払記録情報を基に、所定の法定様式に必要事項を記載して作成します。年末調整をおこなった場合はその結果を反映し、年末調整をおこなっていない場合も、支払金額や源泉徴収税額などの実績に基づいて作成します。ここからは源泉徴収票に記載すべき主な項目について紹介します。
4-1. 支払金額
源泉徴収票に記載する支払金額は、該当する年に支払った金額です。支払金額は給与だけでなく、賞与も含まれます。注意すべきなのが、あくまで1年に支払った金額です。給与が月末締めの翌月25日払いであれば、前年12月末締め1月25日払いの給与から当年11月末締め12月25日払いの給与までが対象です。
4-2. 給与所得控除後の金額
支払金額から給与所得控除を差し引いた金額を記載します。令和7年度税制改正により、給与所得控除の最低保障額は55万円から65万円へ引き上げられているので計算間違いに注意しましょう。
4-3. 所得控除の額の合計額
所得控除の額の合計も源泉徴収票に記載します。所得控除は、基礎控除や配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除などです。
4-4. 源泉徴収税額
年末調整で確定した所得金額に対して発生する所得税額を記載します。年末調整をしていない従業員がいる場合は、源泉徴収した所得税額が記載されます。
4-5. 控除対象配偶者がいるかどうか
控除対象となる配偶者の有無も記載項目です。控除対象となる配偶者の有無だけでなく、控除の額も記載対象です。
4-6. 控除対象扶養親族の人数
控除対象扶養親族の人数を記載します。控除対象扶養親族とは、扶養親族のうちその年12月31日時点での年齢が16歳以上の親族です。
4-7. 16歳未満扶養親族の人数
16歳未満扶養親族がいる場合、その人数が記載項目です。16歳未満の親族は扶養控除の対象にはなりません。しかし、住民税の非課税限度額を計算するうえで16歳未満の扶養人数が関わってきます。
4-8. 障害者の人数
控除対象配偶者や扶養親族に障害者がいる場合は人数を記載します。記載欄は特別とその他があり、特別には特別障害者の人数を、その他には一般の障害者の人数を記載します。
4-9. 特定親族特別控除の額
令和7年度税制改正により、新たに特定親族特別控除が創設されました。これにより、源泉徴収票の記載項目にも、特定親族特別控除の額を記載する必要があります。
4-10. 社会保険料等の金額
給与から天引きされている健康保険料、厚生年金保険料など社会保険料などの合計を記載します。社会保険料などの金額記載欄は2段です。1段目には小規模企業共済等掛金を、2段目には社会保険料などの金額を記載します。
4-11. 生命保険料・地震保険料の控除額
生命保険料、地震保険料の控除額も源泉徴収票に記載する項目です。生命保険料、地震保険料ともに従業員が提出した書類をもとに記載します。
5. 源泉徴収票を発行する上での注意点


源泉徴収票を作成して発行する際にはいくつか注意すべき点があります。特に押さえておきたいのが、マイナンバーの取り扱いや源泉徴収の対象となる収入の範囲、税務署に提出が必要となるケースです。ここでは、それぞれの注意点について詳しく解説します。
5-1. パート・アルバイトや日雇い労働者にも発行する必要がある
源泉徴収票は、国内において給与の支払いをおこなったすべての居住者に対して発行しなければなりません。そのため、通常の会社員だけでなく、パート・アルバイトや日雇い労働者に対しても発行する必要があります。
5-2. マイナンバーの記載は不要
平成27年に所得税法施行規則等の改正がおこなわれたことによって、個人情報保護の観点から従業員に交付する源泉徴収票にマイナンバーの記載はしてはいけないことになりました。改正以前は、マイナンバーを記載して源泉徴収票を交付しなければならない決まりであったため、取り扱いが変わっている点に注意が必要です。
5-3. 通勤手当を支給金額に含めてはいけない
所得税において通勤手当には非課税限度額が設けられています。電車やバスなどの交通機関を用いて通勤をしている場合、1ヵ月あたり15万円までが非課税です。そのため、支給額がこの範囲内であれば、源泉徴収票の「支払金額」欄には通勤手当を含めません。
しかし、非課税限度額(1ヵ月15万円)を超える通勤手当を支給している場合、課税対象となるので、給与支給金額に含めなければなりません。また、マイカーで通勤している場合や公共交通機関とマイカーを併用して通勤している場合などは、通勤手当の非課税限度額の計算が変わってくるので注意が必要です。
関連記事:年末調整で通勤手当は給与に含まれる?処理方法をわかりやすく解説
5-4. 税務署に提出しなければならないケース
会社の経理担当者は、毎年1月末までに法定調書を税務署へ提出する必要があります。
法定調書とは、その年に会社が従業員に支払った給与が書かれたもので、源泉徴収票も含まれます。
税務署に提出する書類にはマイナンバーの記載が必要なため、間違えのないように注意しましょう。
ただし、税務署に法定調書として提出しなければならない対象は全員ではありません。
年末調整をおこなったうえで提出義務がある人は下記の通りです。
- 150万円を超える給与が支払われた役員
- 250万円を超える給与が支払われた弁護士、司法書士、税理士など
- 上記以外で500万円を超える給与が支払われた者
参考:No.7411 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等|国税庁
6. 源泉徴収票を発行しないとどうなる?


ここでは、源泉徴収票を正しく発行しない場合のリスクについて紹介します。
6-1. 前職の源泉徴収票がなければ転職先で年末調整を受けられない
前職の源泉徴収票がない場合、転職先では前職分の給与や源泉徴収税額を正確に把握できないため、年末調整をおこなうことができません。なお、退職者に対しても源泉徴収票の発行義務があります。また、退職者への源泉徴収票の発行期限は翌年1月31日ではなく、退職日以後1ヵ月以内と定められているので注意が必要です。
6-2. 従業員は適切な確定申告をできない可能性がある
年末調整を受けた給与所得者の多くは、所得税が精算されるため確定申告は不要です。しかし、年末調整の対象外の人や、寄附金控除や医療費控除といった年末調整で対応できない控除を適用したい人などは、確定申告をしなければなりません。
正確に確定申告をおこなうには、会社から発行される源泉徴収票が不可欠です。確定申告期間は原則として毎年2月16日から3月15日まで(期限日が休日の場合は翌平日)です。源泉徴収票の発行期限は翌年1月31日ですが、従業員の申告準備に支障が出ないよう、できる限り早めの発行が望まれます。
6-3. 会社は法令に基づき罰則が課せられる恐れがある
源泉徴収票を発行するのは、給与を支払う会社に課せられた法的義務です。源泉徴収票の発行義務を怠った場合、所得税法第242条に基づき「1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」処せられる可能性があります。また、法的リスクに加え、従業員との信頼関係を損ない、会社経営に深刻な影響を与える恐れもあるため十分な注意が必要です。
7. 源泉徴収票の発行手続きをおこなう経理担当者は注意事項を把握しておこう


源泉徴収票の発行は法律で定められた義務です。年末調整の有無にかかわらず、給与を支払ったすべての従業員(退職者を含む)に対して、所定の期限までに正確に発行しなければなりません。発行期限は、在職者の場合は翌年1月31日まで、退職者の場合は退職日から1ヵ月以内です。
この義務を怠ると、従業員が転職先で年末調整を受けられない、または正しく確定申告できないなどの支障が生じる可能性があります。さらに、所得税法に基づき罰則が課される恐れもあるため、源泉徴収票の発行は極めて重要な業務といえます。



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Q. 年末調整の対象者は?
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