外国人社員の年末調整手続きは必要?注意すべき3つのこと | jinjerBlog

外国人社員の年末調整手続きは必要?注意すべき3つのこと

グローバル化が進むなかで、外国人駐在員や日本採用の外国人社員が増えてきています。初めて外国人労働者を受け入れる際に、「給与計算や年末調整ってどうやるの?」と迷うことがあると思います。

次の記事をお読みいただきますと、外国人の年末調整の手続きがクリアになります。

税務調査でミスがわかる場合が多く、必ず確認される論点ですので、正確に手続きをしましょう。

1. 外国人社員も年末調整手続きは必要

外国人社員も年末調整が必要です。年末調整、対象者、納税者、住所と居所の区分を確認しましょう。

1-1. 年末調整とは

「年末調整」とは、年間の給与総額が確定する年末に、その年に納めるべき所得税を正しく計算し、年末までに源泉徴収した税額との過不足額を徴収又は還付する手続きです。

1-2. 外国人社員で、年末調整の対象となる人

年末調整は、原則として給与の支払者に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出しているすべての人を対象としますので、居住者である外国人も年末調整の対象となります。

具体的には、次の外国人の方は年末調整の手続きが必要です。

・日本での現地採用で、他の日本人従業員と同じ給与形態・雇用契約の方
・駐在員で給与が海外払いだが、その国内払い分の経済的利益がある方。
(海外払いの給与分については年末調整の対象とはなりません。)
・年の中途で、海外の支店へ転勤したので、非居住者となった方
(その出国までの所得が年末調整の対象となります。「出国時年調」と言います。)

1-3. 納税者の区分

所得税法では、住所または居所の有無、日本国籍の有無、居住期間の長短に応じて、納税者を①居住者、②非永住者、③非居住者と区分しています。

①「居住者」とは、国内に住所を有し、または現在まで引き続いて1 年以上居所を有する個人をいいます。居住者の方は、日本・海外のすべての所得に対して、日本の所得税が課税されます。

②「非永住者」とは、「居住者」のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計5 年以下である個人をいいます。

非永住者は、国内の所得については全額を課税され、海外の所得については国内に送金されたとみなされる金額のみ課税となります。(海外の所得で国外に保有される金額については課税対象外ということです。)

③「非居住者」とは、①②の方以外です。
非居住者は日本の源泉所得のみ課税となっており、海外の所得は、非課税となっております。

1-4. 住所及び居所とは

最後に住所と居所について、確認しましょう。

①「住所」
その者の生活関係の中心となっている場所です。生活の本拠であるかどうかは客観的事実によって判定することとされています。

② 「居所」
その人の生活の本拠ではないが、その人が多少の期間継続して現実に居住する場所とされています。

実務上は、推定規定に基づいて居住形態を判定することがあるので、外国人の居住の判定にあたっては、任命書などのコピー等を入手して、派遣予定期間を確認することが重要になります。

2. 外国人社員の年末調整手続きの方法

居住者と非永住者の場合は、ほとんど日本人の従業員と同様の手続きとなりますが、少々違いがありますので、次の事項を確認をしていきましょう。

2-1. 日本人と外国人の年末調整の違い

①社会保険料控除など
社会保険料、生命保険や地震保険などの契約で、外国政府や外国企業との間で、契約を締結したものは、原則として、日本では所得控除できません。

②国外扶養親族
国外に住んでいる親や子供などの親族を扶養とする場合には、次の資料が必要となります。

•親族関係書類(国外にいる家族が扶養控除を受ける対象者の親族だと証明できる書類をいいます。)
 戸籍附票のコピーまたは国又は地方公共団体が発行した書類および国外居住親族の旅券のコピー
•送金関係書類(稼いだ給与・賞与などを、生活費や教育費などの必要に応じて海外へ送金していることを証明する書類をいいます。)

 外国送金依頼書の控え又はクレジットカードの利用明細書(家族カードなどで、送金の事実と商品などの購入が証明可能なもの)

2-2. 非居住者の場合、年末調整はありません。

非居住者に該当する場合は、年末調整はありません。

非居住者に対する給与の源泉徴収税額を一律20.42%徴収して、その月の翌月10日までに、国に納付します。つまり、源泉徴収のみで課税関係が完結しますので、年末調整や確定申告で調整する必要がありません。

非居住者の源泉徴収では、租税条約に注意する必要があります。租税条約とは、2国間の契約のようなもので、各国の税法よりも、優先して適用されます。

租税条約上、給与などについては、原則として、その仕事がされた国で発生し、課税することとされています。しかし、一定の出張者などの短期滞在者については、租税条約により、その所得税を免除することとしています。

たとえば、アメリカの場合、短期滞在者免税の要件として以下の要件をすべてを満たす場合には、日本での課税が免除されることとされています。

イ. 滞在する期間が合計183日を超えないこと
ロ. 報酬が(アメリカ)から支払われるものであること
ハ. 報酬が(日本)の事務所等によって負担されていないこと

よって、外国人の場合、非居住者の日本の国内源泉所得でも、免税になるケースがありますので、日本の所得税だけではなく、日本とその出張元の国との租税条約も注意しましょう。

3. 外国人社員の年末調整手続きで注意すること

外国人社員の年末調整の手続きで注意することは、次の事項です。

● 居住者・非居住者の区分、国内源泉所得税の判定をする。
● 国外扶養親族の適用をする外国人に制度を説明し、資料の保存の要件を満たす。
● 外国人の給与を正しく計算する。

それぞれ間違えると、金額が大きく、税務調査で指摘・修正されるケースがありますので、注意しましょう。

3-1. 居住者と非居住者の区分を間違える

外国人の年末調整は、居住形態の判定とともに、その所得源泉の判定が重要なポイントになります。

区分を間違えますと、居住者の国内源泉所得の年末調整を失念したり、非居住者なのに年末調整をしたりと、間違いの影響が大きくなるケースがあります。慎重に判定をしましょう。

3-2. 国外扶養親族の適用をする外国人に制度を説明し、資料の保存の要件を満たす。

国外扶養親族の制度の主旨を理解していない駐在員の場合、親族全てを国外扶養親族として、扶養控除が大きな金額となっているケースがあります。また、海外の親族の所得は日本の税務署では、調査するのが困難なのを想定して、積極的に控除をとる方もいるようです。

間違えた場合や虚偽の申告をした場合は、源泉徴収義務者である会社が、源泉所得税や罰金(延滞税や過少申告加算税など)を支払わなければなりません。

また、よくある間違いは、国外扶養親族にそれぞれ送金関係資料が必要にもかかわらず、代表者のみに送金している場合があります。税務調査で、指摘されますので、扶養親族の各人別に送金し、資料を保管するようにしましょう。

外国人の従業員の方にも、制度の説明をし、資料の添付を指導しましょう。

3-3. 給与課税もれが多い費用

外国人に対する給与所得とは、国内分の給料、賃金、賞与又はこれらの性質を有する給与のうち、国内において行うものです。内国法人の役員の場合は、国外において行う勤務に基因するものも、国内源泉所得に該当することになりますので、注意が必要です。

外国人の申告書作成にあたっては、給与所得の金額を算出する上で基本給、諸手当、賞与等の金銭による収入に加え、現物給与や経済的利益についても注意を払う必要があります。

なお、外国人の場合、本国を離れて勤務するという特殊事情のため様々な経済的利益を会社から享受していることが多く、給与課税漏れに注意が必要です。

具体的には、次の費用を会社が負担した場合には、給与となりますので、ご注意ください。

3-3-1. 社宅家賃

借上社宅を会社から無償で貸与されている場合のその経済的な利益部分をいいます。この場合、会社が提供する社宅として、妥当なものである場合には、給与所得として課税される金額は、一定の方法で計算した賃貸料とすることができます。なお、住宅手当の場合は、全額給与課税となります。

3-3-2. 水道光熱費

居住する家屋に係る電気・ガス・水道・電話代等を会社が本人に代わり負担した場合の経済的利益です。全額給与所得として課税されます。

3-3-3. 医療費

本人もしくはその家族に関する業務と関係のない医療費を会社が本人に代わって負担した場合には、その医療費相当額について給与所得として課税されます。

3-3-4. 教育費

外国人の子弟等が通う学校の学費を会社が本人に代わって負担した場合には、原則として給与所得として課税されます。

3-3-5. 個人の税金の会社負担分

社員・役員に課される所得税・住民税等を会社が本人に代わって負担した場合には、その会社が負担した税額相当額については給与所得として課税されます。

3-3-6. 個人の税務申告書・作成費用

日本の確定申告書作成に係る税理士費用を会社が負担した場合には、原則として課税対象となります。

上記の場合、その経済的利益の合計額を源泉徴収税引後の手取額となるように、税込金額に逆算した金額を経済的利益の総額とする、いわゆるGross-up 計算を行って源泉徴収税額を算出することになります。

4. 追加の税金を発生させないためにも外国人社員の年末調整は正しく行おう

外国人の居住者の年末調整は、基本的には日本人の居住者と同様の手続きとなります。
しかし、税務調査において確認されやすい論点として、次の論点があります。

・居住者と非居住者の区分は適切か。
・国外扶養親族の親族関係資料、送金関係資料が適切か。
・外国人駐在員などに対する経済的利益の給与課税は適切か。

間違えてしまうと、大きな金額の追加税金が発生しますので注意しましょう。