法人税の勘定科目とは?ケースごとの仕訳ルールや注意点を解説
更新日: 2024.7.2
公開日: 2022.8.10
OHSUGI
法人税の勘定科目や仕訳のルールは複雑で、ミスが発生しやすいです。確実で迅速な処理をするためには、計算の元にする金額や仕訳方法を十分に理解する必要があります。
本記事では法人税の仕訳ルールを中心に解説します。法人税の仕訳や計算の間違いは、大きな問題に発展することもありますので、ぜひお読みください。
間違いが発生しやすい注意点も解説しています。
86個の勘定科目と仕訳例をまとめて解説
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1. 法人税の種類と特徴
- 法人税
- 法人住民税
- 法人事業税
それぞれについて解説していきます。
1-1. 法人税
法人税は会社の所得に課される税金のことです。税率は会社の資本金や所得金額によって変化します。
後述する2つの税金は地方税であるのに対し、法人税は国税です。
関連記事:法人税とは?特徴や対象となる法人、種類や計算方法を紹介
1-2. 法人住民税
法人住民税は、会社がある自治体に納付する地方税の1つです。個人への住民税と同じ性質を持っています。
「法人税割」と「均等割」で計算した税額を合計し、納めなくてはいけません。
1-3. 法人事業税
法人事業税も地方税です。
法人事業税には次の4種類があり、それぞれに課税内容が異なります。
- 所得割:法人の所得に応じて課税される
- 付加価値割:法人の付加価値額に基づいて算出される
- 資本割:資本金と資本剰余金の額に基づいて算出される
- 収入割:電気供給業者やガス供給会社など特定の法人に対し、収入をもとに算出される
所得に対して課税されるという点では、法人税と同じですが法人事業税は損金に算入できます。
この点が法人税・法人住民税との大きな違いであり、仕訳や申告をする際のポイントです。
2. 法人税の勘定科目
勘定科目とは、項目ごとに表示する名前のことです。あくまでも表示名であるため、会社や利用する会計ソフトで異なり、法律による基準はありません。
ただし、会社の経費や資産の動きを知ることや、税金の計算をスムーズにおこなう為には勘定科目を一定のルールに則って決める必要があります。一般的な勘定科目の例として以下が挙げられます。
- 資産
- 負債
- 純資産
- 費用
- 収益
- 法人税・住民税及び事業税
会社独自の勘定科目を設けることも可能ですが、一般的に使われている科目を用いるケースが多いでしょう。
3. 法人税の仕訳
法人税は中間申告、決算時、確定申告時で仕訳が異なります。ここではそれぞれの仕訳について解説します。
3-1. 中間申告時の仕訳
法人税を中間納付するにあたっての中間申告は、確定申告よりも前におこないます。具体的には前年度の法人税の約半分を納める予定納税(申告)、仮決算による納税が挙げられます。中間申告時の仕訳に使うのが「仮払法人税等」という項目です。法人税は租税公課のひとつですが、仕訳においては仮払法人税等が用いられます。
中間申告では「予定申告」か「仮決算」を選べますが、どちらの場合も仕訳方法は変わりません。
中間申告による納税額が60万円を当座預金から納税した場合の仕訳は次のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
仮払法人税等 | 600,000円 | 当座預金 | 600,000円 |
このような仕訳になります。
使う項目と取り扱いが分かればとてもシンプルです。
仮払法人税等は分類としては資産になります。また、貸方である当座預金も資産です。
処理はおこなうものの、同額の資産が貸方と借方の間で増減するだけになります。
確定していない税額を仮払として処理するだけであるため、この時点では資産が減ったことにはなりません。
この仮払法人税等で仕訳をした60万円は確定申告時に取り崩す必要があります。後述する「確定申告時の仕訳」で詳しく解説しますので、ぜひお読みください。
関連記事:法人税中間納付とは何か?納付の方法や計算方法、注意点を確認
3-2. 決算時の仕訳
法人税は事業年度ごとにかかるものであるため、決算時(事業年度末)にも仕訳が必要です。
決算により確定した法人税額が140万円だったと過程して、決算時の仕訳をしてみましょう。
借方 | 貸方 | ||
仮払法人税等 | 1,400,000円 | 仮払法人税等 | 600,000円 |
未払法人税等 | 800,000円 |
簡易的な仕訳ではありますが、貸方を仮払法人税等と未払い法人税等に分けて記載します。
法人税は決算日(事業年度末)から2ヵ月以内に申告し、納税するものです。そのため、決算日に申告・納税をする必要はありません。
しかし、法人税額の計上と見込み計上による会計処理はしなくてはいけませんので、忘れずに処理しておきましょう。
3-3. 確定申告時の仕訳
確定申告時の仕訳では、中間申告時の仕訳で使った仮払法人税等と、決算時に負債にした未払法人税等の存在を忘れてはいけません。
- 中間申告で計上している仮払法人税等の金額を確定納税額から差し引く
- 決算時に計上した未払法人税等の金額を資産から支払う
この2つの考え方が必要ですが、仮払法人税等は処理が済んでいる、実際に仕訳をおこなうのは未払法人税等のみです。
未払法人税等として計上していた80万円(確定した法人税の残り)を、確定申告後に納税した場合は、実際に仕訳をおこなうと以下のようになります。
借方 | 貸方 | ||
未払法人税等 | 800,000円 | 当座預金 | 800,000円 |
負債になっていた未払法人税等と同じ金額を当座預金から計上し、負債を消去する形です。
これで中間申告・決算から続いていた仮払法人税等や未払法人税等の処理が完了します。
関連記事:未払法人税等とは?仕訳方法や未払法人税等の具体例、計上の手順を解説
4. 法人税の仕訳をする際の注意点
4-1. 課税の元になる金額の勘違いに注意
法人税が課税されるのは、税務計算で使う会社の所得です。会計で使う利益ではありません。両者はそれぞれ次のように考えます。
- 会計上の利益:収益から費用や損失をマイナスしたもの
- 税務上の所得:益金から損金をマイナスしたもの
単純に会社の売り上げのことだと思って計算すると大きなズレが発生します。十分に注意して、どの数字に基づいて計算するのか正しく把握してください。法人税の計算が間違っていたといったようなケースが発生すると、修正申告書を作成して提出する必要があります。
4-2. 法人税の仕訳は還付金にも影響する
確定申告によって法人税額が確定し、中間申告・納付の金額が多すぎた場合は、多く支払っていた分が還付されます。
しかし、無条件で還付されるわけではなく、確定申告を正しく期限内に提出していなくてはいけません。
また、細かい仕訳も必要であるため、慣れていない人が担当する場合や、アナログな方法で管理している場合は注意が必要です。
確実に還付金を受け取るためには会計ソフトや専門家の力を借りた方がよいでしょう。
4-3. 業務の遅れは追徴課税を発生させる可能性あり
法人税の仕訳は慣れていないと難しく、想定外の時間を取られることも多いです。
正当な理由があれば申告や納税の遅れに罰則はありません。しかし、仕訳に手間取ったことや、慣れていないことは正当な理由として認められず、ペナルティとして加算税や延滞税が発生します。
会社を立ち上げたばかりの場合や、経理担当が入れ替わったばかりだと、意外と発生しやすい問題です。
法人税の申告をする際は、余裕を持って業務に取り掛かりましょう。
4-4. 損金の取り扱いに注意
法人税の計算や仕訳をする際の大元になる会社の所得には、損金にできるものとできないものがあります。
法人税等の中で損金にできるものは「法人事業税」のみです。謝って法人税や法人住民税、所得税などを損金にしてしまうと、申告内容に大きな間違いが生じてしまいます。
計算や仕訳のやり直しになるうえに、気づかないと罰則が発生するリスクもありますので、損金の取り扱いには十分に注意しましょう。
5. 法人税の仕訳は会計ソフトを使うのがおすすめ
中間申告や確定申告が近づくと、大騒ぎで膨大な業務をこなさないといけなくなるケースもあります。
そんな厄介な法人税の仕訳には、ぜひ会計ソフトをご活用ください。
勘定科目の設定や仕訳、税金の計算など、法人税に関連する業務を大幅に効率化できます。計算ミスが発生するリスクも減らせるため、スムーズで余裕のある会計業務が可能です。
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