固定資産とは?定義と減価償却の計算方法、廃棄時の仕訳を解説
更新日: 2024.5.8
公開日: 2022.10.11
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企業が保有する資産には固定資産や流動資産といった種類があります。
固定資産とは、数年間という長期にわたって保有するものや、1年以上経過してから現金化される費用のことを指します。
本記事では、固定資産の種類や減価償却をおこなう際のポイントについて説明します。
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1. 固定資産とは?
1-1. 固定資産は資産の部に計上する
固定資産とは、会社の資産のうち継続的に所有するものや長期的に投資するもののことです。土地や建物、ソフトウェアや長期間の保有を前提とした証券類が含まれ、貸借対照表では左上の「資産の部」に計上します。
1-2. 取得費用は経費で落とせる
長期的に見て価値が低下していく固定資産の取得費用は経費として計上することができます。土地や長期保有する証券、美術品などは固定資産に含まれますが、取得費用を経費にはできません。また、購入費用が高額な場合は減価償却をする必要があるため注意しましょう。試用期間が1年未満のものや、10万円以下の費用はそのまま経費にできます。
1-3. 廃棄する場合は除却をおこなう
固定資産に含まれているものを廃棄する場合は、会計上でも処理をおこなわなければなりません。この処理のことを「除却」と言います。減価償却の途中であったり廃棄費用がかかる場合は、「固定資産除却損」の勘定科目を使用してください。最終的に減価償却累計額と固定資産除却損を足した金額が、取得金額と合うように会計処理をします。
1-4. 流動資産との違い
企業の資産には、固定資産のほかに、流動資産に分類されるものもあります。現金や預金、商品や製品、売掛金などはすぐに手を付けることができる流動性が高い資産です。
流動資産か固定資産かの区別は正常営業循環基準または1年基準で考えます。通常の販売や仕入れで生じる債権や債務は正常営業循環基準の流動資産となります。また、決算日から1年以内に現金化できるものも、1年基準における流動資産とみなされます。
企業運営において、資金の安定性は重要です。固定資産や流動資産をどれだけ持っているかを貸借対照表に記録すれば、資金の安定性の把握や分析がしやすくなります。
また、企業の資産には株式交付費や社債発行費といった繰延資産もあります。繰延資産は過去に支出した費用の効果が来期以降にも及ぶと考えられるもののことです。流動資産や繰延資産に該当しない資産は、すべて固定資産に分類します。
2. 固定資産の種類
固定資産には、有形固定資産と無形固定資産、そして投資その他の資産があります。
それぞれの固定資産の具体例や違いについて見ていきましょう。
2-1. 有形固定資産
有形固定資産とは、固定資産のうち目に見えるもののことをいいます。
たとえば、企業が営業目的で所有している土地は有形固定資産に分類されます。
企業の土地は事務所や工場、駐車場など多用途に使われます。
ただし、不動産販売などの目的で所有している土地は流動資産として扱います。
土地に建てられる事務所や営業所、工場、資材を置く倉庫などの建物も有形固定資産です。
固定資産における建物の定義は、屋根もしくは柱と壁を有する工作物です。
この条件を満たしていれば、家屋などの形をしていなくても建物とみなされます。
企業が所有する機械装置の一部も有形固定資産に分類されます。
この場合の機械装置とはショベルカーやベルトコンベアなど、工場や建設現場で使う重機や設備全般のことをいいます。
パソコンや医療機器なども機械ではありますが、有形固定資産の機械装置には分類されません。
有形固定資産には企業の車両運搬具も含まれます。
事業用の自動車やトラックのほか、バスやフォークリフトなどを所有している場合には車両運搬具として計上します。
ほかに、船舶や航空機、工具や器具備品、建設仮勘定なども有形固定資産に数えられます。
有形固定資産のうち、建物や機械などは減価償却の対象となるため償却資産と呼ばれます。
これに対して、土地や建設仮勘定など減価償却の対象とならない有形固定資産は非償却資産と呼ばれます。
関連記事:有形固定資産とは?無形固定資産との違いや減価償却について解説
2-2. 無形固定資産
無形固定資産とは形を持たない固定資産全般を指します。
無形固定資産として計上されるものには、ソフトウェアやのれん、特許権や商標権といった法律上の権利などがあります。
ソフトウェアとはコンピュータに一定の仕事をおこなわせるために組まれたプログラムのことです。
ただし、販売目的のソフトウェアは無形固定資産に含まれません。
無形固定資産に該当するソフトウェアとは、その開発や使用によって収益が得られるものや費用が削減されると認められるものに限られます。
企業の買収や合併などの際には無形固定資産としてのれんが計上されます。
のれんとは、買収された企業から取得した資産と負債の評価差額と、買収にあたって支払った対価との差額のことです。
具体的には、買収された企業が持つブランド力やノウハウなどの見えない価値のことをいいます。
ほかに、建物の所有を目的とする地上権や土地の賃借権といった借地権、産業上の発明を独占的排他的に利用できる権利である特許権なども無形固定資産です。
無形固定資産にも有形固定資産と同じように、減価償却資産と非減価償却資産があります。
たとえば、借地権などの権利は価値がずっと変わらないため非減価償却資産として扱います。
一方でソフトウェア、技術に対する権利である特許権などは、今後の技術革新によって価値が減少する可能性があります。
そのため、会計上は減価償却資産として処理します。
2-3. 投資その他の資産
事業に直接使われず、企業の経営支配や取引関係の維持などを目的として投資した資産は、固定資産の扱いになります。
たとえば、従業員に対する貸付金のうち、返済期間が1年以上になる長期貸付金は投資その他の資産として固定資産に分類します。
また、出資金を固定資産として扱うケースも多いものです。
出資金とは合同会社や合資会社、信用組合などに対する出資持分のことをいいます。
株式とは異なり、出資持分の譲渡には成約があるためすぐには譲渡できないため、有価証券とはみなされず固定資産の扱いになります。
短期的な売買を目的としていない株式や社債、国際などの投資有価証券、オフィスを借りる際に支払う敷金や礼金なども投資その他の資産に該当します。
基本的に、有形固定資産や無形固定資産に該当しないものは投資その他の資産として扱われています。
3. 固定資産の減価償却の方法
固定資産のうち、減価償却が必要となるものは適切に処理する必要があります。
減価償却とは、時間がたつにつれて価値が減っていく資産の計上方法です。大きな金額の固定資産をほかの資産と同じように計上すると、購入した年の会計が大赤字となってしまいます。こうなってしまっては経営状況を把握することができません。
また、固定資産には複数年にわたって収益に貢献するという特徴があります。固定資産の減価償却は、固定資産の購入費用をその後の収益と関連付けて計上すべきという費用収益対応の原則によっておこなわれます。固定資産の減価償却では、時間経過に応じて価値の目減らしをする処理をおこないましょう。
3-1.減価償却額の計算方法
減価償却には、定率法と定額法があります。
定率法とは該当する固定資産の「未償却残高(残存価額)」に償却率を掛けて算出する方法です。毎年算出し直されるため、購入初年度に費用が一番大きくなり、年を経るごとに費用が少額になっていきます。
対して定額法は「取得金額」に償却率をかけた金額を耐用年数が経過するまで計上する方法です。毎年費用が変動する定率法とは異なり、購入初年度から耐用年数が経過するまで減価償却の費用が変わりません。
定率法で減価償却をおこなう場合:未償却残高 × 償却率
定額法で減価償却をおこなう場合:取得金額 × 償却率
会社の規定や今まで使用してきた方法で減価償却をおこないましょう。
具体的な計算方法は下記の関連記事から確認できます。
関連記事:減価償却費の計算方法とは?定率法・定額法を計算例を用いて解説
3-2. 耐用年数とは
固有資産の減価償却は、「その資産の保有、または使用が見込まれる期間」で分割します。この期間を「耐用年数」と言います。
国税庁では減価償却できる資産の種別に耐用年数を定めているので、参考にしてください。
[参考] 主な減価償却資産の耐用年数表|国税庁
[参考] 減価償却資産の償却率等表|国税庁
4. 取得金額によって費用計上のルールが変わる
前述したとおり、固定資産はその性質や取得金額によって適用されるルールが異なるので、注意が必要です。この章では取得金額別に会計処理の方法について解説します。
4-1. 取得金額が10万円以下の場合
取得金額が10万円以下の場合は全額、経費として計上できます。これを「一括例えば、5万円の応接セットを購入した場合は、「消耗品」の勘定科目で計上できるのです。費用もそのまま損金にして構いません。
4-2. 取得金額が10万円以上で20万円未満の場合
取得金額が10万円以上で20万円未満の場合は、一括償却資産とすることができます。一括償却資産にした場合は、耐用年数に関わらず3年で減価償却をおこないます。一括償却資産にすると、経費が増える分利益は下がりますが、法人税の節税につながります。
[参考] 〔少額の減価償却資産及び一括償却資産(令第138条及び第139条関係)〕|国税庁
4-3. 取得金額が20万円以上で30万円未満の場合
「中小企業者等の少額減価償却資産の特例」により、対象となる法人であれば取得金額が30万円未満のものまで経費として計上できます。ただし、経費として扱うためには所定の手続きを踏む必要があるため注意してください。また、特例は事業年度ごとに300万円までと決められています。300万円以上は経費として計上できないため注意しましょう。
4-4. 取得金額が30万円以上の場合
取得金額が30万円以上の固定資産は、会社規模に関わらず減価償却をおこないます。ただし、固定資産であっても土地や美術品、長期保有目的の証券などは経費にならないため、減価償却もおこないません。
4-5. 圧縮損と圧縮記帳
固定資産の購入に際して、補助金の交付を受ける場合があります。通常、受け取った補助金は会社の収益に計上されるため、本来よりも多くの税金を支払わなければなりません。そのため、会社のキャッシュが不足する可能性があります。一時的な収益の増加により資金不足に陥らないよう、一括で交付された補助金を一時的に減額して複数年度に分割して計上することができます。
この方法を「圧縮記帳」といい、会計上で減額に用いる勘定科目を「圧縮損」といいます。
圧縮記帳は補助金の交付以外にも条件を満たせばおこなえますが、いずれも税金の支払いを先延ばしにしているだけで、支払い義務が免除されているわけではないので、注意しましょう。
出典:No.5651 特定資産を買い換えた場合の圧縮記帳|国税庁
5. 固定資産の中には減価償却が必要なものもある
事業において、継続的に使用するものや長期的に投資するものなど、1年間を超えて保有する資産は総じて固定資産に分類されます。
固定資産のうち、使用したり時間が経過したりすることで価値が減少すると想定されるものについては減価償却の必要性が生じます。
企業のツールと紐づけて使用できる会計ソフトを導入するなど工夫し、スムーズに勘定科目の計上や減価償却をおこないたいものです。
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