公共交通機関でアクセスできない目的地や乗り換えに時間がかかる場所への移動は車が便利です。自家用車や社用車がなくても、レンタカーを手配すればストレスフリーで移動が叶います。

しかし、レンタカーの利用には、レンタカー代やガソリン代、保険代など、さまざまな費用が発生します。経費としてどのように計上すべきか悩むケースもあるでしょう。そこで今回はレンタカー関連の費用を仕訳で切るときの正しい勘定科目や、仕訳方法について解説します。

1. レンタカーの賃借料は経費にできる

仕事で利用したレンタカーの賃借料は、経費にできます。取引先への移動で使ったり、現場視察を目的にレンタカーを借りたりなど、業務上に関係する費用である場合は、全額経費計上しても問題ありません。

ちなみに経費として計上する場合は、レンタカーのレンタル料が載っている領収書を保管しておき、日付や利用した理由、金額を明記したうえで仕訳が必要です。

2. レンタカー代とガソリン代は「旅費交通費」

レンタカー代とガソリン代は「旅費交通費」の勘定科目で、経費として計上できます。現金払いをしたときの仕訳は下記のとおりです。

＜例＞ 仕事の移動で利用するレンタカー代1万円とガソリン代5000円を現金で支払った。

借方		貸方
科目	金額	科目	金額
旅費交通費	15,000	現金	15,000

旅費交通費は費用の項目に該当するため、借方に記載することで経費として計上できます。代金をクレジットカードで支払った場合には、下記のように仕訳をおこないます。

＜例＞ 上記で支払ったクレジットカード代金が会社の口座から引き落とされた。

借方		貸方
科目	金額	科目	金額
未払金	15,000	普通預金	15,000

クレジットカード払い時は、決済日以降に現金が引き落とされます。そのため、決済時の貸方は未払金となります。

2‐1. レンタカー代は車両費や賃借料の勘定科目でも経費計上できる

旅費交通費以外でも経費として計上できます。たとえばレンタカーを借りる機会が多く、かつさまざまな用途で借りているときは「車両費」として計上する方法もあります。支出の種類によって課税区分が異なる点には注意が必要です。

また事務用品や備品など、さまざまなものをレンタルしている場合は「賃借料」で計上すると、費用の管理がスムーズです。

関連記事：旅費交通費とは？仕訳方法や交通費との違いもわかりやすく解説

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2‐2. ガソリン代も旅費交通費以外で経費計上できる

ガソリン代も、旅費交通費以外の勘定科目で経費として計上できます。

たとえば、自動車を維持したり使用したりするときの費用を計上するときに使われる「車両費（車両関連費）」、灯油や重油、ガソリンに関する費用を計上するときに使用する「燃料費」などを代用してもいいでしょう。

営業など特定の部署しか車を利用しない会社は、ガソリン代を「車両費」として仕訳するのに向いています。一方、レンタカーを含む車両の維持費や管理費などが多い会社では、ガソリン代とほかの経費を分けて仕訳したほうが、後から帳簿を見直したときに費用がわかりやすいでしょう。

関連記事：ガソリン代を経費として計上する際のポイントや注意点を解説

2‐3. 仕訳の勘定科目を統一することが重要

レンタカーにまつわる経費は担当者によって勘定項目にブレが生じるリスクがあります。レンタカー代にしてもガソリン代にしても、社内で勘定科目を統一することが大切です。使用用途が同じであるにもかかわらず、さまざまな勘定科目を用いてしまうと、費用の管理が煩雑になってしまいます。

仮にレンタカー代を旅費交通費、ガソリン代を燃料費とした場合であれば、同じ勘定科目で経費として計上し続けることを徹底しましょう。

3. レンタカーで高速道路、ETCを使用した場合の仕訳方法

レンタカーで高速道路を利用した場合、高速料金も「旅費交通費」として処理します。高速料金は一般レーンを通過し、現金で支払うことも可能ですが、ETC支払いには料金所の通過がスムーズ、割引が利用できるなど、現金払いにはないメリットがあります。

ETCで支払った高速代金も、旅費交通費を用いて仕訳することで経費として計上できます。仕訳の例は以下のとおりです。

＜例＞高速料金としてETCシステムで2,500円を支払った。

借方		貸方
科目	金額	科目	金額
旅費交通費	2,500	未払金	2,500

＜例＞ 上記で決済したETCシステムの高速料金2,500円が会社の口座から引き落とされた。

借方		貸方
科目	金額	科目	金額
未払金	2,500	普通預金	2,500

ETCの代金は基本的にクレジットカード決済であるため、後日引き落とされます。そのため決済日は未払金で仕訳をし、引き落とし日に未払金を失くすための仕訳をします。

3‐1. 高速料金をETCで支払う場合、立替精算の必要書類は？

ETCで支払った高速料金は、現金の場合と違い料金所で領収書を受け取ることができません。そこで経費申請の際には、領収書の代わりに「ETC利用明細書」を添付するのが一般的です。

ETC利用明細書を発行するには「ETC利用照会サービスを利用する」「パーキングエリアやサービスエリアのETC利用履歴発行プリンターを利用する」「クレジットカード会社が発行する明細書を待つ」の3通りの方法があります。

レンタカー代と合わせて高速料金を経費として申請する可能性がある従業員には、事前に手続きを周知しておくとスムーズです。

関連記事：ETC料金は経費精算できる？勘定科目や必要書類を紹介

4. 保険料の仕訳方法

レンタカーを借りるときは、利用日数分の自動車保険に加入するケースもあります。そのときの保険料は、一般的に「損害保険料」の勘定科目で仕訳をおこないます。

＜例＞ レンタカー利用にともなう自動車保険料2,000円を現金で支払った。

借方		貸方
科目	金額	科目	金額
損害保険料	2,000	現金	2,000

損害保険料の代わりに「車両費」を用いて仕訳することもできます。時と場合に応じて、費用の勘定科目を使い分けるといいでしょう。

5. レンタカー代、ガソリン代、ETC代、保険料を計上できない場合は？

レンタカー代やガソリン代、ETC代、保険料などの仕訳例を紹介しましたが、経費として計上できないケースもあります。それは、仕事以外の用途で利用した場合です。プライベートで発生した費用の場合は、事業との関係性がないため経費と区別して処理する必要があります。

ただし、実際には往路は仕事、復路は観光など、レンタカーを仕事とプライベートの両方で使うケースも考えられます。経費として計上できるか否かは会社ごとに定める「経費精算規定」次第ですが、仕事で使った金額を計算するには「時間」や「走行距離」を根拠にすると合理的です。

たとえば24時間プランを利用し、12時間だけ仕事でレンタカーを使った場合は、支払額の50％を経費として計上します。仮に24時間プランの料金が7,000円だった場合は、半分の3,500円が経費計上の目安となるでしょう。ガソリン代を100キロ分支払って、仕事関係の移動を70キロだけした場合は、支払額のうち7割を経費計上するイメージです。

これらの計算や仕訳では担当者ごとにブレが生じないよう、ルールを明確に定めておくことが重要です。

6. レンタカー関係の勘定科目は会社によって異なる

レンタカー関係の勘定科目は、会社によって異なります。すべての費用を旅費交通費でひとまとめにするケースもあれば、支払い項目によって勘定科目を使い分ける場合もあるでしょう。

勘定科目を決めるときに大事なのは、社内の経費を管理しやすくするために、どの勘定科目を使うべきか？という視点で考えることです。何も考えずに勘定科目を当てはめていくと、税務処理に手間がかかるだけでなく、従業員や株主などステークホルダーの信用を失うことにもなりかねません。

経費業務を円滑に進めるためにも、先のことを考えながらひとつひとつの勘定科目を正確に判断しましょう。