勤怠管理において客観的記録をつけるための方法やポイントとは
更新日: 2022.12.6
公開日: 2020.2.15
OHSUGI
「働き方改革」の推進が進む中、2019年4月に「労働安全衛生法」が改正され、企業における
従業員の労働時間の把握が義務付けられました。今までは、労働時間の把握に関して根拠が曖昧な部分が多く、その結果、長時間労働による過労死問題や、未払いの残業代問題など多くの社会問題が発生しています。
健康管理上の観点からも、労働時間の客観的記録の必要性が高まり、法改正へと改革が進んできました。そこで今回は改正された法律の内容と、勤怠管理をおこなう上で労働時間の客観的記録をつけるためのポイントを解説していきます。
法律に則った勤怠管理をしていきたい方に向け、当サイトでは、法律で定められた勤怠管理の方法について解説した資料を無料で配布しております。
資料では2019年に改正された労働基準法に則った勤怠管理の方法も解説しているため、自社の勤怠管理が法的に問題ないか確認したい方は以下のボタンから「中小企業必見!働き方改革に対応した勤怠管理対策」のダウンロードページをご覧ください。
目次
1. 労働時間における客観的記録とは
過去にも労働基準法は時代に合わせて改正されてきましたが、2019年4月1日からの法改正により、すべての使用者に対して、従業員の労働時間を客観的に把握することが法的に義務化されました。
改正された内容において、使用者が従業員の労働時間を把握するために必要な勤怠記録の管理に関する事項は4つあります。
1つ目は、始業・終了時刻の確認記録です。
厚生労働省のガイドラインには「使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること。」と記載されています。
使用者には、労働時間を適正に把握する責任があり、労働時間を客観的に把握するために、労働日ごとに始業時刻や終業時刻を使用者が確認・記録し、これをもとに何時間働いたかを把握・確定する必要があります。
また、就業に必要な準備行為や業務に関連した後始末の時間、研修・教育訓練を受講した時間、業務に必要な学習をおこなった時間も労働時間に該当するため、使用者は労働時間の把握に注意しなければなりません。
2つ目は、始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法が定められたことです。
使用者が始業・終業時刻の確認・記録をする方法として
①使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること。
②タイムカード、ICカードなどの客観的記録を基礎として確認し、記録すること
の2つの方法が定められました。
①の「使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること。」とは、使用者や労働時間の管理する者が、直接始業時刻や終業時刻を確認することを意味します。
②の「タイムカード、ICカードなどの客観的記録を基礎として確認し、記録すること」とは、タイムカードやICカードなどの勤怠管理システムによる客観的記録をもとに、使用者が労働時間を算出することを意味します。
2019年4月より改正された「労働安全衛生法」で、従業員の労働時間の把握が義務化されましたが、労働時間の定義はどのように考えるのでしょうか。労働時間の考え方は、従業員が使用者の指揮監督下におかれている時間を指します。
前述したように、ここで注意をするポイントは、実務をこなしている時間だけではなく、朝礼、体操、清掃、待機時間や研修など、指揮命令下の元でおこなわれるものはすべて労働時間に含まれるため、注意しましょう。
その他にも、時間外労働の上限規制や有給休暇取得の義務化など、働き方改革により以前よりも労働に対する監視が厳しくなりました。そこで当サイトでは、2019年の法改正の内容や勤怠管理において起きがちな課題、その解決方法をまとめた資料を無料で配布しております。
法改正の内容で不安な点がある方は、こちらより資料をダウンロードしてご覧ください。
2. 労働時間を客観的に把握することが法的に義務化された
2-1. 労働時間の客観的記録把握の義務化により、勤怠を記録すべき対象者が拡大
厚生労働省のガイドラインには、適用対象の事業所は、労働基準法のうち労働時間に係る規定(労働基準法第4章)が適用される全ての事業所と明記されています。
労働時間の把握義務化の対象となるのは、一般従業員だけではなく、高度プロフェッショナル制度の対象者以外すべての労働者になりました。今までは管理されなかった管理監督者やみなし労働時間制の従業員も含まれますので、注意が必要です。
2-2. 的確な勤怠管理ができなかった場合の罰則について
法改正における「労働時間の把握の義務化」に関しての罰則はありません。
しかし、従業員の労働時間を把握していないと、長時間残業をさせたり、有給休暇を適切に取得できなかったりという結果になりがちです。把握義務を怠り、残業時間が上限規制を超えていた、年5日の有給取得ができていなかったなどの場合には6か月以下の懲役や30万円以下の罰金が科せられることもあるので注意しましょう。
なお、働き方改革による法改正で新たに義務化された内容や罰則が設けられた内容を改めて確認しておきたい方に向け、2019年にあった法改正の内容と対応策・必要になった勤怠管理についてまとめた資料を無料で配布しておりますので、ご興味のある方はこちらよりダウンロードページをご覧ください。
関連記事:法律改正で変わる勤怠管理 | 2019年4月より改正された労働基準法を徹底解説
3. 勤怠管理において客観的記録をつけるための方法とは
「働き方改革」の推進にともない、従業員の労働時間の把握が義務化されたことにより、勤怠管理を客観的に記録することが必須となりました。
3-1. 従業員の労働時間の客観的把握は企業の義務
従業員の労働時間の把握をする方法として、タイムカード、ICカードリーダー、パソコンのログイン・ログアウトなどの客観的な記録が必須です。さまざまな法改正にも対応できる勤怠管理システムを導入し、正確な労働時間を把握をしようとする企業も増えてきています。
3-2. 正確な労働時間を賃金台帳へ記載する
もし故意に記載していない場合や虚偽の記載をしていた場合は、30万円以下の罰金が科せられることもありますので注意しましょう。
3-3. 自己申告の場合の例外的な処理方法について
労働時間の客観的記録が難しい場合は、例外的に自己申告が認められることもあります。
その場合は、下記の対応が必要です。
①自己申告制を導入する前に、その対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告をおこなうことなどについて十分な説明をおこなうこと
②自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施すること。
③労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと。
また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因になっている場合においては、改善のための措置を講ずること。
自己申告による労働時間の把握は、あいまいな労働時間管理になりがちなため、上記の3点に注意して客観的記録を管理する必要があります。
3-4. 労働時間の記録の保管期間とは
労働基準法109条において、「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。」と明記されています。保存期間にあたる5年間のカウントは、最後の記載がされた日を起算日にしてカウントしましょう。また、保管を怠ると30万円以下の罰金に科せられる場合もあります。
関連記事:勤怠管理とは?目的や方法、管理すべき項目・対象者など網羅的に解説!
4. 適切な勤怠管理をおこなうためのポイントについて
このように、企業は従業員の労働時間の把握の重要性を十分に理解し、対処していく必要があります。そこで適切な勤怠管理を実施するにあたり、どのようなポイントが重要になるか解説します。
4-1. 勤怠管理における自社ルールを見直そう
まずは、自社の勤怠管理は客観的な記録に基づいてなされているかを見直しましょう。
たとえば、出勤簿やExcelなどに従業員が自身で出退勤の時刻を記入している方法は、自己申告に当てはまるため、ガイドラインに基づいた管理になっているか見直しましょう。
また、タイムカードなどで管理をしている場合も、打刻してからも仕事を続けるサービス残業が横行していないかなども併せて確認することをおすすめします。
関連記事:勤怠管理をおこなう上で理解しておくべきルールを徹底解説
4-2. 正確な勤怠管理を可能にするツールの導入
客観的な記録に基づく勤怠管理を行うなら、勤怠管理システムの導入がおすすめです。パソコンやスマートフォン、タブレット、ICカードなど様々な方法で打刻ができる勤怠管理システムであれば、打刻漏れを減らして客観的な記録をつけることが可能です。
特に外回りの営業や運送業の運転手などは、事務所に来たタイミングで出退勤の時間を報告する自己申告制の勤怠管理になりがちですが、システムを利用すればどこでも打刻が可能になるため、正確に出退勤の時間を記録することができます。
関連記事:勤怠管理システムとは?はじめての導入にはクラウド型がおすすめ
5. まとめ
企業において従業員の労働時間の把握は重要な課題です。社会問題にもなっている過重労働問題や残業代の未払い問題による企業リスクや従業員の健康管理上からしても、適正な労働時間の把握は必須です。
さまざまなアラーム機能も付帯している勤怠管理システムなら、未然に問題点を改善することもできるようになるでしょう。勤怠管理システムで、より健全で効率化された業務を遂行していくことをおすすめします。
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