賞与とは何?種類・決め方・計算方法・所得税や社会保険料の計算を解説
更新日: 2025.5.30
公開日: 2025.5.30
jinjer Blog 編集部
「賞与とは何か知りたい」
「賞与から控除される所得税や社会保険料の計算方法を知りたい」
上記のようにお悩みの方も多いでしょう。
賞与とは、固定給とは別に、会社が従業員に対して支給する報酬の一つです。毎月の給与と同様に、賞与の総支給額から所得税や社会保険料を差し引いて手取り額の計算をおこないます。
本記事は、賞与の概要や種類、決め方や計算方法、賞与から控除される所得税や社会保険料の計算方法の解説です。そのほかに、賞与から控除される社会保険料の種類についても解説しているため、ぜひ参考にしてください。
目次
給与計算を手計算しているとミスが発生しやすいほか、従業員の人数が増えてくると対応しきれないという課題が発生します。 システムによって給与計算の内製化には、以下のメリットがあります。
・勤怠情報から給与を自動計算
・標準報酬月額の算定や月変にも対応しており、計算ミスを減らせる
・Web給与明細の発行で封入や郵送の工数を削減し、確実に明細を従業員へ渡せる
システムを利用した給与計算についてさらに詳しく知りたい方は、こちらからクラウド型給与計算システム「ジンジャー給与」の紹介ページをご覧ください。

1. 賞与とは
賞与とは、月給のような固定給とは別に、会社が定めた時期に支給する報酬の一つです。
「ボーナス」の名称でも知られていますが、会社によっては「期末手当」や「特別手当」などと称していることもあります。
賞与を支給する場合、ルールは会社ごとに異なります。例えば、以下のような項目について、各社で自由にルールを設定可能です。
- 対象者
- 支給時期
- 支給条件
- 支給金額
- 賞与の種類
- 計算方法
賞与の支給に関する法的な義務はなく、賞与を支給するかどうかは各社の判断にゆだねられています。ただし、就業規則や労働契約に賞与の支給が明記されている場合は、規則に従って賞与を支給しなければなりません。
2. 賞与の種類
代表的な賞与の種類は、以下の3つです。
- 基本給連動型賞与
- 業績連動型賞与
- 決算賞与
各種類の概要を解説します。
2-1. 基本給連動型賞与
「基本給連動型賞与」は、賞与の種類の一つです。
基本給の金額を基準として賞与額を決定する仕組みで、「基本給の金額の○ヵ月分」として支給額が設定されます。
例えば、賞与は「基本給の金額の2ヵ月分」かつ基本給が30万円の場合、賞与の金額は以下のとおりです。
30万円×2=60万円
一般的に、毎年1回または2回、基本給の1〜2ヵ月分を賞与として支給する会社が多いでしょう。賞与の支給時期は、夏季(6月・7月)や冬季(12月)に多い傾向です。
基本給連動型賞与には、以下のメリットとデメリットがあります。
メリット | ・ほかの制度と比べて賞与計算が簡単で、支給額を把握しやすい
・従業員に根拠を説明しやすい |
デメリット | ・勤続年数や役職による差が大きく、若手や優秀な従業員の労働意欲の低下を招きやすい
・業績悪化による減額が難しい |
就業規則に算定基準が明記されている場合、基準に反する減額は違法となる可能性もあるため注意が必要です。
2-2. 業績連動型賞与
賞与の種類には、「業績連動型賞与」もあります。会社・部門・個人の業績などに応じて支給額が決まる、成果主義型の賞与制度です。
業績が好調なときは増え、悪化すると減額または支給されません。
業績連動型賞与には、以下のメリットとデメリットがあります。
メリット | ・業績に応じて減額や不支給が可能なため、経営の安定化につながる
・明確な算定基準により従業員のモチベーションが向上しやすい |
デメリット | ・ほかの制度に比べて、資金計画が立てにくい
・個人主義が強まり、組織力が低下する可能性がある |
業績が好調な年に多くの賞与を支給した結果、その後業績が著しく悪化して資金不足に陥るリスクもあるため、中長期的な視点による資金計画が必要です。
賞与の計算方法は会社によって異なります。売上高や利益などを基準にして独自の指標を乗じて賞与総額を算出し、対象者に配分する方法もあります。
また、個人の支給額の算出でも、会社独自の評価指標を用いるケースが一般的です。
2-3. 決算賞与
「決算賞与」も、賞与の一種です。会社の業績に応じて支給する賞与で、決算日の翌日から1ヵ月以内に支給しましょう。
従業員への利益還元を目的としており、以下のようによばれることもあります。
- 臨時賞与
- 特別賞与
- 年度末賞与
支給の有無や支給額の根拠となるのは、年次決算の内容によるものです。
支給額の算定方法は会社ごとに異なります。例えば、余剰利益を一律配分する方法や、従業員の業績や勤続年数に応じて決定する方法などです。
決算賞与には、以下のメリットとデメリットがあります。
メリット | ・従業員のモチベーションアップにつながる
・条件を満たせば当期の損金に算入できるため法人税の節税になる |
デメリット | ・支給による手元資金の減少で資金繰りが悪化する可能性がある
・業績悪化で不支給の場合は従業員の労働意欲の低下を招く |
損金算入による節税効果も見込まれますが、賞与に対する事業者負担の社会保険料が発生することも覚えておきましょう。
3. 賞与の決め方
賞与の決め方は会社によって異なり、主に以下のような方法があります。
- 基本給や役職手当に連動して決める
- 会社・部門・個人などの業績に連動して決める
- 年俸額を14分割し、そのうち2ヵ月分を賞与として支給する
会社によっては、上記の方法を組み合わせて決定しているケースも見受けられるでしょう。
例えば、基本給をベースにしつつ、自社で定めた評価係数をかけて上乗せや減額をおこなうことで、成果や評価を賞与に反映させることも可能です。
計算式は、基本給の金額×2ヵ月分×評価係数です。
公平・透明性を重視し、従業員が納得しやすい基準を設けることで、賞与制度への満足度向上やモチベーションアップにつながるでしょう。
4. 賞与の計算方法
賞与の計算は、まず各従業員の賞与総支給額を算出することから始まります。一般的に、就業規則や社内規定に定められた計算式や評価係数をもとづく決定です。
続いて、総支給額から「社会保険料」「所得税」を差し引き、実際の手取り金額を算出しましょう。
賞与の支給後は、次の内容を記載した賞与明細書を作成・交付します。
- 賞与の総支給額
- 控除額の内訳
- 振込支給額
- 支給日
給与明細書の交付は、労働基準法上の義務ではありません。
ただし、所得税法には給与明細書の交付義務が定められているので、賞与を支給する際には明細書を交付しましょう。
5. 賞与から控除される所得税の計算方法
賞与から控除される所得税の計算方法は、以下のとおりです。
所得税額=(賞与の総支給額-(健康保険料+介護保険料+厚生年金保険料+雇用保険料))×賞与に対する源泉徴収税額の算出率
上記の算出率は、国税庁が毎年発表する賞与の源泉徴収税額の算出率を示す表にもとづいて確認します。
該当する算出率を確認するためには、次の従業員情報が必要です。
- 賞与支給月の前月の給与額(社会保険料控除後)
- 扶養家族等の人数
また、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している従業員は表の甲欄、未提出の従業員は表の乙欄にあてはめて算出率を確認しましょう。
参考:賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和7年分)|厚生労働省
6. 賞与から控除される社会保険料の種類
賞与から控除される社会保険料の種類は、以下の4つです。
対象となる従業員や計算方法は保険の種類によって異なるため、制度ごとの違いを把握しておくことが重要です。
健康保険料 | 労使折半の負担で、年3回以下の賞与の支払いが対象となる |
介護保険料 | 労使折半の負担で、40歳以上64歳以下の従業員のみが対象となる |
厚生年金保険料 | 労使折半で負担する |
雇用保険料 | それぞれに定められた割合で、労使の双方が負担する |
一方、労災保険料や子ども・子育て手当拠出金などは会社が全額負担するため、従業員の賞与から控除されません。
また、以下のように賞与に社会保険料がかからないケースがあります。
- 賞与支給月に退職予定となっている従業員
- 産前産後休業・育児休業中の従業員
さらに、同じ従業員に対して同年に4回以上の賞与を支給する場合は、注意が必要です。賞与ではなく「報酬」扱いとなるため、毎月の給与と合算して社会保険料を計算しましょう。
7. 賞与から控除される社会保険料の計算方法
賞与から控除される社会保険料の計算方法は、以下のとおりです。
健康保険料 | 標準賞与額×健康保険料率÷2 |
介護保険料 | 標準賞与額×介護保険料率÷2 |
厚生年金保険料 | 標準賞与額×厚生年金保険料率÷2 |
雇用保険料 | 賞与の総支給額×雇用保険料率 |
標準賞与額とは、賞与の総支給額から1,000円未満を切り捨てた金額を指します。社会保険は、標準賞与額を基準に計算するため、端数の処理に注意が必要です。
また、次の社会保険料の計算においては上限額が設けられています。上限を超える分には保険料がかからないため、計算時には注意が必要です。
健康保険料 | 年間573万円(標準賞与額の合計) |
厚生年金保険料 | 月間150万円(1回あたりの標準賞与額) |
健康保険料率と介護保険料率は、いずれも事業所の所在地や加入している健康保険組合によって異なります。
一方、厚生年金保険料率は全国一律で固定されており、2025年4月時点では18.3%の設定です。
雇用保険料率は、事業の種類(一般、農林水産、建設業など)ごとに異なり、厚生労働省が公表する雇用保険料率表をもとに確認しましょう。
参考:令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内|厚生労働省
8. 賞与や賞与計算について理解を深めよう
賞与とは、毎月支給する固定給とは別に、会社が従業員に支給する報酬の一つです。法律による義務はないため、支給の有無や賞与に関するルールは各社が自由に決められます。
賞与の代表的な種類は、基本給連動型・業績連動型・決算賞与の3つです。種類ごとにメリット・デメリットがあるため、自社の賞与の導入や見直しに備えて把握しておきましょう。
自社の賞与を決める際には、基本給や業績など基準を明確にし計算式や評価係数を設定しておくと、円滑な進行を期待できます。
また、支給額の算出に加え、所得税や社会保険料の控除についても理解しておくことが大切です。本記事の内容も参考にしつつ、ぜひ賞与や賞与計算について理解を深めてください。
給与計算を手計算しているとミスが発生しやすいほか、従業員の人数が増えてくると対応しきれないという課題が発生します。 システムによって給与計算の内製化には、以下のメリットがあります。
・勤怠情報から給与を自動計算
・標準報酬月額の算定や月変にも対応しており、計算ミスを減らせる
・Web給与明細の発行で封入や郵送の工数を削減し、確実に明細を従業員へ渡せる
システムを利用した給与計算についてさらに詳しく知りたい方は、こちらからクラウド型給与計算システム「ジンジャー給与」の紹介ページをご覧ください。



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