運送業向け!ドライバーの労働時間の上限(残業)規制内容を徹底解説
更新日: 2026.3.31 公開日: 2020.3.3 jinjer Blog 編集部

トラックによる長距離輸送などが多い運送業では、長時間労働が常態化しがちです。国が定める「労働時間の上限」に違反する事業所も少なくありません。
運送業において、従業員の「労働時間の上限」はどのように決められているのでしょうか。
この記事では、改正労働基準法の新ルールもふまえて、運送業での労働時間の上限規制や、過労死や労働災害を未然に防ぐ勤怠管理のポイントについて解説します。
関連記事:労働時間について知らないとまずい基礎知識をおさらい!
運送業の法改正は2024年4月から!
運送業界では、36協定の特別条項における残業の上限規制は2024年4月から適用されることに加え、上限時間も通常の職種とは異なります。罰則付きの規制であるため、上限規制の内容をしっかりと把握して対応しなくてはなりません。
「上限規制の詳細までは理解できていない」「上限規制に向け、必要な対応が分からない」という方に向け、当サイトでは建設業界の上限規制について法改正の内容ととるべき対応をまとめた資料を無料で配布しております。
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目次
1. 2024年4月から運送業の時間外労働に上限ができた


トラックドライバーをはじめとした運送業は、天候や道路状況の影響を強く受けるため、労働時間が長くなりやすいです。しかし、そうした事情をもつ運送業にも、労働時間の上限があります。規制の内容や規制による問題をまずは見ていきましょう。
1-1. トラックドライバーの時間外労働の上限
2019年4月に労働基準法が改正され、従業員との事前合意に基づいて時間外労働を延長できる「特別条項付き36協定」の内容が変わりました。運送業(自動車運転の業務)には5年間の猶予期間が設けられ、2024年4月1日から適用されています。
多くの業種において、時間外労働の上限は月45時間、年360時間です。特別条項を設けた場合でも、月100時間未満(休日労働を含む)、年720時間が上限とされています。
しかし、運送業の場合は、月ごとの制限はされず、特別条項を設けた場合の時間外労働の上限は年960時間までと制限が異なります。運送業の労働時間上限については、次項でより詳しく解説します。
参考:トラックドライバーの新しい労働時間規制が始まります!|厚生労働省
1-2. 2024年問題とは
2024年問題とは、運送・物流業界に対する労働時間の上限規制適用に伴い、運べる荷物量の減少やドライバーの収入減が発生することなどの懸念事項を指します。
長時間労働が常態化している運送業に、労働時間の上限規制が適用されればドライバーをはじめとした従業員の拘束時間は減ります。それによって休息を取りやすくなり、安全で健康的な働き方がしやすくなるでしょう。
しかし、働く時間が減ることは収入減に直結します。また、運送能力が低下することで物流の遅滞が発生したり、運べる量が減ったりすることによる企業の利益減も考えられます。
こうした運送・物流業の2024年問題は、一時深刻な問題として取り上げられました。しかし、5年の猶予期間中の準備や顧客への呼びかけによって、2025年現在は大きな混乱は起きていません。
2. 【2025年最新】運送業・物流業界の労働時間の上限は?

運送業において、労働基準法32条で定められた法定労働時間を越えて労働者を働かせる場合は、労働者と36協定を結ぶことで、月に45時間まで、また特別条項付きの36協定を締結することで年間960時間までの時間外労働が可能となります。
加えて、労働基準法とは別に厚生労働省の定めた「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準)」によって、労働時間の上限(拘束時間)が決められています。
通常の業種と異なり、自動車運転の業務には労働時間に細かな制限があるため、一つずつ確認していきましょう。
2-1. 1年・1ヵ月のの総拘束時間(労働時間)
改善基準によると、休憩時間や手待ち時間などを含む「拘束時間」は、1ヵ月につき原則として284時間が上限です。
1年間の拘束時間上限は3,300時間となります。
ただし、例外が設けられています。
- 284時間を超える労働時間は連続3ヶ月まで
- 1ヵ月の時間外・休日労働時間数が100時間未満になるように努める
この2つの条件を満たすことで、労働時間の上限は年3,400時間、1ヵ月310時間(年6ヶ月まで)に拡大されます。
2-2. 運送業の1日の最大拘束時間(労働時間)
1日の拘束時間は原則として13時間以内で、延長する場合でも上限は15時間までです。ただし、拘束時間が14時間を超えるのは週2日が目安となります。
宿泊を伴う長距離貨物運送の場合は、週2回まで労働時間を16時間までに延長できます。なお、宿泊を伴う長距離貨物運送とは、1人の運転手が1回の乗務で450㎞以上走行し、休息期間が住所地以外の場所になるケースを指します。
2-3. 1日の休息時間
自動車運転の業務における休息時間とは、終業から始業までの間の時間で、ドライバーが休める時間を指します。この休息時間は継続して11時間以上与えることが推奨されており、最低でも9時間を下回ってはいけません。
なお、継続して9時間の休息時間を与えることが困難な場合は、一定期間内における全勤務回数の2分の1を限度に、休息時間を拘束時間の間や後に与えることができます。この場合は、分割された休息時間が1日において1回あたり継続3時間以上、2分割の場合は合計10時間以上、3分割の場合は合計12時間以上になるようにしなければなりません。
また、宿泊を伴う長距離貨物運送の場合は、継続8時間以上(週2回まで)とされています。休息時間のいずれかが9時間を下回る場合は、運航終了後に継続12時間以上の休息を与える必要があります。
2-4. 最大運転時間
最大運転時間は、1日あたりと週あたりで分けて定められており、2日平均で1日9時間以内、2週間平均で1週44時間以内とされています。
長距離貨物輸送の場合は、設定された到着時間に余裕がないケースも多いです。そのような場合は、拘束時間すべてを運転時間にせざるをえない状況になりやすいですが、告示違反になる可能性があります。
2-5. 連続運転時間
ドライバーを連続して運転させて良い時間は4時間であり、運転開始から4時間以内、もしくは4時間が経過した直後に休憩を30分以上確保させる必要があります。
休憩時間を分割する場合は、1回の休憩につき10分以上をとらせ、合計で30分以上になるようにします。
ただし、駐停車ができない状況(SAやPAの混雑など)により休憩が取れない場合に限り、連続運転時間は4時間30分まで延長が可能です。
参考:トラックドライバーの新しい労働時間規制が始まります!|厚生労働省
3. 運送業で労働時間上限を超過する5つのリスク


運送業において、従業員の労働時間が上限を超過するリスクは5つあります。いずれもドライバーの健康や安全を損ねるものや、大きなトラブル、企業イメージの低下などにつながる重大なものです。正しく理解して、リスクを回避しましょう。
3-1. 長時間労働で心身への負担が増える
長時間労働が常態化していると、心や体への負担が積み重なっていきます。その結果、健康状態が悪化したり、うつ病や過労死といった重大な事案が発生するおそれもあります。
長時間労働が原因で従業員の過労死が発生し、労災認定を受けた場合、企業は労働者の遺族へ金銭的な補償をおこなわねばなりません。
遺族による訴訟などが発生した場合、補償金が数千万~数億円までふくらむケースもあります。
こうした過労死リスクを避けるためには、厚生労働省の「改善基準」だけでなく、「脳・心臓疾患の労災認定」における「過労死ライン」も考慮しましょう。
厚生労働省によれば、過労死などの労災が発生しやすいのは、「1ヵ月の残業時間が100時間を超える」か「2ヵ月連続で残業時間が80時間を超える」場合です。
長距離移動が多いトラックドライバーの場合、過労死ラインを守るのが難しい状況も存在しますが、移動中にインターバルを挟むなどして、可能な限り労働者の健康に配慮しましょう。
3-2. ドライバーの疲労による労働災害が起きやすくなる
長時間労働が常態化し、十分な睡眠や休息が取れなくなれば思考力や判断力が低下します。そうした状態のまま運転をすれば、事故を起こす可能性は高くなるでしょう。
とくに運送業はドライバーによる長距離輸送などが多いため、輸送中の事故などの労働災害が発生するリスクが高まります。
長時間労働による過労死の場合と同様、遺族による損害賠償請求がおこなわれ、企業が金銭的補償をしなければならないケースが存在します。
さらにドライバーの事故の場合、業務上過失致死傷罪などの刑事責任が問われるケースがあるため注意が必要です。
3-3. 労使間のトラブルが起きる可能性がある
近年、運送業の労働者の権利意識が高まっており、残業代の未払いや時間外労働の長期化が問題視されるようになりました。
対外的にも、労働時間上限の大幅な超過が明らかとなれば、いわゆる「ブラック企業」という印象を持たれることになりかねません。
長時間労働が常態化し、労働基準法や労働安全衛生法に違反した場合、従業員が労働基準監督署に訴え、政府から行政責任を問われるリスクも存在します。
長時間労働を減らすのが難しい業界ではありますが、こうした法的トラブルを避けるため、適切な勤怠管理が必要です。
3-4. 労働基準法違反による罰則や法的責任が発生する
労働時間の上限は、労働基準法によって明確に定められています。守るべき指標や努力目標などではなく、法律で厳格に定められたものです。
そのため、違反した場合は労働基準法違反となり、同法119条に基づいて罰則が発生する可能性があります。
罰則は6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金です。ただし、違反してすぐに逮捕や罰則が科されるわけではなく、労働基準監督署による是正勧告や改善の促しなどがおこなわれるのが一般的です。
3-5. 企業イメージが悪化する
労働時間の上限規制を破った場合でも、即座に刑事罰が科されるわけではないとお話をしました。しかし、運輸局による行政処分がおこなわれる可能性があります。事業計画の変更命令や車両の利用停止、または事業の停止など重い処分も考えられるでしょう。
行政処分が発生した場合、その事実は外部にも伝わることがあります。そうなると企業のイメージは低下し、ブラック企業というレッテルも貼られる可能性があります。取引先との関係悪化や採用難、人材流出などを招くことになるでしょう。
4. 運送業の労働時間を削減する取り組み


労働時間の上限規制を厳守するには、労働時間を削減することが大切です。運送業は天候や道路の影響を受けやすく、荷物の積み下ろしなども発生するため難しい部分は多いですが、以下のような取り組みで効率化を図りましょう。
4-1. 中継輸送
中継輸送とは、長距離の輸送を複数の中継地点で区切り、ドライバーの交代や貨物の積み替えをおこなう輸送方式です。
ドライバー一人当たりの運転距離が短くなり、労働時間も減らすことが可能です。日帰り勤務もしやすくなるため、ドライバーの負担軽減や安全運転にもつながるでしょう。
4-2. 荷待ち時間の削減
運送業で労働時間が長くなりやすい要因のひとつに、荷待ち時間があります。荷待ち時間は荷主の都合や物流施設の都合によって発生する待機時間のことで、この間もドライバーは自由に動けず「なにもすることがないのに労働時間が延びる」という状況になります。
荷待ち時間の削減には、トラック予約受付システムの導入や、荷主との連携が重要です。特にトラック予約受付システムは普及が促進されており、全日本トラック協会からも案内がされています。
参考:「トラック予約受付システム」のご案内|公益社団法人 全日本トラック協会
4-3. 積み下ろし作業の効率化
貨物の積み下ろし作業にかかる時間も、運送業の労働時間を延ばす一因です。特に手荷役は肉体的な負担も大きいため、効率化が求められます。
積み下ろし作業の効率化や負担軽減には、パレット輸送が効果的だとされています。パレット輸送はパレットに荷物を載せ、フォークリフトなどの荷役機械を使ってまとめて移動や保管をする方法です。
手荷役よりも早く安全に積み下ろし作業がおこなえるため、ぜひ導入したい方法です。
4-4. 配車計画の見直し
配車計画を見直し、より効率的な運送を目指すことも労働時間の削減につながります。高速道路の活用や運送経路の見直し、配送計画システムの導入などにより、無駄のない配車がしやすくなるでしょう。
配車計画の見直しによる効率化は、走行距離の短縮や車両台数の削減にもつながります。労働時間を抑えつつコストカットができることに加え、CO2排出量の削減もできるでしょう。
5. 運送業での勤怠管理の3つのポイント

過労死や労働災害のリスクを減らし、時間外労働を適正化するため、次の3つのポイントを意識して勤怠管理に取り組みましょう。
5-1. 勤務実態を正確に把握できるようにする
従業員の労働時間が「改善基準」や「過労死ライン」に収まっているかを確認するには、勤務実態を正確に把握する必要があります。
しかし、運送業は長距離輸送が多く、外出先のドライバーの労働時間や休憩時間を正確に把握することは簡単ではありません。
タイムレコーダーがある企業でも、ドライバーの勤怠管理は不正確な自己申告に頼らざるをえないケースが大半です。
ドライバーの勤務実態を把握するなら、スマホやタブレット、フューチャーフォンなどからGPS打刻できるクラウドサービスがおすすめです。
「誰が」「いつ」「どこで」打刻したかがリアルタイムでわかるため、不正打刻を防ぎながら勤務実態をより正確に把握できます。
関連記事:物流・運送業界における勤怠管理の課題 | 勤怠管理システム導入のメリットとは
5-2. 勤怠の締め作業を自動化して長時間労働を防ぐ
勤務実態を正確に把握できない原因は、勤怠の締め作業にあります。
運送業の場合、ドライバーだけでなく配車係や倉庫作業員、バックオフィスの人員など、さまざまなタイムテーブルで働く従業員を抱えているため、締め作業に時間がかかる傾向にあります。
締め作業が遅れると、従業員の時間外労働の超過を見落とし、「気がついたら労働基準法や労働安全衛生法に違反していた」という事態になりかねません。
締め作業を効率化するなら、勤怠管理システムの導入がおすすめです。
従業員の打刻データを元に、労働時間や休憩時間を自動で集計してくれるため、勤務実態をリアルタイムに把握できます。
関連記事:運送業の労働時間管理をエクセルでおこなう際の2つのポイント
5-3. 2024年問題にも対応する
運送業に対して労働時間の上限が適用されたのは2024年です。すでに時間が経過していますが、2024年問題がすべて解決したわけではありません。2つの対策で対応を続けていきましょう。
1つめは、「1つの現場に2つの規制」という状態への対応です。
同じ運送業の企業内でも、ドライバーとバックオフィス人員などとでは規制の内容が異なります。2024年からドライバーに対しても上限規制が適用されましたが、規制内容がそのほかの業種とは異なるため、1つの企業内に2つの規制がある状態になっています。
混乱しやすい部分であり、さらに今後も法改正などにより対応が求められる可能性があります。そのたびに勤怠管理は新ルールへの対応が求められるため、同じ企業内でも異なる対応をしていく必要があります。
法改正への対応が難しい場合は、ソフトウェアのアップデートのみで対応できる勤怠管理システムの導入もぜひ検討してみましょう。
2つめは、残業規制による残業代の減少です。上限規制の適用によって、「残業時間が規制されて、残業代が減った」と悩んでいるドライバーは少なくありません。そのため、残業代が削減される場合は、その分の賃金を他の方法で還元することも視野にいれる必要があります
例えば、企業で独自に設けている諸手当の金額を増やす、新たに手当をつくるなど給与で還元するほか、福利厚生を手厚くするなど賃金以外で還元する方法もあるでしょう。
いずれにせよ、「残業が減って給与が少なくなった」と従業員から不満が出ないようにする、不満があった際の対応を考えておくなど対策を事前に準備しておくと安心です。
6. 運送業の労働時間の上限を把握して正確に管理しよう

今回は、運送業における労働時間の上限や、長時間労働がもたらす3つのリスクを解説しました。
現状、トラック運転手などの業種の時間外労働の上限は、厚生労働省の「改善基準」を遵守しなければなりません。
さらに、2024年4月からは改正労働基準法に基づく規制がスタートし、36協定を結んでも「法定労働時間+年960時間まで」が上限となった点に注意しましょう。
労働時間の上限を遵守しないと罰則として、6カ月⽉以下の懲役、または30万円以下の罰⾦に科せられる可能性があります。
また長時間労働が常態化すると、過労死や労働災害、従業員とのトラブルなどのリスクが生まれます。
勤怠管理システムの導入などによって、従業員の労働時間や休憩時間を「見える化」し、できる限り長時間労働の適正化に取り組みましょう。
運送業の法改正は2024年4月から!
運送業界では、36協定の特別条項における残業の上限規制は2024年4月から適用されることに加え、上限時間も通常の職種とは異なります。罰則付きの規制であるため、上限規制の内容をしっかりと把握して対応しなくてはなりません。
「上限規制の詳細までは理解できていない」「上限規制に向け、必要な対応が分からない」という方に向け、当サイトでは建設業界の上限規制について法改正の内容ととるべき対応をまとめた資料を無料で配布しております。
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