年収103万円の壁が123万円へ引き上げ!どうなるのか影響を解説
「年収の壁」とは、特定の年収に達することで税金や社会保険の負担が発生する制度上の境界を指します。特に年収103万円の壁は、所得税の課税が始まる基準であり、これを超えると所得税が発生します。最近の改正でこの103万円の壁が2025年から123万円に引き上げられることが検討されているため、関心が高まっています。
この「年収の壁」において、103万円から123万円への引き上げによって、どのような影響があるのか不安、具体的に知りたいという方もいらっしゃるでしょう。
そのような方に向けて、この記事では年収の壁についてわかりやすい概要の説明から、今回の「年収の壁」103万円から123万円の引き上げでどうなるのか影響の解説、さらにはいつから適応されるのか詳しく解説します。
2024年末頃から”従業員の手取りが減少してしまう年収のボーダーライン”「年収の壁」の見直しを巡る動きが強まっています。
所得税の発⽣や社会保険加⼊の義務に関わる改正であるため、給与計算担当者の業務に直結します。そのため、担当者は正しく改正内容を理解し、メリットだけではなくデメリットも正しく把握しておく必要があります。
当サイトでは、給与担当者の方に向けて、「年収の壁」における政府の動向から、企業がとるべき対応まで解説した資料を無料配布しています。
資料では、100万、103万、106万、130万、150万、210万それぞれ年収の壁についての概要から、ボーダーラインを超えた際への影響を図解でわかりやすく解説しています。「年収の壁について手っ取り早く理解したい」という方は、ぜひこちらからダウンロードの上、お役立てください。
目次 [非表示]
1. 「年収の壁」とは?
年収の壁とは、特定の年収を超えることで税金や社会保険料の負担が生じ、手取り額が減少するボーダーラインのことです。年収の壁を超えない限り、これらの負担は増えません。
この壁は主に「税制上の壁」と「社会保険上の壁」の2種類が存在します。税制上の壁では所得税の課税が始まり、社会保険上の壁では社会保険料が発生します。詳しくみていきましょう。
1-1. 「税制」に関係する年収の壁
税制に関係する年収の壁には、100万円、103万円、150万円、201万円の4つが存在します。
これらの年収を超えると、所得税や住民税の負担が増加し、手取り額が減少する可能性があります。特に103万円の壁は、多くの人にとって影響が大きく、自営業者やパートタイムで働く人々にとって重要な指標となります。
1-2. 「社会保険」に関係する年収の壁
社会保険に関する年収の壁には106万円と130万円の2つがあります。
106万円を超えると、健康保険や厚生年金への加入が求められ、社会保険料の負担が発生します。さらに130万円を超えると、配偶者の扶養から外れ、自身で社会保険料を全額負担することになります。これらの年収の壁は手取り額に影響するため、正しく理解をしておく必要があります。
関連記事:年収の壁とは?税金や社会保険の負担が生じる103万、106万、130万、150万の壁を解説
2. 「年収の壁」103万円から123万円へ引き上げでどうなる?
2024年12月20日、政府・与党は令和7年税制改正大綱を定め、期待されていた「年収103万円の壁」を123万円へ引き上げる方針を発表しました。これにより、多くのパートタイム労働者が年収の面で受ける影響が大きくなることが予想されています。この引き上げは、主に収入の低い女性やシニア層を対象としたもので、今後の生活設計に直結するものとして注目されています。
2-1. そもそも年収103万円の壁とは
年収103万円の壁とは、年収が103万円を超えると所得税が発生するため、手取りが減少するリスクがある年収の壁として知られています。そのため、多くの人が給与を調整してこの金額を超えないようにする傾向があります。これは、基礎控除48万円と給与所得控除55万円の合計に基づいています。
控除額が引き上げられることで、今後は年収123万円の壁が設定され、税負担が軽減されることが期待されます。
2-2. 103万円から123万円の引き上げで変わること
年収103万円から123万円への引き上げによって、主に所得税の負担が軽減されることとなります。これにより、年収が123万円に達するまでの所得は非課税となるため、特にパートやアルバイトなどの短時間労働に従事する人々にとって、大きなメリットがあります。
具体的には、年収103万円の場合の控除合計額は基礎控除48万円と給与所得控除55万円を合わせて103万円となります。一方、著しい変更がなされる年収123万円の設定では、基礎控除が58万円、給与所得控除が65万円に引き上げられ、合計123万円に達します。この控除の引き上げは、主に低所得者層への配慮がなされた結果と見ることができます。
しかし、住民税については、給与所得控除の引き上げは10万円のみ行われることが決まっています。このため、住民税に関する影響は限定的であると言えます。つまり、年収が123万円に増えたとしても、住民税の負担は103万円の時と比べて大きく変わらないという点がポイントです。
この制度改正は、特に家庭における世帯主の収入が103万円を超えた場合の影響を考慮し、教育や生活費の負担軽減に貢献することが期待されています。より多くの人が非課税の範囲内で働くことができるようになり、結果として仕事の選択肢が広がることで、社会全体の活力にもつながるでしょう。
さらに、昨今の働き方改革が進む中で、柔軟な働き方を実現しようとする動きが増えています。たとえば、パートとして働く人々がスキル向上やフルタイムへの転職を目指すケースも多くなっています。年収の壁が引き上げられることで、自身のキャリアプランに合わせた働き方ができるようになり、経済的に安定した生活を実現する一助となる可能性があります。
また、税制が年収の壁を調整することにより、国全体としても労働市場への参加促進が期待されます。労働力の不足を背景に、女性や高齢者の雇用が重要視される中で、年収の壁の引き上げは、こうした層の働き方を後押しする効果があるでしょう。
2-3. 「もうひとつの103万円の壁」特定扶養控除が150万円に引き上げ
またもうひとつの103万円の壁として、特定扶養控除が150万円に引き上げられることで、特に学生世代の子どもを持つ親にとって重要な影響が考えられます。
従来、特定扶養控除は子どもの年収が103万円までの収入制限がありました。これは多くの家庭にとって、子どもがアルバイトやパートで得る収入がこの金額を超えることがないよう、家庭における扶養の在り方に強く影響していました。しかし、年収の壁が150万円に引き上げられることで、学生が自由に働ける環境が実現し、学費の足しや生活費の支援に大きな役割を果たすことになります。
また、子どもの年収が150万円を超えた場合でも、188万円までは新設される予定の「特定親族特別控除」(仮称)によって、段階的な控除が適用される見込みです。これにより、子どもが学業に励む傍ら、アルバイトをして収入を得ることに対して、家計への負担が軽減されます。具体的には、控除の仕組みにより、家庭内での経済的な余裕が生まれ、教育資金の確保がしやすくなるでしょう。
関連記事:150万円の壁とは?特定扶養控除の要件引き上げで学生バイトの年収の壁はどう変わる?
3. 年収の壁の引き上げによる影響は?
続いてこの年収の壁の引き上げ問題によって、どのような影響があるのか考えられることを説明します。
3-1. 中小企業への影響
年収の壁が103万円から123万円に引き上げられることによって、中小企業にはさまざまな影響が考えられます。
まず、中小企業にとってポジティブな側面として、パートタイム従業員やアルバイトの勤務時間を調整しやすくなる点が挙げられます。特に人手不足が深刻な業界では、年収の壁が引き上げられることで、従業員がより多くの時間を働くことができるようになり、従業員の確保が容易になると期待されています。これにより、特に繁忙期には即戦力として活躍する人材が得られやすくなるでしょう。
ただし、デメリットも無視できません。社会保険料の企業負担額が増加するため、経営資源を圧迫する可能性があります。
また、所得税控除額の変更に伴って、企業側では新たな事務コストが生じます。特に、給与システムの見直しや社内ルールの変更が必要になり、これにかかるコストや時間も企業の負担となります。さらに、勤務シフトをうまく調整できない場合、従業員が他の職場に流出するリスクも高まり、特に労働市場が競争的である現状では注意が必要です。
このように、中小企業にとって年収の壁の引き上げは、メリットとデメリットが混在しており、それぞれの企業がどのように対応するかが重要な課題となります。適切な戦略を講じることが、今後の人材確保やコスト管理において必要不可欠でしょう。
3-2. 従業員の手取りへの影響
年収の壁が103万円から123万円に引き上げられることにより、特に社員の手取りの増加はどの程度になるのでしょうか。
具体例として、3人世帯を考えます。このケースでは、フルタイムで働く者が1名、配偶者は収入が無く、子どもは中学生以下という設定の場合、年収が400万円の世帯においては、年間の手取りが約5,000円増加するとされています。これは年収が高くなるにつれ、手取り増加額がわずかに増える傾向があるものの、相対的に見ればその額は限定的です。
さらに、年収が600万円の場合は年間約1万円、800万円の場合には年間約2万円の手取り増加にとどまります。このように、年収の引き上げによる影響は、収入が高い世帯においてもそれほど顕著でないため、実際の生活にはあまり影響を及ぼさない可能性が高いと考えられます。
4. 年収の壁103万円から123万円への引き上げはいつから?
それでは、年収の壁103万円から123万円への引き上げはいつからなのか、タイミングについて解説します。
4-1. 2025年分所得(2025年の年末調整)から適用
年収の壁が103万円から123万円に引き上げられるのは、2025年分の所得からと想定されています。この改正に伴い、2025年の年末調整で新しい基準が反映される予定です。
これにより、年末調整を担当する人事労務担当者の方は変更点を押さえて漏れなく対応する必要がありますので注意しましょう。
関連記事:「年収の壁」撤廃はいつから?103万円・106万円それぞれの時期を解説
5. その他「年収の壁」106万円・130万円・150万円・201万円はどうなる?
今回テーマになっている「年収の壁」103万円から123万円の引き上げ以外の年収の壁の取り扱いはどうなっているのか、それぞれ解説します。
5-1. 106万円の壁は撤廃される
年収106万円の壁は、従業員数51名以上の事業所における厚生年金保険の加入要件として位置づけられています。現在、収入金額が106万円を超える場合、この壁を超えた従業員は厚生年金に加入する必要がありますが、2026年10月から収入金額の要件は撤廃されることが検討されています。
これにより、年収が106万円を下回る短時間勤務の従業員でも、特に事業所が51名以上であれば、厚生年金保険への加入が不要となります。その結果、多くの短時間勤務者やパートタイマーにとって、社会保険料負担の軽減が期待され、手取り収入が増加する可能性があります。
さらに、2027年10月には事業所の規模要件も撤廃される予定です。これによって、従業員数が51名未満の小規模事業所に勤務している場合でも、年収が106万円を超えたとしても厚生年金の加入が必要ない状態となります。一方で、週所定勤務時間が20時間以上である限り、加入義務は維持されるため、時給が高い求人に人が集まりやすくなる傾向が見込まれます。
この変更は、パートタイマーや短時間勤務者の雇用環境に大きな影響を与える可能性があるため、労働市場の動向に注目が集まっています。特に、雇用者側からの影響も考慮する必要があり、社会保険制度の変更に対する適切な対応が求められます。
5-2. 130万円の壁は継続される
年収130万円の壁は、被扶養者が扶養の範囲から外れる重要な基準です。この金額を超えると、健康保険や厚生年金の被扶養者資格が失われ、社会保険料を負担する必要が生じます。
この年収の壁は継続されるため、被扶養者としてのメリットがなくなることで、家計にも影響を与えることも多いことから130万円を超えないよう意識した働き方をする人は多いでしょう。
5-3. 150万円の壁は継続される
年収150万円の壁は、配偶者特別控除の枠に関連しています。この壁を超えると、配偶者の控除額が段階的に減少し、結果的に税負担が増加します。
そのため、配偶者の収入が150万円を超える場合、家計全体での影響を考慮する必要があります。年収150万円の壁は今後も継続され、変動しないことが示唆されています。
5-4. 201万円の壁は継続される
年収201万円の壁は、配偶者特別控除が適用されなくなる年収です。配偶者の年収が201万円を超えると、この控除を受けられず、結果として課税所得が増加します。
これにより、税負担が重くなるため、家庭全体の経済状況に影響を与える可能性があります。この壁は引き続き維持されるため、特に配偶者の年収に注意が必要です。
関連記事:年収201万の壁をわかりやすく!配偶者特別控除とは?配偶者控除との違いも解説
6. 所得税の支払いが発生する「年収の壁103万円」は2025年から「123万円の壁」に引上げられる
ここまで年収の壁について解説してきましたが、2025年から、所得税の支払いが発生する「年収の壁」が103万円から123万円に引き上げられる可能性があります。この変更は、約30年にわたって不変であった年収の壁が見直されることを意味し、多くの働く人々に影響を及ぼします。
これまでの103万円の壁は、1995年(平成7年)に設定されて以来、税制や社会情勢の変化に伴って見直しが求められていました。この引き上げは、パートタイムで働く女性や学生など、年収が103万円を超えずに働いていた層にとって、大きなメリットが期待されます。これにより、所得税が発生するラインが高くなるため、より多くの収入を得ることが可能となります。
実際にこの変更により、123万円以下で収入を得ている人々は、所得税の支払いを避けることができ、手取り収入を増やすことができます。この政策の導入により、特定扶養控除も150万円に引き上げられるため、働く人々にとっては更なる所得の増加が見込まれます。
ただし、この引き上げがもたらす影響について、広範な議論が必要です。特に中小企業には、従業員の年収が変化することで人件費の見直しや労働環境への影響が出る可能性があります。また、年収の壁が引き上げられることにより、正社員化の促進や女性の社会進出が進むことも期待されているため、経済全体への波及効果が注目されます。
この新しい壁が、働き方やライフスタイルにどのような影響をもたらすのか、今後の動向を見ることが重要です。
関連記事:178万円の壁とは?引き上げはいつから?社会保険加入のメリット・デメリットまで解説
2024年末頃から”従業員の手取りが減少してしまう年収のボーダーライン”「年収の壁」の見直しを巡る動きが強まっています。
所得税の発⽣や社会保険加⼊の義務に関わる改正であるため、給与計算担当者の業務に直結します。そのため、担当者は正しく改正内容を理解し、メリットだけではなくデメリットも正しく把握しておく必要があります。
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