雇用保険料の端数処理とは?計算方法別の対応ポイントを解説!
更新日: 2026.9.30 公開日: 2022.4.21 jinjer Blog 編集部

雇用保険料の端数処理にはルールがあり、給与から控除(天引き)する場合や現金で徴収する場合、労使間で特約を定めている場合など、徴収方法によって切り捨て・切り上げの基準が異なります。
本記事では、雇用保険料について、被保険者負担分の徴収方法ごとの端数処理ルールを解説します。あわせて、年度更新における雇用保険料(労働保険料)の端数処理のポイントも紹介します。
雇用保険料の計算方法から知りたい方は、関連記事もあわせてご覧ください。
関連記事:雇用保険料の計算方法とは?対象者や端数の処理など注意点を解説
1. 雇用保険料の端数処理方法【従業員負担分】

雇用保険料は、事業主(会社)と被保険者(従業員)がそれぞれ負担します。従業員負担分の雇用保険料は、次の計算式で算出します。
従業員負担分の雇用保険料 = 対象となる賃金 × 雇用保険料率
※令和8年度の一般の事業における従業員負担分の雇用保険料率は0.5%
例えば、雇用保険料の算定の基礎となる賃金が25万3,500円、従業員負担分の雇用保険料率が0.5%の場合、雇用保険料は次のように計算します。
25万3,500円 × 0.5% = 1,267.5円
この場合、1円未満の端数が生じるため、徴収方法に応じて端数を処理する必要があります。端数処理の方法は、主に次の3つのケースに分けられます。
- 給与から控除して徴収する場合(源泉控除)
- 現金で徴収する場合
- 労使間の慣習や特約により徴収する場合
ここでは、それぞれの場合における端数処理の方法について詳しく解説します。
参考:令和8(2026)年度雇用保険料率のご案内|厚生労働省
参考:20 雇用保険被保険者からの雇用保険料の控除方法|厚生労働省
参考:通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第3条第1項|e-Gov法令検索
1-1. 給与から控除して徴収する場合
給与から雇用保険料を控除する場合、従業員負担分に1円未満の端数が生じたときは、50銭以下の端数は切り捨て、50銭1厘以上の端数は切り上げます。
例えば、従業員負担分の雇用保険料が「1,267.5円」の場合、1円未満の端数である50銭を切り捨てるため、1,267円を従業員の給与から控除します。
この場合の端数処理は、賃金の支払いに関する端数処理の考え方に基づいておこなわれます。50銭ちょうどの場合は切り捨てる点に注意が必要です。
1-2. 現金で徴収する場合
雇用保険料を給与から天引きせず従業員から現金で徴収する場合、50銭未満の端数は切り捨て、50銭以上の端数は切り上げます。
例えば、従業員負担分の雇用保険料が1,267.5円の場合、50銭以上の端数があるため、1,268円として徴収します。
現金で徴収する場合、従業員が事業主に保険料を支払う形になるため、「金銭債権の弁済」に準じた端数処理が適用されます。給与から控除する場合とは異なり、50銭ちょうどは切り上げとなる点がポイントです。
1-3. 労使間の慣習や特約がある場合
労使の間に慣習的な取り扱いや特約がある場合は、原則とは異なる端数処理をおこなうことも可能です。従来から「従業員の雇用保険料に1円未満の端数が生じた場合は切り捨てる」という取り扱いをしている場合は、引き続き切り捨てることができます。
例えば、従業員負担分の雇用保険料が1,267.5円で、「1円未満の端数は切り捨てる」という慣習的な取り扱いや特約がある場合、給与から控除して徴収するときでも、現金で徴収するときでも1,267円として取り扱えます。
「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第3条第1項」では、現金によって債務を弁済する場合、50銭未満の端数は切り捨て、50銭以上1円未満の端数は1円として計算することを原則とし、「ただし、特約がある場合には、この限りでない」と定めています。
従業員負担分の雇用保険料の端数処理についても、この規定を踏まえた取り扱いが「厚生労働省」から示されています。ただし、実際の給与計算では、現在採用している端数処理の方法を確認し、社内で取り扱いを統一しておくことが重要です。
雇用保険料の計算に関連する法律や、具体的な端数処理の方法についてより詳しく知りたい方は、こちらの資料でもわかりやすく解説していますので、あわせてご確認ください。
2. 計算方法別の端数処理の方法

雇用保険料の端数処理は、給与計算の方法によっても対応プロセスが異なります。給与計算の処理方法ごとの注意点を確認しましょう。
2-1. 給与計算ソフト
給与計算ソフトを利用する場合は、雇用保険料率や端数処理の設定を確認したうえで計算することが大切です。
給与から雇用保険料を控除する場合、ソフトによって端数処理の設定項目や初期設定が異なることもあるため「1円未満を切り捨てる」「四捨五入する」などの設定が適切か必ず確認しましょう。
さらに、給与計算ソフトで算出された金額をそのまま使用するのではなく、設定内容や計算結果をサンプルで確認し、想定した計算結果と一致するかチェックすると安心です。
2-2. 表計算ソフト(Excel)
Excelなどの表計算ソフトを使用して雇用保険料を計算する場合は、端数処理のルールに応じて適切な計算式を設定する必要があります。
給与から雇用保険料の従業員負担分を控除する場合は、保険料の50銭以下を切り捨て、50銭1厘以上を1円に切り上げます。そのため、通常の四捨五入をおこなうROUND関数では、この端数処理のルールに沿って計算できません。
例えば、端数処理前の雇用保険料をA1セルに入力した場合、次の計算式を使用することで、50銭以下を切り捨て、50銭を超える端数を1円に切り上げる処理ができます。
ROUNDUP(A1-0.5,0)
※A1には端数処理前の雇用保険料を入力します。
【計算例】
| A1 | 計算式 | 雇用保険料(端数処理後) |
|---|---|---|
| 100.49 | ROUNDUP(99.99,0) | 100円 |
| 100.50 | ROUNDUP(100.00,0) | 100円 |
| 100.51 | ROUNDUP(100.01,0) | 101円 |
なお、ROUNDUP関数は、第2引数で指定した「桁数」を基準に、第1引数の数値を切り上げる関数です。第2引数が「0」の場合は、小数点以下を切り上げて整数にします。
このように、端数処理のルールに応じた関数を設定しておけば、雇用保険料の計算と端数処理を自動化できます。
2-3. 手計算
電卓などを使って雇用保険料の端数処理を手計算する場合、計算ミスなどの人的ミスが生じやすくなります。あらかじめ計算方法や端数処理のルールをマニュアルにまとめ、チェック体制を整えておくことが大切です。
また、従業員数が増えると、手計算による給与計算や雇用保険料の処理にかかる負担も大きくなります。その場合は、給与計算ソフトの導入や業務のアウトソーシングなど、計算ミスの防止と業務効率化につながる方法を検討するとよいでしょう。
3. 雇用保険料の端数処理方法【年度更新時】

雇用保険料は従業員負担分と会社負担分をあわせて、原則として毎年度、年度更新によって申告・納付します。年度更新では、前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を計算します。
この際、雇用保険料だけでなく、労災保険料もあわせて労働保険料として申告・納付します。また、石綿による健康被害の救済に充てるための一般拠出金についても、労働保険料とあわせて申告・納付する必要があります。
参考:令和8年度事業主の皆様へ(継続事業用)労働保険年度更新申告書の書き方|厚生労働省
関連記事:労働保険の年度更新とは?提出期限や電子申請手続きのやり方をわかりやすく解説!
3-1. 概算保険料・確定保険料の1円未満は切り捨てる
年度更新における概算保険料・確定保険料を計算する際は、まず賃金総額の1,000円未満を切り捨て、その金額に保険料率を乗じます。算出した保険料に1円未満の端数が生じた場合は、その端数を切り捨てます。
例えば、雇用保険の賃金総額が1,453,000円、雇用保険料率が1.35%(令和8年度の一般の事業)の場合、保険料は次のように計算します。
1,453,000円 × 1.35% = 19,615.5円
この場合、1円未満の端数である0.5円を切り捨てるため、雇用保険料は19,615円となります。
参考:令和8(2026)年度雇用保険料率のご案内|厚生労働省
3-2. 【注意】雇用保険と労災保険の賃金総額が同額の場合の処理
雇用保険と労災保険の算定基礎となる賃金総額が同額の場合は、それぞれの保険料を別々に計算して端数処理するのではなく、労災保険率と雇用保険料率を合算した率を賃金総額に乗じ、その結果について1円未満の端数を切り捨てます。
例えば、賃金総額が1,453,000円、労災保険率が3%、雇用保険料率が1.35%の場合は次のように計算します。
1,453,000円 × (3% + 1.35%) = 63,205.5円
1円未満の端数である0.5円を切り捨てるため、労災保険料と雇用保険料を合わせた労働保険料は63,205円となります。
参考:令和8年度の労災保険率について(令和7年度から変更ありません)|厚生労働省
関連記事:労働保険料とは?計算方法や申告・納付方法をわかりやすく解説
4. 雇用保険料の端数処理の注意点

雇用保険料の端数処理の方法を正しく理解していても、それだけで適切な処理ができるとは限りません。毎月の給与計算を正しくおこない、トラブルなく運用するために気をつけるべき注意点を解説します。
4-1. 雇用保険料率の改定を確認する
雇用保険料率は年度ごとに定められており、改定される場合は原則として4月1日から新しい料率が適用されます。最新の料率を反映せずに給与計算をおこなうと、端数処理前の雇用保険料を正しく計算できず、従業員から徴収する保険料に誤りが生じる可能性があります。
なお、新しい雇用保険料率を適用する給与は、原則として「賃金の支払日」ではなく「賃金締切日」を基準に判断します。
例えば、月末締め・翌月25日払いの場合、「4月30日締め・5月25日払いの給与」から新しい雇用保険料率(※4月1日改定の場合)が適用されます。4月分の給与計算を始める前に、最新の料率を確認しておきましょう。
関連記事:令和8年度の雇用保険料率は引き下げに|事業の種類や保険料率の変更タイミングを解説
4-2. 計算後は複数人でチェックする
雇用保険料の計算をしたあとは、誤りがないか複数人でチェックしましょう。
雇用保険料の計算だけでも、端数処理以外に確認すべき事項は次のとおり多岐にわたります。
- 料率に誤りはないか
- 被保険者でない従業員から徴収していないか
- 雇用保険料の賃金に含める項目の範囲は適切か
- 賃金に含めるもの:基本給、通勤手当、家族手当など、労働の対価として支払うすべてのもの
- 賃金に含めないもの:慶弔金、退職金、役員報酬、出張旅費、休業補償費など
- 賞与(ボーナス)からも徴収しているか
作業が完了したあとは上長やほかの人事担当者など、複数の目で結果を確認すると誤りを防ぎやすくなります。
関連記事:雇用保険料は賞与から控除される?計算方法や保険料率、注意点を解説!
4-3. 端数処理のミスは従業員の手取り額に影響する
雇用保険料の端数処理を誤ると、従業員から徴収する保険料額に誤りが生じ、給与の手取り額にも影響するおそれがあります。
とくに、本来より多くの雇用保険料を給与から控除した場合は、従業員に支払われる給与が本来の額より少なくなるので、労働基準法の「賃金全額払いの原則」との関係で問題となる可能性があります。
まずは、正しい雇用保険料の計算方法と端数処理のルールを理解することが大切です。また、計算ミスを防ぐため、ダブルチェック体制の整備や給与計算ソフトの導入・改修など、自社の状況に応じた対策を検討しましょう。
関連記事:賃金支払いの5原則とは?例外や守られないときの罰則について
関連記事:給与計算ミスに気づいた時のお詫びの方法や注意点を文例とともに解説
5. 雇用保険料の端数処理方法を押さえて正しく徴収しよう

雇用保険料の計算をするとき、1円未満の端数が発生するケースは多々あります。法令に則って処理しますが、保険料の徴収方法によって切り上げか切り捨てかが変わってくるため、十分に気をつけましょう。
どのような処理をおこなうにせよ、従業員に納得してもらえるよう「ルールを明示しておく」「説明できるようにしておく」などの準備が肝心です。
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