令和8年4月の雇用保険料は引き上げ?引き下げ?企業への影響を解説
更新日: 2026.4.27 公開日: 2022.4.22 jinjer Blog 編集部

雇用保険は、失業した場合や育児・介護などで就業が制限される場合に、生活や雇用の安定、再就職の促進を目的として給付や支援をおこなう制度です。
最近では2022年10月、2023年4月に雇用保険料率が引き上げられたことで、企業と従業員ともに雇用保険料の負担は大きくなりました。
この記事では、どのようなタイミングで雇用保険料が引き上げられるのか、2026年の雇用保険料がどのように変わったかについて解説します。
目次
給与計算業務でミスが起きやすい社会保険料。保険料率の見直しが毎年あるため、更新をし損ねてしまうと支払いの過不足が生じ、従業員の信頼を損なうことにもつながります。
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1. 雇用保険料の引き上げ・引き下げとは


雇用保険料の引き上げとは、雇用保険制度を維持するために、雇用保険料の事業主負担・労働者負担がともに引き上げられることです。雇用保険料は、雇用保険料率の弾力条項(労働保険法徴収法 第12条 第5項)により原則年に1回、4月1日のタイミングで変更されます。
1-1. 令和8年(2026年)4月からは雇用保険料率引き下げに
2026年4月より予定されている一般の事業の雇用保険料率は、4月から雇用保険料率を1.45%から1.35%と0.1%引き下げられます。
内訳は、労働者負担が0.5%、事業主負担は0.85%(失業等給付・育児休業給付の保険料率は0.5%、雇用保険二事業の保険料率は0.35%)となります。
農林水産・清酒製造の事業と、建設の事業もそれぞれ引き下げとなり、詳細は画像のとおりです。
引用:令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内|厚生労働省
2. これまでの雇用保険料の引き上げ・引き下げ動向


2026年度は雇用保険料率が引き下げとなりましたが、財政状況によって引き上げられたこともありました。
過去の雇用保険料率の推移は以下の通りです(一般の事業の場合)。


3. 雇用保険料が引き上げになる主な要因


雇用保険の給付が増えるなど、財政の調整が必要な場合に雇用保険料が引き上げになる傾向です。ここでは、雇用保険料が引き上げになる要因を解説します。
3-1. 雇用調整助成金の給付が増えたため
雇用調整助成金とは、景気の変動などにより事業活動の縮小を余儀なくされた企業が、従業員の雇用を維持するために休業等を実施し、休業手当などを支払った場合に、その一部が助成される制度です。
2020年以降は、新型コロナウイルスの影響を踏まえ、企業が支払う休業手当に対する助成割合(助成率)や、1人1日あたりの支給上限額を引き上げる特例措置が設けられています。
かつて新型コロナウイルスの影響で休業する企業は激増し、それに伴って雇用調整助成金を申請する企業も増えました。厚生労働省の発表によると、2021年12月時点で5兆円を超える雇用調整助成金の支給が決定しており、月2,000億円のペースで増加していた時期もありました。
この給付をおこなった結果、財政の悪化が避けられず、雇用保険料を引き上げる必要性が高まりました。
3-2. 失業手当の給付が増えたため
失業手当の給付の増加も、雇用保険料が引き上げになる要因のひとつです。
失業手当とは、職を失った人に対して給付をおこない、生活や再就職の支援をするための制度です。
独立行政法人労働政策研究・研修機構が公表している統計資料によると、失業給付の受給者数・申請者数(原数値)が2019年度459万人であったのに対し、2021年度539万人と約117%まで増加しています。
失業手当の受給者が増えれば、雇用調整助成金と同様に、財政を圧迫することは避けられません。雇用調整助成金に加えて失業保険の給付増加により、雇用保険の積立金はほとんど底をつく寸前となっており、財源を確保することが急務となりました。
このように、失業手当の給付増加も雇用保険料の引き上げに影響しています。
3-3. 雇用継続給付が増えたため
雇用継続給付のひとつである育児休業給付金の増加も、雇用保険財政を圧迫する要因です。
厚生労働省の資料によると、育児休業給付は失業給付と比べると景気動向に左右されにくい特徴があります。しかし、受給者数の増加や制度拡充によって、給付総額が継続的に増加してきたことが指摘されています。
背景には、政府方針による、女性の就業継続率の上昇や男性の育児休業取得促進政策、給付制度の拡充などがあります。こうした社会的な変化を受け、2020年度には雇用保険財政の管理上、失業等給付と育児休業給付が勘定上分離されました。
さらに政府は財政安定のため国庫負担の見直しなども進めており、今後も男性育休取得率の上昇や育児時短就業給付金などにより、給付費の増加が続く可能性が指摘されています。
この動向を鑑みると、雇用継続給付の増加は、雇用保険料の引き上げに影響する要因といえるでしょう。
4. 雇用保険料引き上げによる影響


雇用保険料が引き上げられると、企業や従業員にはどのような影響があるのでしょうか。
ここでは、人事担当者が把握しておくべき雇用保険料の引き上げにともなう影響を3つご紹介します。
4-1. 労使ともに保険料の負担増加
雇用保険料は企業と従業員で負担する仕組みです。雇用保険料は、雇用保険料率を基に計算されるため、保険料率が引き上げられると、当然のことながら労使ともに保険料支払いの負担が増えます。
例として、雇用保険料が1.35%( 従業員側0.5% 使用者側0.85%)から1.55%( 従業員側0.6% 使用者側0.95%)に上昇した場合、月給30万円の従業員の保険料負担は次のように変化します。
- 労働者側:1500円⇒1800円(+300円)
- 使用者側:2550円⇒2850円(+300円)
1ヵ月単位でみると少額と感じる人もいますが、従業員数が多いほど、年間に換算した保険料負担は大きく感じられるでしょう。
4-2. 人件費負担の増加による採用活動への影響
雇用保険料が引き上げになると、企業側の人件費が増加するため、採用予算や採用戦略の見直しが必要になるケースもあります。
また従業員が保険料負担の増加を懸念して、雇用保険への加入をためらうことにより、労働時間をおさえることも考えられます。
このように、いわゆる「働き控え」が発生すると、企業は人員補充のために新たに採用活動をおこなったり、既存社員の教育が必要になったりするなど、さまざまな負担に波及する点を理解しておきましょう。
4-3. 実質手取りの変化
近年の最低賃金の引き上げや企業の積極的な賃上げにより、額面上の給与は増加傾向にあります。しかし雇用保険料引き上げがおこなわれると、賃上げによる増加分の一部が保険料として相殺され、結果として「手取り額」の増加幅は想定より小さくなってしまう場合があります。
その結果、賃上げの効果が十分に従業員に伝わらず、従業員のモチベーション低下などの課題につながるおそれがあります。
5. 雇用保険料引き上げ・引き下げがおこなわれた場合の実務


雇用保険料が引き上げ・引き下げになった場合の、人事担当者の対応事項について解説します。
5-1. 最新の雇用保険料を確認
例年、2月下旬~3月中旬頃に厚生労働省のホームページにて公式な雇用保険料率が発表されます。厚生労働省の発表をもとに、労働者負担の率と事業主負担分の率を確認しましょう。
なお、労働者負担分に変更がない場合でも、事業主負担分のみが変更されるケースがあるため、注意が必要です。
5-2. 新たな雇用保険料率を給与計算システムに設定
雇用保険料の計算で最もミスが起きやすいのが、新たな雇用保険料率を設定するタイミングです。雇用保険料は、4月1日以降に締日を迎える給与から新しい保険料率が適用されます。
具体例を2つご紹介します。
- 【例1】給与締日:15日、支払日:同月の25日
- 4月15日締日、4月25日支給日の給与から雇用保険料率を変更
- 【例2】給与締日:末日、支払日:翌月の25日
- 4月30日締日、5月25日支給日の給与から雇用保険料率を変更(3月末日締日、4月25日支給日の給与は旧料率で計算)
5-3. 従業員への説明
労働者負担分が変更になる際は、手取り金額に影響が生じるため、社内イントラネットでの共有や、給与明細に「雇用保険料率改定のお知らせ」を記した書類を同封するなどの方法で、周知することが重要です。
あらかじめ説明をすることで、企業の法令遵守の姿勢を示し、給与担当者の問い合わせ対応の負担軽減につながります。
雇用保険料率は社会情勢により毎年改定される可能性があるため、常に最新情報の確認が欠かせません。従業員の給与額に直結する事項であり、計算ミスや適用時期の誤りは企業への不信感に繋がります。実務担当者には、漏れのない正確な対応が求められます。
特に2026年4月開始の「子ども・子育て支援金制度」は一般的には5月より徴収が始まります。複数の制度変更が重なり手取り額が変動するため、職員への周知の重要性は例年以上に高まっています。何の説明もなく控除額が変わると現場の混乱を招きかねません。より丁寧なアナウンスをおこなうことが、結果として実務担当者の負担軽減と企業の信頼向上に繋がります。
関連記事:子ども・子育て支援金制度とは?料率と計算方法、対象者をわかりやすく解説
6. 雇用保険料率の改定に応じてミスのない計算をしよう


雇用保険料率は毎年度見直されるため、改定内容を正確に把握することが重要です。2026年度(令和8年度)の雇用保険料率は、2025年に続き、引き下げとなりました。
雇用保険料率の改定に合わせて、給与計算システムの設定や計算方法を適切に見直す必要があります。人事労務担当者や経理担当者は、最新の保険料率を確認し、誤りのない給与計算をおこないましょう。



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