所得税における控除とは?控除の種類や所得控除を受ける方法を解説
更新日: 2024.5.10
公開日: 2022.3.16
OHSUGI
所得税における控除は、確定申告の際、課税対象の所得金額から一定の金額を差し引くことです。所得控除には基礎控除や雑損控除、医療費控除など、全部で15種類の控除があります。それぞれも概要を理解し、自分に適用される控除について把握しておきましょう。
今回は、所得税控除について、控除の種類や控除を受ける方法などを詳しく解説します。
関連記事:所得税とは?納税方法や確定申告が必要な人・不要な人について解説
税金は収入から控除額を引いた所得額から計算します。
控除額は収入によって増減するため、なかなか覚えられない方も少なくないでしょう。
万が一、納税額に誤りがあった場合「附帯税」を科せられる可能性もあります。
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1. 所得税における控除とは
所得税における控除は所得税控除と呼ばれています。所得税控除とは確定申告の際に所得税額を計算するうえで、一定の要件を満たす場合、課税対象となる所得金額から一定額を差し引くことができる制度です。
所得税の計算は、所得に税率を乗算して求められます。所得控除が適用された場合は、所得から所得控除額を引いた金額に税率を乗算するため、納税額が少なくなります。
1-1. そもそも控除とは?
控除とは、差し引くという意味の言葉です。
税金においては、納税額を算出をする際に所得から費用などを差し引くことによって課税対象額を減少させる仕組みです。
控除は税金の公平性や社会的な配慮を反映するために、個人や家族の状況や支出に応じて異なる金額や条件が設定されています。
例えば世帯の生活費や必要経費を考慮せずに全額を課税すると、一定の条件の人々に負担が過重されてしまいます。世帯の条件に応じた生活費や経済的な負担を考慮しているのです。
控除は所得税だけでなく、住民税、法人税などの税金にも取り入れられています。
1-2. 所得控除には人的控除と物的控除がある
所得控除には、大きく分けて人的控除と物的控除の2つがあります。
人的控除は、配偶者や扶養家族の有無など、人に関する納税者の個人的な事情が考慮される控除です。
一方、物的控除は、生命保険や社会保険といった、納税者の支出に対する控除を指します。
2. 所得税における控除の種類
所得控除には基礎控除や扶養控除ほか、15種類の控除があります。なお、所得控除とは別に所得税の税額控除として住宅ローン控除などもあります。
所得控除の概要は次のとおりで、それぞれ所得税控除額は異なります。所得税控除について把握するには控除を一覧にして用意しておくとよいでしょう。
2-1. 雑損控除
災害や盗難などによって損害を受けた場合に適用される控除です。
(差引損失額)-(総所得金額等)×10%または(差引損失額のうち災害関連支出の金額)-5万円のいずれかのうち、金額の多いほうが適用されます。
2-2. 医療費控除
1月1日〜12月31日のあいだに、納税者やその配偶者、その他の親族が一定額以上の医療費を支払った場合に適用されます。
医療費の最高は200万円までで、実際に支払った医療費から保険金などで補填される金額を差し引き、更に10万円を差し引いた額が控除されます。
2-3. 社会保険料控除
国民健康保険料や厚生年金保険料、国民年金保険料などを支払った場合に適用されます。納税者本人だけでなく、同一生計の配偶者やその他の親族の社会保険料も含まれます。
2-4. 小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済やiDeCo(イデコ)などの掛金を支払った場合に適用される控除です。
2-5. 生命保険料控除
生命保険料・介護医療保険・個人年金保険のうち、支払った保険料がある場合に適用されます。
2-6. 寄附金控除
ふるさと納税などの地方公共団体や特定公益増進法人、社会福祉法人などに寄付した場合に適用される控除です。
2-7. 地震保険料控除
地震保険料を支払った場合、最高5万円の所得控除が適用されます。
2-8. 障害者控除
納税者や生計を同じくする配偶者、扶養家族が障害者や特別障害者である場合、障害者で27万円、特別障害者で40万円、同居特別障害者で75万円の控除が適用されます。
2-9. ひとり親控除
所得が500万円以下で、同一生計の子供の所得が48万円以下の場合に適用されます。事実婚であることが認められた場合は適用されません。
2-10. 寡婦控除
納税者が配偶者と離婚、または死別しており、扶養家族がいる場合に適用される控除です。所得500万円以下で、事実婚でないことが条件です。
2-11. 勤労学生控除
学校に通いながら働いている学生で、前年の合計所得金額が75万円以下の場合に適用される控除です。
2-12. 配偶者控除
納税者の配偶者の合計所得額が48万円以下の場合、納税者の所得に応じた控除(13万〜38万円)が適用されます。なお、控除対象者が70歳以上の老人控除対象配偶者の場合は、最大48万円の控除が受けられます。
2-13. 配偶者特別控除
納税者の合計所得額が1,000万円以下の場合、配偶者の合計所得が48万〜133万円以下で適用される控除です。
2-14. 扶養控除
納税者に16歳以上の子供や70歳以上の老人など、控除対象となる扶養家族がいる場合に適用されます。
2-15. 基礎控除
合計所得額が2,500万円以下の納税者であれば、16万〜48万円の控除が適用されます。
3. 所得控除が発生した際の給与計算
従業員に所得控除が発生した場合の計算方法は次のとおりです。
3-1. 年間給与額、社会保険料、源泉徴収税を算出する
まずは年間の給与額と、毎月の給与から差し引いている社会保険料、源泉徴収税を算出しましょう。
3-2. 給与所得控除額を差し引いて給与所得額を算出する
続いて、給与所得額を算出します。給与所得額は収入金額(源泉徴収票の支払金額)から、給与所得控除額を差し引いた額です。給与所得控除額が収入金額によって異なります。
例えば180万円以下は収入金額×40%-10万円ですが、算出した額が55万円に満たない場合は収入金額から55万円を差し引きます。
180万円以上の給与控除額は下記の通りです。
【収入金額に対する給与所得控除額】
850万円以上の場合 | 195万円(上限額) |
660万円以上850万円以下の場合 | 収入金額×10%+110万円 |
360万円以上660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 |
180万円以上360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
関連記事:給与所得控除とは?間違いやすい他の控除との違いや計算方法をわかりやすく解説
3-3. 給与所得−所得控除で課税所得を算出する
次に、給与所得額から所得控除を差し引いて、課税所得を算出します。物的控除はその年に支払った社会保険料や生命保険などの金額から、人的控除は従業員やその扶養家族の事情、経済状況によって受けられる控除が異なります。
人的控除ごとの給与所得控除額は次のとおりです。
基礎控除の場合
- 2,400万円以下…48万円
- 2,400万円以上2,450万円以下…32万円
- 2,450万円以上2,500万円以下…16万円
- 2,500万円以上…0円
障害者控除
- 一般の障害者…27万円
- 特別障害者…40万円
- 同居特別障害…75万円
扶養控除
- 一般の控除対象扶養親族…38万円
- 特定扶養親族…63万円
- 老人扶養親族(同居老親等以外)…48万円
- 老人扶養親族(同居老親等)…58万円
寡婦控除
- 一般の寡婦…27万円
- 特別の寡婦…35万円
寡夫控除
27万円
勤労学生控除
27万円
3-4. 課税所得×所得税率で所得税額を算出する
算出した課税所得に所得税率を乗算して、正確な所得税額を算出します。課税所得の金額ごとの所得税率は下記のとおりです。
課税所得金額 |
税率 |
控除額 |
1,000円から1,949,000円まで |
5% |
0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで |
10% |
97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで |
20% |
427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで |
23% |
636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで |
33% |
1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで |
40% |
2,796,000円 |
40,000,000円以上 |
45% |
4,796,000円 |
例えば課税所得金額が600万円だった場合、所得税額の計算方法は下記のようになります。
6,000,000円(課税所得)×20%(税率)−427,500円(控除額)=772,500円(所得税額)
本章で解説したように、控除の有無で所得税額は異なってきますので、自社の従業員が控除対象か忘れずに確認するようにしましょう。
また当サイトでは、本記事で解説した税金の計算方法や、税金の計算時に気を付けるべきポイントなどを解説した資料を無料で配布しております。
所得税だけでなく住民税も併せて解説しているため、税金の計算方法に関して不安な点があるご担当者様は、こちらから「所得・住民税 給与計算マニュアル」をダウンロードしてご確認ください。
関連記事:所得税率は所得金額で変わる!税率改定の影響や注意すべきポイント
関連記事:所得税の計算方法は?計算を効率良く行う方法や年収が変わった場合について
4. 従業員の所得税控除が発生した場合の給与計算は正確に!
課税対象となる所得から一定額を差し引くことができる所得控除にはさまざまな種類があります。
会社員・公務員といった給与所得者の場合、勤務先の年末調整で控除できますが、医療費控除や雑損控除、寄附金控除は年末調整で控除されず、確定申告が必要です。個人事業主やフリーランスの方はもちろん、会社員の方も15種類の所得控除について理解しておくことが大切です。
企業の担当者は、従業員の所得税控除が発生するケースや計算方法について、しっかり把握しておきましょう。
税金は収入から控除額を引いた所得額から計算します。
控除額は収入によって増減するため、なかなか覚えられない方も少なくないでしょう。
万が一、納税額に誤りがあった場合「附帯税」を科せられる可能性もあります。
・税額が合っているか不安
・税金の計算式や控除額を確認したい
・計算業務を効率化したい
という方に向けて、所得税と住民税の正しい計算方法、税金計算時によく起きるミスとその対策をまとめた資料を無料で配布しております。
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