夜勤で「休憩なし」は違法?看護師や介護士の休憩時間の取らせ方
更新日: 2025.9.25 公開日: 2021.9.3 jinjer Blog 編集部

看護師や介護士の仕事では、夜間でも患者や利用者への対応が必要になるため、夜勤はつきものです。しかし、いくら病院や施設のためだからといって、どんな働き方でも認められるわけではありません。決められた業務が少ない夜勤の場合、通常稼働とは異なることから、どうしても勤務負担は軽視されがちですが法律上では日勤と同様の扱いとなるのが原則です。
医療や福祉に関わる重要な職務だからこそ、健全で適切な労働環境を守ることは、管理側にとっての義務でもあります。また正しい労務管理ができていないと、知らない間に法律違反になってしまうケースも考えられるでしょう。
ここでは、看護師や介護士の夜勤における休憩時間について詳しく解説していきます。
目次
人事労務担当者の実務の中で、勤怠管理は残業や深夜労働・有休消化など給与計算に直結するため、正確な管理が求められる一方で、計算が複雑でミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
さらに、働き方が多様化したことで管理すべき情報も多く、管理方法と集計にお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな担当者の方には、集計を自動化できる勤怠システムの導入がおすすめです。
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1. 夜勤の「休憩なし」は法律違反


労働者の休憩時間に関しては、労働基準法第34条で明確に定められています。
(休憩)
第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
② 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
③ 使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。
つまり、使用者は原則として、労働時間が「6時間を超える場合は45分」「8時間を超える場合は1時間」の休憩を与えることが義務付けられています。また、日勤でも夜勤でも同じように「労働者が業務を離れて自由にできるもの」と定義されており、いわゆる手待ち時間は該当しません。
例えば管理者からの指示が出るまでの待機や、人手がいなくなる間の電話番などは手待ち時間とされ、休憩時間には当てはまらないという認識です。
そのため、手待ち時間が多いといわれる夜勤でも、基本的には労働基準法に沿った休憩時間を確保する必要があるので、夜勤の「休憩なし」はどんな労働環境であっても原則として法律違反になります。
1-1-. 「宿直」の場合は休憩なしでも違法にならない
夜勤の休憩なしは法律違反になりますが、一部例外となる勤務形態があります。それは「宿直」と呼ばれる夜勤の勤務形態です。
宿直というのは勤務先に泊まり込む勤務のことで、電話や定期巡回、緊急事態が発生したときに対応するのが業務です。夜勤は通常の業務をおこないますが、宿直の場合は「通常業務」がないため夜勤とは法律の適用が異なります。
ごく稀な非常事態に備えて待機するケースで、看護師や介護士でも、一定の要件を満たした勤務の場合に認められます。なお宿直を適用するためには、労働基準監督署の許可を得る必要があります。
許可が得られて「宿直」扱いとなった場合、労働基準法第34条は適用されないので、休憩時間がなくても法律違反にはなりません。
1-2. 1人夜勤も「休憩なし」なら違法となる
1人夜勤やワンオペ夜勤自体が違法ではないかと指摘する声もありますが、人員配置基準を満たしていれば違法ではありません。ただし、1人夜勤でも、業務量が多くて休憩を取ることが難しい労働環境であれば、違法性が問われることがあります。
休憩は業務の途中に一斉に自由に取らせることが原則です。1人夜勤で法律上の休憩ルールに則った運用が難しい場合は、人員配置を見直す必要があるでしょう。
2. 休憩時間の必要がない「宿直」に適用する条件


看護師も介護士も、法律で決められた軽微な作業に対応するのみであれば、拘束時間の長くなる夜勤でも休憩時間を設ける必要はないとされています。
しかし、「宿直扱い」というのは非常に厳しい条件に適合しなければならず、一般的には認められにくいのが実態です。では実際にどのようなケースであれば宿直となるのか、以下から具体的に見ていきましょう。
2-1. 看護師や介護士以外の一般条件
まず一般的な宿直の適用条件としては、次のようなものがあります。
- 通常の業務を継続しない、基本的に労働の必要がない勤務である(顧客からの電話応対や防犯・防災を目的としないもの)
- 1回につき各労働者の平均日額の3分1以上を手当として支給する
- 回数の上限は週1回
- 睡眠設備を完備する
さらに看護師や介護士の場合には、上記に加えて各職務における独自の要件を満たさなければなりません。
2-2. 看護師の場合
看護師のケースにおいては、「通常の勤務時間から完全に解放されている」とするほか、以下のような細かい条件も加わります。
対応するのは、定時巡回・異常事態の報告
少数の要注意患者の検脈や検温といった、特別な措置のない短時間業務のみ
例えば応急患者の診療・入院や出産などを目的としている夜勤は、宿直としては認められません。あくまで外来患者が想定されない日時における、少数の軽症患者やかかりつけ患者の急変時に対応のみに限られています。
2-3. 介護士の場合
介護士についても、基本的には看護師と同様ですが、宿直として対応する業務内容は異なります。
介護士の場合は、夜尿起こし・おむつ替え(抱きかかえなどの身体負担がないもの)・検温といった、軽度な介助のみが認められています。
さらに1日の宿直につき、作業回数は1~2回を上限とし、それぞれの所要時間も10分程度に限定されています。
3. 16時間夜勤でも休憩無し?夜勤における休憩時間の実情

看護師の勤務体系として代表的なのは、日勤・準夜勤・深夜勤の3交代や日勤・夜勤の2交代制です。
2交代制では、夜勤が16時間となるケースが多く見られる中、最近の研究では日中と夜間の労働を比べると、夜勤のほうがはるかに健康被害のリスクが高くなる結果が出ています。十分な休養を取らないまま深夜から明け方にかけて働くと、酒気帯び状態時よりも作業能力が落ちる傾向もあるほどです。
介護士では、人手不足の解消策として、多様なシフト制が導入されている例もあります。
2025年2月に日本医労連では、介護夜勤16時間超が75%を占めるという実態調査の結果を公表しました。長時間労働は依然として高止まりの傾向で、労働者の健康リスクや利用者の安全リスクが危惧されています。
16時間勤務でも休憩時間が1時間以上あれば違法ではありません。ただし、仮眠なしで16時間以上の勤務は心身に与える負担も大きいことから、休息に必要な休憩時間の確保が望まれます。なお、日本看護協会では仮眠も含めて2時間以上の休憩時間を推奨しています。
参考:看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン|日本看護協会
4. 看護師や介護士の夜勤で休憩時間の確保するためポイント


患者様や利用者様の夜間対応をおこなう看護師や介護士は、日勤に比べて人員配置が少ないこともあり、十分な休憩時間が取れていないのが実情です。確かに、夜勤は日勤ほど忙しくはないかもしれませんが、スタッフが少ない分、1人あたりの業務負担が大きいため確実に休憩を取れる環境作りをする必要があります。
では、夜勤時でもしっかりと休息を取ってもらうためには、企業としてどのような管理をするべきなのか解説します。
4-1. 夜勤での休憩時間のルールは詳細に定める
夜勤では、日勤のような「昼休み」といった概念がないため、休憩時間を明確に定めておくことが重要です。
夜勤の場合、「空いている時間に休む」「個人の判断で自由に休憩時間を取る」などの方法を取ることが多いようですが、はっきりとしたルールがないと取り忘れてしまう可能性があります。また、休憩時間の明確なルールがないと、新人スタッフなどは休憩が取りづらいかもしれません。
いずれにしても、ルールがないとあいまいになってしまうので、全スタッフが平等に休憩できるように時間を定めておきましょう。また、複数名で夜勤を担当するケースであれば、どのような順番で休憩時間にするのか、あらかじめ決めておくのも良い方法です。
なお、日本看護協会の見解では、夜勤でよく見られる16時間勤務なら、最低でも2~3時間の休憩時間が望ましいとされています。簡単な目安ではありますが、これを基準に夜勤シフトの動き方を検討してみることをおすすめします。
4-2. 夜勤専従のスタッフを増員する
看護師や介護士の夜勤で休憩時間が取れない大きな原因は、圧倒的な人手不足です。同時に複数の患者・入居者に対応しなければならないこともあるので、いくら休憩時間を決めていても、時間通りに休憩が取れないという実情もあるでしょう。
このような労働環境で円滑に休憩を回していくためには、新たにサポートスタッフを増やすことも検討した方が良いかもしれません。
例えば、資格が必要な専門業務以外の簡単な作業は、夜勤専従のサポートスタッフに任せるというような勤務体系にすれば、しっかりと休憩時間を与えることが可能です。人件費のコストは上がってしまいますが、従業員の健康管理や労働環境の改善という点で考えれば、結果的に人材の確保につながるので費用対効果が期待できます。
5. より良い労働環境のためにも夜勤の休憩時間は重要


基本的に、宿直の許可が取れない勤務体制の場合、休憩時間を与えなければ法律違反です。そもそも、夜勤は人員が少なく、1人当たりの負担が非常に大きくなる働き方であり、休憩がないと健康被害や事故が起こるリスクがあります。
実際に、夜勤後の疲労が原因で事故が起きている例もあり、夜勤で休憩時間が必要なのは明白といえるでしょう。そのため、理想としては日勤よりも多めに休憩時間を確保しておくのがベストです。もし、十分な休憩を与えられていないようであれば、本記事を参考に、看護師や介護士の夜勤の休憩時間を見直してみてください。
休憩時間の定義についてオススメの記事はこちら
▼労働時間に休憩は含む?含まない?気になるルールと計算方法
関連記事:【看護師夜勤の基礎知識】2交替制と3交替制それぞれの勤務時間とタイムスケジュール|コメディカルドットコム



人事労務担当者の実務の中で、勤怠管理は残業や深夜労働・有休消化など給与計算に直結するため、正確な管理が求められる一方で、計算が複雑でミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
さらに、働き方が多様化したことで管理すべき情報も多く、管理方法と集計にお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな担当者の方には、集計を自動化できる勤怠システムの導入がおすすめです。
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