介護保険料はいつから支払う?計算・納付方法や給与天引きのポイントも解説
更新日: 2026.6.30 公開日: 2024.7.4 jinjer Blog 編集部

介護保険料は、原則40歳に達した月から支払いが義務付けられる重要な社会保険料です。企業には、従業員の給与や賞与から適切に天引きし、期限内に納付する役割が求められます。
しかし、徴収開始のタイミングや計算方法は年齢や加入保険によって異なり、実務上の注意点も少なくありません。本記事では、介護保険料はいつから支払うのか、具体的な計算・納付方法、未納時のリスクなど、担当者が押さえておくべきポイントを解説します。
目次
労務担当者の実務の中で、給与計算は出勤簿を基に正確な計算が求められる一方で、Excelからの手入力や別システムからのデータ共有の際、毎月のミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
さらに、昇格や人事異動に伴う給与体系の変更や、給与計算に関連する法令改正があった場合、更新すべき情報も多く、管理方法とメンテナンスにお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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1. 介護保険料はいつから支払う?


介護保険料は、介護保険制度に基づき、原則として40歳に達した月から亡くなるまで支払いが義務付けられています。介護保険制度とは、高齢や疾病などにより介護が必要となった人を、社会全体で支えるための仕組みです。
介護保険制度の財源は、40歳以上の被保険者や企業が負担する介護保険料と、国や自治体が負担する公費によって構成されています。介護サービスにかかる費用の約5割は保険料、約5割は公費で賄われており、実際にサービスを利用する際には、利用者が原則として1~3割を自己負担する仕組みとなっています。
ここでは、介護保険料の支払い開始時期や介護保険の被保険者区分について解説します。
1-1. 40歳になった月の考え方
介護保険料の支払いは、満40歳に達したときから始まります。具体的には、40歳に達した月から介護保険の被保険者となり、保険料は月単位で計算されるため、資格を取得した月分から介護保険料が発生します。
なお、法律上「40歳に達する」とは、40歳の誕生日ではなく、40歳の誕生日の前日を意味します。そのため、誕生日によって介護保険料の支払い開始月は次のように異なります。
| 誕生日 | 介護保険の資格取得日 | 支払い開始月 |
| 5月1日 | 4月30日 | 4月分から支払う |
| 5月2日 | 5月1日 | 5月分から支払う |
このように、月初(1日)生まれの場合は、資格取得日が前月となるので、前月分から介護保険料の支払いが始まる点に注意が必要です。
1-2. 65歳になった月から第1号被保険者に切り替わる
65歳になると、介護保険の区分が「第2号被保険者」から「第1号被保険者」に切り替わります。
40歳から64歳までは、介護保険料は健康保険料とともに給与から天引きされ、企業が保険料の一部を負担していました。しかし、65歳以上になると居住している市区町村が介護保険料を管理するようになるため、企業側の負担はなくなり、全額自己負担となります。
それに伴い、納付方法も企業による給与天引きから、被保険者本人が市区町村に直接納める形へと変わります。
具体的な納付方法は、年金受給額が年間18万円以上の人は年金から自動天引きされる「特別徴収」、年間18万円未満の人は納付書や口座振替を利用して自身で支払う「普通徴収」の2種類です。
関連記事:65歳以上から介護保険料はどう変わる?計算方法や制度をわかりやすく解説
2. 介護保険料の計算方法


介護保険料の計算方法は、第1号被保険者(65歳以上)と第2号被保険者(40歳以上65歳未満)で変わってきます。また、加入する保険の種類や、住んでいる市区町村によっても変わるため注意が必要です。
2-1. 第1号被保険者(65歳以上)
第1号被保険者(65歳以上)の介護保険料は、住んでいる市区町村で定める「基準額」に所得段階に応じた保険料率を乗じて算出されます。介護保険を利用する人口やサービスの種類によって費用に差が生まれ、基準額や所得段階、保険料率は市区町村でそれぞれ異なるので注意が必要です。
また、世帯の状況によっても保険料は変動します。例えば、世帯内に住民税非課税者がいる場合には、保険料が軽減されるケースがあります。具体的な金額や区分については、お住まいの市区町村のホームページを確認するか、介護保険担当窓口へ問い合わせるとよいでしょう。
参考として、東京都新宿区の第9期(令和6年度~令和8年度)における基準額は月額6,600円です。第10段階(本人の合計所得金額が500万円以上625万円未満)に該当する場合、年間の介護保険料は146,520円となり、月額では12,210円です。
2-2. 第2号被保険者(40歳以上65歳未満)
第2号被保険者(40歳以上65歳未満)の場合は、加入する公的医療保険の種類によって算出方法が異なります。ここでは、健康保険(協会けんぽ)の加入者である会社員と国民健康保険の加入者である自営業に分けて解説します。
2-2-1. 会社員の場合
健康保険に加入している会社員の場合、介護保険料は「標準報酬月額」に介護保険料率を乗じて算出されます。標準報酬月額は、原則として入社時の給与や毎年4月から6月に支払われた給与の平均額をもとに決まります。
例えば、協会けんぽに加入しており、標準報酬月額が30万円の従業員の場合、令和8年度の介護保険料率1.62%を用いた介護保険料は次のとおりです。
標準報酬月額30万円×介護保険料率1.62% = 4,860円
算出された介護保険料は、健康保険料とあわせて納付します。なお、会社員の社会保険料は労使折半が原則であるため、実際に給与から控除されるのは、この金額の半額となる点に注意が必要です。
また、賞与を支給する場合には、税引前の賞与総額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に介護保険料率を掛けて、賞与にかかる介護保険料を計算します。なお、健康保険(介護保険)における標準賞与額には、年度累計573万円の上限が設けられています。
参考:協会けんぽの介護保険料率について|全国健康保険協会
参考:2026(令和8)年度政府予算案を踏まえた収支見込みについて(概要)|全国健康保険協会
関連記事:社会保険料は賞与(ボーナス)から控除される?保険料の計算方法や注意点を解説
2-2-2. 自営業の場合
自営業者など国民健康保険に加入している40~64歳の人は、介護保険料を国民健康保険料の「介護分」として納付します。介護分の保険料は、所得割・均等割・平等割・資産割を組み合わせて算出され、これらを合算した金額が負担額です。
- 所得割:前年度の所得額に基づいて算定
- 均等割:被保険者1人ごとに算定
- 平等割:1世帯ごとに定額で算定
- 資産割:固定資産の評価額などに基づいて算定
具体的な算定方法や金額は自治体ごとに異なり、平等割や資産割を設けていない自治体もあります。
3. 介護保険料の給与天引きと納付の流れ


40~64歳の第2号被保険者に該当する従業員は、介護保険の資格を取得した月分から介護保険料の負担が発生します。企業はこの介護保険料を健康保険料とあわせて給与から天引きするのが一般的です。ここでは、給与から徴収を開始するタイミングや実務上の注意点について解説します。
3-1. 介護保険料の徴収開始月を確認する
従業員が満40歳に達すると、介護保険の「第2号被保険者」となり、介護保険料の負担義務が発生します。企業において重要なのは、この「資格取得日」と「保険料が発生する月」の確認です。
法律上、年齢は「誕生日の前日」に加算されると定められています。そのため、介護保険の第2号被保険者としての資格取得日は「40歳の誕生日の前日」です。
介護保険料は、この「資格取得日が属する月」から発生します。
なお、月の途中で資格を取得した場合でも日割り計算はおこなわれず、その月の1ヵ月分の保険料が満額かかります。
3-2. 前月分の介護保険料を翌月給与から控除する
介護保険料は月単位で計算され、原則として「当月分の保険料を翌月に支給する給与から控除する(翌月徴収)」方式が採られています(健康保険法第167条)。
例えば、5月1日が誕生日の従業員は、資格取得日が4月30日となるため、4月分の介護保険料の負担が生じます。この4月分の保険料は、通常、5月支給分の給与から控除します。
一方、5月2日が誕生日の従業員の場合、資格取得日は5月1日となり、5月分の介護保険料を負担します。この場合、5月分の介護保険料は、6月に支給される給与から控除するのが一般的です。
また、給与から控除した保険料を企業が納める期限は「納付対象月の翌月末日」と定められています。スケジュールを把握し、納付漏れや遅延が起きないよう忘れずに納付手続きをおこないましょう。
3-3. 賞与支給月に介護保険料の対象になるか確認する
賞与についても介護保険料はかかり、支給時にはその賞与から介護保険料を控除します(健康保険法第167条)。介護保険料を徴収するかどうかの判断は、賞与の算定期間ではなく、「賞与を支給した月の月末時点で第2号被保険者の資格を有しているか」を基準におこないます。
例えば、賞与を7月10日に支給し、従業員が7月15日に40歳の誕生日を迎えて介護保険に加入するケースを考えてみましょう。この場合、賞与支給日(10日)時点では39歳であっても、支給月の月末(7月31日)時点では介護保険第2号被保険者となっているため、7月10日支給の賞与からは介護保険料を控除する必要があります。
3-4. 給与明細・賞与明細に控除額を記載する
企業が給与や賞与から介護保険料を控除した場合には、その計算内容を明らかにした書類を作成し、控除額を従業員に通知する義務があります(健康保険法第167条)。そのため、介護保険料を徴収した際は、給与明細(賞与明細)においてその金額をわかりやすく記載することが重要です。
表示方法としては、「健康保険料(介護保険料を含む)」として一括表示する方法のほか、「介護保険料」を独立した項目として明示する方法が一般的です。いずれの場合であっても、従業員が自身の負担額や内訳を容易に確認できるよう配慮することが求められます。
3-5. 徴収した介護保険料を納付する
企業は、給与から天引きした介護保険料を、企業負担分とあわせて所定の期限までに納付する必要があります。ここでは、給与から徴収した介護保険料の納付方法について詳しく説明します。
3-5-1.納付手段は「窓口納付」「口座振替」「電子納付」
介護保険料の納付方法には、次のような手段があります。
- 窓口納付:金融機関の窓口で納付書を使って支払う方法
- 口座振替:あらかじめ登録した口座から自動で引き落とされる方法
- 電子納付:インターネットバンキングや電子納付システムを利用して支払う方法
事務手続きの手間や納付忘れを防ぎたい場合は、口座振替や電子納付が便利です。一方で、領収証書を確実に受け取りたい場合は、窓口納付が適しています。
なお、加入している健康保険組合によっては納付方法が異なる場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。
3-5-2.納付先は日本年金機構または組合健保
給与から徴収した介護保険料の納付先は、加入している医療保険制度によって異なります。
協会けんぽに加入している場合は、日本年金機構を通じて納付します。一方、健康保険組合に加入している場合は、各健康保険組合が納付先です。介護保険料は健康保険料と一体で管理されているため、健康保険料とあわせて納付する仕組みです。
3-6. 65歳到達時に給与天引きを終了する
従業員が65歳に達すると、介護保険の被保険者区分が第2号被保険者(40〜64歳)から第1号被保険者(65歳以上)へ切り替わります。
これにより、企業が給与から介護保険料を天引きする仕組みは終了します。
65歳以降の介護保険料は、年金からの天引き(特別徴収)または市区町村への直接納付(普通徴収)によって、従業員本人が個別に納付します。
給与計算の実務において、介護保険料の徴収開始・終了のタイミングは非常に間違いやすいポイントです。特に注意すべきは「1日生まれ」の従業員と「賞与時の控除」です。
法律上、年齢は誕生日の前日に加算されるため、1日生まれの方は「前月分」から徴収開始です。また、賞与は「支給月の末日」時点の年齢で判断するため、支給日時点で39歳であっても、同月末までに40歳に達していれば控除が必要です。
逆に、65歳到達による天引き終了のタイミングを誤ると過大徴収となり、後日従業員への精算対応が発生してしまいます。給与システムの年齢到達アラート機能などを積極的に活用し、属人的なミスを防ぐ仕組みづくりをおすすめします。
4. 介護保険料の支払いが不要なケース


介護保険料は原則として40歳以上のすべての方に支払義務がありますが、次のケースでは負担が生じない場合があります。
【保険料の負担がない主なケース】
- 海外居住者・適用除外施設入所者:介護保険の被保険者とならないため、保険料の支払いは不要です。
- 健康保険の被扶養者(40〜64歳):被扶養者となっている方は、個別に納める必要はありません。介護保険にかかる費用は、扶養者が加入する医療保険制度全体で賄われます。
- 生活保護受給者:40〜64歳で健康保険に未加入の場合は第2号被保険者とならず、保険料負担はありません。65歳以上になると第1号被保険者となります。しかし、介護保険料は生活保護費から支払われるため、実質的な自己負担は生じません。
【減額・免除が受けられる可能性があるケース】
次のような事情がある場合、申請することで保険料の減額や免除を受けられる可能性があります。
- 災害で大きな被害を受けた
- 収入が低く生活が困窮している
- 長期入院や失業などで収入が著しく減少した など
担当者は、該当する従業員がいる場合に備え、各ケースの要件を把握したうえで、必要に応じて市区町村の窓口への相談や手続きのサポートをおこないましょう。
参考:海外に滞在する場合、介護保険料を支払う必要があるのか。|川崎市
参考:生活保護を受けていますが、介護保険料を支払わなければなりませんか。|小田原市
5. 介護保険料の納付漏れ・ミスに対する企業のリスク


介護保険料は、従業員の社会保障に直結する重要な費用です。企業がこれを適切に納付しない場合、さまざまなリスクが生じます。ここでは主なリスクとその影響について解説します。
5-1. 督促状の送付を受ける
介護保険料を含む社会保険料に関して、期限までに納付せず未納の状態が続くと、日本年金機構や健康保険組合から督促状が送付されます。督促状は、納付義務の再確認と企業に対する正式な対応を求める通知です。
督促状を受け取った場合は、速やかに納付手続きをおこなうことが重要です。また、同じ事態を繰り返さないための事務フローの見直しなど、再発防止策の実施も欠かせません。
5-2. 延滞金が発生する
期限を過ぎて納付した場合は、納付期限の翌日から実際に納付した日の前日までの日数に応じて延滞金が加算されます。そのため、納付が遅れるほど企業の負担は大きくなります。
参考:納入告知書の納付期限までに納付ができませんでした。納付期限後の納付だと延滞金はかかりますか。|日本年金機構
5-3. 保険給付の差し止めにつながる
介護保険料の未納状態が続く場合、介護保険法第68条の規定に基づき、市町村は当該従業員(第2号被保険者)に対して被保険者証への「保険給付差止の記載」をおこなうことができます。この記載がなされると、市町村は保険給付の全部または一部の支払を一時差し止めます。
市町村は必要に応じて、当該従業員が加入する医療保険者に対し、保険料の納付状況などの情報提供を求めることができます。
そのため、企業における医療保険料の未納は、市町村と医療保険者の間で情報共有される可能性があることも念頭に置く必要があります。
企業としては、従業員の介護サービス利用に直接影響する事態を防ぐためにも、介護保険料などの社会保険料の期限内納付を徹底することが不可欠です。
5-4. 従業員や取引先からの信頼低下につながる
企業が従業員の給与から控除した介護保険料を滞納することは、重大な法令違反にあたります。
従業員から預かった保険料を適切に納付していない事実が発覚すれば、企業の管理体制の不備が厳しく問われ、従業員からの信頼を大きく損なうことになりかねません。
その結果、社内における信用を失うにとどまらず、遵法意識を欠く企業として取引先や金融機関からの評価を下げ、さらには社会的信用の失墜といった重大な不利益につながるおそれがあります。
このような問題を未然に防ぐためには、介護保険料の計算や納付の仕組みを正確に理解するとともに、給与計算や納付処理を適切に管理し、定期的な確認体制を整えることが重要です。正しい手続きを継続的におこなうことが、従業員の安心を守り、企業の信頼を維持するための基本となります。
関連記事:社会保険料を滞納する8つのリスクや支払えないときの対策を解説
6. 介護保険料の納付・対象となる期限を正しくおさえよう


介護保険料は、原則として、40歳以上の人に支払い義務が生じる制度です。社会保険に加入する従業員の場合、介護保険料は従業員と企業で折半して負担するため、企業も半額を支払う必要があります。
そのため、企業は支払い方法や金額を正確に把握し、従業員が安心して介護サービスを利用できるように準備しておくことが重要です。



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