残業代単価の計算方法と勤務形態ごとの考え方をわかりやすく解説
更新日: 2026.1.27 公開日: 2022.3.6 jinjer Blog 編集部

従業員が定められた労働時間を超えて労働をした場合、会社に残業代を請求することができます。担当者は従業員に対し、残業代の計算方法や確認方法をしっかり説明できなければなりません。そのためには残業代の単価について十分に理解しておく必要があります。
今回は、労働基準法に基づきながら、残業代の単価や計算方法、平均額について解説します。また近年では、フレックスタイム制や変形労働時間制など、新たな勤務形態を導入する企業が増えつつあります。このような勤務形態ごとの残業代の考え方も一緒に見ていきましょう。
関連記事:残業時間の定義とは?正しい知識で思わぬトラブルを回避!
目次
残業時間の管理や残業代の計算では、労働基準法で「時間外労働」と定められている時間を理解し、従業員がどれくらい残業したかを正確に把握する必要があります。
しかし、どの部分が割増にあたるかを正確に理解するのは、意外に難しいものです。
当サイトでは、時間外労働の定義や上限に加え、「法定外残業」と「法定内残業」の違いをわかりやすく図解した資料を無料で配布しております。
資料では効率的な残業管理の方法も解説しているため、法に則った残業管理をしたい方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 残業代の単価とは


残業代を正しく計算するには、残業代の単価を正確に求める必要があります。まずは残業代の単価とはどのように考えるのか、基本的な部分を確認しておきましょう。
1-1. 1時間あたりの残業代の単価
残業代の単価とは、残業1時間あたりの残業代単価を指します。かみ砕いた言い方をすると「給料を時給に換算した金額」です。
給料の日額が12,000円の場合で考えてみるとしましょう。
1日の労働時間が8時間の場合、12,000円 ÷ 8時間で1,500円になります。1日の労働時間が6時間の場合は2,000円です。
残業代の単価は1時間当たりの労働の価値であるため、同じ給与でも労働時間が短ければ高くなります。残業代の単価を計算したい場合は、「何時間の労働に対していくら支給されているのか」と考えましょう。
1-2. 残業代の単価は残業代の計算に必要
残業代の単価は、正しく残業代を計算し、従業員に支給するために必要な数字です。
残業代は、従業員が法定労働時間を超えて労働をした場合に、超過した時間分に割増率を掛けた金額を求め、それを支払わなければなりません。
そのため、時間単位の残業代すなわち残業代の単価がわからないと、正確に残業代を支払うことができないのです。
なお、固定残業代制度で固定残業時間を超過した場合や、法定労働時間を超えるみなし労働時間を設定している場合でも、超過した時間分の残業代が発生します。その際も残業代の単価を用いて、追加で支払う残業代を計算しなければなりません。
どのような雇用形態・勤務形態であっても残業代の単価は重要な数字です。
2. 残業代単価の計算方法


実際に残業代の単価を求める際の計算方法を解説します。残業代の算出に必要な基礎賃金や月の平均所定労働時間の計算方法も合わせて知っておきましょう。
2-1. 残業代単価の計算式
残業代単価を求める際の計算式は
残業代単価(1時間当たりの基礎賃金)=基礎賃金 ÷ 月の平均所定労働時間
です。
基礎賃金を月の平均所定労働時間で割れば、1時間当たりの賃金を算出でき、それが残業代単価になるわけです。
計算式自体は非常に単純ですが、式内の基礎賃金と月の平均所定労働時間はそれぞれ個別に求めなくてはなりません。
また、基礎賃金には含まれる手当と含まれない手当があるため、その部分を誤って計算しないように注意が必要です。
また、この残業代単価には割増率は含まれていません。残業代を算出する際は
残業代 =残業代単価(1時間当たりの基礎賃金) × 割増率 × 残業時間
必ずこの計算式に当てはめて、改めて計算しましょう。
2-2. 基礎賃金の算出方法
残業代単価を求めるために必要な基礎賃金を求める式は
基礎賃金= 基本給+各種手当の金額
です。
基本給はそのまま式に当てはめればよいですが、各種手当には含まれるものと含まれないものがあります。
基礎賃金の各種手当に含まれるのは、労働の対価として支払われるものです。一例としては
- 皆勤手当
- 役職手当
- 資格手当
- 危険手当
- 無事故手当
などが挙げられます。
一方で従業員の個人的な事情により支給される手当は、基礎賃金には含まれない手当です。
- 家族手当
- 通勤手当
- 住宅手当
- 結婚手当
- 見舞金
- 退職金
などが例として考えられます。
基礎賃金に含まれる手当と含まれない手当をしっかりと分け、正しく計算しましょう。
2-3. 月の平均所定労働時間の算出方法
残業代の単価を求める際は、必ず月の平均所定労働日数を用いなければなりません。1ヶ月の日数は30日と31日があり、うるう年になるケースもあるため、対象となる月の所定労働時間だけで計算をしてしまうと月によって単価が変動してしまうからです。
月の平均所定労働時間を必ず以下の式で求めましょう。
月の平均所定労働時間=(1年の日数 – 年間休日) × 1日の所定労働時間 ÷ 12
月の平均所定労働時間で計算をすれば、1年を通して一定の残業代単価を求めることができます。
複数の計算が絡む残業代単価の計算式ですが、それぞれの計算方法は難しくありません。しっかりと計算して正しい数値を求めるようにしましょう。
3. 【給与形態別】残業代単価を用いた残業代の計算方法


残業代を実際に求める際は、給与形態によって計算方法が異なります。一般的な時給制・日給制・月給制・年俸制に分けて計算方法を解説します。
3-1. 時給制の場合
時給制では、1時間の基礎賃金を決めて労働時間に応じて給与を計算します。正社員では少ないですが、アルバイトやパート、派遣社員などではよく見る給与形態です。
時給制における残業代単価の計算は非常にシンプルです。残業の単価は、1時間あたりの基礎賃金のことでした。そのため、時給制の場合は時給がそのまま残業代の単価になります。
時給が1,500円の場合は残業代の単価も1,500円です。時間外労働が発生して割増賃金が発生した場合は、この1,500円に割増率を掛けて計算すれば問題ありません。
3-2. 日給制の場合
日給制の場合も非常にシンプルな計算式で残業代の単価を求めることができます。
残業代の単価 = 日給 ÷ 所定労働時間
こちらの式で求めることができます。
たとえば日給12,000円で所定労働時間が8時間の場合は、12,000円 ÷ 8時間 = 1,500となり、時給が1,500円であることがわかります。
時給はそのまま残業代の単価になるため、この場合の残業代の単価は1,500円です。
残業代を求める際は、時給制と同様に残業代の単価に割増率をかけて求められます。
ただし、日給に基礎賃金に含まれない手当が入っている場合は、その分を差し引いて計算する必要があります。必ず手当を含んでいるか、含んでいる場合は内容を確認しておきましょう。
3-3. 月給制の場合
月給制は多くの企業で採用されている給与形態です。各種手当が関係してくるため、少し複雑になりますがしっかりと計算していきましょう。
まず、Aさんの月給が30万円で、所定労働時間が168時間、月の残業時間が40時間の場合を考えます。さらにAさんの給与については、通勤手当が15,000万円、家族手当が1万円あると仮定し、1時間当たりの基礎賃金は以下のように算出されます。
残業代の単価は、月給から諸手当を引いた金額を、月の所定労働時間168時間で割ることで求められます。
残業代の単価= 基礎賃金(月給 - 諸手当) ÷ 月の平均所定労働時間
= (30万円 – (15,000円 + 1万円)) ÷ 168時間
= 1,637円
次に、Aさんの残業を把握し、種類ごとに残業時間に応じた割増率を考慮して、残業代を計算します。
Aさんの残業時間は、時間外労働30時間、深夜労働2時間、休日労働8時間だったとします。法定外残業、休日労働、深夜労働などの各種割増が異なるため、それぞれの賃金を算出し、合算します。
時間外労働の残業代:1,637円×30時間×1.25=61,388円
深夜労働:1,637円×2時間×1.50=4,911円
休日労働:1,637円×8時間×1.35=17,680円
これらを合算すると、Aさんの1ヵ月の総残業代は83,979円となります。
3-4. 年俸制の場合
年俸制は、1年の給与総額で報酬を決定する給与形態です。あくまでも休総額が1年単位で決定されているだけであり、給与の支払いは毎月1回以上おこなわれます。
この年俸制の場合、年俸を年間の所定労働時間で割れば残業代の単価が求められそうですが、この方法を使うことはできません。所定労働時間は、日や月単位で定める必要があり、年単位で定めたものは無効になるからです。
年俸制における残業時間の単価を求めたい場合は、年俸を12分割して月の残業単価を求め、さらにそれを月の所定労働時間で割る必要があります。
年俸の月単価=年俸 ÷ 12ヶ月
残業代の単価=年俸の月単価 ÷ 月の所定労働時間
このように計算をします。
年俸が900万円の場合、900万円 ÷ 12ヶ月で月単価は75万円になります。月の所定労働時間が160時間だった場合、75万円 ÷ 160時間で残業代の単価は4,687円です。
4. 勤務形態ごとの残業代の考え方


勤務形態によって残業代の考え方は異なります。どの勤務形態においても、残業代の有無は労働基準法で定められており、正しく計算したうえで支給しなくてはいけません。
4-1. 裁量労働制
裁量労働制とは、実際に働いた労働時間とは関係なく、事前に定められた時間を働いたとみなす制度です。
みなし労働時間が法定労働時間内の場合は、残業代は出ないことが多いです。反対に8時間より少ない労働であっても、8時間労働として扱われます。
この制度で割増賃金が発生する場合は以下3つのケースです。
- みなし労働時間の設定が8時間超の場合
- 深夜労働の場合
- 休日労働の場合
みなし労働時間を9時間に設定した場合、法定労働時間を超える1時間分は時間外労働として適用されるため、1時間分の残業代が支払われます。また、裁量労働制であっても深夜労働や休日労働の割増賃金は適用されるため、この時間帯の労働に関してはほかの勤務形態と同様に割増賃金が支払われます。
関連記事:裁量労働制の残業時間の上限は?知っておくべき注意点を解説
4-2. 固定残業代制度
固定残業代制度は、一定時間の残業代が発生することを見込み、月給に固定の残業代を支払う制度です。
仮に実際の労働時間が、定められたみなし時間に届いていなくても、固定残業代は全額支払われます。また、実際の労働時間がみなし時間を超えてしまった場合は、その分の残業代は追加で支払う必要があります。
固定残業代制度の導入により、企業は従業員の時間管理を効率化できます。この制度では、あらかじめ残業時間を見込んでの給与設定がおこなわれるため、給与計算がシンプル化されます。しかし、固定残業代制度には注意が必要です。従業員が実際にどれだけの時間働いたのかを正確に把握するためには、勤務時間の記録を適切に管理する必要があります。
固定残業代制度は、従業員にとって魅力的である一方で、適切な運用がなされなければ、企業と従業員の関係に亀裂を生じさせることもあります。良好な職場環境を保つためには、労使間のコミュニケーションが欠かせません。
関連記事:固定残業代とは?制度の仕組みや導入のポイントを分かりやすく解説
4-3. 変形労働時間制
変形労働時間制は、労働時間を「1週間、1ヵ月、1年」単位で調整できる制度です。トータルで働いた時間が定められた労働時間内であれば、残業代の対象外となります。所定労働時間の設定は、変形労働時間制であっても、法定労働時間内に収める必要があります。
このように変形労働時間制では、特定の週や月に労働時間を柔軟に調整することができるため、企業のニーズに応じた働き方が可能となります。
ただし、この制度を利用する際には、十分な労働時間の管理が求められます。労働者は予め設定された所定の働き方を理解し、法定労働時間を超過して働いた場合には適切な残業代を受け取る権利があります。
また、変形労働時間制を導入している企業は、労働者に対して所定労働時間の内容や残業代の計算方法についてしっかりと周知することが重要です。これにより、従業員の理解を得やすくなり、労使間のトラブルを避けることに繋がります。この制度を適切に運用することによって、企業は労働者の働きやすさを高める一方で、業務の効率性を維持することが可能となります。
関連記事:変形労働制でも残業代は出さないとダメ!知っておくべきルールとは
4-4. フレックスタイム制
フレックスタイム制は、定められた労働時間の範囲内で、労働者が始業・終業時間を自由に決めることができる制度です。清算期間内(上限3ヵ月)に働くことができる労働時間と、実際の労働時間の差を計算した上で残業代を支払う必要があります。
このようにフレックスタイム制は、特に働き方の多様性が求められる現代において、企業と従業員双方にとってメリットが大きい制度です。従業員は自身のライフスタイルに合わせた働き方ができるため、仕事とプライベートの両立がしやすくなります。
しかし、フレックスタイム制を適用する際には、労働時間の管理が非常に重要です。企業側はフレックスタイム制を導入する際に、従業員に制度の内容や残業代の計算方法について詳細に説明し、理解を得ることが必要です。これによって、従業員が自身の労働時間を適切に管理できるようになり、不要なトラブルを避けることができます。
この制度は、企業の業務効率を高めるだけでなく、従業員の働きやすさを向上させ、モチベーションアップにも寄与します。また、フレックスタイム制を活用することで、企業は優秀な人材を確保するための強力な手段となります。
5. 形態別・職業別の残業代平均額


現在支給されている残業代が適切なのか、残業代の平均額を知っておく必要があります。
最後に、職業別の残業代の平均額をご紹介していきます。
厚生労働省が出している「毎月勤労統計調査」の2024年のデータによると、1ヵ月あたりの残業代は19,643円でした。これは16業種の全体平均額で、前年比と比較すると5.5%増加しています。
なお、これら16の業種のなかで上位3つの業種は以下の通りです。
- 電気・ガス業:56,944円
- 運輸業・郵便業:43,005円
- 情報通信業 :35,538円
また、下位3つの業種は以下の通りです。
- 教育,学習支援業:6,807円
- 飲食サービス業等:7,367円
- 生活関連サービス等:9,156円
賃金の引き上げがおこなわれている影響や市場の変化で、全体的に残業代も上昇傾向にあります。しかし、業種によって残業時間や給与の差があり、残業代の平均額は大きく異なるため、自社の残業代平均と比較する際は必ず該当する産業の値を参考にしましょう。
参考:厚生労働省 | 毎月勤労統計調査 令和6年6月分結果確報
6. 残業代単価を正確に算出して残業代を正しく支給しよう


残業代単価は正確に残業代を計算し、支給するために重要な数字です。勤務形態別の計算方法を理解し、間違いのない支給をしましょう。
残業を「サービス残業」として扱っている業種、企業は少なくありません。また、残業代が未払いとなっていたり、少なく支給されていたりすることに気づかないケースもあります。
そのような場合は、従業員から「残業代を計算したが、少ない」「計算が合わない」と申し出がある可能性があります。担当者は改めて基礎賃金や残業時間を確認し、再度残業代をしっかり計算し直しましょう。
従業員とのトラブルを避けるためにも、残業代が正しいかどうか、残業代の金額が平均額に達しているかどうかをチェックしておくことも大切です。また、計算ツールを活用して正確な残業代算出も検討しましょう。



残業時間の管理や残業代の計算では、労働基準法で「時間外労働」と定められている時間を理解し、従業員がどれくらい残業したかを正確に把握する必要があります。
しかし、どの部分が割増にあたるかを正確に理解するのは、意外に難しいものです。
当サイトでは、時間外労働の定義や上限に加え、「法定外残業」と「法定内残業」の違いをわかりやすく図解した資料を無料で配布しております。
資料では効率的な残業管理の方法も解説しているため、法に則った残業管理をしたい方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
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