残業管理の方法をルール作りのポイントとともに紹介
更新日: 2025.11.21 公開日: 2020.5.22 jinjer Blog 編集部

昨今の働き方改革の影響において、残業時間には新たに上限が設けられました。。中には生活のために「残業代稼ぎ」をおこなう人もいるかもしれませんが、残業が心身への大きな負担になっていることも少なくありません。
また、残業が増えれば人件費も膨れ上がることから、管理者側としては、従業員に効率よく業務を進めてもらい、残業時間を減らしたいと考えるでしょう。そのためには残業の管理が欠かせません。
本記事では残業の管理方法やルールの作り方などを中心に解説していきます。
関連記事:残業時間の定義とは?正しい知識で思わぬトラブルを回避!
目次
残業時間の管理や残業代の計算では、労働基準法で「時間外労働」と定められている時間を理解し、従業員がどれくらい残業したかを正確に把握する必要があります。
しかし、どの部分が割増にあたるかを正確に理解するのは、意外に難しいものです。
当サイトでは、時間外労働の定義や上限に加え、「法定外残業」と「法定内残業」の違いをわかりやすく図解した資料を無料で配布しております。
資料では効率的な残業管理の方法も解説しているため、法に則った残業管理をしたい方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 残業管理の管理やルール化が必要な理由


残業時間を管理できない状況は様々なリスクを招き、場合によっては罰則や訴訟へとつながるおそれがあります。
なぜ残業時間の管理が必要なのか、管理不足によってどのような問題が発生するのか、十分に理解しておきましょう。
1-1. 労働基準法を遵守するため
近年、過重労働による過労死などが増加していることを受けて、労働者の心身の健康を守るため時間外労働の上限規制が導入されました。
使用者が従業員に時間外労働や休日労働させるには「36協定」を締結しなければならず、これを結ぶことによって1日8時間、週40時間を超えて時間外労働が可能となります。ただし原則月45時間・年360時間が上限となります。
一方で場合によっては、繁忙期や緊急の対応など特別な事情がありこの上限を超えることもあります。そこで「特別条項」を締結すれば、例外としてさらに時間外労働が可能になりました。
ただし、上限無く残業ができるわけではなく、長時間労働を是正するために以下の上限規制が設けられています。
- 時間外労働(休日労働を含まず)は、年720時間以内
- 1ヵ月の時間外労働(休日労働を含む)は、100時間未満
- 2~6ヵ月を平均して、1ヵ月当たりの時間外労働(休日労働を含む)は80時間以内
- 時間外労働の原則である「月45時間」を超えることができるのは、年6ヵ月まで
この上限規制に違反した場合は、使用者に6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられることがあります。
罰則を受けると金銭面の影響だけでなく、社外からの印象も悪化してしまう可能性があります。残業時間が超過している従業員を見つけ、適切な指導やコントロールで法令を厳守するために残業の管理は重要です。
1-2. 未払い残業代の発生を予防するため
企業は残業した従業員に対して割増賃金を支払わなければならず、割増賃金を支払うには残業時間を把握していなければ賃金の計算ができません。時間の管理がうまく出来ず、適切に残業代を支払え無い場合、従業員からの信頼を失ったり、訴えられる可能性があります。
従業員が労働した分に対して正しく給与を支給し、労使間の信頼関係を維持するためにも残業の管理が求められます。
1-3. 従業員の健康と安全を守るため
従業員が働きすぎによる不調に陥らないようにするためにも、残業の管理が必要です。
誰がどのくらい残業しているのか可視化できなければ、誰に負担が寄ってしまっているか把握できません。そのような状況では、負担が掛かっている従業員に対し業務量の調整やメンタルケアもできないため、心身の不調につながってしまい、最終的には離職してしまうかもしれません。
1-4. 人材の流出を防ぐため
残業の管理ができていなかったり、ルールがなかったりすると、従業員の中には不満や不信感を持つ人がでてきます。
自分にばかり業務が偏って残業が増えたり、曖昧なルールの中で不公平を感じたりする状況が長く続くと、会社に見切りをつけてしまう人も出てくるでしょう。
会社へのエンゲージメントの低下が原因で退職する人を減らすためにも、残業をしっかりとしたルールの中で管理することが重要です。
このように、残業の発生は会社にとって大きなデメリットとなります。「そもそも残業をどう減らせば良いのか」については、下記の記事でも解説しているため、あわせてご確認ください。
関連記事:残業削減対策の具体的な方法・対策と期待できる効果について解説
ここまで読んで「法改正で設けられた残業の上限規制に違反していないか確認したい」「残業代の適切な計算方法を知りたい」「自社の残業時間を見直したい」と考えている担当者の方は、当サイトで無料配布している「残業ルールBOOK」という資料をぜひご覧ください。資料はこちらから無料でダウンロードしてご覧いただけます。
2. 残業を適切に管理する方法


残業時間の管理をしていくには、環境の整備や現行制度の見直しが必要です。
しかし、すべて同時に改善することは難しいため、自社に足りていない部分や早急に対策が必要な部分を絞り込み、段階的に残業の管理をしやすくしていきましょう。
2-1. 残業と業務量の可視化
まずは残業がどれくらい発生しているのか、業務量はどうなっているのか、現状を把握して可視化するようにしましょう。
従業員や部署ごとに残業時間を洗い出し、管理職だけでなく従業員も各々が自分の残業時間を把握できるようにすることが大切です。
可視化できれば残業時間が超過する前にコントロールできます。加えて、業務量もわかるようになることで業務負担を分散し、残業時間の削減にもつなげられるでしょう。
2-2. 残業に関するルールを作る
残業するには事前申請が必要だとルールを設定することも、残業の管理で有効な手段です。
事前申請にすることで「誰がいつ残業をする予定なのか」をあらかじめ知ることができ、すでに残業時間を超過している場合は申請を認めないことで働きすぎを防げます。
また、残業の見こみ時間も記載してもらえば、より正確な管理ができるでしょう。
残業の事前申請制度は不必要な残業の発生を抑止することにもつながります。
2-3. 評価制度の見直し
管理職の評価制度と残業の管理を連動させることで、厳格な残業時間の管理を促せます。
管理職の人事考課の項目に、残業時間を適切に管理できているか、無駄な残業を発生させていないか、などを盛り込むとよいでしょう。
この方法は管理職が率先して残業を減らすことにもつながるため、部署全体で残業に対する意識を変えられます。
2-4. 勤怠管理システムの導入
勤怠管理システムによって打刻時間を管理できれば、自動的に労働時間や残業時間が集計されるようになります。
計算ミスもなくなり、アラートを利用すれば打刻漏れや残業時間が規定時間を超えた場合に警告を発することも可能になります。
残業の申請や承認システムが搭載されているものもあるため、勤怠管理システムによって幅広く残業時間の管理がしやすくなります。
3. 残業を管理しても残業時間が長くなる要因


残業を管理していても、残業時間が長くなり規程を超過してしまうケースがあります。そのような問題を解決するには、残業をしている理由を明確にすることが重要です。
残業時間が長くなる要因としては、以下の3つが多いです。
3-1. 業務量が多すぎる
業務量が人員に対して多すぎたり、業務の属人化が発生していたりすると、長時間の残業をせざるを得ない状況になってしまいます。
管理者が残業時間を管理し、削減を推奨していても業務が終わらなければ残業をするしかありません。
業務量が特定の人や部署に偏っていないか確認し、業務負担を分散させるなど根本的な解決をしなければ残業時間の超過は防ぎにくいです。
3-2. 効率的に業務をこなせていない
業務量は適正な範囲内だとしても、業務を進めるための環境が整っていなかったり、担当者のスキル不足があったりすると、効率的に進まず時間ばかりがかかってしまいます。
「さぼっていて残業になっている」と頭から決めつけず、効率が落ちている原因を見つけることが大切です。
業務量に対して残業時間が長すぎる場合は、業務フローの見直しや、適材適所の人材配置をするなど対策を考えましょう。
3-3. 残業を削減しようとする意識がない
日本には「長時間労働はがんばっている証拠」という意識が強く、残業時間が長くなりやすいことがあります。
また、残業代を含めた給与で生活が成り立っている場合は、残業時間を少しでも多く稼ごうとするケースもあるでしょう。
このような場合は、そもそも残業を削減しようとする意識がありません。長時間の残業を抑止するには、残業の事前申請や時間で消灯するなど、ルール作りが必要です。
4. 残業管理のルール作りにおける4つのポイント


残業管理のルールを制定する企業は多くありますが、残業管理をおこなうために重要なことは、従業員の意識改革です。
残業時間を超過している従業員に向けて、残業時間超過の注意喚起の連絡をするだけでは、最初は効果があるかもしれませんが、恒常化してしまい根本的な解決には繋がりません。
従業員に何のために残業管理をおこなうのか理解してもらうことが大事です。
そのうえで、残業申請制度などを取り入れ、一方的に会社の都合を押し付ける形ではなく従業員のモチベーション維持も同時におこなえるような工夫をすることがポイントになります。
残業管理ルールを策定するにあたり、意識しておくと良いポイントを4つ紹介します
4-1. 現状を把握して問題点を可視化する
残業に関するルール作りをするには、まず現状把握をして自社の残業制度における問題点を可視化する必要があります。
その際は、従業員からも残業時間に関する問題点をヒアリングしましょう。管理者側だけでルールを作ってしまうと、現場の問題を吸い上げることができず、形骸化や従業員の負担増を招いてしまうからです。
そして、優先的に解決しなければならない項目を洗い出し、「この課題を解決するためにできることは?」という視点で考えると、実用的なルール作りにつながります。。まずは、現状と目指すべきゴールを把握するつもりで職場を観察するとよいでしょう。
また、自社の現状として管理監督者を明確にしておきましょう。管理職であっても管理監督者に該当しなければ残業代は発生するため、正確な残業の管理には区別が必要です。
4-2. コスト削減の意識改革も同時におこなう
上記の現状把握の際に、従業員のコスト意識が欠けていると思われる場合は、コスト削減の意識改革を同時におこなうことをおすすめします。
残業が一般的になっている職場では、従業員に残業の判断を委ねている場合が多いでしょう。結果として、残業へのハードルが低くなり、従業員の間で「定時内に業務を終わらせる意識」が薄れていることがあります。
残業をする従業員が多いと、その分企業が従業員に対して支払う残業代の金額も比例して大きくなり、企業側の負担になってしまいます。
これらの事象を避けるために、残業を事前に申請するルールを設けると良いでしょう。残業の申請制度を設けることで、「なぜ残業をおこなう必要があるのか」と考える機会が増え、日々の業務効率化が期待できます。
4-3. 残業の削減が従業員のメリットになることを周知する
「コスト削減のために残業管理を徹底化する」と従業員に周知すると、場合によっては管理者側の都合でしかないと捉えられてしまうかもしれません。
コスト削減のために残業管理を徹底することは、事実ですが、従業員にも「残業時間が減ることで自分自身の時間を以前よりも持つことができる」「心身ともに健康を保つことができる」「残業削減によって浮いた金額を福利厚生に使う」などといった一定のメリットがあることを伝えることをおすすめします。
4-4. トップダウンで残業への考え方を変える
残業に関するルールを決めても、上司や管理職の意識が低いと形骸化してしまいます。
とくに「残業は美徳」という考えが強いと、サービス残業や自宅への仕事の持ち帰りなど、会社が把握しにくいルール違反が発生しやすいです。
そのような問題を減らすために、トップダウンで残業に対する考え方を変えていきましょう。会社全体の取り組みとして、上司や管理職が率先して残業時間を意識し、削減に取り組む姿勢を見せていれば、その影響は広がっていきます。
残業管理のルールについては下記の記事でより詳しく解説しています。あわせてご確認ください。
5. 適切な管理とルール作りで残業を正しく把握し働きすぎを防ごう


残業管理が必要な背景には、「生活残業」など従業員起点の問題と「残業が評価される会社の風土」などの企業起点の問題が挙げられます。
前者には「残業を事前申請制にする」、後者には「評価制度の見直し」などと、課題によって残業管理のアプローチ方法は異なるため、残業管理の方法を検討する際には現状を把握して問題点を可視化してから検討しましょう。
企業が独自に定めるルールに加えて、従業員が定時内に業務を終えることができるような、双方にメリットをもたらす取り組みをおこなうことが大切です。
関連記事:テレワークでしっかりした残業管理に欠かせない3つのポイント
関連記事:残業削減対策の具体的な方法と期待できる効果について解説



残業時間の管理や残業代の計算では、労働基準法で「時間外労働」と定められている時間を理解し、従業員がどれくらい残業したかを正確に把握する必要があります。
しかし、どの部分が割増にあたるかを正確に理解するのは、意外に難しいものです。
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