有給休暇を取得した週の残業時間や残業代はどうなる?具体例をもとに解説 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

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有給休暇を取得した週の残業時間や残業代はどうなる?具体例をもとに解説

残業時間や残業代を計算する上で、注意が必要なのが年次有給休暇との関係です。

割増賃金は法定時間外の労働時間に基づいて計算されます。一方で労働基準法上では有給休暇は労働時間にカウントされません。

そのため、有給休暇を取得して業務が遅れ「残業」した場合や、平日に有給休暇を取得して所定休日に出勤した場合であっても、1日や1週間ごとの労働時間が法定労働時間内におさまっていれば、定時を過ぎた労働でも残業時間とならない可能性があります。

本記事では、残業時間の考え方や残業時間と有給休暇の関係、有給休暇が残業時間を相殺する場合を解説します。

関連記事:【図解付き】有給休暇付与日数の正しい計算方法をわかりやすく解説

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有給休暇で残業代の相殺をすることはできません。この他にも、「半休取得時の残業代の扱いは?」など、有給休暇と残業の扱いに疑問はありませんか?

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1. 有給休暇と残業の関係

青い背景とミニカレンダー

残業時間と有給休暇の関係を理解する前に、それぞれの定義や特徴を正しく理解しておくことが重要です。本章では、残業時間と有給休暇の考え方をおさらいしましょう。

1-1. 残業時間の考え方

残業時間とは、労働基準法が定める法定労働時間を超えて働いた時間のことです。法定労働時間は、労働基準法第32条において説明されています。

(労働時間)
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
② 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

引用元:労働基準法|e-Gov法令検索

つまり、1日あたり8時間、1週間につき40時間が、法定労働時間です。これを超える労働時間は時間外労働、残業時間に該当します。

法定労働時間を超えて従業員を働かせた場合は、労働基準法第37条の定めにより、時間外労働をした時間に応じ1.25倍の割増賃金を支払わなければなりません。

関連記事:残業時間の定義とは?正しい知識で思わぬトラブルを回避!

1-2. 有給休暇は実労働時間には含まれない

有給休暇の取り扱いを考える上で注意したいのは、残業時間は実際に労務に従事した「実労働時間」に基づくものでなければならないという点です。

年次有給休暇は賃金が保障された休暇です。1日分の年次有給休暇を取得したら1日の労働分の賃金が保障されます。
ただし、実際には働いていないため実労働時間とはみなされません。労働基準法上にも有給休暇を実労働時間とみなせる旨の記述はされていません。
従って、実労働時間を計算する際、有給休暇で休んだ日の実労働時間は便宜上「ゼロ時間」として扱う必要があります。

2. 有給休暇取得時の残業時間と残業代の計算方法

有給休暇取得時の残業時間と残業代の計算を実例を使って解説していきます。

2-1. 実労働時間と残業時間の計算方法

以下の働き方を実施した従業員がいたと仮定して、1週間の実労働時間と残業時間を考えていきましょう。

  • 所定労働時間:8時間(休憩除く)
  • 残業時間:月~木に毎日2時間
  • 有給休暇取得日:金曜日
  • 所定休日:土曜日
  • 法定休日:日曜日
  • 変形労働時間制は適用無し
NG例:実労働時間:48時間 内、残業時間:8時間

これは所定労働時間(8時間×5日=40時間)と残業時間(2時間×4日=8時間)を合算して実労働時間を求めた例です。
有給休暇を取っている金曜日も実労働時間が発生したと取り扱っており、実労働時間を48時間と計算しています。しかし、これは間違いです。先の章で述べた通り、有給休暇は実労働時間ゼロ時間としてカウントしなくてはいけません。

OK例:実労働時間:40時間 内、残業時間:8時間

これは所定労働時間(8時間×4日=32時間)と残業時間(2時間×4日=8時間)を合算して労働時間を求めています。

月曜日~金曜日のうち、有給休暇を取った金曜日を実労働時間ゼロで計算しているため、こちらが正しい計算方法です。

フレックスタイム制を導入している場合

一方でフレックスタイム制を導入している場合、有給休暇取得日の実労働時間をゼロ時間とカウントしてしまうと、当該単位期間中に働かなければいけない労働時間に対して不足してしまい有給休暇取得を阻害してしまう考えもあります。
そのため、フレックスタイム制においては標準となる1日の労働時間を定めることになっています。有給休暇取得日についてはこの標準となる1日の労働時間を労働したものとして取り扱います。
フレックスタイム制を取り入れている企業の担当者は就業規則などを確認しましょう。

2-2. 残業代の計算方法

有給休暇を取得した日は実労働時間をゼロでカウントしなければいけないことはわかりました。

では、残業代はどのように計算するのでしょうか。こちらも前述した条件を用いて計算していきましょう。

NG例:残業代は発生しないと計算する

例に挙げた1週間の働き方をみると、実労働時間は40時間ぴったりになります。

しかし、実労働時間が法定労働時間の週40時間未満であるため、残業代は発生しない、と考えてしまうは間違いです。

1日8時間または、1週40時間のいずれかを超えた場合、その超えた時間が長い方の時間外労働時間に割増率を乗じた残業代を従業員へ支払わなくてはなりません。

OK例:残業時間分の残業代を支払う

例の場合は、1週間でみた場合の実労働時間は40時間と法定労働時間におさまっていますが、1日単位でみた場合、月~木の4日間は法定労働時間である8時間を2時間超えて労働しています。

そのため、2時間分の給与×4日間×1.25倍の計算式で算出した残業代を支払うのが正しい計算方法です。

残業代の計算自体は簡単ですが、残業代が発生しているのかしていないのか、間違いのないように確認しましょう。

フレックスタイム制を導入している場合

残業代に関しても、フレックスタイム制を取り入れている場合、清算期間内に法定労働時間を超えた分に対して割増率を乗じた残業代を支払うことになります。
仮に、清算期間を1ヶ月・有給休暇取得日の実労働時間を8時間とした場合、この週の実労働時間は48時間となりますが、その月の実労働時間が法定労働時間内におさまっていれば残業代の支払いは発生しません。

2-3. 残業代の対価として有給休暇を与えることは可能?

残業時間の合計が1日の所定労働時間(8時間)と同じになった場合、残業代は支払わず代わりに有給休暇を1日付与したいと考える企業もいます。

結論からお伝えすると、有給休暇をもって残業代を相殺することは原則できません。

なぜなら、法定労働時間外の労働の手当として残業代(時間外労働の手当)は25%以上の割増賃金(残業代)を支払わなければならないためです。

時間外労働に対しては必ず割増賃金を支払わなければなりません。したがって、有給取得の有無にかかわらず、法定労働時間を超えて労働した時間があるならば残業代を支払う必要があります。

条件つきで有給休暇を残業代の代わりにできる例外もある

月60時間を超える労働には50%以上の割増率で賃金を支払う必要がありますが、労使協定を結んでいれば、25%の割増賃金の支払いをしたうえで、追加分の25%の残業代の支払いに代えて有給休暇(代替休暇)を付与することができます。これを代替休暇制度といいます。

一方で、有給休暇を取得したことにより労働時間や残業時間の計算が通常とは異なる場合があります。そちらは、次の章にて詳しくご説明します。

特定の条件を満たしている従業員に関しては、2019年の法改正で年5日以上の取得が義務づけられました。そのため、より慎重に有給の取得と消化日数を管理しなくてはなりません。

適切に管理するためには、本章でお伝えした基礎知識をベースに、法改正の内容や取得日数の計算方法などの知識を網羅的に持っている必要があります。時間のあるときに、必ず内容を押さえておきましょう。当サイトでは、社内に有給取得者の定義やルールがまとまった資料がない方向けに、有給休暇の取得日数を表でまとめた資料を無料で配布しております。自社の有給管理が違反していないか不安な人事担当者様は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。

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関連記事:残業による割増率の考え方と残業代の計算方法をわかりやすく解説

3. 有給休暇で残業時間が相殺できるケース

残業時間(時間外労働)と認められるのは、あくまでも実労働時間が法定の基準値を超えた場合です。そのため、半日単位の有給休暇で会社を休むと終業時間をこえて労働しても残業時間(時間外労働)に該当しない労働時間が発生します。

また、平日に有給休暇を取得し、所定休日に出勤した場合でも、1週間の法定労働時間以下であれば同様に割増賃金を支払う必要はありません。具体例を用いて、相殺が可能なケースをみていきましょう。

3-1. 半日分の有給休暇を取得し、終業後に残業をした場合

午前中は有給休暇を取得したものの、業務に遅れが生じたため、結局終業後も残業をした場合を考えてみます。

1日の法定労働時間は8時間のため、これを超えて従業員が働いた場合は、割増賃金を支払うことになります。

たとえば、半休を取得して13時に出勤し、23時まで残業したとしましょう。休憩時間が1時間とすると、合計9時間働いているため、1時間分の割増賃金の支払いが必要になります。

仮に、残業時間が20時までだとすると、合計6時間(休憩1時間)勤務になり法定労働時間を超えないため、割増賃金の支払い義務は発生しません。

3-2. 平日に有給休暇を取得し、公休日に出勤した場合

平日に有給休暇を取得したものの、業務の遅れの解消のため、所定休日に出勤した場合を考えてみます。

1週間の法定労働時間は40時間です。たとえば、月曜日から木曜日まで32時間働き、金曜日に有給休暇を取得し、所定休日である土曜日に8時間働いたとします。

この場合、休日出勤をしていますが、法定労働時間を超えていないため、残業時間が相殺されています。仮に、土曜日に9時間働いた場合は、1週間で41時間働いたことになるため、1時間分の割増賃金が必要になります。

ただし、法定休日に労働をした場合は有給休暇の取得に関わらず、35%以上の割増賃金を支払う必要があります。

このほかに企業独自の有給付与ルールなどがあった場合、非常に管理が煩雑化してしまいます。

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関連記事:公休とは?その意味など企業が知らないとまずい基礎知識

4. 遅刻や早退は残業時間と相殺できる?

資料を横に作業する人

有給休暇は、残業時間との相殺のほかにも遅刻や早退などで労働時間が短くなった際の相殺も可能な場合があります。条件があるため、相殺したい場合は正確に理解しておきましょう。

4-1. 遅刻は同日内であれば残業と相殺可能

就業時間が9~18時、休憩時間は1時間の会社を例にして考えてみます。通常であれば、18時以降に労働した時間は8時間を超えて労働した時間であるため、割増賃金の支払いが必要になります。

この会社で1時間遅刻をし、10~19時まで間に1時間の休憩をとって働いたとします。通常であれば18時以降の労働は割増賃金が発生しますが、1時間遅刻をしており労働時間は8時間であるため、割増賃金の支払い義務は発生しません。ただし、10~20時まで働いた場合は労働時間が9時間になるため、遅刻していても1時間分は割増賃金の支払いが必要です。

また、注意しておきたいことは他の日の残業時間で遅刻を相殺することはできない点です。1時間遅刻をし、7時間労働した翌日に9時間労働をした場合、9時間労働のうち1時間を前日の労働時間にあてることはできません。なぜなら、この1時間は割増賃金の支払いが必要なためです。

4-2.早退は残業と相殺できない

先ほどと同じく、就業時間が9~18時、休憩時間は1時間の会社を例にして考えてみます。9時から働き始め、16時に早退した場合、労働時間は6時間になります。

8時間に足りない2時間分を翌日や前日など他の日の残業時間2時間で相殺することはできません。時間外労働に対しては必ず割増賃金支払いの義務があるためです。

ここまでこの記事を読まれた方の中には「6時間働いて早退した場合でも、所定労働時間が7時間なら、翌日8時間働いても割増賃金の支払い義務も無く、所定内残業で早退分を相殺できるのでは」と考える人もいるかもしれません。

確かに、賃金上に不利益は生まれませんが、賃金台帳には残業代と欠勤控除は別々に記載しなくてはならないと労働基準法108条によってきめられているため、残業した時間と早退した時間やその分の労働時間は分けて管理しなくてはなりません。

5. 有給休暇の取得と残業代の支払いを正しく理解して処理しよう

今回は、有給休暇と残業時間の関係や、有給休暇が残業時間を相殺してしまうケースを解説しました。

有給休暇は実際に業務をおこなった「実労働時間」ではありません。残業時間とは、1日8時間または週40時間を超えて働いた「実労働時間」に基づいて計算されるため、半日単位の有給休暇で会社を休んだ場合、残業時間の計算が通常時と異なることがあります。

終業時間を過ぎていても残業時間に該当しない労働が発生し、割増賃金を支払わなくてよいケースも出てくるため、注意しましょう。

人事・労務管理者は、残業時間だけではなく有給休暇の取得状況も把握して、正しく割増賃金を支払うように管理することが大切です。

関連記事:年次有給休暇とは?付与日数や取得義務化など法律をまとめて解説

関連記事:従業員の残業を代休扱いにできる?法律に基づいた2つの条件

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OHSUGI

OHSUGI

クラウド型勤怠管理システムジンジャーの営業、人事向けに採用ノウハウを発信するWebメディアの運営を経て、jinjerBlog編集部に参加。営業時代にお客様から伺った勤怠管理のお悩みや身につけた労務知識をもとに、勤怠・人事管理や給与計算業務に役立つ情報を発信しています。

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