給与明細の電子化に同意書は法律上必要?拒否される原因や対応も解説
更新日: 2025.6.13
公開日: 2021.10.18
jinjer Blog 編集部
給与明細は、電子化しても問題はありません。従来の紙媒体での給与明細と比較すると、メールなどで簡単に送れるうえに、場所を取らず保管できるなどメリットが多いのでおすすめです。
しかし、給与明細の電子化は、発行する側の一方的な判断で進めることはできません。従業員からの明確な承諾が必要となるため、あらかじめ同意書を用意しておくことが推奨されます。本記事では、給与明細の電子化において同意書が必要となる理由や、従業員から同意が得られなかった場合の対応策について解説します。
目次
給与計算を手計算しているとミスが発生しやすいほか、従業員の人数が増えてくると対応しきれないという課題が発生します。 システムによって給与計算の内製化には、以下のメリットがあります。
・勤怠情報から給与を自動計算
・標準報酬月額の算定や月変にも対応しており、計算ミスを減らせる
・Web給与明細の発行で封入や郵送の工数を削減し、確実に明細を従業員へ渡せる
システムを利用した給与計算についてさらに詳しく知りたい方は、こちらからクラウド型給与計算システム「ジンジャー給与」の紹介ページをご覧ください。

1. 給与明細の電子化に同意書が必要な理由
給与明細は、従業員を雇う企業側に交付する義務がありますが、昨今、ペーパーレスが進んでいます。給与明細の電子化は既に可能となっており、これは、所得税法231条で定められています。
ただし、給与明細の電子化には従業員の同意が必要な点に気をつけなければなりません。もし、給与明細を受け取る側が同意しなかったのであれば、当該従業員に対して電子交付することは認められないので注意して対応しましょう。
(給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書)
第二百三十一条 居住者に対し国内において給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、その給与等、退職手当等又は公的年金等の金額その他必要な事項を記載した支払明細書を、その支払を受ける者に交付しなければならない。
2 前項の給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、同項の規定による給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払を受ける者の承諾を得て、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。ただし、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払を受ける者の請求があるときは、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書を当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払を受ける者に交付しなければならない。
3 前項本文の場合において、同項の給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、第一項の給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書を交付したものとみなす。
1-1. 口頭による同意は法律上不可
給与明細を電子化するにあたって、口頭での同意は認められません。所得税法施行令第356条に基づき、給与明細の電子化の同意は、書面もしくは電磁的方法によりおこなわなければなりません。紙の書面や電子データで従業員から同意を得たことについて証拠に残しておくことで、後のトラブルを防ぐことにもつながります。
(給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承諾等)
第三百五十六条 居住者に対し国内において給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、法第二百三十一条第二項本文(給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書)の規定により同項に規定する給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書に記載すべき事項を提供しようとするときは、財務省令で定めるところにより、あらかじめ、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払を受ける者に対し、その用いる電磁的方法の種類及び内容を示し、書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。(省略)
1-2. 承諾への回答がない場合はどのように取り扱う?
給与明細の電子化に関して同意を得ようとしても、従業員から回答が得られないケースも考えられます。そのような場合には、「期限までに承諾するかどうかの回答がない場合は、承諾があったものとみなす」旨をあらかじめ通知したうえで、指定期限を過ぎても回答がなければ、電子交付への承諾があったものとみなすことができます。
なお、回答期限について法令上の明確な定めはありません。しかし、あまりに短い期間では同意があったと認められない可能性があります。そのため、従業員が十分に検討できるよう、適切な回答期間を設けることが重要です。
2. 給与明細の電子化に同意してもらえない主な原因
給与明細を電子化すれば、ペーパーレスを推進し、配布や保管などの業務を効率化することが可能です。また、紙代・印刷代などのコストも削減できます。
しかし、給与明細の電子化について同意を得ようとしても、従業員から拒否される可能性があります。その場合は電子交付が認められません。ここでは、給与明細の電子化に同意してもらえない主な原因について詳しく紹介します。
2-1. 電子化された給与明細を確認できる端末などを所有していない
電子化された給与明細は、パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットからでも手軽に確認できます。一方で、これらの機器を持っていなければ、閲覧が難しいという側面もあります。
とくに高齢者など、個人の方針としてパソコンやスマートフォンなどの情報端末を所有していない人もいるかもしれません。このような機器があると便利な場面は多いものの、すべての人が必ずしも所有しているとは限らない点には配慮が必要です。
2-2. 紙の給与明細を身内で共有している場合
従業員の中には、紙の給与明細を家族や親族と共有しながら管理しているケースもあるでしょう。紙の明細での管理が習慣化している場合、電子化への移行にすぐに同意を得るのは難しいこともあります。
3. 給与明細の電子化に同意してもらえないときの対応
給与明細の電子化に同意してもらえない場合、まずは電子化するメリットを伝え、説得するところから始めてみるとよいでしょう。給与明細の電子化は、管理できる環境さえ整っていれば非常にメリットが多いです。
3-1. 電子化に対応してもらえるように説得する
給与明細を電子化することで、企業だけでなく、従業員にとっても多くの利便性が得られます。給与明細を電子化すれば、パソコンやスマートフォン上で保管できるため、保管スペースが不要となり、管理がしやすくなります。
また、クラウドサービスを活用することで、インターネット上で給与明細を管理できるので、自宅や移動中など場所を問わず閲覧が可能です。適切なバックアップ体制を整えておけば、紙の明細書に比べて紛失リスクも大幅に軽減されます。
このようなメリットを従業員にわかりやすく説明することで、給与明細の電子化に対する同意を得られる可能性が高まります。
関連記事:給与明細の電子化(ペーパーレス化)!導入手順やメリット、注意点を徹底解説
3-2. 電子交付の方法(メールやシステムなど)を見直す
給与明細を電子化する場合、次のようにさまざまな方法が認められています。
- メールやチャットツールを通じた交付
- 社内LAN・WANやインターネット環境を利用した交付
- CDやUSBメモリなどの記録媒体を使用した交付
従業員にとって受け取りやすい方法を選ぶことが大切です。事前に、従業員がどのような方法での交付を希望しているかをヒアリングし、状況に応じた適切な手段を選択することで、電子化に対する同意を得られる可能性も高まります。
3-3. 同意してもらえない方向けに印刷できるようにする
どれだけ丁寧に説明しても、すべての従業員から電子化に同意を得ることが難しいケースもあります。確認や管理に必要な端末を用意できないなど、従業員それぞれにさまざまな事情があるためです。
そのような場合には、同意を得られなかった人にも対応できる準備を整えておきましょう。具体的には、紙での交付に対応できるよう、印刷の準備をしておくとよいでしょう。電子ファイルとして作成した給与明細を印刷することで、紙での交付も問題なくおこなえます。
給与明細の電子化システムを活用すれば、給与明細はもちろん、賞与明細や源泉徴収票などの各種書類もワンクリックで電子化できます。また、PDFでの出力・印刷にも対応しているので、電子化に同意してもらえない従業員がいた場合でも、業務全体としては効率化を図ることが可能です。
当サイトでは、給与計算システム「ジンジャー給与明細」の管理画面のキャプチャ画像を用いて、システムでどのように効率化ができるのか解説した資料を無料で配布しております。給与明細の交付に課題感をお持ちのご担当者様は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
4. 給与明細の電子化に関する注意点やポイント
給与明細の電子化の同意書に関しては、いくつかの気を付けるべき点があります。ここでは、給与明細の電子化に関する注意点やポイントについて詳しく紹介します。
4-1. 同意を得ても請求されたら書面で交付する必要がある
給与明細を電子化する際には、所得税法第231条に基づき、たとえ従業員から電子交付について事前に同意を得ていたとしても、後に書面での交付を求められたら、これに応じる義務があります。
すべての従業員から電子交付への同意を得たからといって、紙媒体での給与明細の運用を完全に廃止してしまうと、後になって紙での交付を要求された際に、イレギュラーな対応が必要となり、業務の負担や混乱を招く恐れがあります。
そのため、給与明細の電子化を進める場合でも、必要に応じて紙での交付にも対応できる体制を残しておくことが望ましいです。
4-2. 給与明細電子化同意書のサンプル・テンプレートを活用する
給与明細を電子化するにあたっては、従業員の同意が必要となるため、事前に「給与明細電子化同意書」のフォーマットを作成しておくことが推奨されます。
同意書には、所得税法施行令第356条に基づき、電子交付の方法および交付内容を明記する必要があります。国税庁サイトを参考に、以下の事項を記載することが望ましいでしょう。
- 電子交付の対象となる書類の名称
- 電磁的方法の種類および具体的な交付方法
- 受信者のファイルへの記録方法
- 書類の交付予定日
- 電子交付の開始日
- その他参考となる事項(例:承諾日、受給者氏名など)
同意書をゼロから作成するのは、時間や手間がかかるだけでなく、記載事項の抜け・漏れによりトラブルの原因となる可能性もあります。インターネット上に公開されている無料のサンプルやテンプレート・ひな形を活用し、自社の実情に合わせてカスタマイズすることで、効率的かつ確実に給与明細電子化同意書を作成することができます。
4-3. 電子化の要件を遵守する
給与明細を電子化する場合、あらかじめ従業員の同意を得る以外にも、電子交付の方法について次のいずれもの条件を満たす必要があります。
- 映像面への表示および書面への出力が可能である
- 電子交付をおこなった旨を受給者に通知する(受給者のパソコンなどに直接データを送信する場合や、光ディスク・USBメモリといった記録媒体を使って直接交付する場合などを除く)
また、税務署の調査などがあったときに、速やかに表示・出力できるように電子化体制を整備しておきましょう。
4-4. セキュリティに気を付ける
給与明細を電子化して交付する場合には、不正アクセスやデータの改ざんといったセキュリティリスクにも十分注意が必要です。万が一、電子交付された給与明細が外部に漏れると、従業員からの信頼を失い、情報漏えいトラブルへと発展する可能性があります。
そのため、まずはアクセス権限の設定やパスワードの管理を徹底し、給与明細データへの不正アクセスを防ぐことが重要です。加えて、定期的なバックアップを実施することで、データの消失や改ざんといったリスクにも備えることができます。
5. 給与明細を電子化する際は同意の取り方に気を付けよう!
給与明細の電子化のメリットは大きいですが、発行する側の一存で進めてしまってはいけません。法律で定められていることなので、同意書で確実に従業員から同意をもらう必要があります。すでに給与明細の電子化を導入している企業であれば、新入社員を雇うタイミングで同意を得ましょう。
しかし、スムーズに同意が得られないこともあるかもしれません。そのような際は、まずは諦めずに説得するところから始めることをおすすめします。給与明細の電子化のメリットは大きいため、しっかりと説得すれば同意が得られる場合もあります。
給与明細の電子化を進める際は、ルール違反にならないように正しい手順で取り組みましょう。
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