給与における手当とは?一覧や課税の有無・支給する際の注意点を解説
更新日: 2024.12.20
公開日: 2024.12.20
OHSUGI
「給与における手当とは?」
「課税の有無や支給する際に気をつけるべきことは?」
上記のような悩みを抱えている人もいるのではないでしょうか。
給与における手当とは、基本給以外の賃金のことです。
今回は、給与における手当や一覧、課税の有無や支給する際の注意点を解説します。手当は適切に支給する必要があるため、事前に理解を深めましょう。
1. 給与における手当とは
手当とは、従業員に対して支払われる給与のうち基本給以外の賃金を指します。
毎月決まった額が支給されるケースでは、基本給と同じく従業員へ支払われる固定的な賃金と判断されることがほとんどです。
残業代などを算出する際は手当を含めて計算することが基本ですが、以下のような手当は除外される場合もあります。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 住宅手当
- 子女教育手当
- 臨時で支払われた賃金
- 1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金や手当
なお賞与の算出は、手当を含まずに「基本給の数ヵ月分」という運用でおこなっても問題ありません。
2. 給与における手当と基本給・付加給の違い
給与における手当と基本給は、どのような報酬であるかが異なります。
基本給は年齢や勤続年数、個人の能力などから決定される固定的な報酬です。対して手当は、特定の条件を満たした従業員に支払われます。
付加給は、残業代や通勤手当など月によって変動する可能性がある手当を指す言葉です。給与における手当は、基本給以外の賃金そのものを指します。
属性と能力による固定的な報酬や、月により変動の可能性がある手当を指す言葉といったように、それぞれの意味は異なります。
3. 手当の一覧【法律で定められている例】
法律で定められている手当の例は、次のとおりです。
- 深夜手当
- 休日手当
- 時間外手当
それぞれ詳しく解説します。
3-1. 深夜手当
深夜手当とは、22時から翌日の5時まで働いたときに支給されるものです。手当の目的は夜間の労働により従業員の健康が脅かされる点を考慮して、深夜に働く労働者を支援することです。
該当する時間に労働した従業員へ、通常の賃金に対して25%を超える割増賃金が加算されます。
すべての業種や職種で適用されるものであり、一般的には労働者が深夜に勤務しなければいけないときに保障されます。
3-2. 休日手当
休日手当は、労働者が法定休日に働いたときに支給される手当です。法定休日は、労働基準法に基づいて労働者に必ず与えられないといけない休日を指します。
休日手当の特徴は法定休日に労働した場合、通常の賃金に対して35%以上の割増賃金が支給されることです。
あくまでも法定休日にのみ適用されるものであり、企業が独自に設定した法定外の休日に必ず適用されるものではありません。
3-3. 時間外手当
時間外手当とは、就業規則で決められた所定労働時間を超えたり、法廷労働時間を超えたりしたときに支払われるものです。
労働基準法では、1日8時間かつ週に40時間が通常の労働時間と定めています。労働時間を超えた労働をした場合、企業は以下の割増賃金を支払わなければいけません。
- 月60時間までの時間外労働分25%以上
- 月60時間を超えた時間外労働分50%以上
上記の支払いは義務であり、支払わなかった場合は労働基準法に違反します。
4. 手当は企業が任意で支給できる
企業が任意で支給できる手当の一例は、次のとおりです。
- 役職手当
- 資格手当
- 単身赴任手当
- 海外赴任手当
- 地域手当
- 家族手当
- 住宅手当
- 食事手当
- 皆勤手当
それぞれ詳しく解説します。
4-1. 役職手当
役職手当とは、役職に応じて支給されるものを指します。役職手当が支給されるのは、役職によって複雑な業務や責任の重さが課せられるためです。部長や課長など、役職によって支給金額が決まっています。
中小企業の役職ごとの支給金額は以下を参考にしてください。
役職 | 平均支給額 |
部長 | 約83,000円 |
課長 | 約57,000円 |
係長 | 約26,000円 |
それぞれの支給額は、企業の規模によっても変動します。
4-2. 資格手当
資格手当とは、業務上必要な資格などを取得した従業員に支給されるものを指します。以下は資格手当の一例です。
資格 | 月額手当 |
管理建築士 | 15,000円 |
経営業務管理責任者 | 30,000円 |
建築士2級 | 10,000円 |
施工管理技士1級補 | 7,000円 |
企業の規定や取得した資格の種類によって異なりますが、1,000~50,000円が支給額の相場です。資格手当は、従業員のスキルアップや資格取得を促す効果が期待できます。
4-3. 単身赴任手当
単身赴任手当は、遠方への転勤がきっかけで家族と別居する必要がある従業員に支給するものです。以下の要因から、単身赴任では手当が支給されるケースがあります。
- 家族と離れることで生活費がかさむため
- 自宅と単身赴任先を行き来する交通費が必要になるため
目的は上記のような従業員にかかる金銭的な負担を補うためです。
4-4. 海外赴任手当
海外赴任手当は、海外に駐在する従業員に支給するものです。主に以下の目的で支給される傾向にあります。
- 海外赴任する従業員への職責の手当のため
- 経済的負担や精神的負担を減らすため
支給額については、赴任先の物価や情勢などから決められます。
4-5. 地域手当
地域手当は、企業の定める勤務地に配属された従業員に支給されます。地域による家賃や物価などの差を調節する目的で支給されることがほとんどです。
物価が高い都市部はもちろん、離島や山間部などの地域で勤務する従業員に支給されやすいです。
4-6. 家族手当
家族手当とは、扶養家族の人数などに合わせて支給されるものです。扶養手当とも呼ばれ、家族が増えることで生じる金銭的な負担を軽減させる目的で支給します。
企業の規格によってだれを扶養家族と見なすかが変わるものの、社会保険の扶養を基準にすることが多いです。
4-7. 住宅手当
住宅手当は、住宅にかかる費用を補助するために支給されます。一律の金額が支給されるケースや社宅の賃料として間接的に支払われるケースなど、支給の方法はさまざまです。
本来は課税対象ですが、従業員から徴収している家賃額が賃貸料相当額の50%であれば非課税になります。
4-8. 食事手当
食事手当とは、就業時の従業員の食費を補助する目的で活用されています。昼食代の補助を始めとして、残業や深夜労働が多い職場にて支給されるケースもあります。
食事手当の特徴は現金を支給するだけでなく、食事そのものを支給したり食事券を支給したりなど、さまざまな支給方法がある点です。支給額の相場は、1食あたり100~150円程度です。
4-9. 皆勤手当
皆勤手当は、給与計算の対象期間において休みなく出勤していた従業員に支給されます。皆勤を奨励する目的で導入されている手当です。一般的には、以下の条件を満たすことで手当を受け取れます。
- 対象期間において欠勤がない
- 対象期間において遅刻や早退がない
- 対象期間において所定労働日数勤務した
皆勤手当は「出勤手当」や「精皆勤手当」とも呼ばれます。
5. 給与における手当の課税・非課税は種類によって異なる
給与における手当にも課税になるもの・非課税になるものがあります。非課税にあたるものは次のとおりです。
- 出張手当
- 宿日直手当
- 通勤手当
- 在宅勤務手当
それぞれ詳しく解説します。
5-1. 出張手当
出張手当は、遠方へ出張する人や宿泊が必要な出張をする人に支給されます。交通費や宿泊費などの出張に必要な金額は経費として扱われるため、所得税が発生しません。
手当を利用する際は必要な範囲を明確にするため、対象者や出張の定義などを定めた出張規程を作成する必要があります。
非課税の出張手当であれば、企業は課税仕入れとして仕入税額を控除できます。一方で、海外出張では課税仕入れの対象となりません。
海外で消費される物品やサービスに対して、日本の消費税は掛からないためです。
5-2. 宿日直手当
宿日直手当とは、宿直や日直を実施した従業員に支払われるものを指します。一度に4,000円までが非課税です。
宿直や日直において食事の提供が伴うときは、4,000円分から食事代を引いた残高が非課税の対象になります。
一方で、以下のようなケースでは同じ宿日直手当でも課税対象です。
- 勤務時間内の労働として宿日直手当を支給した
- 代休を与えた
- 宿直場所に居住し夜間を含めた勤務を前提に雇用した従業員へ手当を支給した
状況によっては、宿日直手当が非課税にならないため注意が必要です。
5-3. 通勤手当
通勤手当は、自宅と職場を往復する交通費の一部を支給する手当です。公共交通機関を使い通勤している従業員に対しては、1ヵ月15万円までの所得税が非課税になります。
自分の車などで通勤している従業員にガソリン代として通勤費を支払っている場合は、片道の通勤距離に応じて非課税限度額が定められる仕組みです。
全従業員に一律で手当を支給するケースなど、実費以外の支給を実施する場合は課税対象になります。
5-4. 在宅勤務手当
在宅勤務手当とは、在宅で働く従業員に特定の費用を補助する手当です。在宅勤務に欠かせない通信費や電気代、そのほかの事務用品などの費用を援助する目的があります。
通常は非課税ですが、企業から在宅勤務手当をまとめて現金支給する場合は課税対象です。用途が特定されていないため給与と同じ扱いを受け、課税されます。
6. 手当を支給する際の注意点
手当を支給する際の注意点は、次のとおりです。
- 支給ルールは適切でなければいけない
- 手当の内容を明記する必要がある
それぞれ詳しく解説します。
6-1. 支給ルールは適切でなければいけない
手当を支給する際のルールは、公平なものでなければいけません。パートタイム・有期雇用労働法により、正社員と非正社員の不合理な優遇格差が禁止されているためです。
判断 | ケース |
不合理な格差優遇である | 正社員は上限2万円まで支給しアルバイトには支給しない |
合理的な理由がある | フルタイム勤務の社員には上限2万円まで支給し、月の労働日数が正社員の半分の社員には上限1万円まで支給 |
それぞれの社員の役割や責任などを考慮し、各種手当について合理的に説明できるようにする必要があります。
6-2. 手当の内容を明記する必要がある
手当の内容や計算は、求人票や就業規則などに明記する必要があります。明記しない場合、労働基準法違反になる恐れがあるためです。
従業員に対して不利益な変更をおこなうときは、合理的な理由を示しつつ労働者への個別同意を受ける必要があります。
一度支給を決めた手当を取りやめたり減額したりするのは難しいため、将来を見越した慎重な導入が大切です。
7. 基本給以外の手当について深く理解し支給しよう
給与における手当は、深く理解した上で支給する必要があります。
種類や支給方法によって課税か非課税かが異なるのはもちろん、一度支給を決めた手当を取り消すのは難しいためです。
注意しないと労働基準法に違反するケースもあるため、適切に支給するためにも手当に関しては理解を深めましょう。
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