スーパーフレックス制度とは?メリット・デメリットや導入方法・注意点を解説
更新日: 2024.11.15
公開日: 2021.9.2
OHSUGI
スーパーフレックス制度とは、コアタイムを設けず、労働者が自由に働く時間を選択できる制度で、就業規則への明記と、労使協定の締結により導入できます。
本記事では、スーパーフレックス制度の概要と導入方法、メリットや注意点を詳しく解説します。
フレックスタイム制の導入には、労使協定の締結や就業規則の変更・届出など、行うべき手続きが存在します。
また、フレックスタイム制を導入した後に、「出勤・退勤時間が従業員によって異なるので、勤怠管理が煩雑になった」「残業時間の計算方法と清算期間の関係がよく分からない」といったお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向け、当サイトでは「フレックスタイム制度を実現するための制度解説BOOK」をご用意しました。
資料ではフレックスタイム制導入の流れや手続の他に、残業の数え方や効率的な勤怠管理の方法も解説しておりますので、適切にフレックスタイム制を運用したいという方は、ぜひこちらからダウンロードしてご覧ください。
目次
1. スーパーフレックス制度とは
スーパーフレックス制度(フルフレックス制度)について、厚生労働省は次のとおり定義しています。
始終業時刻を本人が決定し且つ就労義務のあるコアタイムのない制度
つまり、スーパーフレックス制度は所定の期間内における総労働時間や日数を満たせば、労働者が働く日にち・時間・場所を自由に決められる制度です。
フレキシブルな働き方ができるため、海外とのやり取りが多い企業や情報通信業で導入が進んでおり、フルリモート勤務のような、多様な働き方を実現する方法としても注目を集めています。
1-1. フレックスタイム制度の違い
スーパーフレックス制度と同じように、出勤・退勤時間を自由に設定できる勤務方法にフレックスタイム制度がありますが、両者の違いは「コアタイムの有無」です。
スーパーフレックス制度には、出勤が必要なコアタイムが存在せず、より自由度の高い勤務形態といえます。ただし、企業により、深夜(午後10時~翌日午前4時)の出勤は許可制であったり、会議の際は全員出席が必要であったり、ある程度の基準を設けている場合もあります。
関連記事:コアタイムなしのフレックスタイム制とは?導入メリット・デメリットも紹介
1-2. コアタイムなしの裁量労働制との違い
スーパーフレックス制度とコアタイムなしの裁量労働制は、自由な働き方を提供する点では似ていますが、勤務時間の管理方法には大きな違いがあります。
裁量労働制では、あらかじめ定められた「みなし時間」の範囲内で労働が行われたとみなされ、実際の労働時間に関わらずその時間が適用されます。一方、スーパーフレックス制度では、労働者の実際の労働時間を正確に計算し、管理します。さらに、裁量労働制には対象業務に制限があるのに対し、スーパーフレックス制度は業種や職種の制約がなく、労使協定を結ぶことで柔軟な運用が可能です。
2. スーパーフレックス制度導入のメリット
スーパーフレックス制度の導入により、時間や場所に縛られない多様な働き方が実現できるでしょう。しかし、社内・社外を問わず、コミュニケーションが難しくなるなどの懸念事項もあります。スーパーフレックス制度の導入企業はメリットとデメリットを事前に把握しておきましょう。
2-1. 多様な働き方を実現できる
夫婦共働きで育児をしたり、仕事をしながら両親の介護をしたり、働きながら資格取得の勉強をしたりなど、多様な働き方のニーズを満たせるのがスーパーフレックス制度のメリットです。
勤務時間は労働者に委ねられているため、遅刻や早退のように、周囲の目を気にすることなく、自身の事情を優先できます。
2-2. 優秀な人材の確保や定着につながる
スーパーフレックス制度は、時間と場所に縛られない働き方のため、魅力的な職場として他社と差別化することができます。したがって、 優秀な人材の確保や定着にもつながるでしょう。育児や介護を理由とした離職を減らせるだけでなく、時差を気にせず仕事ができるため、国内外を問わず優秀な人材を採用できます。
2-3. 長時間労働の解消を促す
労働時間を自由に選べ、定時制のように仕事が終わっても会社に拘束されないため、長時間労働の解消を促せるでしょう。また、総労働時間の範囲内で、実労働時間を調整するため、残業時間も削減しやすくなります。
2-4. 生産性の向上が期待できる
始業時間を選べるので、寝不足なのに、無理に会社に出勤する必要はありません。体調が良く、集中できる時間帯に、働きたい場所で仕事ができるため、一人ひとりの個性に合った働き方が可能です。
結果として、生産性の向上も期待できるでしょう。
3. スーパーフレックス制度導入のデメリット
スーパーフレックス制度導入にはデメリットは次のとおりです。
3-1. コミュニケーションが取りづらくなる
従業員全員が、好きな時間や場所で働くため、社内・社外を問わず、コミュニケーションが取りづらくなる恐れがあります。
コミュニケーションの問題を解決するには、Googleカレンダーを社内で共有したり、月に数度、全社員参加型の会議を導入したりするとよいでしょう。
3-2. 有給消化率が低下する恐れがある
自分の予定を終わらせてから仕事ができるため、有給消化率が低下する可能性があります。有給は1日単位の取得だけでなく、時間休も活用するなど、取得方法を工夫しましょう。
また、労務や人事担当者から、積極的な有給休暇の取得をアナウンスすることも、対処方法の1つです。
3-3. 労働時間や生産性の管理が必要
始業・終業時間に縛られないため、労働時間の管理が複雑化しやすいでしょう。また、好きな時間に働けることから、生活リズムが乱れ、かえって生産性が低下する従業員が現れる可能性も否めません。そのため、上長や人事担当者は、実労働時間や生産性の適切な管理が必要となります。
対策としては、クラウド勤怠管理システムの導入や進捗状況の見える化などがあります。
4. スーパーフレックス制度の導入方法
スーパーフレックス制度の導入には、終業規則の変更や、労使協定の締結が必要です。スーパーフレックス制度の導入方法を解説します。
4-1. スーパーフレックス制を就業規則に規定する
スーパーフレックス制度を導入するには、就業規則に「始業・終業の時刻を労働者が自由に決定できる」旨の記載が必要です。
【スーパーフレックス制の就業規則例】
第32条3
労働基準法第32条の3第1項に定められる労使協定を締結し、スーパーフレックス制度を適用する従業員は、その協定で定める時間帯の範囲内において、始業、就業の時間を各人が自由に決定できる。
引用:e-Gov法令検索 | 昭和二十二年法律第四十九号 労働基準法第四章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇 第三十二条の三
労使協定を就業規則の一部とすると、簡潔にまとめることができるでしょう。
関連記事:フレックスタイム制に関わる就業規則のポイント・記載例を紹介!
4-2. 労使協定を締結する
事業所の過半数労働組合または、事業所の過半数代表者と、労使協定の締結をしましょう。
労使協定では、下記の事項を話し合い決定する必要があります。
- 対象となる労働者の範囲:全従業員か、特定の部署のみか、など
- 清算期間:1~3ヵ月の間で決定
- 清算期間中の総労働時間:法定労働時間の枠内で決定
- 標準となる1日の労働時間:1日7時間など。有給休暇取得時の算定基礎となる
- フレキシブルタイム(任意):始業・就業できる時間帯で決定
清算期間について、1ヵ月を超える場合は、管轄の労働基準監督署に届出が必要です。また、フレキシブルタイムの設定は任意ですが、会社が深夜労働を避けたい場合などは、あらかじめ設定しておくとよいでしょう。
当サイトでは、フレックスタイム制の概要や導入手順を図を用いて解説した資料を無料で配布しております。概要や導入方法だけでなく、裁量労働制などの類似制度との違いまでまとめてあります。テキストよりも図やイラストがあった方が理解しやすいという方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
関連記事:フレックスタイム制に関する労使協定のポイントを解説
4-3. 清算期間が1ヵ月以上の場合は労基署へ届け出る
清算期間が1ヵ月以上の場合、労働者の勤務時間を正確に把握し、実労働時間の計算を行うために、管轄の労働基準監督署への届け出が必須です。
一般的には月給に合わせて1カ月単位で設定されることが多いですが、業種によっては繁忙期や閑散期に応じて、2カ月または3カ月の清算期間を設けることも可能です。この場合、事前に届け出を行うことで、法に基づいた適切な運用が確保されます。導入をスムーズに進めるためにも、清算期間の設定と届け出をしっかりと行うことが重要です。
4-4. 勤怠管理システム等の正確に管理できる環境を整備する
スーパーフレックス制度の導入に伴い、勤怠管理が煩雑になることを考慮し、効率的かつ正確な管理体制を整えることが不可欠です。
従来のタイムカードに頼った管理方法では、管理者の負担が増大し、ミスが生じる可能性があります。そのため、スーパーフレックス制度に対応した勤怠管理システムの導入をお勧めします。このシステムでは、労働時間の自動計算や、残業時間の把握がスムーズに行えるため、複雑な管理が簡素化されます。正確で効率的な勤怠管理の実施により、システムの導入効果を最大化し、従業員の生産性を向上させることができるでしょう。
5. スーパーフレックス制度導入時の注意点
最後に、スーパーフレックス制度を企業に導入する際の注意点を解説します。
5-1. 時間外労働は36協定の締結が必要
スーパーフレックス制度においても、総労働時間を超える労働(残業)が必要な場合は、あらかじめ、36協定の締結が必要ですので忘れずに行いましょう。
36協定とは、時間外労働の上限を規定しているものですので、正しく締結・管理することが必要です。36協定の締結について詳しく知りたい方は以下の関連記事を参考にしてください。
関連記事:36協定の届出とは?作成の方法や変更点など基本ポイントを解説
5-2. 勤務時間に対する残業代の計算
スーパーフレックス制度における勤務時間に対する残業代の計算は、特に注意が必要です。
清算期間中に設定された総労働時間を超えると、超過時間分が時間外労働として扱われ、残業代の支払いが発生します。特に、清算期間が1ヵ月以上の場合、当月の実労働時間の週平均が50時間を超えると残業が計上されるため、事前の確認が重要です。また、深夜勤務(22時~翌5時)や法定休日の出勤に関しては、それぞれ深夜割増や休日割増を考慮した計算が必要となります。
5-3. 運用ルールの周知と明確化
スーパーフレックス制度は定時制以上に、従業員一人ひとりの時間管理が重要となります。初めて企業で導入する際は、総労働時間と実労働時間の違いや、残業の概念、違法となる労働時間など、制度の周知を徹底しましょう。
ここまで、フレックスタイム制の定義からメリット・デメリット、注意点までを解説してきましたが、字面だけだとなかなか理解しづらい内容もあるかと思います。そこで当サイトでは、本記事の内容に加えて、フレックスタイム制の導入ステップや類似制度の内容までを、表やイラストを用いながら解説した資料を無料で配布しております。フレックスタイム制の導入を検討されているご担当者様は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
5-4. 顧客営業・外部企業との会議について
スーパーフレックス制度を導入する際には、顧客営業や外部企業との会議についての配慮が重要です。
特に営業や広報職では、顧客との円滑なコミュニケーションが求められるため、柔軟な勤務時間が逆にデメリットとなる可能性があります。顧客からの連絡に迅速に対応できない場合、信頼関係に影響を及ぼし、取引先との関係が悪化する恐れもあります。したがって、職種や部署の特性を考慮し、適切なルールを設定することが求められます。
6. 目的をもってスーパーフレックス制度を採用すれば柔軟な働き方が実現できる!
スーパーフレックス制度は、コアタイムを設けないため、フレックスタイム制度以上に、労働者が柔軟に働ける制度です。
しかし、コミュニケーションが取りづらくなったり、労働時間の管理が複雑になったりするため、導入の際は、事前に対策を立てるとよいでしょう。スーパーフレックス制度を活用し、優秀な人材の確保や、生産性の向上につなげましょう。
関連記事:フレックスタイム制とは?清算期間の仕組みやメリット・デメリットを解説
フレックスタイム制の導入には、労使協定の締結や就業規則の変更・届出など、行うべき手続きが存在します。
また、フレックスタイム制を導入した後に、「出勤・退勤時間が従業員によって異なるので、勤怠管理が煩雑になった」「残業時間の計算方法と清算期間の関係がよく分からない」といったお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向け、当サイトでは「フレックスタイム制度を実現するための制度解説BOOK」をご用意しました。
資料ではフレックスタイム制導入の流れや手続の他に、残業の数え方や効率的な勤怠管理の方法も解説しておりますので、適切にフレックスタイム制を運用したいという方は、ぜひこちらからダウンロードしてご覧ください。
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