賃金台帳はアルバイトでも必要なの?項目と書き方を解説
更新日: 2023.3.16
公開日: 2021.11.12
YOSHIDA
賃金台帳は、労働基準法によって作成と保存が義務付けられている書類のひとつです。雇用している従業員ごとに作成する必要がありますが、アルバイトやパートについても作成しなければならないのか悩むケースも多いでしょう。
本記事では、賃金台帳の対象となるスタッフや、賃金台帳に記載すべき項目、賃金台帳を作成するときの注意点について解説します。労働基準法に違反すると罰金が科せられる可能性もあるため、しっかりと理解しておきましょう。
▼賃金台帳とは?という方はまずはこちら
賃金台帳とは?基本的な作成方法と知っておきたい法的ルール
1.賃金台帳はアルバイトでも必要なの?
賃金台帳の対象となるのは、雇用している従業員全員です。つまり、正社員や契約社員だけではなく、アルバイトやパートなども含まれます。労働日数や雇用形態による例外は認められないため、日雇いのスタッフについても賃金台帳を作成しなければなりません。
労働者名簿の対象には日雇いスタッフが含まれていないため、混同しないよう注意が必要です。従業員をひとりでも雇ったら賃金台帳を作成しなければならない、と覚えておきましょう。
2.賃金台帳のアルバイト用項目とは?
賃金台帳に記載すべき項目は、労働基準法施行規則(第54条)によって決められています。[注1]
賃金台帳には以下10項目を記載しましょう。必要な項目が抜けていると、労働基準監督署から指摘されたり、罰則の対象となったりする可能性もあるため注意が必要です。
- 氏名
- 性別
- 賃金計算期間
- 労働日数
- 労働時間数
- 休日労働時間数
- 早出労働時間数
- 深夜労働時間数
- 基本給・手当の種類とその額
- 控除項目とその額
賃金台帳には、氏名や性別、基本給といった情報だけではなく、労働日数や労働時間数、時間外労働時間数なども正確に記載しなければなりません。賃金台帳は、それぞれの従業員の労務状況を的確に把握するための書類だからです。休日・早出・深夜労働なども含めて管理することで、過剰な労働が発生していないか、給与は支払われているか、といったポイントをチェックしましょう。
関連記事:賃金台帳に必要な記載事項とは?それぞれの意味を詳しく解説
[注1]労働基準法施行規則 第54条|e-Gov
2-1.雇用期間が1ヵ月未満の場合は賃金計算期間を記載しなくてもよい
前述のとおり、アルバイトやパートも賃金台帳の対象となりますが、雇用期間が1ヵ月未満のスタッフについては賃金計算期間を記載する必要はありません。賃金計算期間とは、給与計算の対象となる期間のことです。
たとえば、毎月20日締めとしている場合は「4月21日〜5月20日」、月末締めとしている場合は「6月1日〜6月30日」などと記載します。雇用期間が1ヵ月未満のスタッフに対しては、賃金計算期間を設定する意味がないため、賃金台帳にも記載する必要はありません。
3.アルバイト用の賃金台帳における5つの注意点
賃金台帳は労働基準法によって作成と保存が義務付けられている書類であるため、一定のルールに従って管理しなければなりません。アルバイト用の賃金台帳を作成するときは、会社単位ではなく事業所単位で作成する、給与明細では基本的に代用できない、保存期間を把握しておく、といった点に注意しましょう。
以下、それぞれのポイントについて順番に解説します。
3-1. 会社単位ではなく事業所単位で作成する
賃金台帳は会社単位ではなく、基本的に事業所単位で作成して保存しておかなければなりません。[注2]
事業所ごとに作成することで、アルバイトを含むスタッフの労務状況を適切に管理することにつながります。
ただし、必ずしも紙ベースで保存しておく必要はありません。スペースや人員の問題により、小さな事業所では賃金台帳の作成や保管が難しいケースもあるでしょう。そのような場合は、賃金台帳を電子データとして作成したうえで本社のサーバーに保存しておき、各事業所から閲覧したり印刷したりできるようにしておけば問題ありません。
労働基準法で定められている記載事項が網羅されている、誤って消去されない、長期にわたって保存できるなどの要件を満たしていれば、電子データとして保存することも認められているため、うまく利用しましょう。
3-2. アルバイトの給与明細では基本的に代用できない
給与明細にも支払い給与額や労働時間数などが記載されていますが、基本的には賃金台帳の代わりにはなりません。給与明細には、時間外労働時間などの細かい項目が記載されていないケースが多いからです。労働基準法で決められている事項がすべて記載されている場合は、給与明細で代用することも可能ですが、事前に記載項目が網羅されているか確認しておきましょう。
賃金台帳としての基準を満たしていない場合は罰則の対象となり、30万円以下の罰金が科せられる可能性もあります。他の書類で代用するほうが管理の手間がかかるケースもあるため、専用の書類として作成しておくとよいでしょう。
3-3. 市販の賃金台帳は必要事項が抜けていることもある
市販のものは、賃金台帳としての基準を満たしていない可能性もあるため注意しましょう。せっかく作成しても、必要事項が記載されていなければ意味がありません。厚生労働省のホームページからダウンロードできる書式であれば必要事項が網羅されているため、うまく活用するとよいでしょう。[注3]
アルバイト用だからといって油断せず、適正に管理していくことが大切です。
[注3]賃金台帳|厚生労働省
3-4. 賃金台帳の保存期間を把握しておく
賃金台帳は、最後に記載した日から起算して5年間、保存しておく必要があります。(令和2年4月の労働基準法改正により5年保存となりましたが、当分の間は経過措置として3年保存で問題ありません)
アルバイト用の賃金台帳も例外ではありません。間違えて賃金台帳を捨ててしまったり、データを消去してしまったりすると、罰則が科せられる可能性もあるため、しっかりと管理しておきましょう。必要に応じていつでも提出できる状態にしておくことも大切です。
関連記事:賃金台帳の保存期間や違反した際の罰則・保存方法を解説
3-5. アルバイトへ給与を支払うごとに記入する
賃金台帳は、アルバイトへ給与を支払うごとに記入するのが基本です。毎月の給与日に合わせて賃金台帳の項目を更新していきましょう。賃金台帳が古い情報のままだと、労働基準監督署による急な臨検監督などに対応できません。
賃金台帳に不備があると、罰則の対象になる可能性もあるため注意しましょう。もちろん、アルバイトやパートだけではなく、一般社員や契約社員などについても同様です。
4.アルバイトに対しても忘れずに賃金台帳を作成しよう
今回は、賃金台帳の対象となる社員や、アルバイト用の賃金台帳を作成するときの注意点などについて解説しました。賃金台帳の対象となるのは雇用しているすべての従業員です。正社員や契約社員だけではなく、アルバイトやパートなども対象となるため、忘れずに賃金台帳を作成して管理しましょう。
事業所ごとに作成する、法律で定められた期間はしっかりと保存しておく、といった点にも注意しなければなりません。労働基準法に違反しないよう、ポイントをしっかりと把握しておくことが大切です。
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