看護休暇とは?企業側のメリットや運用時の注意点を解説
更新日: 2025.9.25 公開日: 2024.10.25 jinjer Blog 編集部

「看護休暇を推進する企業側のメリットは?」
「看護休暇の注意点を知りたい」
看護休暇について、このような疑問や悩みをもつ人事労務の担当者は多いのではないでしょうか。
子の看護等休暇とは、小学校3年生までの子どもがいる従業員のために法律で定められた休暇制度です。看護休暇は子育てと仕事の両立支援をするだけでなく、企業にも大きなメリットがあります。
本記事では、看護休暇を利用できる条件や企業のメリットを解説します。また、看護休暇の注意点も解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
従業員からの「これって有給?欠勤扱い?」といった質問に、自信を持って回答できていますか。
無給休暇と欠勤の違いや特別休暇との関係など、曖昧になりがちな休暇のルールは、思わぬ労務トラブルの原因にもなりかねないため、正しく理解しておく必要があります。
◆この資料でわかること
- 無給休暇・有給休暇・欠勤の明確な違い
- 間違いやすい、無給休暇取得時の給与計算方法
- 慶弔休暇など、会社独自の「特別休暇」の適切な設定方法
- 会社都合で休業させる場合の休業手当に関する注意点
多様化する働き方に伴い、休暇制度の管理はますます複雑になっていますので、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 看護休暇とは


看護休暇とは、育児休業・介護休業に関する法律で定められた休暇で、正式名称は「子の看護等休暇」です。
看護休暇は、従業員の子どもが病気やケガをした場合などに、1日もしくは時間単位で取得できます。まずは看護休暇の基本を押さえましょう。
1-1. 対象者(企業・従業員)
看護休暇は法律で定められた労働者の権利です。業種や規模を問わず、従業員を雇用する企業は、要件を満たす従業員に付与する必要があります。
また、看護休暇は雇用形態に関係なく、非正規雇用の従業員でも小学校3年生までの子どもがいれば利用可能です。ただし、労使協定によって、1週間の所定労働時間が2日以下の従業員からの申し出を企業は拒むことができます。
こちらの記事に労使協定の締結方法と流れを詳しくまとめているため、ぜひ参考にしてください。
関連記事:労使協定とは?種類や労働協約・就業規則との違い、届出義務に違反した場合を解説
1-2. 取得条件
看護休暇は、以下の4つの事由に対して取得できます。
- けがをした、病気にかかった子の世話
- 子の健康診断や予防注射などの受診の付き添い
- 学校の休業などによる子の世話
- 子の入園(入学)式、卒園式への参列
小学校3年生までの子どもが、1人いる従業員は1年間で5日、2人以上いる従業員は10日まで取得が可能です。1年間をいつから数えるかは企業が任意に決められますが、定めなかった場合は4月1日から翌年3月31日までとなります。
1-3. 看護休暇と欠勤との違い
看護休暇の取得期間は、無給でも法的には問題ありません。看護休暇を無給とした場合、休暇の取得自体は可能ですが、その期間の給与は支給されないため、欠勤と違いがないと思う方もいるでしょう。
しかし、休暇は労働者に与えられた権利となる一方で、欠勤は権利ではないという大きな違いがあります。
つまり、欠勤した場合は労働の義務を放棄していることになり、働かなかった分の給与が減らされるほか、懲戒処分の対象になったり人事評価に影響が出たりする場合があります。看護休暇を取得して休んだ場合は、労働の義務が正式に免除されるため、ペナルティがない点が大きな違いです。
2. 看護休暇と介護休暇・育児休暇の違い


看護休暇と介護休暇・育児休暇の主な違いは、対象者と休暇日数です。それぞれの違いを以下の表にまとめました。
| 休暇の種類 | 対象者 | 休暇日数 |
| 看護休暇 | 小学校3年生修了前の子どもがいる従業員 | 子ども一人につき年5日間
(二人以上の場合は最大10日間) |
| 介護休暇 | 要介護状態の家族がいる従業員 | 要介護状態の一人につき年5日間
(二人以上の場合は最大10日間) |
| 育児休暇 | 原則一歳未満の子どもがいる従業員 | 原則として一歳の誕生日を迎える前日まで |
2-1. 介護休暇
看護休暇と介護休暇の大きな違いは制度の趣旨と取得の条件です。
- 制度の趣旨
看護休暇は育児と仕事の両立を目的とした休暇で、小学校3年生までの子どもがいる従業員が取得できます。また、介護休暇は介護と仕事の両立を目的としており、要介護状態の家族がいる従業員が対象です。
- 取得の条件
看護休暇は子どもの病気やけが、健康診断の受診、学級閉鎖による子の世話、入園(入学)式や卒園式への参列などに使える休暇です。介護休暇は要介護状態の家族の介護や通院などの付き添い、介護サービスのための手続きなどをおこなう場合に取得できます。
介護休暇については下記の関連記事もご覧ください。
2-2. 育児休暇
育児休暇は、育児介護休業法の「育児休業」を指す場合と、会社独自で定めている休暇制度を指す場合がありますが、ここでは育児介護休業法の育児休業として解説します。
育児休暇も看護休暇も、育児と仕事の両立を目的としている点は同じですが、取得できる日数と利用シーンが異なります。
育児休暇は、育児に専念するために一定期間仕事を離れることを前提とした制度であり、原則として子が1歳になるまでの期間、継続して休暇を取得できます。
一方で看護休暇は、1年間に5日(対象の子が2人以上の場合は10日)しか取れないものの、子が小学校3年生を修了するまで取得できます。育児休暇との違いは、子どもの怪我や病気など、突発的に休まなければならない際の取得を想定した制度である点です。
関連記事:男性の育児休暇に関する義務化はいつから?法改正の内容や企業がおこなうべき準備とは
関連記事:育児休暇に関する法律が2025年に改正!改正のポイントや企業の対応義務を解説
3. 看護休暇の時間単位の取得や休暇中の給与はどうなる?


看護休暇の運用で人事担当者が迷いやすい点が、時間単位での取得や休暇を取った期間の給与の取り扱いです。それぞれ注意点があるので確認しましょう。
3-1. 子の人数と取得日数の関係・時間単位の取得方法
看護休暇を取得できる日数は、以下のとおりです。
| 小学校3年生までの子の人数 | 1人 | 2人以上 |
| 取得可能日数(1年あたり) | 5日 | 10日 |
2人以上の場合が10日のため、対象となる子が3人、4人でも10日が上限です。ただし企業の判断で10日以上の日数を付与することはできます。
また、1年間をどこで区切るかの判断は企業に任せられており、特に定めのない場合は4月1日〜翌年3月31日までを1年間として扱います。
看護休暇では1日単位の取得のほか、時間単位での取得も認めなければなりません。年次有給休暇では、時間単位の取得を認めるには労使協定を締結する必要がありますが、看護休暇では労使協定は不要です。
「年休で時間単位を認めていないから、看護休暇も時間単位は認めない」という運用はできないので注意しましょう。
3-2. 看護休暇の無給は意味ない?
企業によっては、看護休暇の取得期間を無給としている場合もあるでしょう。年次有給休暇とは異なり、看護休暇を取得した期間を無給にすること自体は法律上問題ありません。
しかし、無給であれば看護休暇を取得する意味がないと考える従業員もいるでしょう。そこで重要なのは、無給であっても看護休暇をすることで休暇中の労働の義務が免除される点です。労働の義務を企業から正式に免除されているため、ペナルティが与えられることはありません。
一方で、欠勤の場合は労働の義務は免除されておらず、労働者が一方的に義務を放棄している状態にあたります。そのため労働契約の義務を果たせていないと解釈できます。
このことから、従業員に「休暇をとっても無給では意味がないのではないか」と問われた際、看護休暇なら労働の義務が免除されてペナルティが発生しない旨を説明するとよいでしょう。
4. 看護休暇の法改正


看護休暇は2025年4月に法改正があり、対象となる労働者や利用条件がより広くなりました。ここからは、改正の内容と注意点を確認しましょう。
4-1. 2025年4月の法改正内容
4月から施行されている改正点は4つあります。
| 改正内容 | 改正前 | 改正後 |
| 名称 | 子の看護休暇 | 子の看護等休暇 |
| 対象となる子の範囲 | 小学校就学の始期に達するまで | 小学校3年生修了まで |
| 取得事由 |
|
|
| 労使協定により除外できる従業員 |
|
※「雇用期間が6ヵ月未満」は撤廃 |
追加された取得事由について、「感染症に伴う学級閉鎖など」とは、インフルエンザや新型コロナウィルスなどの流行により休校になるなど、子どもの世話が必要な場合が該当します。世話をする子どもが感染症にかかっていなくても取得が可能です。
「入園(入学)式・卒園式」には、名称が異なっても同趣旨の式典は含まれますが、授業参観や運動会など、ほかの行事は含まれません。
4-2. 2025年10月の法改正内容
2025年10月の法改正では、看護休暇そのものに関する改正はありません。ただし、10月から、従業員の妊娠・出産の申し出時や子が3歳になる前などに、仕事や育児の両立に関する意向聴取を個別におこなう必要があります。
企業は、従業員の意向を聴き取り、配慮しなければいけません。場合によっては、子の看護等休暇の付与日数を追加したり、取得できる期間を延長したりするなどの対応が必要になるでしょう。
4-3. 法改正で注意すべきポイント
法改正に伴い注意すべきポイントは2点です。
- 就業規則の改定
対象従業員の拡大や取得事由の追加により、就業規則を改定する必要があります。改定されていないからといって即違反となるわけではありませんが、規則が改正されていないことを理由に、追加された事由による取得を拒否した場合は法律違反にあたります。看護休暇の適切な運用のためにも、まだ改定が済んでいない場合は早めに対応しましょう。 - 給与の取扱いの変更
法改正にともない、看護休暇中の給与の取り扱いを有給から無給に変更することを検討する企業もあるでしょう。今まで有給だったものを無給に変更する場合は、従業員にとって労働条件の不利益変更にあたります。
就業規則による労働条件の不利益変更は、変更の必要性や不利益の程度を踏まえ、変更に合理性があると認められる必要があります。
合理性が認められない場合、無給への変更ができない可能性もあるため注意しましょう。
5. 看護休暇の整備を推進する企業側のメリット


看護休暇の整備を推進する企業側のメリットは2つです。
- 仕事と育児の両立を支援できる
- 定着率の向上につながる
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
5-1. 仕事と育児の両立を支援できる
一番のメリットは、従業員の仕事と育児の両立を支援できる点です。看護休暇は、子どもの体調不良など、突発的に休みが必要なときに役立ちます。
看護休暇の整備を推進すると、従業員にとって働きやすい環境を提供できるだけでなく、子育てしながら働ける環境が整っていると社外から認識され、社会的にも支持を得やすくなるでしょう。
求人にも有利に働き、優秀な人材の確保につながる可能性もあります。
5-2. 定着率の向上につながる
従業員の定着率の向上につながる点も、看護休暇を推進するメリットです。定着率とは、企業に就職してから一定期間を超えて在籍している従業員の割合を指します。定着率が高い企業は離職者の割合が少なく、従業員にとって働きやすい職場であることのアピール材料にもなります。
看護休暇を推進すると育児をしながらでも仕事を続けやすくなり、離職する従業員が減少し、定着率の向上が期待できます。定着率を向上できると人材採用に関わるコストの削減や、企業イメージの向上にもつながるでしょう。
6. 看護休暇を運用する際の注意点


看護休暇の注意点は3点です。
- 就業規則・関連規程を漏れなく見直す
- 給与の取り扱いを定める
- 看護休暇の取得を理由とした不利益な取り扱いは禁止
それぞれの注意点について詳しく解説します。
6-1. 就業規則・関連規程を漏れなく見直す
看護休暇を導入する際は、看護休暇の要件を就業規則に記載しましょう。看護休暇は、労働基準法89条の1の「休暇」に該当し、就業規則に定める必要があるためです。
就業規則には以下の項目を記載する必要があります。
- 対象となる従業員(対象となる子の範囲も含む)
- 取得できる事由
- 取得可能日数と期間
- 看護休暇の取得に必要な手続
- 取得期間の給与の扱い
- 取得期間に対する賞与、昇給、退職金の算定の扱い
こちらの記事に就業規則の作成方法をまとめているため、ぜひ参考にしてください。
関連記事:就業規則の作成方法|記載すべき項目や注意すべきポイントを解説
参考:就業規則への記載はもうお済みですか‐育児・介護休業等に関する規則の規定例‐|厚生労働省
6-2. 給与の取り扱いを定める
規定に定める項目のうち、休暇を取得した期間の給与の取り扱いは定めておきましょう。看護休暇を有給にするか無給にするかは企業の自由ですが、有給として扱う企業も多く、無給の可能性があることを知らない従業員もいるかもしれません。
有給のつもりで取得したのに実際は無給だった場合、トラブルの元となる可能性が高まります。看護休暇中の給与の有無はあらかじめ規則で定めておき、従業員に制度の説明をする際も必ず触れておきましょう。
6-3. 看護休暇の取得を理由とした不利益な取り扱いは禁止
看護休暇は法律で認められた労働者の権利です。従業員から申し出があった場合、企業は休暇の取得を認める必要があり、休暇取得を理由とした不利益な取り扱いは禁止されています。
例えば、看護休暇を取得したことを理由に人事評価を下げたり、昇給を遅らせたりすることはできません。企業として適切な運用ができるよう、休暇の申請先となっている管理監督者の方などには十分に制度の趣旨を説明しておきましょう。
7. 両立支援等助成金とは


両立支援等助成金は、仕事と育児・介護を両立するための取り組みをおこなった中小企業や事業主に支給される助成金です。
6つあるコースのうち「柔軟な働き方選択制度等支援コース」では、法を上回る子の介護等休暇制度の導入など、5つの中から2つ以上の制度を導入し、対象者が利用した場合に最大25万円の助成金が支給されます。
両立支援等助成金に関する詳しい概要は、厚生労働省のホームページをご確認ください。
8. 看護休暇の理解を深めて従業員が働きやすい環境を整えよう


看護休暇は雇用形態や性別を問わず、小学校3年生までの子どもがいる従業員が利用できる休暇制度です。看護休暇の利用を促進することで、育児と仕事の両立をサポートできます。
また看護休暇の推進は、優秀な人材の確保や定着率の向上などの企業側のメリットも大きいです。看護休暇を上手に活用して、従業員が育児と仕事を両立しやすい環境を整備しましょう。



従業員からの「これって有給?欠勤扱い?」といった質問に、自信を持って回答できていますか。
無給休暇と欠勤の違いや特別休暇との関係など、曖昧になりがちな休暇のルールは、思わぬ労務トラブルの原因にもなりかねないため、正しく理解しておく必要があります。
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- 無給休暇・有給休暇・欠勤の明確な違い
- 間違いやすい、無給休暇取得時の給与計算方法
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多様化する働き方に伴い、休暇制度の管理はますます複雑になっていますので、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
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