就業規則の作成方法|記載すべき項目や注意すべきポイントを解説
更新日: 2023.9.1
公開日: 2021.10.28
MEGURO
就業規則は、「常時10人以上の労働者を使用する使用者」に作成が義務付けられており、「絶対的必要記載事項」「相対的必要記載事項」「任意記載事項」から成り立ちます。
就業規則を作成する際は、「絶対的必要記載事項」を記載するだけでなく、労働者代表から意見を聴取する、労働基準監督署に届出る、従業員全員に周知するなどの処理が必要です。
この記事では、就業規則の作成方法と記載すべき項目、注意点について解説します。
▼就業規則について1から理解したい方はこちら
就業規則とは?人事担当者が知っておくべき基礎知識
1.就業規則の基本的な作成方法
就業規則の基本的な作成の流れは、下記の通りです。
- 就業規則の原案を作成する
- 従業員代表に意見を聴取し、意見書を書いてもらう
- 就業規則を管轄の労働基準監督署に届け出る
- 就業規則を従業員に周知する
以下、それぞれの手順について、詳しく解説します。
1-1. 就業規則の原案を作成する
就業規則は下記の3つの要素から構成されており、ある程度記載するべき内容は決まっています。
- 絶対的必要記載事項:労働時間・賃金・退職について
- 相対的必要記載事項:退職手当、安全衛生など
- 任意記載事項:企業理念など
1は、就業規則への記載が義務付けけられている項目です。
2は制度を運用する際必要となり、3は法律上、記載の必要はありません。
上記を元に、業種や雇用形態に合わせて原案を作成します。
また、法令違反のチェックなど、会社の担当者のみで作成が難しい場合は、専門家への相談をおすすめします。
なお、自社のみで作成したい場合は、厚生労働省が提供する「就業規則作成支援ツール(※)」を活用するとよいでしょう。
1-2. 従業員代表に意見を聴取し、意見書を書いてもらう
原案が完成したら、従業員代表に就業規則に対する意見を聞き、意見書を書いてもらいます。
従業員代表とは、下記のいずれかに該当する者です。
- 従業員の過半数で組織する労働組合
- 1がない場合は、民主的に選ばれた従業員の過半数を代表する者
意見書の提出は労働基準法で義務付けられているため、必ず聴取のうえ、作成します。
関連記事:就業規則の意見書とは?作成に必要な内容と書き方のポイント
1-3. 就業規則を労働基準監督署長に届出る
必要書類の作成が終わったら、下記を2部ずつ用意し、管轄の労働基準監督署長に届出ます。
- 就業規則
- 就業規則意見書
- 就業規則(変更)届
3は書類提出用で、一般的に添付する書類です。
2、3については、各都道府県の労働局ホームページからダウンロードできますので、ぜひ活用しましょう。(※)
(※参考)厚生労働省:就業規則意見書
(※参考)厚生労働省:就業規則(変更)届
労働基準監督署に就業規則が受理されれば、作成は完了となります。
関連記事:就業規則の届出方法と具体的な手順を分かりやすく解説
関連記事:就業規則の変更届出の方法と気をつけるべき4つの注意点
1-4. 就業規則を従業員に周知する
就業規則は作成すればそれで終わりではなく、従業員に周知する義務が企業に課されています。(就業規則の周知義務)
また周知方法も定められているため、下記のような方法で、従業員全員が就業規則を認識している状態にする必要があります。
- 事務所や作業場の見やすい場所に常時掲示する
- パソコンの共有フォルダに格納する
- 冊子で全員に配布する
以上により、就業規則が実際に効力を発揮します。
2.就業規則の作成に必要な項目
就業規則には絶対に記載が必要な事項(絶対的必要記載事項)と、制度がある場合は記載する項目、それ以外の項目に分かれています。
それぞれの項目に記載すべき内容について、詳しく解説します。
2-1.絶対的必要記載事項:必ず記載が必要な項目
労働基準法第89条により、就業規則に必ず記載しなければいけない項目で、具体的には下記のとおりです。[注1]
- 労働時間:始業・就業の時刻、休憩時間の長さ、休日、休暇、など。
- 賃金:賃金の計算・決定方法、払い方、支払い期日、昇給時期、など。
- 退職:解雇理由、退職、定年、など。
2-2.相対的必要記載事項:運用する場合のみ記載が必要な項目
相対的必要記載事項とは、会社で該当の制度を運用する際に、記載が必要な項目のことです。
具体的には、下記のとおりです。
- 退職手当:支払われる従業員の範囲、金額の決定方法、振込時期、など。
- 臨時の賃金:賞与の計算方法、振込時期、など。
- 最低賃金:最低賃金の額。
- 費用負担:食費など、従業員に負担させる事柄。
- 安全衛生:健康診断、ストレスチェックなど。
- 災害補償:災害補償の具体的な内容。
- 職業訓練:教育訓練の受講指示など。
- 表彰:表彰者の選定方法と、表彰時期。
- 制裁:懲戒に当たる行為と、制裁内容。
- 置転換:転勤、出向、健康上の理由での配置転換など。
- その他:公益通報者保護、副業・兼業など、労働者すべてに適用されるルール。
2-3.任意的記載事項:企業理念など必要に応じて記載する事項
企業理念や服務規律など、企業が必要に応じて記載できる事項です。
とはいえ、法律で記載が義務付けられている項目ではありませんので、必要に応じて明記しましょう。
3.就業規則の作成で注意すべきポイント
就業規則は、各業種によっても記載する内容が異なります。テンプレートなどを利用すると、思わぬ不利益につながるケースも多いため、業種の実情に合わせて、適切な内容の明記が求められます。
今回は一般的に多い、就業規則の作成で注意すべきポイントについて解説します。
3-1.労働時間の管理方法
労働時間が不規則な業界では、時間管理が難しいケースも多いでしょう。
変形労働時間制やフレックスタイム制、裁量労働制、変形休日制などを利用する場合は、就業規則への明記が必要です。
また、労働時間の変更は、別途、労使協定の締結も必要であり、違反した場合、罰則が規定されているものもあります。
それぞれの方法について詳しく調べてから、就業規則に記載することをおすすめしれます。
3-2.雇用形態別の管理方法
正規雇用だけでなく、契約社員や、アルバイト従業員を雇う場合は、それぞれ労働時間や賃金の規定が異なるケースもあるでしょう。
そのため、さまざまな雇用方法の従業員がいる企業では、別々に就業規則を作成した方が、管理しやすい場合もあります。
特に、有期雇用の従業員を雇い入れる場合は、
- 契約期間に定めの有無
- 更新の有無
- 更新条件
- 更新がない場合の事前告知
- 正社員への配置転換の有無
など、詳細に記載するようにしましょう。
3-3.懲戒処分の具体的な内容
懲戒処分は、就業規則に理由が明記されていないと行使できません。
例えば、経歴詐称により通常より賃金を多くもらっている従業員がいたとしても、就業規則の懲戒理由に「経歴詐称」を明記していなければ、処分できないということです。
解雇や減給などの条件は、できるだけ明確に記載しましょう。
とは言え、すべてを網羅することは現実的に不可能です。そのため、項目の最後に「その他前各号に準ずる不適切な行為があったとき」と記載し、不測の事態に備えるようにしましょう。
4.就業規則は作成から周知まで注意深く取り組もう!
就業規則は「絶対的必要記載事項」など、作成上かならず記載すべき項目があります。
また、従業員代表への意見聴取と意見書の作成や、労働基準監督署への届出、従業員への周知など、作成にあたり、やらなければいけないことが多々あります。
就業規則を作成する際は、記載内容だけでなく、作成後の事務処理まで確認し、法令違反のないように注意深く進めましょう。
[注1]e-Gov法令検索:労働基準法
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