法定休日の特定とは?義務化や労働基準法大改正を見据えた対応を解説
更新日: 2026.3.12 公開日: 2026.3.12 (特定社会保険労務士)

働き方改革の次なるステップとして、労働基準法の抜本的な改正が議論されています。その中でも、実務への影響が大きい論点の一つが「法定休日の特定」です。これまで事前の特定までは義務付けられていなかった法定休日を明確に定めることが、将来的に義務化される可能性があります。
この記事では、法定休日の特定とは何か、義務化の議論がいつから始まり、いつ頃施行される可能性があるのかを整理したうえで、企業が今から備えるべきポイントを解説します。
人事担当者であれば、労働基準法の知識は必須です。しかし、その内容は多岐にわたり、複雑なため、全てを正確に把握するのは簡単ではありません。
◆労働基準法のポイント
- 労働時間:36協定で定める残業の上限時間は?
- 年次有給休暇:年5日の取得義務の対象者は?
- 賃金:守るべき「賃金支払いの5原則」とは?
- 就業規則:作成・変更時に必要な手続きは?
- 40年ぶりの大改正:人事担当者が押さえておきたい項目は?
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1. 法定休日の特定が義務化される?


近年、多くの企業で週休2日制が定着する中、「法定休日を事前に特定すべきではないか」という議論が進んでいます。これまで認められてきた柔軟な運用が見直される可能性もあり、人事担当者にとっては見過ごせないテーマといえるでしょう。ここでは、現行制度の考え方と、法改正に向けた議論の動向を整理します。
1-1. 現在は法定休日の特定に関する定めはない
現在の労働基準法では、「毎週1回または4週4日の休日」を与えることが義務づけられているものの、その休日をあらかじめ特定しなければならないという明確な定めはありません。
厚生労働省の通達(昭和23年5月5日基発682号、昭和63年3月14日基発150号(抄))でも、法定休日の特定は「望ましい」とされているものの、法的強制力はないのが現状です。そのため、就業規則などに所定休日と法定休日を合わせて「休日」として規定している企業が多く見られます。
このような運用自体は現時点では違法ではありませんが、いつが法定休日なのか従業員が認識できていないという課題がありました。
1-2. 2026年以降の労働基準法改正において義務化を検討
当初、法定休日の特定の義務化を含む労働基準法改正案は、2026年の通常国会への提出が予定されていました。しかし、慎重な議論を要することから2025年末に提出が見送られました。
現在は、2027年以降の法案提出を目指して議論が継続されています。改正が遅れたとはいえ、「労働者の休日を確実に確保し、賃金計算の透明性を高める」という方針に変わりはありません。企業にとっては、施行までの猶予期間が延びた今こそ、現状の運用を見直す絶好の機会といえるでしょう。
2. そもそも法定休日とは?


法定休日は、労働基準法で定められた「必ず与えなければならない最低限の休日」です。法定外休日(所定休日)と混同するケースも少なくありませんが、割増賃金の率や時間外労働のカウント方法が変わってくるため、実務上は正確な理解が必要です。まずは基本となる法定休日の考え方を整理しておきましょう。
2-1. 法定休日とは
法定休日とは、労働基準法第35条で次のとおり定められている、企業が従業員に必ず与えなければならない最低限の休日のことです。
第35条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
② 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
原則として「毎週少なくとも1回」の休日が法定休日ですが、例外として「4週間を通じて4日以上」の休日を与える変形的な制度も認められています。
休日全般についてはこちらの関連記事もご覧ください。
関連記事:労働基準法に定められた休日とは?そのルールを分かりやすく解説
2-2. 法定休日と法定外休日(所定休日)の違い
法定休日と混同されやすいのが「法定外休日(所定休日)」です。法定外休日とは、会社が就業規則や勤務カレンダーで独自に定めた休日で、法律上の最低基準を超える部分にあたります。週休2日制の企業では、週2日のうち1日が法定休日、もう1日が法定外休日となります。
法定休日と法定外休日(所定休日)の違いは、出勤した際の割増率です。法定休日に従業員を出勤させた場合、企業は通常の賃金に35%以上の割増賃金を上乗せして支払わなければなりません。
一方、法定外休日の出勤は、労働基準法上は通常の出勤日と同様の取り扱いとなります。つまり、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えなければ、割増賃金の支払いは不要となり、超えた場合も割増率は25%以上で足ります。どちらの休日として扱うかで給与計算が異なるため、この区別が実務上非常に重要です。
2-3. 法定休日の4つの例外
法定休日は、労働基準法第35条に基づき、原則としてすべての労働者に適用されます。ただし、業務の性質や働き方の特殊性から、例外的に法定休日が適用されないケースが労働基準法第41条及び第41条の2に定められています。主な適用除外は次のとおりです。
| 適用除外となる労働者 | 趣旨 | 備考 |
| 農業・畜産業・水産業 | 天候など自然条件に左右されやすく、週休制がなじまないため | 林業は適用除外に含まれない |
| 管理監督者 | 経営者と一体的な立場にあり、労働時間や勤務態様について裁量があるため | 該当性は肩書ではなく実態で判断 |
| 監視・断続的労働者 | 労働の密度や負担が比較的少ないため | 行政官庁の許可が必要 |
| 高度プロフェッショナル制度対象者 | 働く日や時間について労働者自身に裁量が認められているため | 年104日以上かつ4週4日以上の休日付与が必要 |
関連記事:法定休日とは?労働基準法のルールや特定義務・割増賃金計算のポイントを解説
3. 法定休日の特定義務化を見据えて企業がすべきこと


法案提出が2027年以降に延びたことは、企業にとって、準備の猶予ができたことを意味します。今後義務化が実施される可能性を踏まえると、今のうちから自社の運用を見直しておくことが重要です。制度が変わってから慌てて対応するのではなく、事前準備を進めることでリスクを抑えられるでしょう。ここでは企業が今できる対応を整理します。
3-1. 自社の法定休日の確認
まず取り組むべきは、自社における法定休日の現状把握です。就業規則や勤務表を確認し、「どの日を法定休日としているのか」「実態として一貫した運用になっているか」を整理しましょう。
特定できていない場合でも、現行制度下では違法ではありませんが、義務化を見据えた早めの見直しが重要です。特にシフト制の職場では、運用ルールを明文化しておくことが求められます。
3-2. 勤怠管理システムのチェック
勤怠管理システムを導入している場合は、システム設定の確認も重要です。法定休日の特定が義務化されると、勤怠システム上で「法定休日出勤がいつなのか」をより正確に集計する必要が出てきます。
現在のシステムが法定休日と法定外休日を区別して集計できる設定になっているか、改めて確認しましょう。「法定休日は日曜日固定」「7連勤した場合の土曜日を法定休日とする」「4週4日制で都度設定する」など、企業のルールによって、自動判定が可能か、手動で法定休日を登録する必要があるかが変わります。
また、週をまたいで振替休日が発生する場合など、複雑なケースでも正しい賃金が算出されるかどうかも大事なポイントです。制度対応にとどまらず、正確な労働時間管理や割増賃金計算の観点からも、システムが現行の運用に合っているかを再確認しておくことが、将来的なトラブル防止につながります。
3-3. 従業員の健康意識の向上
法定休日の特定義務化の背景には、「労働者の健康を確保するための休息」という考え方があります。企業としては、制度を整えるだけでなく、企業全体で健康意識を高める取り組みが欠かせません。
例えば、連続勤務を避ける風土づくりや、休むことに対する心理的ハードルを下げる工夫が考えられます。健康経営の一環として、休息の重要性を発信していく姿勢が、法改正にもスムーズに対応できる組織風土をつくるでしょう。
- この記事を執筆した社労士からのコメント
- 法定休日の特定を進める際、意外と見落とされがちなのが「勤怠システムの設定との整合性」です。就業規則上では法定休日を明確にしていても、システム上で所定休日と適切に区別できていなかったり、振替休日取得時の集計が正しく反映されていなかったりするケースは少なくありません。
そもそも、現行法下であっても、就業規則上の定義とシステム上の区分が一致していなければ、割増賃金の誤計算は容易に起こり得ます。義務化の有無に関わらず、制度設計とシステム設定は切り離して考えるのではなく、必ずセットで確認することが重要です。
4. 法定休日の特定に際しての注意点


法定休日を特定するにあたっては、実務上の注意点も多く存在します。誤った理解のまま運用すると、割増賃金の計算ミスや就業規則不備につながるおそれもあるでしょう。ここでは、特に押さえておきたい3つのポイントを確認します。
4-1. 法定休日は半日単位で決めてはいけない
法定休日は「暦日(午前0時から午後12時までの連続した24時間)」の単位で与える必要があり、午前休・午後休といった半日単位での設定は認められていません。たとえ実質的な休息が取れているように見えても、法的には休日として扱われない点に注意が必要です。
ただし、番方編成による交代勤務制(3交代制など)や自動車運転者、旅館業など一部の業種では、特例として一定の要件を満たすことで、暦日単位ではなく、連続24時間の休息を与える形でも休日として認められています。
4-2. 法定休日の特定によって月60時間超の割増賃金計算が変わる
労働基準法第37条に基づき、1ヵ月60時間を超える時間外労働に対しては、通常の賃金に50%以上の割増賃金を上乗せして支払わなければなりません。この「月60時間」の計算には、法定休日の労働時間は含まれず、法定外休日(所定休日)のみが含まれることになります。
これまで曖昧だった法定休日を明確にすると、休日労働や時間外労働の区分がよりはっきりします。その結果、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の計算に影響が出るケースもあるかもしれません。人件費に変動が生じる可能性があるため、事前に試算しておくとよいでしょう。
4-3. 就業規則や雇用契約書に定める
法定休日を事前に特定する場合、定義や特定方法を就業規則や雇用契約書に明記することが重要になります。現状では、「休日」として法定休日と法定外休日(所定休日)をまとめて規定している企業が少なくありません。
しかし、現行制度においても、法定休日と法定外休日では割増賃金率が異なります。定義や特定方法が曖昧なままでは、運用時のトラブルや労使間の認識のズレにつながるおそれがあります。
義務化を見据え、休日に関する規定を分かりやすく整理・整備しておくことは、人事担当者にとって重要な対応の一つです。改正法の施行前に、余裕をもって準備を進めておきましょう。
5. 法定休日のルールを正しく理解し特定義務化にも対応しよう


法定休日の特定義務化は、人事労務の実務に少なからず影響を与える制度変更です。2026年からの即時施行は見送られたものの、議論が進んでいる以上、「まだ先の話」と捉えるのではなく、今から備えることが重要です。
今のうちに自社の休日ルールを整理し、運用を見直しておくことは、単なる法令遵守にとどまらず、従業員のエンゲージメント向上や健康経営の推進にもつながります。今後の動向を注視しながら、計画的に準備を進めていきましょう。



人事担当者であれば、労働基準法の知識は必須です。しかし、その内容は多岐にわたり、複雑なため、全てを正確に把握するのは簡単ではありません。
◆労働基準法のポイント
- 労働時間:36協定で定める残業の上限時間は?
- 年次有給休暇:年5日の取得義務の対象者は?
- 賃金:守るべき「賃金支払いの5原則」とは?
- 就業規則:作成・変更時に必要な手続きは?
- 40年ぶりの大改正:人事担当者が押さえておきたい項目は?
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