給付付き税額控除とは?人事担当者が押さえるべき制度のポイントと実務への影響
更新日: 2026.4.6 公開日: 2026.4.6 jinjer Blog 編集部

「給付付き税額控除」という言葉を最近よく耳にするようになった方も多いのではないでしょうか。
2026年に入り、政府・与野党の場で制度の検討が具体化しており、まずは夏前に中間取りまとめをおこなう方針が示されています。
まだ導入が決まったわけではありませんが、「来年の年末調整が変わるかも」「従業員から質問が来たらどう答えればいいか」と不安に感じる人事担当者の方もいるかもしれません。
本記事では、給付付き税額控除の基本的な仕組みから注目されている背景、人事実務への影響まで、初めて学ぶ方にもわかりやすく解説します。
参考:高市内閣総理大臣記者会見|首相官邸
参考:社会保障国民会議|首相官邸
労務担当者の実務の中で、給与計算は出勤簿を基に正確な計算が求められる一方で、Excelからの手入力や別システムからのデータ共有の際、毎月のミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
さらに、昇格や人事異動に伴う給与体系の変更や、給与計算に関連する法令改正があった場合、更新すべき情報も多く、管理方法とメンテナンスにお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな担当者の方には、人事労務から勤怠管理までが一つになったシステムの導入がおすすめです。
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1. 給付付き税額控除とは


給付付き税額控除とは、「税額控除」と「現金給付」を組み合わせた制度です。
税額控除とは、納めるべき税金そのものから一定額を差し引いて税負担を軽くする仕組みで、例えば所得税が10万円の人に10万円の税額控除があれば税金はゼロになります。
一方で、もともとの納税額が少ない人は、控除額が大きくても差し引ける税金に限りがあるため、控除の効果が途中で頭打ちになってしまいます。例えば控除額が10万円でも納税額が3万円なら、減税効果は3万円までにとどまります。
そこで給付付き税額控除では、税額を差し引いて税金がゼロになった後、なお控除額が残る場合に、その残りを現金で受け取れるようにする考え方です。これにより、所得税の負担が小さい人にも支援が届きやすくなるとされています。
2024年に実施された「定額減税」では、急な制度決定に伴う給与計算事務の複雑化に頭を悩ませた担当者の方も多かったのではないでしょうか。
今回検討されている給付付き税額控除は、その際の混乱や反省を踏まえ、より簡素で「恒久的な仕組み」としての確立が目指されています。単なる一時的な減税ではなく、今後の人事実務のスタンダードになる可能性があるため、今のうちからの全体像の把握が重要です。
1-1. 給付付き税額控除の仕組みと計算例
仕組みを具体的な数字で見てみましょう。現時点では1人あたり4万円程度を軸に、与野党間で議論が進んでいます。
▼ ケース別の給付イメージ(4万円案)
| ケース | 減税額 | 現金給付額 | 合計の恩恵 |
| 高所得者(納税額4万円以上) | 4万円 | なし | 4万円 |
| 中所得者の例(納税額1万円) | 1万円 | 3万円 | 4万円 |
| 非課税世帯(納税額0円) | 0円 | 4万円 | 4万円 |
このように、どの所得層でも受け取れる恩恵が同額になる点が最大の特徴です。所得税を多く払っている人は減税、少ない人は現金給付という形で、支援が公平に行き渡ります。
2. 給付付き税額控除が注目されている背景


この制度がなぜ今、活発に議論されているのでしょうか。大きく2つの背景があります。
2-1. 政府の提言の影響
2026年に入り、高市政権のもとで「給付付き税額控除」の検討が本格化しています。高市首相は、記者会見などで低所得者対策の柱として本制度の導入に言及しました。
累進課税を採用している日本では、所得税の減税だけでは、もともとの納税額が少ない層に恩恵が及びにくいという側面があります。これに対し、減税しきれない分を現金で補填する「給付付き税額控除」であれば、あらゆる所得層へ公平に支援を届けられる点が大きな特徴です。
2026年2月26日には「社会保障国民会議」の初会合が開催され、自民・公明・維新・チームみらいによる協議が開始されました。ただし、導入には数兆円規模の「財源確保」という大きな障壁があり、国民民主党などが現時点で不参加であることからも、まだ決定事項ではない点に注意が必要です。
今後は、2026年度から暫定的に実施される「178万円の壁(所得税非課税枠の引き上げ)」のあとの、2028年以降を支える「恒久的な受け皿」としての役割が期待されています。
関連記事:178万円の壁とは?引き上げはいつから?
2-2. 低所得者世帯の支援策として期待
物価高騰が長期化するなかで、「働いているのに生活が苦しい」というワーキングプア層への対策は喫緊の課題となっています。所得税を納めていない層にも確実に現金給付が届く点は、従来の減税制度にはない大きな強みです。
こうした仕組みは日本独自のものではなく、諸外国ではすでに導入が進んでいます。アメリカの「勤労税額控除(EITC)」やイギリスの「ユニバーサル・クレジット」、韓国の「勤労奨励税制」などがその代表例です。これらの国々では、低所得者の生活支援と就労促進を両立させる制度として、一定の成果を収めています。
さらに本制度は、少子化対策としての側面も持っています。現在の議論では、扶養親族1人につき4万円程度を加算する案も検討されており、子育て世帯に対する手厚い支援策としても大きな期待が寄せられています。
2-3. 2024年「定額減税」の経験と反省
現在、給付付き税額控除の導入が検討されている背景には、2024年の「定額減税」で明らかになった課題への対策という側面があります。
当時の制度は、所得税の納税者には「減税」、非課税世帯には「給付金」という二段階の対応が必要でした。この仕組みは非常に複雑であり、支援のスピードや公平性の面で課題が残りました。
また、企業側でも、毎月の源泉徴収事務で膨大な計算作業が発生し、人事担当者の負担が極めて大きくなったことも記憶に新しいところです。こうした過去の混乱を教訓に、より公平で、かつ企業の事務負担を抑えた「恒久的な仕組み」の構築が求められています。
【2024年定額減税と給付付き税額控除の比較】
| 比較項目 | 2024年定額減税 | 給付付き税額控除(検討案) |
| 制度の性質 | 物価高対策としての「一時的」な措置 | 格差是正などを目的とした「恒久的な制度」 |
| 支援の対象 | 納税者と非課税世帯で制度が分断 | 納税額に関わらず全所得層が同一制度の対象 |
| 支援の手法 | 減税しきれない分は自治体が給付 | 減税しきれない分を国が直接現金給付 |
| 人事実務 | 給与計算や年末調整での複雑な控除事務 | 行政の直接給付による企業負担の軽減を模索 |
関連記事:【2024年6月】定額減税とは?対象者や減税額・給付金をわかりやすく解説
3. 給付付き税額控除の導入メリット


給付付き税額控除が導入された場合、働き手と企業それぞれにどのようなメリットがあるのでしょうか。現時点での制度設計をもとに整理します。
3-1. 働き手のメリット
従業員側から見た主なメリットは次のとおりです。
- 所得水準を問わない公平な支援
非課税世帯や低所得者層でも、減税しきれない分を現金で受け取れるようになります。所得水準に関わらず、すべての働く人に一定額の恩恵が届くようになります。
- マイナンバー活用による手続きの簡便化
マイナンバーと公金受取口座を活用した「自動給付」が想定されています。これにより、従業員自身による複雑な申請手続きの負担が少なくなる見込みです。
- 子育て世帯への手厚いサポート
扶養親族がいる世帯には加算額が見込まれています。子どもを育てながら働く従業員にとって、家計を支える直接的な支援策となる可能性があります。
- 「壁」を意識しない就労意欲の維持
一定の収入を超えると支援が急減する「年収の壁」を生まないような制度設計が議論されています。手取りの逆転を気にせず、働き方の選択を歪めない仕組みとして期待されています。
3-2. 企業のメリット
企業側の直接的なメリットは現時点では多くはありませんが、間接的な効果は考えられます。
- 働き控えの緩和
収入が増えても給付が急減しない設計になれば、パート・アルバイト従業員が就業時間を抑える「働き控え」が減り、人手不足の緩和につながる可能性があります。
- 手当制度の見直し機会
国が所得支援を直接担う形になれば、企業独自の家族手当など生活補助的な給付の役割を見直す契機になる可能性があります。
4. 給付付き税額控除のデメリット


制度の導入には期待が高まる一方、解決すべき課題も多く残っています。人事担当者としても、こうした論点の把握が大切です。
▼主な課題の整理
| 課題 | 内容 |
| 所得把握の難しさ | 給与所得は比較的把握しやすいものの、株式・不動産など資産性所得の正確な捕捉が困難です。給付の公平性に直結する課題といえます。 |
| 世帯単位か個人単位か | 給付を世帯単位で判定するか個人単位かによって所得合算の方法や支給額が大きく変わり、制度設計が複雑になります。 |
| 財源の確保 | 1人4万円案では総額約5兆円規模とも試算されており、財源確保が最大のハードルとなります。 |
| 制度の複雑さ | 税制と給付を組み合わせることで制度が複雑になり、申請者・企業・行政いずれにも負担が生じる可能性があります。 |
| 不正受給・誤給付リスク | 英国のユニバーサル・クレジット(英国で導入された住宅補助や求職者向けの手当などを一括支給する仕組み)でも誤給付が多発した事例があり、日本でも同様のリスクへの備えが必要となります。 |
| 導入までの期間 | システム整備・法改正・行政準備が必要なため、実際の給付開始は早くとも2027年度以降とみられています。 |
特に所得把握の課題はハードルが高く、マイナンバーを活用した情報整備が前提条件となります。制度設計がどこまで現実的に進むかは、今後の国民会議での議論に委ねられています。
5. 給付付き税額控除が人事実務に与える影響


現時点では制度の詳細が確定していないため、断言できる点は限られます。ただし、2024年の定額減税の際に企業が源泉徴収・控除処理を担った事例を参考にすると、一定の業務負担が生じる可能性は十分にあります。
5-1. 給与計算や年末調整への影響
制度設計によっては、次のような実務的な変更が生じる可能性があります。
- 源泉徴収の処理変更
給付付き控除を毎月の給与計算に組み込む形式になれば、源泉徴収の計算ロジックの見直しが必要になる場合があります。
- 年末調整の手続き追加
2024年の定額減税のように、年末調整で給付額を調整する処理が加わる可能性があります。
- 給与システムの更新対応
人事・給与システムのアップデートや、法改正に対応したシステムの導入が必要となることが予想されます。
- 確定申告との連動
マイナポータルを通じた自動処理が想定されていますが、確定申告が必要ということになれば、対応が求められる可能性もあります。
ただし、マイナンバーと公金受取口座を活用した自動給付の仕組みが整備されれば、企業側の負担が最小限に抑えられる可能性もあります。今後の制度設計の動向を引き続き注視することが重要です。
5-2. 従業員説明と人事部門の負担増加
制度が導入された際、従業員からの問い合わせが増えることは確実です。現時点では制度の詳細が未確定のため具体的な回答は準備できませんが、次のような問い合わせが想定されます。
- 「自分はいくらもらえるのか」
- 「手続きが必要か、自動でもらえるのか」
- 「育休中・時短勤務中でも対象になるか」
- 「扶養家族がいる場合の加算はどうなるか」
回答の内容は今後の制度設計によって変わるため、現段階では顧問税理士・社労士などの専門家と連携しながら情報収集を続け、制度が固まった段階でのQ&Aや説明資料の整備をおすすめします。
6. 給付付き税額控除の最新情報に注目しよう


給付付き税額控除は、2026年2月26日に国民会議の初会合が開催されたばかりで、制度の詳細はまだ決まっていません。夏前の中間取りまとめ、年末の具体案策定を経て、関連法案の提出・実施は早くとも2027年度以降になるとみられています。
人事担当者として今すぐ具体的な対応が必要な段階ではありませんが、制度の骨格を今から理解することで、正式決定後にスムーズに動けるようになります。首相官邸・財務省・国税庁の公式情報を定期的にチェックしながら、対応準備を進めていくことをおすすめします。



労務担当者の実務の中で、給与計算は出勤簿を基に正確な計算が求められる一方で、Excelからの手入力や別システムからのデータ共有の際、毎月のミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
さらに、昇格や人事異動に伴う給与体系の変更や、給与計算に関連する法令改正があった場合、更新すべき情報も多く、管理方法とメンテナンスにお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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